2024.01.19
男子100m日本記録(9秒95)保持者の山縣亮太(セイコー)がオンラインで会見を開き、昨シーズンの振り返りと冬季練習の現状、そしてパリ五輪イヤーへの思いを語った。
「例年の冬よりもスピードを保ちながら質の高い練習を継続できています。状態は悪くありません」と、順調をアピールする山縣。21年に日本記録を樹立して東京五輪に出場し、その後はパリ五輪を見据えて長く苦しんできた右膝の手術した。22年は試合に出場せず、昨年、実戦復帰している。
「22、23年は思うように走れなかった」と言うも、最終戦となった鹿児島特別国体ではシーズンベストの10秒12まで記録を上げた。「その場でできるレースという意味では満足しています」と言い、「良い形で終われたので、この冬は流れを切らさずに冬季を積んできました」。
手術後は、高野大樹コーチらと「一から作り上げてきた」。この2年は「土台作り」がテーマで、身体作り、特に股関節の使い方や左右差などを見直し、エクササイズやフィジカルのレベルを上げてきたという。それに伴って走りも変化し、「技術改革」にも注力。もちろんプラス面ばかりではなく、「弾む感覚がない」と感じるなど、苦労も多かったと振り返る。無理にフォームを変えたのではなく、「身体の使い方が変化したからこそ、フォームやスタートからの飛び出しなど動きの変化につながった」。
ようやく「2021年以前の自分の感覚、技術と新しく取り組んできた部分がミックスされてきたい」と手応えをつかんでいる。マーク走でも「広めのストライドを楽に出せるようになった」と言い、スプリント練習でも「スピード感は上がっていて、昨年のシーズン中くらい」。さらに、ウエイトトレーニングでも「クリーンが120kg挙がるなど、9秒95を出した時と同じくらいまで戻ってきた」とも。
ただ、見据えているのは「実力をつけること」。自身が出した9秒95が「実力だとは思っていない」とし、この冬のタイム設定でも、9秒台をしっかり「実力」にするためのものにしてきた。そうしたなか、膝やケガとの向き合い方も「今のところ問題はない」が、「自分たちが求めるレベルまで練習をこなさないといけない。常にコンディションには気をつけていきたい」。世界のファイナルを目指すためには、そのギリギリの戦いを日々こなしていかなくてはならない。
ただ、山縣はその域まで戻ってきた。
1月上旬から中旬まで沖縄で合宿し、この後は豪州など3月まで合宿を重ねていく予定。2月25日の鹿児島大崎での「2024 Japan Athlete Games in Osaki」の室内100mが2024年の“初戦”になりそうで、その後は「試合を挟みながら身体の状態を上げていきたい」とし、「3月くらいには納得のいく記録が出せれば」。パリ五輪の参加標準記録10秒00の突破、そしてポイントを重ねるためにも、早めに結果を求めていく。
「東京五輪が終わってから手術もしました。パリ五輪へ再スタートとしてイチからやって、いろいろな人が自分に関わってくれました。自分たちがやってきた取り組みを結果として残したい。それが一番のモチベーションです」
過去3度の五輪を経験してきた山縣も今年6月で32歳になる。「世界と戦うことを考えたら9秒台がスタートライン。そこに対する自信はいつもよりあります。僕は(日本記録更新まで)行けると思っています。2024年は『良かった』とスッキリできるシーズンにしたいです」。
不屈の闘志で蘇ってきた山縣は、4度目のオリンピックで悲願のファイナルに向かって一歩ずつ進んでいく。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2025.05.18
七種競技・田中友梨が今季2度目の自己新5678点 砲丸投、800mでもベスト更新/中京大土曜競技会
5月17日、18日の両日、愛知県豊田市の中京大競技場で中京大土曜競技会が行われ、女子七種競技で田中友梨(スズキ)が5678点をマーク。3月に出したばかりの5648点の自己記録を30点更新した。 1種目めの100mハードル […]
2025.05.18
女子やり投の2選手に再試技「計測結果に疑義」/セイコーGGP
◇セイコーゴールデングランプリ2025(5月18日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが5月18日に行われ、女子やり投は北口榛花(JAL)が64m16のシーズ […]
2025.05.18
ウクライナの妖精マフチフ 1m96で世界記録保持者の貫禄V 2m00はパス「身体の準備ができていなかった」/セイコーGGP
◇セイコーゴールデングランプリ2025(5月18日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが5月18日に行われ、女子走高跳は世界記録保持者のヤロスラワ・マフチフ( […]
2025.05.18
400m・佐藤風雅が今季ベスト45秒23で2位「加速を生かせたら0.5秒縮められる」/セイコーGGP
◇セイコーゴールデングランプリ(5月18日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、男子400mはパリ五輪4×400mリレー6位入賞メンバーの佐藤風雅(ミ […]
2025.05.18
男子35km競歩でスタノが世界新! 2時間20分43秒と従来記録を57秒更新/欧州競歩チーム選手権
5月18日、チェコ・ポジェブラディで世界陸連(WA)競歩ツアー・ゴールドの欧州競歩チーム選手権が行われ、男子35kmでM.スタノ(イタリア)が2時間20分43秒の世界新記録を打ち立てて優勝した。従来の世界記録はE.ダンフ […]
Latest Issue
最新号

2025年6月号 (5月14日発売)
Road to TOKYO
Diamond League JAPANの挑戦
村竹ラシッド、三浦龍司が初戦で世界陸上内定
Road to EKIDEN Season 25-26
学生長距離最新戦力分析