HOME 国内、特集

2025.05.04

NEWS
【高平慎士の視点】鵜澤飛羽「2本そろえた」価値と進化に見えた世界ファイナルへの可能性/静岡国際
【高平慎士の視点】鵜澤飛羽「2本そろえた」価値と進化に見えた世界ファイナルへの可能性/静岡国際

25年静岡国際を制した鵜澤飛羽(JAL)

5月3日に静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われた静岡国際。その男子200mで鵜澤飛羽(JAL)が予選で日本歴代4位タイ、東京世界選手権参加標準記録を突破する20秒13(+0.8)をマークし、決勝ではわずかに追い風参考となったが20秒05(+2.1)の好記録を叩き出した。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。

◇ ◇ ◇

鵜澤飛羽選手の走りは、本当に素晴らしいものでした。良い形で標準突破を果たせたこともそうですが、何よりも予選、決勝と約3時間の間にハイレベルの走りを2本そろえたことに価値があります。

昨年からの進化が随所に見られました。前半からそれほどストライドを広げていくタイプではありませんが、その中でも重心に乗せていく速さがアップしていますし、最後までその動きを維持できているように感じました。昨年までは「重心に乗せて行って、200mをうまく走り切る」というイメージでしたが、今回は「自ら動きを作りに行ってトップスピードを出し、それをコントロールできている」というもの。19秒台を出すために必要な要素、強さの一部を身につけたと言えるでしょう。ポテンシャルの髙さはもともと持っていましたが、それをしっかりと発揮できる段階に入ったのではないでしょうか。

特に決勝は、記録を狙いに行ったうえで、最後まで自分の走りを表現することができていました。これを緊張感、プレッシャーが高まる世界のセミファイナルで、自分よりも前半のスピードが高い選手たちを相手に同じように表現できれば、いよいよファイナルが見えてきます。そして、彼のメンタル的に、そのあたりは気にせずに行けるタイプではありますが、さらに自信を持って臨めるだけの材料を得られた2本になったはず。

今後、世界リレー、セイコーゴールデングランプリ、アジア選手権、日本選手権が控えています。19秒台を出さないと世界で戦えないのは間違いないですが、アジア選手権2連覇で“アジア王者”の称号を手にして強さを示すことも大切。東京世界選手権に向けてどのようなプランニングをしてくるのか、注目したいと思います。

広告の下にコンテンツが続きます

2位の飯塚翔太選手(ミズノ)は、予選(2着/20秒73、-0.2)から決勝(20秒49)で立て直したのはさすがと言えます。地元・静岡のファンが毎年素晴らしい雰囲気を作ってくれますが、その中で「やることをしっかりとやって帰る」選手ですね。もちろん、20秒4台で終わる選手ではないので、これから日本選手権に向けてしっかりと仕上げてくるでしょう。今年34歳になる飯塚選手のすごさを、若い選手たちもぜひ刺激にしてほしいと思います。

予選で20秒41(+0.8)をマークした西裕大(MINT TOKYO)は決勝で3位、予選1着の上山紘輝選手(住友電工)が決勝は7位にとどまるなど、安定して同じ力を発揮できる選手の層が、まだまだ薄いように感じます。今回はケガで欠場した水久保漱至選手(宮崎県スポ協)ら、100mに負けず劣らず好メンバーがそろってはきています。ただ、強さの点で飯塚選手を明確に上回っているのは、鵜澤選手しかいない状況と言わざるを得ません。

日本選手権に向けて、鵜澤選手に「しっかりと合わせないとまずい」と思われるような仕上げを期待したいと思います。

◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

5月3日に静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われた静岡国際。その男子200mで鵜澤飛羽(JAL)が予選で日本歴代4位タイ、東京世界選手権参加標準記録を突破する20秒13(+0.8)をマークし、決勝ではわずかに追い風参考となったが20秒05(+2.1)の好記録を叩き出した。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。 ◇ ◇ ◇ 鵜澤飛羽選手の走りは、本当に素晴らしいものでした。良い形で標準突破を果たせたこともそうですが、何よりも予選、決勝と約3時間の間にハイレベルの走りを2本そろえたことに価値があります。 昨年からの進化が随所に見られました。前半からそれほどストライドを広げていくタイプではありませんが、その中でも重心に乗せていく速さがアップしていますし、最後までその動きを維持できているように感じました。昨年までは「重心に乗せて行って、200mをうまく走り切る」というイメージでしたが、今回は「自ら動きを作りに行ってトップスピードを出し、それをコントロールできている」というもの。19秒台を出すために必要な要素、強さの一部を身につけたと言えるでしょう。ポテンシャルの髙さはもともと持っていましたが、それをしっかりと発揮できる段階に入ったのではないでしょうか。 特に決勝は、記録を狙いに行ったうえで、最後まで自分の走りを表現することができていました。これを緊張感、プレッシャーが高まる世界のセミファイナルで、自分よりも前半のスピードが高い選手たちを相手に同じように表現できれば、いよいよファイナルが見えてきます。そして、彼のメンタル的に、そのあたりは気にせずに行けるタイプではありますが、さらに自信を持って臨めるだけの材料を得られた2本になったはず。 今後、世界リレー、セイコーゴールデングランプリ、アジア選手権、日本選手権が控えています。19秒台を出さないと世界で戦えないのは間違いないですが、アジア選手権2連覇で“アジア王者”の称号を手にして強さを示すことも大切。東京世界選手権に向けてどのようなプランニングをしてくるのか、注目したいと思います。 2位の飯塚翔太選手(ミズノ)は、予選(2着/20秒73、-0.2)から決勝(20秒49)で立て直したのはさすがと言えます。地元・静岡のファンが毎年素晴らしい雰囲気を作ってくれますが、その中で「やることをしっかりとやって帰る」選手ですね。もちろん、20秒4台で終わる選手ではないので、これから日本選手権に向けてしっかりと仕上げてくるでしょう。今年34歳になる飯塚選手のすごさを、若い選手たちもぜひ刺激にしてほしいと思います。 予選で20秒41(+0.8)をマークした西裕大(MINT TOKYO)は決勝で3位、予選1着の上山紘輝選手(住友電工)が決勝は7位にとどまるなど、安定して同じ力を発揮できる選手の層が、まだまだ薄いように感じます。今回はケガで欠場した水久保漱至選手(宮崎県スポ協)ら、100mに負けず劣らず好メンバーがそろってはきています。ただ、強さの点で飯塚選手を明確に上回っているのは、鵜澤選手しかいない状況と言わざるを得ません。 日本選手権に向けて、鵜澤選手に「しっかりと合わせないとまずい」と思われるような仕上げを期待したいと思います。 ◎高平慎士(たかひら・しんじ) 富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.05.04

DL連続2位の村竹ラシッドが帰国 次戦セイコーゴールデンGPに向け「国立競技場で12秒台を」

男子110mハードル日本記録保持者の村竹ラシッド(JAL)が、5月3日に行われた世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)第2戦・柯橋大会(中国)の終えた翌日に帰国した。 昨年のパリ五輪5位の村竹。今季初戦だったDL厦門(4 […]

NEWS 女子4×100mR・甲南大が44秒51の学生タイ!立命大は学生歴代5位44秒75、予選からハイレベル/関西インカレ

2025.05.04

女子4×100mR・甲南大が44秒51の学生タイ!立命大は学生歴代5位44秒75、予選からハイレベル/関西インカレ

◇第102回関西インカレ(T&Fの部/5月4日~7日、大阪・ヤンマースタジアム長居、ヤンマーフィールド長居)1日目 関西インカレ(T&Fの部)1日目が行われ、女子4×100mリレー予選で甲南大が44秒51の学生タイ記録を […]

NEWS 44歳・末續慎吾が100m10秒86! 24年シーズンベストを上回り年齢別日本最高記録更新

2025.05.04

44歳・末續慎吾が100m10秒86! 24年シーズンベストを上回り年齢別日本最高記録更新

5月4日、第1回SANOスプリントが栃木県佐野市の清酒開華スタジアムで行われ、男子100mに200m日本記録保持者で北京五輪4×100mリレー銀メダリストの末續慎吾(EAGLERUN)が出場し、10秒86(+1.1)をマ […]

NEWS 【高平慎士の視点】鵜澤飛羽「2本そろえた」価値と進化に見えた世界ファイナルへの可能性/静岡国際

2025.05.04

【高平慎士の視点】鵜澤飛羽「2本そろえた」価値と進化に見えた世界ファイナルへの可能性/静岡国際

5月3日に静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われた静岡国際。その男子200mで鵜澤飛羽(JAL)が予選で日本歴代4位タイ、東京世界選手権参加標準記録を突破する20秒13(+0.8)をマークし、決勝ではわずかに追 […]

NEWS 110mHティンチが世界歴代4位タイ12秒87!デュプランティス、ワルホルム、マフチフが貫録2連勝/DL柯橋

2025.05.04

110mHティンチが世界歴代4位タイ12秒87!デュプランティス、ワルホルム、マフチフが貫録2連勝/DL柯橋

5月3日、中国・上海/柯橋でダイヤモンドリーグ(DL)第2戦が開催され、男子110mハードルではC.ティンチ(米国)が世界歴代4位タイ、今季世界最高の12秒87(+0.6)で優勝した。 24最のティンチは4月26日のDL […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top