HOME 国内

2022.10.02

男子100m日本記録保持者・山縣亮太が現在地語る。「新しい走りにアップデートを」
男子100m日本記録保持者・山縣亮太が現在地語る。「新しい走りにアップデートを」

10月2日の「みんなでつなごうリレーフェスティバル」の2日目、男子100m日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)が、8月19日にアドバイザリースタッフ契約を締結したアシックスのサイン会に参加。その後に、自身の現在地と今後への思いを語った。

広告の下にコンテンツが続きます

「右膝の手術をしてからほぼ1年。だいぶ走れるようになってきました。スピード的にマックスの負荷はまだかけていませんが、ウエイトトレーニングも走りも、強化と言えるレベルの練習ができています」

グラウンドでの練習を「この1~2週間で始めた」という段階だが、晴れやかなその表情に、着実な進歩がうかがえる。

昨年は9秒95の日本記録を樹立したが、3大会連続出場の東京五輪は100mが予選敗退。2走を務めた4×100mリレーは決勝で1走の多田修平(住友電工)からのバトンを受け取り切れず、途中棄権となった。

そして10月、数年の間悩まされてきた右膝の膝蓋腱炎の、根本的な解決を目指して手術を決断。左右差のあった身体をゼロから作り直す時間を取り、「思った以上に時間がかかったけど」ようやく新たな段階へと移る時期に入ったようだ。この1年という時間について、山縣は「必要な1年だったと思います」と語る。

広告の下にコンテンツが続きます

「ケガを直すという意味でも、新しい技術を習得するにしても、年齢もあるので時間がかかる。お陰で走りが大きく変わりました。技術的なところにじっくり向き合って、走りを変える取り組みを時間をかけてできたので、この1年は本当に大きかった。高野大樹コーチ、理学療法士をはじめたくさんの方々の協力を得ながらできたのは、本当に良かったです」

その取り組みの過程で、アシックスとの契約締結という大きなトピックスもあった。「もともと、一番最初に履いたスパイクシューズがアシックスさんのもの」だったそうだが、「今までの自分を超えたい」という思いがあったという。

「自分自身をさらに大きく飛躍させていく意味でも、新しい自分になりたい」

今後の自分の武器がどのシューズになるかは、まだ試行錯誤の段階。ただ、「自分の感覚に合うというのも大事だけど、自分が今、新しい走りを作り上げていくように、時間をかけてでもシューズに対して自分の足、感覚を慣らしていく、というふうに考えています」。

この自身の感覚を、「製品開発にもつなげられれば」と語った山縣。さらに、大きな夢もある。

「競技でがんばるのはもちろんですが、スポーツの価値、スポーツ教育というものを前に進めるために、アシックスさんと一緒にやっていきたい。子供たちに本物のスパイクシューズを履いてもらう機会を作ってもらうのもいいですね。陸上のスパイクはなかなか触れる機会はないと思うので、そういうところから陸上のおもしろさを発信できればと思います。もっと大きな文脈で、『そもそもスポーツは価値があるものなのか』というところで、僕は『心と身体の健康』に良いものを与えると思っているので、そういった大きい意味での活動もしていきたい」

6月で30歳となり、キャリアの集大成の時期は確実に近づいている。だが、目指すところにブレはない。パリ五輪のファイナルに向けて、「やることは変わらない。1年1年、自分の走りをアップデートさせていくだけ」ときっぱり語る。

「(技術は目指しているところの)道半ばまで来ている。まだ完璧ではないけど、確実に前の自分とは走り方が変わってきています。身体の使い方も含めて、今までに僕が意識したことのなかった走りに目を向けていて、確実にできつつある。練習でも手応えを感じています。新しい走りになって、周りの人が見ても『あいつは決勝に残れそうだ』と思ってもらえるぐらいのインパクトのある、スケールの大きな走りができればと思っています」
長年、ライバルとして切磋琢磨してきた桐生祥秀(日本生命)も、今季は日本選手権後に休養。今、トラックから離れている2人が、同じ社のサポートを受けて、再び激突する時に備えて力を蓄えている。

「それぞれ大きな決意が心の中にある。あとはそれをしっかりと爆発させるだけです」

日本スプリント界を支えるエース復活の時は、近い。

10月2日の「みんなでつなごうリレーフェスティバル」の2日目、男子100m日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)が、8月19日にアドバイザリースタッフ契約を締結したアシックスのサイン会に参加。その後に、自身の現在地と今後への思いを語った。 「右膝の手術をしてからほぼ1年。だいぶ走れるようになってきました。スピード的にマックスの負荷はまだかけていませんが、ウエイトトレーニングも走りも、強化と言えるレベルの練習ができています」 グラウンドでの練習を「この1~2週間で始めた」という段階だが、晴れやかなその表情に、着実な進歩がうかがえる。 昨年は9秒95の日本記録を樹立したが、3大会連続出場の東京五輪は100mが予選敗退。2走を務めた4×100mリレーは決勝で1走の多田修平(住友電工)からのバトンを受け取り切れず、途中棄権となった。 そして10月、数年の間悩まされてきた右膝の膝蓋腱炎の、根本的な解決を目指して手術を決断。左右差のあった身体をゼロから作り直す時間を取り、「思った以上に時間がかかったけど」ようやく新たな段階へと移る時期に入ったようだ。この1年という時間について、山縣は「必要な1年だったと思います」と語る。 「ケガを直すという意味でも、新しい技術を習得するにしても、年齢もあるので時間がかかる。お陰で走りが大きく変わりました。技術的なところにじっくり向き合って、走りを変える取り組みを時間をかけてできたので、この1年は本当に大きかった。高野大樹コーチ、理学療法士をはじめたくさんの方々の協力を得ながらできたのは、本当に良かったです」 その取り組みの過程で、アシックスとの契約締結という大きなトピックスもあった。「もともと、一番最初に履いたスパイクシューズがアシックスさんのもの」だったそうだが、「今までの自分を超えたい」という思いがあったという。 「自分自身をさらに大きく飛躍させていく意味でも、新しい自分になりたい」 今後の自分の武器がどのシューズになるかは、まだ試行錯誤の段階。ただ、「自分の感覚に合うというのも大事だけど、自分が今、新しい走りを作り上げていくように、時間をかけてでもシューズに対して自分の足、感覚を慣らしていく、というふうに考えています」。 この自身の感覚を、「製品開発にもつなげられれば」と語った山縣。さらに、大きな夢もある。 「競技でがんばるのはもちろんですが、スポーツの価値、スポーツ教育というものを前に進めるために、アシックスさんと一緒にやっていきたい。子供たちに本物のスパイクシューズを履いてもらう機会を作ってもらうのもいいですね。陸上のスパイクはなかなか触れる機会はないと思うので、そういうところから陸上のおもしろさを発信できればと思います。もっと大きな文脈で、『そもそもスポーツは価値があるものなのか』というところで、僕は『心と身体の健康』に良いものを与えると思っているので、そういった大きい意味での活動もしていきたい」 6月で30歳となり、キャリアの集大成の時期は確実に近づいている。だが、目指すところにブレはない。パリ五輪のファイナルに向けて、「やることは変わらない。1年1年、自分の走りをアップデートさせていくだけ」ときっぱり語る。 「(技術は目指しているところの)道半ばまで来ている。まだ完璧ではないけど、確実に前の自分とは走り方が変わってきています。身体の使い方も含めて、今までに僕が意識したことのなかった走りに目を向けていて、確実にできつつある。練習でも手応えを感じています。新しい走りになって、周りの人が見ても『あいつは決勝に残れそうだ』と思ってもらえるぐらいのインパクトのある、スケールの大きな走りができればと思っています」 長年、ライバルとして切磋琢磨してきた桐生祥秀(日本生命)も、今季は日本選手権後に休養。今、トラックから離れている2人が、同じ社のサポートを受けて、再び激突する時に備えて力を蓄えている。 「それぞれ大きな決意が心の中にある。あとはそれをしっかりと爆発させるだけです」 日本スプリント界を支えるエース復活の時は、近い。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.02

オマニャラが100mで快勝 男子5000mはサンベルクス所属のキプロティッチがV/ケニア選手権

6月26日、27日の両日、ケニア・ナイロビでケニア選手権が開催され、男子100mではF.オマニャラが10秒08(-0.5)で優勝を飾った。 23年世界選手権7位のオマニャラは、準決勝で10秒09(-1.7)をマーク。決勝 […]

NEWS アジア選手権女子800m4位・チャウダリーに暫定資格停止処分 アピオは18ヵ月の資格停止

2025.07.02

アジア選手権女子800m4位・チャウダリーに暫定資格停止処分 アピオは18ヵ月の資格停止

アスリート・インテグリティー・ユニット(AIU、世界陸連の独立不正監査機関)は6月中に、複数の選手に対して資格停止処分または暫定資格停止処分を科すことを発表した。 今年5月末のアジア選手権女子800mで4位に入ったT.チ […]

NEWS HOKAの新作レーシングシューズ「ROCKET X 3」が7月2日に新登場!

2025.07.02

HOKAの新作レーシングシューズ「ROCKET X 3」が7月2日に新登場!

HOKAは7月2日、ランナーが自己ベストを更新できるよう設計された最新レーシングシューズ「Rocket X 3」を7月2日よりHOKA公式オンラインストア、直営店、一部取り扱い店舗にて発売したことを発表した。価格は30, […]

NEWS 三井住友海上の清水萌、小林成美が退部 小林は5月に引退レース

2025.07.02

三井住友海上の清水萌、小林成美が退部 小林は5月に引退レース

7月1日、三井住友海上は、6月30日付で所属する清水萌と小林成美が退部したことを発表した。 清水は2001年生まれの23歳。宮城・西多賀中時代には全中1500mで7位に入るなど活躍し、都道府県対抗女子駅伝にも出場。仙台育 […]

NEWS ダイヤモンドリーグ・モナコに村竹ラシッドと三浦龍司がエントリー!

2025.07.02

ダイヤモンドリーグ・モナコに村竹ラシッドと三浦龍司がエントリー!

世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)第10戦・モナコ大会のエントリー選手が発表された。 男子110mハードルには村竹ラシッド(JAL)が登録。村竹は昨年のパリ五輪5位で、13秒04の日本記録保持者。今季DLでは […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top