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【学生長距離Close-upインタビュー】競技人生の集大成を迎える帝京大・遠藤大地「『やりきった』という思いで終われるような1年にしたい」

学生長距離Close-upインタビュー
遠藤大地 Endo Daichi 帝京大学4年

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。6回目は、これまで箱根駅伝3区で快走を続けてきた帝京大の遠藤大地(4年)に話を聞いた。

学生長距離界でも屈指のポテンシャルを持つ逸材だが、大学卒業とともに競技の引退を明言している。競技者としての集大成となる学生ラストイヤーをどのように飾るつもりなのか。

箱根駅伝3区で3度の快走

 3年前、帝京大・遠藤大地のルーキーイヤーにおける活躍には目覚ましいものがあった。

 宮城・古川工高時代は、高3時に5000mでインターハイに出場しているが、全国的には無名の存在だったと言っていい。それが大学入学後に自己新を連発すると、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では1組に登場して2着以下に100m近い差をつける衝撃的なレースを披露。11月には10000mでこの年のルーキー最速となる28分34秒88の好記録をマークした。

 駅伝でも快進撃は続く。デビュー戦の出雲駅伝は1区11位どまりだったが、全日本は主力級が集う4区で区間3位と好走。さらに箱根駅伝では3区で区間3位と活躍し、14位から8人を抜いて6位まで押し上げた。

 2年時、3年時は、年間を通してみると1年時ほどのインパクトは残せなかったが、箱根駅伝になると、またしても3区で圧巻のパフォーマンスを発揮した。

 特に2年時は、驚異の区間新を樹立したイェゴン・ヴィンセント(東京国際大)に抜かれはしたものの、区間2位ながら2019年に森田歩希(青学大)が保持していた日本人最高記録を3秒上回る1時間1分23秒(21.4km)で走り切った。近年の箱根駅伝は3区にエース級を投入するチームが多く、竹澤健介(早大)、佐藤悠基(東海大)、設楽悠太(東洋大)、大迫傑(早大)、中村匠吾(駒大)といったオリンピアンも走っている。もちろん気象条件は違うので一概に比較はできないが、遠藤は、記録上は彼らを上回るパフォーマンスを見せたことになる。

 今年の箱根でも区間順位は4位だったが、それまでの不調が嘘のような快走で、8人抜きの活躍を見せた。

「箱根は、『4年間で1回走れたらいいな』ぐらいに考えていました。今振り返ってみても、ああいう走りをできたという実感がないですね」

 遠藤は過去3回の箱根をこう振り返るが、その口調はどこか他人事のようにも聞こえる。

陸上は高校から本格的にスタート

高校3年時は東北大会5000m(写真12番)を5位で通過し、インターハイにも出場している

 中学時代はバスケットボール部だったが、3000mで宮城県中学総体8位の実績があり、高校から本格的に陸上を始めた。

 高校1年時から県駅伝で1区を担うほどの実力はあったが、2年時までは全国大会とは無縁。箱根駅伝に憧れながらも、大学進学は諦めようとしていた。

「『大学に行って競技を続けたい』と親に話したこともあったのですが、一方で『無理だな』と諦めていて、高校で競技を終える予定でいました」

 ところが、高2の秋に転機があった。帝京大の中野孝行監督からスカウトを受けたのだ。その時に「がんばったら、箱根を走るチャンスはあるよ」と言われたことが、「(大学でも競技を続ける)大きなきっかけになりました」と遠藤は話す。

 競技継続を決断したあとは、見える世界が大きく変わっていった。その年の冬に5000mでぎりぎり15分切りを果たすと、高3時には5000mでついにインターハイに出場。秋には14分23秒66まで短縮し、大学進学を前にポテンシャルの高さを覗かせた。

 そして、帝京大に入学してすぐに、その才能は一気に花開く。好不調の波は少しあるが、ハマった時には誰も手を付けられない。その爆発力が遠藤の魅力だ。

不滅の区間記録にも挑戦

 これほどのインパクトを残している遠藤だが、今は一般企業の採用試験を受けている最中で、競技は大学4年間で終える予定だという。

「もともと大学まで競技を続けた理由が『箱根駅伝を走りたい』という思いからでしたから。声をかけていただいた企業もありましたが、大学卒業後に実業団で何を目標にするべきかと考えた時に、箱根駅伝以上のものがないっていう考えに至りました。半端な気持ちで競技を続けるんだったら、大学で競技を終えようと思いました。そもそも、箱根の先のことを考えていませんでしたから」

 言い換えれば、それほどの強い思いをもって箱根駅伝に臨んでいたということだろう。長距離はメンタルのスポーツなどと言われることもあるが、「(箱根で快走できた要因は)本当に気持ちが大きいのかなと思います」と遠藤自身も認めているように、箱根への思いの強さが大元にあった。

 しかし、最終学年を迎えて立場上「箱根だけ」とは言っていられないのも事実。昨年度は練習で先輩の星岳(現コニカミノルタ)らに引っ張ってもらうことが多かったが、新チームでの初めて練習で前に追いかける人がいなくなったのを実感し、「しっかりやらなきゃ」と実感。「今までは、調子が悪い時やきつい状況だと、他の人に引っ張る役を任せていましたが、今は、思うような走りができない時でも『自分がいかなきゃな』という思いになっています」と、最上級生としての自覚が備わってきた。

 例年は箱根駅伝が終わった後に調子を崩し、なかなか復調できずにいたが、今年は箱根後も順調に練習を積むことができているという。そして、集大成の年を迎え、モチベーションも高く維持し、競技に取り組んでいる。

「結局最後は、少しは後悔すると思うんです。でも、その後悔ができるだけ少なくなるように1年を送りたいと思っています。日々の練習も、これから出る大会も、全部が最後になります。その一つひとつを大切にして、最後は『やりきった』という思いで終われるような1年にしたいと思っています」

トラックシーズンは、まず帝京大記録(5000m13分50秒45、10000m28分20秒63)の更新を掲げている。そして、駅伝シーズンは、チーム目標の出雲駅伝4位、全日本大学駅伝3位、箱根駅伝往路優勝・総合3位を成し遂げるために、自身は区間賞獲得を狙う。

 特に、過去3年間担ってきた箱根駅伝の3区には強いこだわりがある。

「最後は3区で区間賞を取りたいですし、自分の記録は更新して終わりたいという思いがあります」

 箱根駅伝の3区といえば、前述のヴィンセントが1年時に59分25秒(ハーフマラソン換算58分34秒/※日本記録1時間0分00秒)という破格のタイムで走っている。インタビューの最後に、ヴィンセントの区間記録にどこまで迫りたいか、遠藤に聞いてみた。

「60分切りを達成できたら、もう思い残すことはないですね。大きな目標ですけど、少し、それを目指したいという思いもあります」

 遠藤がそんな走りを体現してみせたら、おそらく多くの陸上関係者は、遠藤に引退を撤回させようと躍起になるのではないだろうか……。

 ともあれ、完全燃焼するために、遠藤は最後の1年を全力で駆け抜けるつもりだ。

◎えんどう・だいち/1999年4月4日生まれ。宮城県出身。三本木中→古川工高→帝京大。自己記録5000m13分55秒97、10000m28分34秒88。ハーフマラソン1時間3分53秒。1年時からチームの中心選手として活躍し、箱根駅伝3区では3年連続で出走して区間3位、2位、4位といずれも好走している。

文/福本ケイヤ

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