2019.09.24
【Web特別記事】
日本インカレSide Story③
受け継がれる早大ハードルのDNA
森戸が悲願の初タイトル
9月12日から15日にかけて岐阜・メモリアルセンター長良川競技場で行われた日本インカレ。大会報道は月刊陸上11月号に掲載予定だが、Webでは誌面で紹介しきれないサイドストーリーをいくつかお届けする。
早大11年ぶりのタイトル
男子110mハードルの決勝。先行する石田トーマス東(国武大4)を、内側から一気に追い込んできたのが森戸信陽(早大2)だった。2人が前のめりになりながら並んでフィニッシュ。どちらが勝ったかわからない。
わずか0.01秒差で決着がついた。13秒79(-0.5)で森戸が制し、早大にとってこの種目11年ぶりとなる優勝をもたらした。
「スタートは他の人に前に行かれるのは想定していたので、落ち着いて3台目からリズムアップすることを心がけました」
並んでのフィニッシュに「負けたと思ったのですが、自分の名前が出てビックリ。初の全国タイトルなのでうれしい気持ちでいっぱいです。結果で出すのがいろんな人への恩返し」と涙と笑顔があふれた。
森戸にとって、日本一は悲願だった。中学時代は全国大会に進出するものの準決勝敗退。いつも前には樋口陸人の姿があった。
千葉・市船橋高時代、3年時のインターハイ南関東大会で14秒13(+0.3)の好タイムで制し、優勝候補として臨んだインターハイは2位。島根・開星高の勝田築の後塵を拝した。
10月には高校歴代3位となる13秒91をマークしてランキングトップに立ったものの、規格の違う(ジュニア規格)国体、U20日本選手権でもタイトルには届かなかった。
この世代のハードルは〝最強〟を謳われた。樋口、森戸、勝田に加え、泉谷駿介も13秒台に突入し、京都・洛南高の平賀健太郎、中田英駿、兵庫・社高の徳岡凌らきら星のごとく、将来を期待される逸材がそろう。
その中から、森戸と勝田は早大へ進学した。早大には、高校記録保持者の古谷拓夢(現・鹿児島県体協)、同2位の金井直がおり、高校歴代上位3選手と、インターハイチャンピオン3人がそろったことになる。
脈々と後輩たちへ受け継がれる
有力選手が早大にそろったが、順大の泉谷が突き抜け、法大に進学した樋口も持ち前のスピードを武器にタイムを短縮。そんな中、「入学前にケガをしてしまい、1年目は苦しみました」と森戸が言うように、早大の2人は結果が出ずにいた。
早大競走部の礒繁雄監督もハードルが専門。近年は野本周成(現・愛媛陸協)、古谷ら着実に成長を遂げてきたが、昨シーズン主将を務めた古谷は体調不良もあり最終学年は満足のいくシーズンを過ごせなかった。また、金井は度重なるケガに泣かされてしまう。なかなか日本インカレのタイトルに手が届かずにいた。
だが、今季は、森戸が再び13秒台に入ると、勝田も5月に14秒10の自己新。着実にいい流れで秋に臨んでいた。
「他大学より部員数は少ないですが、110mハードルのブロックで競走部を引っ張っていこうとみんなで話していました」
110mハードルの日本インカレ制覇は早大競走部にとっても悲願だった。
フィニッシュ直後、森戸のもとに駆けつけたのが金井と勝田。2人とも涙が止まらなかった。
神奈川・川崎橘高でインターハイを制し、高校時代のベストは13秒85を持つ金井も、ケガもあり、一時はモチベーションを保つことも難しい時期もあった。
結局、再び13秒台で走ることはできなかった金井。それでも、レース前に森戸にアドバイスを送り、「そのお陰で落ち着いてレースができた」と森戸は先輩への感謝を述べる。
古谷や金井にとって思い描いていたような競技生活ではなかったかもしれないが、苦しみながら逆境に立ち向かう早大スプリントハードルの〝DNA〟はしっかりと後輩たちへ受け継がれている。
金井は大学でスパイクを脱ぐという。主役の座に戻ることはできなかったが、仲間のために動くことを学んだ4年間は社会人として羽ばたくための大きな糧となるはずだ。
「今日つかんだ感覚を持って冬季練習に入っていきたい。泉谷らもいるので、まずは自己ベストをしっかり更新していきたいです」
森戸を見届けたあと、金井と勝田が肩を並べて戻っていった。
「俺、絶対に負けませんから」
勝田は早大の歴史を紡いできた偉大な先輩にそう誓っていた。
文/向永拓史
日本インカレ男子110mHの決勝。森戸(右から2人目)が石田(左から2人目)との接戦を制した[/caption]
早大11年ぶりのタイトル
男子110mハードルの決勝。先行する石田トーマス東(国武大4)を、内側から一気に追い込んできたのが森戸信陽(早大2)だった。2人が前のめりになりながら並んでフィニッシュ。どちらが勝ったかわからない。 わずか0.01秒差で決着がついた。13秒79(-0.5)で森戸が制し、早大にとってこの種目11年ぶりとなる優勝をもたらした。 「スタートは他の人に前に行かれるのは想定していたので、落ち着いて3台目からリズムアップすることを心がけました」 並んでのフィニッシュに「負けたと思ったのですが、自分の名前が出てビックリ。初の全国タイトルなのでうれしい気持ちでいっぱいです。結果で出すのがいろんな人への恩返し」と涙と笑顔があふれた。 森戸にとって、日本一は悲願だった。中学時代は全国大会に進出するものの準決勝敗退。いつも前には樋口陸人の姿があった。 千葉・市船橋高時代、3年時のインターハイ南関東大会で14秒13(+0.3)の好タイムで制し、優勝候補として臨んだインターハイは2位。島根・開星高の勝田築の後塵を拝した。 10月には高校歴代3位となる13秒91をマークしてランキングトップに立ったものの、規格の違う(ジュニア規格)国体、U20日本選手権でもタイトルには届かなかった。 この世代のハードルは〝最強〟を謳われた。樋口、森戸、勝田に加え、泉谷駿介も13秒台に突入し、京都・洛南高の平賀健太郎、中田英駿、兵庫・社高の徳岡凌らきら星のごとく、将来を期待される逸材がそろう。 その中から、森戸と勝田は早大へ進学した。早大には、高校記録保持者の古谷拓夢(現・鹿児島県体協)、同2位の金井直がおり、高校歴代上位3選手と、インターハイチャンピオン3人がそろったことになる。 [caption id="attachment_4563" align="aligncenter" width="200"]
自身の優勝がわかり目頭を抑える森戸[/caption]
脈々と後輩たちへ受け継がれる
有力選手が早大にそろったが、順大の泉谷が突き抜け、法大に進学した樋口も持ち前のスピードを武器にタイムを短縮。そんな中、「入学前にケガをしてしまい、1年目は苦しみました」と森戸が言うように、早大の2人は結果が出ずにいた。 早大競走部の礒繁雄監督もハードルが専門。近年は野本周成(現・愛媛陸協)、古谷ら着実に成長を遂げてきたが、昨シーズン主将を務めた古谷は体調不良もあり最終学年は満足のいくシーズンを過ごせなかった。また、金井は度重なるケガに泣かされてしまう。なかなか日本インカレのタイトルに手が届かずにいた。 だが、今季は、森戸が再び13秒台に入ると、勝田も5月に14秒10の自己新。着実にいい流れで秋に臨んでいた。 「他大学より部員数は少ないですが、110mハードルのブロックで競走部を引っ張っていこうとみんなで話していました」 110mハードルの日本インカレ制覇は早大競走部にとっても悲願だった。 フィニッシュ直後、森戸のもとに駆けつけたのが金井と勝田。2人とも涙が止まらなかった。 [caption id="attachment_4561" align="aligncenter" width="300"]
森戸を祝福する金井。森戸は「金井さんがいたから」と先輩への想いを語った[/caption]
神奈川・川崎橘高でインターハイを制し、高校時代のベストは13秒85を持つ金井も、ケガもあり、一時はモチベーションを保つことも難しい時期もあった。
結局、再び13秒台で走ることはできなかった金井。それでも、レース前に森戸にアドバイスを送り、「そのお陰で落ち着いてレースができた」と森戸は先輩への感謝を述べる。
古谷や金井にとって思い描いていたような競技生活ではなかったかもしれないが、苦しみながら逆境に立ち向かう早大スプリントハードルの〝DNA〟はしっかりと後輩たちへ受け継がれている。
金井は大学でスパイクを脱ぐという。主役の座に戻ることはできなかったが、仲間のために動くことを学んだ4年間は社会人として羽ばたくための大きな糧となるはずだ。
「今日つかんだ感覚を持って冬季練習に入っていきたい。泉谷らもいるので、まずは自己ベストをしっかり更新していきたいです」
森戸を見届けたあと、金井と勝田が肩を並べて戻っていった。
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勝田は早大の歴史を紡いできた偉大な先輩にそう誓っていた。
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