2023.04.30
チームの3冠達成にも「どこか他人事だった」
小学校まで姉の影響で始めたバドミントンに取り組んだ拓海少年は、中学校で陸上競技と出合う。中学3年間は全国大会とは無縁だったものの、花咲徳栄高で急成長。3年時にインターハイ2種目で決勝に進出(1500m10位、5000m18位)すると、1月の全国都道府県対抗駅伝では4区区間賞(区間タイ)の走りで埼玉県チームの準優勝に貢献している。
唐澤は高校時代の印象に残ったレースにこの2大会を挙げ、なかでも都道府県駅伝は「あこがれの設楽悠太さんと同じチームで走れてうれしかった」と当時を振り返る。

2020年全国都道府県対抗男子駅伝4区の唐澤拓海(左)から5区の佐藤快成へ
高校卒業後は、埼玉県内でしのぎを削った白鳥哲汰(埼玉栄高出身)や、北関東大会で争った赤津勇進(茨城・日立工高出身)らと同じ駒大へ。1年目はケガの影響で大きな実績を残せなかったものの、2年目には前述のとおり、その隠れたポテンシャルを開花させる。
「27分台はいつでも出せる」
そう手応えを感じていた唐澤だが、昨年3月負った左膝の故障をきっかけに、歯車が徐々に狂い始める。
レースの予定を入れていたことから焦って練習を再開し、「治っては痛め、治っては痛め、の繰り返しだった」。
結局レースには復帰できないままチームを離脱し、しばらくまったく走らない時期を過ごした。
そんな中で、チームは快進撃を続ける。10月の出雲、11月の全日本、1月の箱根と、学生駅伝3冠を達成したのだ。本来の実力を考えれば、その中心にいたはずの唐澤の姿はどこにもなく、「もちろんうれしかったですが、どこか他人事のような感覚でした」と、当時の心境を振り返る。
「悔しい」という感情も湧き起こらないほど、自身の中で気持ちが競技に対して向いていなかった。
1年3ヵ月ぶりのレース復帰
「次世代エース候補」と呼ばれた男が、1年ぶり3ヵ月ぶりに帰ってきた――。 4月8日の世田谷競技会男子5000m8組。13分50秒56で1着を飾った駒大の唐澤拓海(4年)だ。唐澤は24日の日体大長距離競技会の中で開催された「NITTAIDAI Challenge Games」10000mでも自己新の27分57秒52で走破。“完全復活”を印象づけた。 2年時の箱根駅伝以来のレース。「不安もありましたが、日体大では練習を積めていない中でも27分台を視野に入れていました。無事に走れてホッとしています」と唐澤は振り返る。 ここまでの道のりは決して平たんではなかった。 2年生になった2021年4月の記録会10000mで28分02秒52を出して注目を集めると、翌月の関東インカレ(2部)では5000mと10000mで日本人トップの3位。5000mではチームメイトである鈴木芽吹との壮絶なスパート合戦を制した。 その後はケガを繰り返しながらも箱根駅伝では2年時に1区2位と好走。1学年先輩である田澤廉(現・トヨタ自動車)の区間賞をアシストした。 この時の唐澤は鈴木と並び、チーム内で田澤に次ぐ準エース格という位置づけだった。実際に、鈴木は昨年3月の取材で「一番怖い存在は唐澤」と話している。 唐澤も当時、「ケガさえ気をつければ27分台はいつでも出せる」と話していた。 その実現が1年以上も先になってしまうとは、チーム関係者、ファン、そして唐澤自身も思いもしなかっただろう――。チームの3冠達成にも「どこか他人事だった」
小学校まで姉の影響で始めたバドミントンに取り組んだ拓海少年は、中学校で陸上競技と出合う。中学3年間は全国大会とは無縁だったものの、花咲徳栄高で急成長。3年時にインターハイ2種目で決勝に進出(1500m10位、5000m18位)すると、1月の全国都道府県対抗駅伝では4区区間賞(区間タイ)の走りで埼玉県チームの準優勝に貢献している。 唐澤は高校時代の印象に残ったレースにこの2大会を挙げ、なかでも都道府県駅伝は「あこがれの設楽悠太さんと同じチームで走れてうれしかった」と当時を振り返る。 [caption id="attachment_100477" align="alignnone" width="800"]
2020年全国都道府県対抗男子駅伝4区の唐澤拓海(左)から5区の佐藤快成へ[/caption]
高校卒業後は、埼玉県内でしのぎを削った白鳥哲汰(埼玉栄高出身)や、北関東大会で争った赤津勇進(茨城・日立工高出身)らと同じ駒大へ。1年目はケガの影響で大きな実績を残せなかったものの、2年目には前述のとおり、その隠れたポテンシャルを開花させる。
「27分台はいつでも出せる」
そう手応えを感じていた唐澤だが、昨年3月負った左膝の故障をきっかけに、歯車が徐々に狂い始める。
レースの予定を入れていたことから焦って練習を再開し、「治っては痛め、治っては痛め、の繰り返しだった」。
結局レースには復帰できないままチームを離脱し、しばらくまったく走らない時期を過ごした。
そんな中で、チームは快進撃を続ける。10月の出雲、11月の全日本、1月の箱根と、学生駅伝3冠を達成したのだ。本来の実力を考えれば、その中心にいたはずの唐澤の姿はどこにもなく、「もちろんうれしかったですが、どこか他人事のような感覚でした」と、当時の心境を振り返る。
「悔しい」という感情も湧き起こらないほど、自身の中で気持ちが競技に対して向いていなかった。
「チームに貢献したい」
ケガからの復活は長引いたものの、唐澤は今年2月からジョグを再開した。3月下旬からは強度の高いポイント練習にも加わり、Bチームではあるものの、出されたメニューは一度も外さずに来ているという。 1年3ヵ月ぶりのレースだった4月8日の世田谷競技会を経て、23日の10000mへ。レース中は大八木弘明総監督から「8000m以降で我慢すれば27分台出せるぞ!」という言葉をもらい、奮起した。 「2年前の自己ベストの時はしっかり練習ができていたんです。今回は上体的にも70%くらいでしたし、なんで27分台が出せたのか自分でもわかっていません。まぐれだと思います」 そう謙遜するが、レース後に大八木総監督から「よくやった」と言葉をかけられたことについては「うれしかったです」と素直に喜んだ。 3年目のシーズンを棒に振り、チームに貢献できなかったことについて「みんなには迷惑をかけて申し訳ないという気持ちしかありません。これから結果で恩返ししていきます」と頼もしい言葉が返ってきた。 今後は5月中旬の関東インカレ2部10000mに出場する予定。「今回も日本人トップには立ちたいですね。その後は5000mの自己ベストを更新して、もう一度10000mを走る機会があれば27分40秒台を目指します」と青写真を描いている。 ポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。次期エース候補と言われた男が、空白の1年間を取り戻しに行く。 [caption id="attachment_100478" align="alignnone" width="800"]
2022年箱根駅伝1区で2位と好スタートを切った唐澤拓海(左)から2区の田澤廉へのタスキ渡し[/caption]
◎からさわ・たくみ/2001年10月11日生まれ。埼玉県草加市出身。青柳中→花咲徳栄高→駒大。自己記録5000m13分32秒58、10000m27分57秒52、ハーフマラソン1時間2分45秒。高校3年時の全国都道府県対抗男子駅伝4区で区間賞を獲得してブレイク。駒大では2年時に台頭し、関東インカレ5000m・10000mで日本人トップ(3位)に輝くと、箱根駅伝では1区2位と好走した。3年時はケガなどで1試合も出場できなかったが、4年目に突入した今年4月に10000mの自己記録を2年ぶりに更新した。
文/松永貴允 RECOMMENDED おすすめの記事
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