2021.07.30

◇福井インターハイ(7月28日~8月1日/福井・福井県営陸上競技場)
インターハイ2日目の男子100m。舞台は、桐生祥秀(日本生命)が東洋大4年だった2017年に日本人初の9秒台を生んだことにちなんで「9.98スタジアム」の愛称がつけられた福井県営陸上競技場。先に明かすと、男子100m決勝の風速は、“あの瞬間”と同じ「+1.8m」だった。
注目を集めたのは日本陸連ダイヤモンドアスリートに選出されている栁田大輝(東農大二3群馬)。日本選手権100mでは高校生ながら2年連続7位で、今年の準決勝では高校歴代2位タイとなる10秒22をマークした。その走りが評価され、東京五輪4×100mリレー日本代表の補欠にもなった。参加した五輪前の代表合宿では「練習1本1本の重みを知った」と栁田は言う。別れ際、代表コーチたちに、「優勝してこいよ」「優勝して、また会おう」と口々に激励された。
その言葉に、「気を引き締めることができてよかった」と栁田。大人たちの「優勝してこい」は、厳しくハッパをかけているように見えて実は、「水物のタイムは気にするな。勝負に徹してこいよ」の優しさが隠れているのだろう。
大会2日目、午前中から記録的豪雨と雷の影響で競技開始が1時間遅れた。100mの予選も雨の中。栁田はフィニッシュ寸前で久保井颯(鳴門渦潮3徳島)を抜いて際どく1着(10秒68/-0.8)通過した。
「予選があまりいい感じではなかったのは、レースから遠ざかっていたこともあったのかな……。でもそこである程度レースの感覚を思い出したので、準決勝、決勝へともう一段いい走りにつなげられたと思います」
天気は快晴へと変わり、準決勝10秒62(-0.5)を経て迎えた決勝。6レーンの栁田は前半こそリードを許したものの、中盤以降は力みのない走りで加速して抜けだし、身体を突き出してフィニッシュした。記録は10秒31(+1.8)。自己記録にも、桐生が大分インターハイで残した大会記録(10秒19)にも届かなかったが、2位に0.14秒の差をつけた走りは、やはり群を抜いていた。
「今は本当に、ホッとしています」。走り終えた栁田はふう、と息を吐く。当初はインターハイが最大の目標だったが、日本代表の合宿を経験したことで“次に向かう場所”ができた。高校最速のタイトルを手にした栁田は、学校の仲間たちとのつかの間の日々を終えて再び五輪を控える代表チームに合流。「この後、東京に向かうのですが、安心して帰ることができます」と、ほほ笑んだ。
「家族の元を離れても東農大二高に入ってよかったと思いますし、いつも応援してくれる家族に感謝しています」。そう話した時に声が震え、目が潤む。高校生の領域を高く、高く超えていこうとする者にも、この勝利を届けたい人がいる。それがインターハイだということを改めて感じさせる、2年ぶりの高校最速決定戦だった。
こちらも注目された男子1500mは、7月に佐藤清治(佐久長聖高3長野)が1999年に打ち立てた高校記録3分38秒49を22年ぶりに塗り替える3分37秒18をマークしていた佐藤圭汰(洛南3京都)が3分41秒26で制した。2位以下もハイレベルで、兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡)が高校歴代3位の3分41秒86。続く3位の間瀬田純平(鳥栖工3佐賀)も3分42秒22(高校歴代4位)の好記録だった。
4位、5位の長嶋幸宝(西脇工2兵庫)は3分44秒87、大野聖登(秋田工2秋田)は3分45秒59で、それぞれ高2歴代2、3位の快走だった。
◇2日目の優勝者(一部優勝コメント)
男子100m
栁田大輝(東農大二3群馬) 10秒31(+1.8)
男子1500m
佐藤圭汰(洛南3京都) 3分41秒26
「勝って当たり前というプレッシャーがかかる中で結果を残せたことは収穫です」
男子棒高跳
松井楓雅(南陽工3山口) 5m15
「自己ベストは負けていましたが、自分を信じて気持ちで負けないよう意識して臨みました」
男子走幅跳
北川 凱(東海大翔洋3静岡) 7m67(+0.9)
男子やり投
清川裕哉(小山3静岡) 67m69
「全国優勝しか考えていなかったので、練習をひたすらやるだけでした」
男子八種競技
高橋 諒(桐朋1東京) 5528点
女子100m
永石小雪(佐賀北3佐賀) 11秒65(-0.2)
女子1500m
ジャネット・ニーヴァ(倉敷2岡山) 4分12秒60
「目標は4分08秒だったけれど、今日はとても暑くて難しかった」
女子5000m競歩
柳井綾音(北九州市立3福岡) 22分54秒18
「東京五輪に出場される藤井先輩(菜々子・エディオン)に力を届けたいと思っていたので優勝できてうれしいです」
女子砲丸投
奥山琴未(岡山商大附2岡山) 14m54
「久しぶりに楽しく競技することができました。次は15mを投げられるように頑張ります」
文/奥村 崇
◇福井インターハイ(7月28日~8月1日/福井・福井県営陸上競技場)
インターハイ2日目の男子100m。舞台は、桐生祥秀(日本生命)が東洋大4年だった2017年に日本人初の9秒台を生んだことにちなんで「9.98スタジアム」の愛称がつけられた福井県営陸上競技場。先に明かすと、男子100m決勝の風速は、“あの瞬間”と同じ「+1.8m」だった。
注目を集めたのは日本陸連ダイヤモンドアスリートに選出されている栁田大輝(東農大二3群馬)。日本選手権100mでは高校生ながら2年連続7位で、今年の準決勝では高校歴代2位タイとなる10秒22をマークした。その走りが評価され、東京五輪4×100mリレー日本代表の補欠にもなった。参加した五輪前の代表合宿では「練習1本1本の重みを知った」と栁田は言う。別れ際、代表コーチたちに、「優勝してこいよ」「優勝して、また会おう」と口々に激励された。
その言葉に、「気を引き締めることができてよかった」と栁田。大人たちの「優勝してこい」は、厳しくハッパをかけているように見えて実は、「水物のタイムは気にするな。勝負に徹してこいよ」の優しさが隠れているのだろう。
大会2日目、午前中から記録的豪雨と雷の影響で競技開始が1時間遅れた。100mの予選も雨の中。栁田はフィニッシュ寸前で久保井颯(鳴門渦潮3徳島)を抜いて際どく1着(10秒68/-0.8)通過した。
「予選があまりいい感じではなかったのは、レースから遠ざかっていたこともあったのかな……。でもそこである程度レースの感覚を思い出したので、準決勝、決勝へともう一段いい走りにつなげられたと思います」
天気は快晴へと変わり、準決勝10秒62(-0.5)を経て迎えた決勝。6レーンの栁田は前半こそリードを許したものの、中盤以降は力みのない走りで加速して抜けだし、身体を突き出してフィニッシュした。記録は10秒31(+1.8)。自己記録にも、桐生が大分インターハイで残した大会記録(10秒19)にも届かなかったが、2位に0.14秒の差をつけた走りは、やはり群を抜いていた。
「今は本当に、ホッとしています」。走り終えた栁田はふう、と息を吐く。当初はインターハイが最大の目標だったが、日本代表の合宿を経験したことで“次に向かう場所”ができた。高校最速のタイトルを手にした栁田は、学校の仲間たちとのつかの間の日々を終えて再び五輪を控える代表チームに合流。「この後、東京に向かうのですが、安心して帰ることができます」と、ほほ笑んだ。
「家族の元を離れても東農大二高に入ってよかったと思いますし、いつも応援してくれる家族に感謝しています」。そう話した時に声が震え、目が潤む。高校生の領域を高く、高く超えていこうとする者にも、この勝利を届けたい人がいる。それがインターハイだということを改めて感じさせる、2年ぶりの高校最速決定戦だった。
こちらも注目された男子1500mは、7月に佐藤清治(佐久長聖高3長野)が1999年に打ち立てた高校記録3分38秒49を22年ぶりに塗り替える3分37秒18をマークしていた佐藤圭汰(洛南3京都)が3分41秒26で制した。2位以下もハイレベルで、兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡)が高校歴代3位の3分41秒86。続く3位の間瀬田純平(鳥栖工3佐賀)も3分42秒22(高校歴代4位)の好記録だった。
4位、5位の長嶋幸宝(西脇工2兵庫)は3分44秒87、大野聖登(秋田工2秋田)は3分45秒59で、それぞれ高2歴代2、3位の快走だった。
◇2日目の優勝者(一部優勝コメント)
男子100m
栁田大輝(東農大二3群馬) 10秒31(+1.8)
男子1500m
佐藤圭汰(洛南3京都) 3分41秒26
「勝って当たり前というプレッシャーがかかる中で結果を残せたことは収穫です」
男子棒高跳
松井楓雅(南陽工3山口) 5m15
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