2022.08.11
学生長距離Close-upインタビュー
中野 翔太 Nakano Shota 中央大学3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。21回目は、7月13日のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会10000mで今季日本人学生最高の28分00秒86をマークした中野翔太(3年)に話を聞いた。
広島・世羅高時代は5000mでインターハイに出場し、全国高校駅伝は3年連続で出走。中大では2年目に頭角を現し、今年は5月の関東インカレ5000mで3位に入賞、7月には5000mと10000mで自己新を連発と勢いに乗る。これまで中大のエースといえば、1年時に5000mでU20日本記録を樹立した吉居大和(3年)が挙げられていたが、同期の中野が負けじと存在感を示している。
名門・世羅高で全国区の選手に
小学生時代、サッカー少年だった中野は、6年生の時に出場した地元のマラソン大会で「1番」をとったことで、陸上人生をスタートさせた。中学では長距離部員が1人しかいない陸上部に入学することになったが、3000mで8分57秒50をマークすると、広島市の駅伝大会1区で区間賞を獲得した。
「中学時代は1人で練習することが多かったのですが、ある程度の結果を出すことができました。高校では広島で1番強いチームに行って、仲間と一緒に練習がしたいと思ったんです」
中野は全国高校駅伝で9回(現10回)の優勝を誇る名門・世羅高に進学すると、「日頃から競い合いながら」着々と実力をつける。全国高校駅伝には3年連続で出場し、1年時は7区で区間18位。2年時は3区を区間5位と好走して、チームの準優勝に貢献した。3年時は3区を23分44秒(区間3位)で走破。後にチームメイトになる吉居大和(仙台育英高・宮城→中大)、インターハイ5000m6位の石井一希(八千代松陰高校・千葉→順大)らを抑えて、日本人トップの快走を見せている。
「一番の思い出は都大路3区で日本人トップになれたことですね。世羅には練習で使用する山コースがあるのですが、そこでかなり練習したので自信を持って走ることができました。ただ、全国高校駅伝で優勝できなかったのは悔しさが残っています」

5000mでも14分04秒05をマークした中野は、複数の有力校から熱心な勧誘を受けた。しかし、選んだのは当時箱根駅伝のシード校から長らく遠ざかっていた名門・中大だった。
「駅伝だけでなく、トラックもしっかりやりたいと思っていたんです。中大は個々に向けてメニューを組んでもらえると聞いていたので、自分に合った練習ができると思って進学を決めました」
中野は元々ロードが強い選手で、トラックはあまり得意ではないと自身を分析する。だからこそ、弱点を強化できれば、長所をもっと伸ばすことができると考えたのだ。
しかし、1年目は苦しいシーズンを過ごすことになる。
大腿骨や中足骨を疲労骨折するなどケガに泣き、箱根駅伝はエントリーメンバーに入ることができなかった。一方、同学年の吉居は5000mでU20日本記録を2度も塗り替えるなど、1年生ながら学生屈指のスピードを身につけていた。
「1年時はケガが多くて、継続した練習ができませんでした。だからこそ吉居の活躍は正直、すごく悔しく感じましたね」
2年時は故障も減り、競技生活が軌道に乗った。7月30日の中大記録会3000mで7分57秒21の中大記録を樹立。10月の日体大長距離競技会5000mでは13分45秒19の自己ベストをマークした。
「これなら駅伝でも活躍できる」
しかし、主要区間を任された学生駅伝は満足できる結果を残すことができなかった。
「全日本は3区(区間9位)で順位を落としてしまいました。良くも悪くもない、微妙な結果でしたね。箱根は4区で区間5位。想定よりタイムは良かったんですけど、区間1位と2位の選手に抜かされて、順位を落とした。そこはちょっと悔しかったです」
箱根駅伝は4区で設定記録を20~30秒ほど上回るも、7位から8位に転落。それでもチームは10年ぶりのシード権獲得となる総合6位と躍進した。

中野は全国高校駅伝3区で抜群の結果を残しただけに、上りには自信があった。箱根駅伝では当初、2区と5区を希望していたという。
しかし、夏合宿で行った上り坂のトライアルで1学年後輩の阿部陽樹に完敗。箱根駅伝予選会と全日本大学駅伝で好走できなかったため、花の2区からも外れるかたちになった。
大学3年目にトラックで覚醒
学生駅伝で悔しさを味わった中野は3年目のトラックシーズンで飛躍することになる。そのキッカケとなったのが4月17日の学生個人選手権5000mだった。中野は13分48秒36で2位。篠原倖太朗(駒大2)に僅差で敗れたものの、「今年の中野は一味違う」と印象づけるには十分な成績だった。
「自分から仕掛けたんですけど、ラストで負けてしまった。勝ち切れるような力をつけたい思い、前半戦は5000mに絞って、スピードを磨くようにしたんです」
5月の関東インカレは三浦龍司(順大3)の圧倒的なスピードに対応できなかったものの、13分48秒01で3位(日本人2位)を確保。狙い通り、表彰台に上った。
7月6日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会5000mは13分43秒53の自己新。想定以上の暑さのため、目標にしていた「13分30秒前後」には届かなかったが、1週間後の同網走大会10000mでは目標タイム(28分20秒)を大きく上回る28分00秒86を叩き出し、吉居が保持していた中大記録(28分03秒90)を塗り替えた。
「トラックシーズンにスピードを磨き、10000mでは中大記録を出すことができた。そこは駅伝シーズンに向けて自信にしていきたいですね」
今季、中大は10年ぶりに三大駅伝にフル参戦する。出雲はまだチーム目標が決まっていないというが、全日本は「3位以内」が目標だ。
「出雲はしっかり前を追って、順位を上げるようなレースができたらと考えています。全日本は昨年の悔しさもある。出雲と同じでしっかりと順位を上げ、勢いをつけるような走りをしたいです。終盤区間よりは前半のエース区間で、磨いてきたスピードを生かして他大学の主力選手と戦いたい」
そして箱根駅伝は花の2区で勝負したい気持ちが強くなっている。
「僕が2区を走ることができれば、吉居をアドバンテージの出る区間に起用できる。チーム戦略としてもいいんじゃないでしょうか。そのためにはしっかりと力をつけて、2区で戦う準備をしていきたい。藤原正和駅伝監督が持つ中大記録(1時間7分31秒)の更新を狙っていきたいなと思っています」
箱根駅伝1区で区間記録を塗り替えた吉居の特性を生かすためにも、将来はマラソンで世界を目指す中野がエース区間を担うつもりだ。
中大は第100回大会(2024年)での総合優勝を目標に掲げている。名門の完全復活には〝もうひとりのエース〟の活躍が欠かせない。

◎なかの・しょうた/2001年6月12日生まれ。広島県出身。五日市中→世羅高→中大。自己記録5000m13分43秒53、10000m28分00秒86。高校では現青学大の倉本玄太らと同期で、全国高校駅伝では2年時と3年時に3区を担って区間5位、区間3位と好走している。大学進学後は同期の吉居大和に負けじと成長を見せ、今年は5000mで日本学生個人選手権2位、関東インカレ3位と主要大会で結果を残した。
文/酒井政人
名門・世羅高で全国区の選手に
小学生時代、サッカー少年だった中野は、6年生の時に出場した地元のマラソン大会で「1番」をとったことで、陸上人生をスタートさせた。中学では長距離部員が1人しかいない陸上部に入学することになったが、3000mで8分57秒50をマークすると、広島市の駅伝大会1区で区間賞を獲得した。 「中学時代は1人で練習することが多かったのですが、ある程度の結果を出すことができました。高校では広島で1番強いチームに行って、仲間と一緒に練習がしたいと思ったんです」 中野は全国高校駅伝で9回(現10回)の優勝を誇る名門・世羅高に進学すると、「日頃から競い合いながら」着々と実力をつける。全国高校駅伝には3年連続で出場し、1年時は7区で区間18位。2年時は3区を区間5位と好走して、チームの準優勝に貢献した。3年時は3区を23分44秒(区間3位)で走破。後にチームメイトになる吉居大和(仙台育英高・宮城→中大)、インターハイ5000m6位の石井一希(八千代松陰高校・千葉→順大)らを抑えて、日本人トップの快走を見せている。 「一番の思い出は都大路3区で日本人トップになれたことですね。世羅には練習で使用する山コースがあるのですが、そこでかなり練習したので自信を持って走ることができました。ただ、全国高校駅伝で優勝できなかったのは悔しさが残っています」
5000mでも14分04秒05をマークした中野は、複数の有力校から熱心な勧誘を受けた。しかし、選んだのは当時箱根駅伝のシード校から長らく遠ざかっていた名門・中大だった。
「駅伝だけでなく、トラックもしっかりやりたいと思っていたんです。中大は個々に向けてメニューを組んでもらえると聞いていたので、自分に合った練習ができると思って進学を決めました」
中野は元々ロードが強い選手で、トラックはあまり得意ではないと自身を分析する。だからこそ、弱点を強化できれば、長所をもっと伸ばすことができると考えたのだ。
しかし、1年目は苦しいシーズンを過ごすことになる。
大腿骨や中足骨を疲労骨折するなどケガに泣き、箱根駅伝はエントリーメンバーに入ることができなかった。一方、同学年の吉居は5000mでU20日本記録を2度も塗り替えるなど、1年生ながら学生屈指のスピードを身につけていた。
「1年時はケガが多くて、継続した練習ができませんでした。だからこそ吉居の活躍は正直、すごく悔しく感じましたね」
2年時は故障も減り、競技生活が軌道に乗った。7月30日の中大記録会3000mで7分57秒21の中大記録を樹立。10月の日体大長距離競技会5000mでは13分45秒19の自己ベストをマークした。
「これなら駅伝でも活躍できる」
しかし、主要区間を任された学生駅伝は満足できる結果を残すことができなかった。
「全日本は3区(区間9位)で順位を落としてしまいました。良くも悪くもない、微妙な結果でしたね。箱根は4区で区間5位。想定よりタイムは良かったんですけど、区間1位と2位の選手に抜かされて、順位を落とした。そこはちょっと悔しかったです」
箱根駅伝は4区で設定記録を20~30秒ほど上回るも、7位から8位に転落。それでもチームは10年ぶりのシード権獲得となる総合6位と躍進した。
中野は全国高校駅伝3区で抜群の結果を残しただけに、上りには自信があった。箱根駅伝では当初、2区と5区を希望していたという。
しかし、夏合宿で行った上り坂のトライアルで1学年後輩の阿部陽樹に完敗。箱根駅伝予選会と全日本大学駅伝で好走できなかったため、花の2区からも外れるかたちになった。
大学3年目にトラックで覚醒
学生駅伝で悔しさを味わった中野は3年目のトラックシーズンで飛躍することになる。そのキッカケとなったのが4月17日の学生個人選手権5000mだった。中野は13分48秒36で2位。篠原倖太朗(駒大2)に僅差で敗れたものの、「今年の中野は一味違う」と印象づけるには十分な成績だった。 「自分から仕掛けたんですけど、ラストで負けてしまった。勝ち切れるような力をつけたい思い、前半戦は5000mに絞って、スピードを磨くようにしたんです」 5月の関東インカレは三浦龍司(順大3)の圧倒的なスピードに対応できなかったものの、13分48秒01で3位(日本人2位)を確保。狙い通り、表彰台に上った。 7月6日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会5000mは13分43秒53の自己新。想定以上の暑さのため、目標にしていた「13分30秒前後」には届かなかったが、1週間後の同網走大会10000mでは目標タイム(28分20秒)を大きく上回る28分00秒86を叩き出し、吉居が保持していた中大記録(28分03秒90)を塗り替えた。 「トラックシーズンにスピードを磨き、10000mでは中大記録を出すことができた。そこは駅伝シーズンに向けて自信にしていきたいですね」 今季、中大は10年ぶりに三大駅伝にフル参戦する。出雲はまだチーム目標が決まっていないというが、全日本は「3位以内」が目標だ。 「出雲はしっかり前を追って、順位を上げるようなレースができたらと考えています。全日本は昨年の悔しさもある。出雲と同じでしっかりと順位を上げ、勢いをつけるような走りをしたいです。終盤区間よりは前半のエース区間で、磨いてきたスピードを生かして他大学の主力選手と戦いたい」 そして箱根駅伝は花の2区で勝負したい気持ちが強くなっている。 「僕が2区を走ることができれば、吉居をアドバンテージの出る区間に起用できる。チーム戦略としてもいいんじゃないでしょうか。そのためにはしっかりと力をつけて、2区で戦う準備をしていきたい。藤原正和駅伝監督が持つ中大記録(1時間7分31秒)の更新を狙っていきたいなと思っています」 箱根駅伝1区で区間記録を塗り替えた吉居の特性を生かすためにも、将来はマラソンで世界を目指す中野がエース区間を担うつもりだ。 中大は第100回大会(2024年)での総合優勝を目標に掲げている。名門の完全復活には〝もうひとりのエース〟の活躍が欠かせない。
◎なかの・しょうた/2001年6月12日生まれ。広島県出身。五日市中→世羅高→中大。自己記録5000m13分43秒53、10000m28分00秒86。高校では現青学大の倉本玄太らと同期で、全国高校駅伝では2年時と3年時に3区を担って区間5位、区間3位と好走している。大学進学後は同期の吉居大和に負けじと成長を見せ、今年は5000mで日本学生個人選手権2位、関東インカレ3位と主要大会で結果を残した。
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