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2024.03.15

編集部コラム「偉大な日本記録」
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第237回「偉大な日本記録」(大久保雅文)

14日に発売となった月陸4月号。今年も別冊付録として「記録年鑑2023」がついてきます。

記録年鑑は前年のランキングをまとめたもので、世界50傑、日本100傑、学生50傑、高校100傑、中学100傑を収録。また、2023年に行われた主要大会の成績などを1冊に収めています。

この記録年鑑は買ったその場でランキングを確認するのもいいのですが、年を経るごとにさらに記録の価値も深まり、「あの日本代表選手の中学時代の記録はどうだったか」、「箱根駅伝でライバルだった選手は、中学時代は同じチームで全国大会にでていた」など数年後に新たな発見もあるもので、私たち編集部にとっても欠かせない資料となっています。

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また、数年前からは日本記録変遷も掲載。100年以上前の記録なども知ることができます。ちなみに、日本で初めて男子100mの日本記録として認められたのは1911年に三島弥彦が樹立した12秒0。2023年においては女子中学生の25位に相当(電気計時換算)に過ぎません。

その後、さまざまな種目で多くの日本記録が誕生していますが、今回は記録年鑑に掲載されている記録の中から、偉大な日本記録を紹介したいと思います。(文中敬称略)

男子円盤投 川崎清貴 60m22

1979年に樹立された記録。川崎は1974年に初めて日本記録(52m60)を樹立しましたが、この記録は1964年以来10年ぶりの記録更新で、円盤投界の止まっていた時計の針を動かすと、その後足掛け5年で60mにまで到達しました。当時としては破格の記録で、1979年の日本ランキングでは2位に7m以上の大差をつけました。その後、この記録は長く日本記録として君臨しつづけ、川崎の記録が更新されるのは38年後の2017年のことでした(堤雄司/60m54)。

女子三段跳 花岡麻帆 14m04

女子で最も長く日本記録として残り続けていたのがこの記録です。1999年の日本選手権で、花岡は自身の持っていた日本記録(13m69)を2回目に3cm更新。すると5回目に14m04と日本人初の14mジャンプをマークしたのです。こちらは、昨年に森本麻里子(現・オリコ)が14m19を跳ぶまで24年間も日本記録をして残りました。

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男子走幅跳 南部忠平 7m98

1932年のロサンゼルス五輪の三段跳で金メダル、走幅跳で銅メダルを獲得した南部が1931年に樹立した記録で、世界記録でもありました。この記録は今でも日本歴代30位にランクインしており、2023年でも9位相当。当時の走路は反発係数の低い土のグラウンドで出したもので、シューズなどの性能なども考慮すれば、より価値の高い記録と言えるでしょう。この記録が誕生してから今年で93年となりますが、100年目となる2031年には日本歴代で何位になっているのかも気になるところです。

男子20km競歩 鈴木雄介 1時間16分36秒

8年前の全日本競歩能美大会で出されたのがこの記録。五輪実施種目では日本で唯一の世界記録でもあります。5km19分04秒、10kmを38分06秒と驚異的なペースで歩を進め、後半も5km19分前半のラップタイムを維持し、大記録につなげました。これまで1時間16分台を出したのは鈴木と、S.モロゾフ(ロシア/のちにドーピング違反)、今年2月の日本選手権で1時間16分51秒を出した池田向希(旭化成)、王凱華(中国)のわずか4人しかいません。

男子ハンマー投 室伏広治 84m86

アテネ五輪の金メダルをはじめ、多くの世界大会で活躍していた室伏が2003年に樹立した記録は、今も日本記録として残ります。2023年末では世界歴代4位にランクしていますが、3位のV.デヴャトフスキー(ベラルーシ)は後にドーピング違反で出場停止となり、世界1位、2位として残る記録も1980年代のソ連選手が出したもので、一部では薬物使用の疑いがあるグレーな記録とも言われています。それゆえ、記録愛好者の中には室伏の記録が実質的な世界記録として見ている人もいるそうです。いずれにせよ、偉大な日本記録であることには変わりなく、今後しばらくは日本記録として残り続けていく可能性が高い記録です。

このように、陸上の記録は月日を重ねるにつれて価値が変化し、その評価も変わっていくものでもあります。是非、この4月号を手に取っていただき、記録年鑑は永久保存版として残していただければと思っています。

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大久保雅文(おおくぼ・まさふみ)
月刊陸上競技編集部
1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)

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第237回「偉大な日本記録」(大久保雅文)

14日に発売となった月陸4月号。今年も別冊付録として「記録年鑑2023」がついてきます。 記録年鑑は前年のランキングをまとめたもので、世界50傑、日本100傑、学生50傑、高校100傑、中学100傑を収録。また、2023年に行われた主要大会の成績などを1冊に収めています。 この記録年鑑は買ったその場でランキングを確認するのもいいのですが、年を経るごとにさらに記録の価値も深まり、「あの日本代表選手の中学時代の記録はどうだったか」、「箱根駅伝でライバルだった選手は、中学時代は同じチームで全国大会にでていた」など数年後に新たな発見もあるもので、私たち編集部にとっても欠かせない資料となっています。 また、数年前からは日本記録変遷も掲載。100年以上前の記録なども知ることができます。ちなみに、日本で初めて男子100mの日本記録として認められたのは1911年に三島弥彦が樹立した12秒0。2023年においては女子中学生の25位に相当(電気計時換算)に過ぎません。 その後、さまざまな種目で多くの日本記録が誕生していますが、今回は記録年鑑に掲載されている記録の中から、偉大な日本記録を紹介したいと思います。(文中敬称略)

男子円盤投 川崎清貴 60m22

1979年に樹立された記録。川崎は1974年に初めて日本記録(52m60)を樹立しましたが、この記録は1964年以来10年ぶりの記録更新で、円盤投界の止まっていた時計の針を動かすと、その後足掛け5年で60mにまで到達しました。当時としては破格の記録で、1979年の日本ランキングでは2位に7m以上の大差をつけました。その後、この記録は長く日本記録として君臨しつづけ、川崎の記録が更新されるのは38年後の2017年のことでした(堤雄司/60m54)。

女子三段跳 花岡麻帆 14m04

女子で最も長く日本記録として残り続けていたのがこの記録です。1999年の日本選手権で、花岡は自身の持っていた日本記録(13m69)を2回目に3cm更新。すると5回目に14m04と日本人初の14mジャンプをマークしたのです。こちらは、昨年に森本麻里子(現・オリコ)が14m19を跳ぶまで24年間も日本記録をして残りました。

男子走幅跳 南部忠平 7m98

1932年のロサンゼルス五輪の三段跳で金メダル、走幅跳で銅メダルを獲得した南部が1931年に樹立した記録で、世界記録でもありました。この記録は今でも日本歴代30位にランクインしており、2023年でも9位相当。当時の走路は反発係数の低い土のグラウンドで出したもので、シューズなどの性能なども考慮すれば、より価値の高い記録と言えるでしょう。この記録が誕生してから今年で93年となりますが、100年目となる2031年には日本歴代で何位になっているのかも気になるところです。

男子20km競歩 鈴木雄介 1時間16分36秒

8年前の全日本競歩能美大会で出されたのがこの記録。五輪実施種目では日本で唯一の世界記録でもあります。5km19分04秒、10kmを38分06秒と驚異的なペースで歩を進め、後半も5km19分前半のラップタイムを維持し、大記録につなげました。これまで1時間16分台を出したのは鈴木と、S.モロゾフ(ロシア/のちにドーピング違反)、今年2月の日本選手権で1時間16分51秒を出した池田向希(旭化成)、王凱華(中国)のわずか4人しかいません。

男子ハンマー投 室伏広治 84m86

アテネ五輪の金メダルをはじめ、多くの世界大会で活躍していた室伏が2003年に樹立した記録は、今も日本記録として残ります。2023年末では世界歴代4位にランクしていますが、3位のV.デヴャトフスキー(ベラルーシ)は後にドーピング違反で出場停止となり、世界1位、2位として残る記録も1980年代のソ連選手が出したもので、一部では薬物使用の疑いがあるグレーな記録とも言われています。それゆえ、記録愛好者の中には室伏の記録が実質的な世界記録として見ている人もいるそうです。いずれにせよ、偉大な日本記録であることには変わりなく、今後しばらくは日本記録として残り続けていく可能性が高い記録です。 このように、陸上の記録は月日を重ねるにつれて価値が変化し、その評価も変わっていくものでもあります。是非、この4月号を手に取っていただき、記録年鑑は永久保存版として残していただければと思っています。
大久保雅文(おおくぼ・まさふみ) 月刊陸上競技編集部 1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)
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