HOME 箱根駅伝

2025.01.04

鉄紺の意地!東洋大が20年連続シード「進化しなければならない」/箱根駅伝
鉄紺の意地!東洋大が20年連続シード「進化しなければならない」/箱根駅伝

25年箱根駅伝で総合9位だった東洋大(8区網本佳悟から9区吉田周へのタスキリレー)

◇第101回箱根駅伝(東京・大手町~神奈川・箱根町往復/10区間217.1km)

箱根駅伝が2日間にわたって行われ、青学大が2年連続の総合優勝を果たした。東洋大は総合9位で継続中では最長となる20年連続シード権を死守した。

広告の下にコンテンツが続きます

酒井俊幸監督は「伝統をつなぐプレッシャーが学生たちにはありました。安堵感はあります」と語る一方、「東洋大も進化をしなければならない」と激戦を終えた直後も冷静にチームの未来を見据えた。

往路は当初の区間エントリーから1区・石田洸介(4年)、2区・梅崎蓮(4年)が外れた。1区の小林亮太(4年)は2位集団を序盤から引っ張るなど良い流れでタスキをつないだが、続く緒方澪那斗(3年)は区間最下位に沈んで19位。苦しい展開に陥った。

しかし、3区の迎暖人(1年)が流れを変える。11月の日体大記録会10000mや上尾ハーフで見せた積極的な走りを初の箱根路で披露。大学最高記録に迫る1時間2分40秒(区間8位)で16位に順位を上げた。

これに奮起したのが4区で7人抜きを演じた岸本遼太郎(3年)。「迎が初めての箱根とは思えない強気の走りで、自分がやらないわけにはいかない」。エンジンがかかった岸本は、プラン通り2分55秒で押すと、見える位置に他校がいた状況もあり、区間3位(1時間1分15秒)で9位にジャンプアップ。松井海斗(1年)に代わり5区を任された宮崎優(1年)も順位を守った。

広告の下にコンテンツが続きます

復路は熾烈なシード権争いとなる。3年連続の6区となった西村真周(3年)は58分56秒の区間9位で順位を守ったものの、続く内堀勇(1年)が順位を12位まで下げてしまう。

ここから意地を見せたのが8区の網本佳悟(3年)。「まずはシード権内にタスキを持っていこうと思った」。18.4kmまで個人トップのタイムで走り、最終的には区間2位(1時間4分18秒)。「4秒差で区間賞を逃したのは悔しかった」というものの、9位に順位を押し上げた。

東京国際大、帝京大、順大との激しい“四つ巴”の決戦。2年連続9区を担った吉田周(3年)が苦しい表情を見せながらもさらに8位に上げ、いよいよ命運はアンカーの薄根大河(2年)に託される。8位集団のなか、1校だけがシード落ちする状況が6km以降続いた。

酒井監督は各校にシード権への執着心を感じたという。「薄根にはわざと1kmだけ速く入らせましたが、3校がすぐ追いついてきました」。帝京大の小林咲冴(1年)が特に意欲的で、「私が薄根へ『仕掛けなきゃ』と声掛けすると、1年生の彼が一番に反応しました」と酒井監督が明かす。牽制しあうことで後ろにいた日体大が迫ることも考えられる状況だった。

薄根は「5km付近ですでにきつく、シードを落とすのではと頭によぎっていました」。しかし、走れなかった選手や4年生への思いが、本来ラスト勝負が苦手な薄根の背中を押した。「意地だけは負けない」。フィニッシュ後に4年生たちの「ありがとう」という言葉で「ずっと怖かった」と涙を浮かべた薄根は、恐怖心からようやく解放された。

酒井監督は苦しみながらも結果を残した選手たちを労った。選手たちは安堵しながらも「今年走ったメンバーが多く残るので、東洋の定位置と言われる3番以内、その先の優勝争いを目指したい」と薄根。岸本も「ここでシード権争いをしていていいチームではない」と力強い。来季はさらに強固なチームとなる予感を感じさせる箱根路となった。

文/荒井寛太

◇第101回箱根駅伝(東京・大手町~神奈川・箱根町往復/10区間217.1km) 箱根駅伝が2日間にわたって行われ、青学大が2年連続の総合優勝を果たした。東洋大は総合9位で継続中では最長となる20年連続シード権を死守した。 酒井俊幸監督は「伝統をつなぐプレッシャーが学生たちにはありました。安堵感はあります」と語る一方、「東洋大も進化をしなければならない」と激戦を終えた直後も冷静にチームの未来を見据えた。 往路は当初の区間エントリーから1区・石田洸介(4年)、2区・梅崎蓮(4年)が外れた。1区の小林亮太(4年)は2位集団を序盤から引っ張るなど良い流れでタスキをつないだが、続く緒方澪那斗(3年)は区間最下位に沈んで19位。苦しい展開に陥った。 しかし、3区の迎暖人(1年)が流れを変える。11月の日体大記録会10000mや上尾ハーフで見せた積極的な走りを初の箱根路で披露。大学最高記録に迫る1時間2分40秒(区間8位)で16位に順位を上げた。 これに奮起したのが4区で7人抜きを演じた岸本遼太郎(3年)。「迎が初めての箱根とは思えない強気の走りで、自分がやらないわけにはいかない」。エンジンがかかった岸本は、プラン通り2分55秒で押すと、見える位置に他校がいた状況もあり、区間3位(1時間1分15秒)で9位にジャンプアップ。松井海斗(1年)に代わり5区を任された宮崎優(1年)も順位を守った。 復路は熾烈なシード権争いとなる。3年連続の6区となった西村真周(3年)は58分56秒の区間9位で順位を守ったものの、続く内堀勇(1年)が順位を12位まで下げてしまう。 ここから意地を見せたのが8区の網本佳悟(3年)。「まずはシード権内にタスキを持っていこうと思った」。18.4kmまで個人トップのタイムで走り、最終的には区間2位(1時間4分18秒)。「4秒差で区間賞を逃したのは悔しかった」というものの、9位に順位を押し上げた。 東京国際大、帝京大、順大との激しい“四つ巴”の決戦。2年連続9区を担った吉田周(3年)が苦しい表情を見せながらもさらに8位に上げ、いよいよ命運はアンカーの薄根大河(2年)に託される。8位集団のなか、1校だけがシード落ちする状況が6km以降続いた。 酒井監督は各校にシード権への執着心を感じたという。「薄根にはわざと1kmだけ速く入らせましたが、3校がすぐ追いついてきました」。帝京大の小林咲冴(1年)が特に意欲的で、「私が薄根へ『仕掛けなきゃ』と声掛けすると、1年生の彼が一番に反応しました」と酒井監督が明かす。牽制しあうことで後ろにいた日体大が迫ることも考えられる状況だった。 薄根は「5km付近ですでにきつく、シードを落とすのではと頭によぎっていました」。しかし、走れなかった選手や4年生への思いが、本来ラスト勝負が苦手な薄根の背中を押した。「意地だけは負けない」。フィニッシュ後に4年生たちの「ありがとう」という言葉で「ずっと怖かった」と涙を浮かべた薄根は、恐怖心からようやく解放された。 酒井監督は苦しみながらも結果を残した選手たちを労った。選手たちは安堵しながらも「今年走ったメンバーが多く残るので、東洋の定位置と言われる3番以内、その先の優勝争いを目指したい」と薄根。岸本も「ここでシード権争いをしていていいチームではない」と力強い。来季はさらに強固なチームとなる予感を感じさせる箱根路となった。 文/荒井寛太

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.22

佐久長聖1年の橋本蒼平が5000m14分30秒50でトップ/SGH文スポ チャレンジ

12月23日、滋賀県守山市のSGホールディングスグループ陸上競技場で令和7年度SGH文スポ チャレンジ競技会が開催された。 同大会は主に前日の全国高校駅伝(男子)に出場した学校のうち、出走できなかった選手たちを中心に参加 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

2025.12.22

箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 「チームのために走る」 20年連続で箱根駅伝のシード権を守り続けてい […]

NEWS 箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

2025.12.22

箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 10月の箱根駅伝予選会で東農大は6位を占め、2 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

2025.12.22

箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 この1年で帝京大の長距離種目の歴代記録がガラリ […]

NEWS 大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

2025.12.22

大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

第6回全国大学対校男女混合駅伝の大会要項が公開され、大会アンバサダーに元乃木坂46の堀未央奈さんが選ばれた。 堀さんは乃木坂46の2期生として加入し、『バレッタ』でセンターを務めるなど人気メンバーとして活躍。21年3月に […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top