2023.01.24
2023年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。
花の2区で区間8位と好走
「実業団でトラック重視の練習を積めば、日本代表クラスにもなれる選手だと思います」
かつて10000mで2003年の世界選手権に出場した法大の坪田智夫駅伝監督は、エースの内田隼太(4年)をこう評する。
法大は箱根駅伝で往路8位、復路3位、総合7位でフィニッシュ。チームとして目標にしていた5位には届かなかったが、総合タイム10時間55分28秒と大学最高を更新した。
オレンジエクスプレス快走の原動力の1人となったのが、2区を走った駅伝主将の内田だ。
1区・松永伶(3年)は驚異のラストスパートを見せ、区間3位で鶴見中継所に飛び込んできた。2区には中大・吉居大和(3年)、青学大・近藤幸太郎(4年)、駒大・田澤廉(4年)、順大・三浦龍司(3年)ら学生長距離界を代表するランナーが集結。その中で内田は序盤から自分のペースを刻んだ。
順位こそ4つ落としたものの、区間8位の力走を見せ7位でタスキをつないだ。順大・三浦にはレース序盤で一度抜かれたが、10km付近で抜き返す粘りの走りだった。
内田は自身の走りをこう振り返る。
「2区はえぐいメンバーでした(苦笑)。突っ込み過ぎて最後大崩れすることが一番良くないので、脚の状態を考慮しながら前半抑えつつ、後半もしっかりと、23kmのレースを作ることができました。ベストのパフォーマンスが出せたと思います」
坪田監督も「内田は終始エースらしい積極的な走りをしてくれて、松永が作ったいい流れをそのまま次につないでくれました」とエースの働きを評価する。
レース当日、脚の状態は万全ではなかったという。11月までは好調だった。11月12日の日体大長距離競技会10000mでは法大歴代2位の28分16秒68をマーク。翌週の上尾シティハーフマラソンでも、練習の一環で臨みながら1時間2分13秒と自己ベストを更新していた。
「12月に入ってから良くない状態が続いていたんです。箱根にはなんとか間に合わせることができましたが、ベストな状態に合わせられなかったのは反省点です。本当は鎌田(航生/現・ヤクルト)さんの記録を破りたかったのですが……」
内田はそう言って悔しそうな表情を見せた。2区の法大記録は、前回大会で1学年先輩の鎌田が出した1時間7分11秒。この記録には42秒届かなかった。
それでも内田の1時間7分53秒は、法大の2区歴代2位の記録。坪田監督が現役時代に出した1時間8分13秒を上回り、法大では2人目となる1時間7分台を叩き出した。
駅伝で結果を残せる選手になりたい
尊敬する鎌田とは神奈川・法政二高で2年、法大で3年、計5年間一緒に走り、競い合ってきた仲だ。鎌田がそうだったように、内田も憧れの箱根路を大学1年から走るつもりでいた。
しかし、1、2年の間はケガに泣かされた。身体作りやコンディショニングなどへの意識を高めながら練習を積み、3年からは本来の力を発揮。箱根デビューを果たした前回は1区を走り、トップと1分18秒差の9位で2区の鎌田にタスキを渡している。そして最上級生になった今季は、駅伝主将としてチームを引っ張ってきた。
大学4年間を振り返り、内田はこう話す。
「正直、もっと戦えたなという思いはあります。1、2年のとき、ケガで走れなかったことに関しては悔しい気持ちが強くて……。でも、そこで得られたものもあったからこそ、それが最後に2区を任せてもらえたことにつながっていると思うんです。意味のある4年間を過ごすことができました」
悔しさは残ったが、それでも充実した4年間だったと内田は胸を張る。
卒業後は実業団の強豪・トヨタ自動車へ進む。チームメイトになる駒大・田澤とは、2区を走り終えた後に「一緒にニューイヤー駅伝を走って優勝しよう」と誓い合った。
冒頭の指揮官の言葉通り、トラックでの活躍も期待されるが「まずは駅伝で結果を残せる選手になりたい」と内田は意気込む。大学最後に残した悔しさは、次のステージで晴らすつもりだ。
内田隼太(うちだ・しゅんた:法大)/2000年9月19日生まれ。神奈川県横須賀市出身。法政二高卒。自己ベストは5000m13分39秒26、10000m28分16秒68、ハーフ1時間2分12秒。
文/小川誠志
花の2区で区間8位と好走
「実業団でトラック重視の練習を積めば、日本代表クラスにもなれる選手だと思います」 かつて10000mで2003年の世界選手権に出場した法大の坪田智夫駅伝監督は、エースの内田隼太(4年)をこう評する。 法大は箱根駅伝で往路8位、復路3位、総合7位でフィニッシュ。チームとして目標にしていた5位には届かなかったが、総合タイム10時間55分28秒と大学最高を更新した。 オレンジエクスプレス快走の原動力の1人となったのが、2区を走った駅伝主将の内田だ。 1区・松永伶(3年)は驚異のラストスパートを見せ、区間3位で鶴見中継所に飛び込んできた。2区には中大・吉居大和(3年)、青学大・近藤幸太郎(4年)、駒大・田澤廉(4年)、順大・三浦龍司(3年)ら学生長距離界を代表するランナーが集結。その中で内田は序盤から自分のペースを刻んだ。 順位こそ4つ落としたものの、区間8位の力走を見せ7位でタスキをつないだ。順大・三浦にはレース序盤で一度抜かれたが、10km付近で抜き返す粘りの走りだった。 内田は自身の走りをこう振り返る。 「2区はえぐいメンバーでした(苦笑)。突っ込み過ぎて最後大崩れすることが一番良くないので、脚の状態を考慮しながら前半抑えつつ、後半もしっかりと、23kmのレースを作ることができました。ベストのパフォーマンスが出せたと思います」 坪田監督も「内田は終始エースらしい積極的な走りをしてくれて、松永が作ったいい流れをそのまま次につないでくれました」とエースの働きを評価する。 レース当日、脚の状態は万全ではなかったという。11月までは好調だった。11月12日の日体大長距離競技会10000mでは法大歴代2位の28分16秒68をマーク。翌週の上尾シティハーフマラソンでも、練習の一環で臨みながら1時間2分13秒と自己ベストを更新していた。 「12月に入ってから良くない状態が続いていたんです。箱根にはなんとか間に合わせることができましたが、ベストな状態に合わせられなかったのは反省点です。本当は鎌田(航生/現・ヤクルト)さんの記録を破りたかったのですが……」 内田はそう言って悔しそうな表情を見せた。2区の法大記録は、前回大会で1学年先輩の鎌田が出した1時間7分11秒。この記録には42秒届かなかった。 それでも内田の1時間7分53秒は、法大の2区歴代2位の記録。坪田監督が現役時代に出した1時間8分13秒を上回り、法大では2人目となる1時間7分台を叩き出した。駅伝で結果を残せる選手になりたい
尊敬する鎌田とは神奈川・法政二高で2年、法大で3年、計5年間一緒に走り、競い合ってきた仲だ。鎌田がそうだったように、内田も憧れの箱根路を大学1年から走るつもりでいた。 しかし、1、2年の間はケガに泣かされた。身体作りやコンディショニングなどへの意識を高めながら練習を積み、3年からは本来の力を発揮。箱根デビューを果たした前回は1区を走り、トップと1分18秒差の9位で2区の鎌田にタスキを渡している。そして最上級生になった今季は、駅伝主将としてチームを引っ張ってきた。 大学4年間を振り返り、内田はこう話す。 「正直、もっと戦えたなという思いはあります。1、2年のとき、ケガで走れなかったことに関しては悔しい気持ちが強くて……。でも、そこで得られたものもあったからこそ、それが最後に2区を任せてもらえたことにつながっていると思うんです。意味のある4年間を過ごすことができました」 悔しさは残ったが、それでも充実した4年間だったと内田は胸を張る。 卒業後は実業団の強豪・トヨタ自動車へ進む。チームメイトになる駒大・田澤とは、2区を走り終えた後に「一緒にニューイヤー駅伝を走って優勝しよう」と誓い合った。 冒頭の指揮官の言葉通り、トラックでの活躍も期待されるが「まずは駅伝で結果を残せる選手になりたい」と内田は意気込む。大学最後に残した悔しさは、次のステージで晴らすつもりだ。 内田隼太(うちだ・しゅんた:法大)/2000年9月19日生まれ。神奈川県横須賀市出身。法政二高卒。自己ベストは5000m13分39秒26、10000m28分16秒68、ハーフ1時間2分12秒。 文/小川誠志
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