◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技7日目
陸上競技7日目のアフタヌーンセッションの男子20km競歩で、池田向希(旭化成)が銀メダル、山西利和(愛知製鋼)が銅メダルを獲得した。この種目で初のメダルを一挙に2つ。陸上競技で今大会初のメダルとなった。
19年ドーハ世界選手権では東洋大生として臨み、初出場で6位入賞を果たしていた池田。序盤から飛ばした王凱華(中国)に冷静に対応すると、レースが動いた17kmすぎに山西、そして優勝したイタリアのM.スタノにしっかりくらいつく。
「ずっと山西さんが強くて負け続けてきた。ラストのスピード、スパートに対応できるように取り組んできました」という池田は、抜け出したスタノとの一騎打ちに。最後は力負けしたが、1時間21分14秒で2位フィニッシュ。日本男子20km競歩で悲願のメダルを獲得した。
「メダルを一つの目標にしてきたので本当にうれしいです。東洋大に入った時はここまで成長できると思ってもいませんでした」。静岡・浜松日体大高から東洋大に進学。大学入学時は「長距離マネージャー兼選手」だった男が、世界トップウォーカーの仲間入りを果たした瞬間だった。
ドーハ世界選手権で優勝し、王者として金メダルを目指した山西は、終始主導権を握っていた。序盤で大集団のセンターを陣取ると、最初の1㎞を4分18秒、2㎞を8分29秒で通過する。
4km手前で王凱華(中国)が飛び出した後は、山西が度々集団のトップに立って、前を追いかけた。10km通過は41分05秒。王とは10秒のビハインドがあったが、ここから一気に詰まっていく。12kmで3秒差になると、12.5km付近で王に追いついた。
17kmで「後ろを払って逃げ切ろうと思った」が、「余力がなかった」。19km地点で6秒差をつけられ、最終的には1時間21分28秒の3位でフィニッシュ。銅メダルを獲得したが、ドーハの時と同じように、またしても笑顔を見せることはなかった。
「自分としても金を目指してきましたし、競歩種目は日本陸連のゴールドターゲットとしてさまざまな強化や支援をしていただきました。個人としても、日本人として金を取れなかったことに甘かったんだろうなと思います」
この種目では池田とともに五輪で初めてメダルを手にしたが、山西にとっては敗北。言葉を選びながら、神妙な顔でインタビューに応じた。2019年ドーハ世界選手権の王者にしてワールドランキングでもトップ。地元の五輪では金メダルしか考えていなかった。
「金メダル候補と言っていただきましたけど、あくまでもチャレンジャーとして初めてのオリンピックで、チャンピオンを目指してやってきました。その結果としましては、レースプランを含め、準備の段階で至らないところがあったんだと思います」
世界選手権とは異なり、例年の世界大会と同じように、終盤でのスパート争いになったが、うまく対応することができなかった。
「ラストは苦しかったんですけど、それまでのレース運びが下手な部分が多すぎたと感じています。あの展開でも勝ち切るだけの強さがなかった。これまでの取り組み、準備をしっかりと洗い直したいと思っています。心技体すべて見直して、もう一度この舞台に、金を取りに帰ってきます」
レース後も王者の威厳を失っていなかった山西。パリ五輪で真の王者になるつもりだ。
金メダルには届かなかったが、今村文男コーチを中心に、日本陸連が「ゴールドメダルターゲット」と定めて強化。定期的な強化合宿や綿密な戦略、暑熱対策を経てつかんだ2つのメダル。札幌の地で結実した。
◎2度目の五輪に挑んだ高橋は32位 「申し訳ない思いで一杯です」
日本選手権5連覇を誇るなど国内レースでは抜群の強さを見せてきた高橋英輝(富士通)が男子20㎞競歩で2度目のオリンピックに挑んだ。序盤は集団の真ん中あたりにつけた高橋は、4㎞手前で王凱華(中国)が飛び出すと、山西利和(愛知製鋼)、池田向希(旭化成)らがいる第2集団とは距離を置き、第3集団でレースを進めた。ところが、10km通過は41分55秒(26位)でトップから1分00秒も引き離された。その後は、ズルズルと後退して、1時間27分29秒の32位でフィニッシュを迎えた。
「いろいろな経験をさせていただいて、特にこの1年は自分と信頼する人たちとトップを目指してやってきました。結果を残すことはできませんでしたが、幸せな時間でした。このレースに向けて支えてくれた方々に感謝の気持ちを伝えたいです。本当にありがとうございました」
池田が銀メダル、山西が銅メダルに輝いただけに、「もっとやれたはずだ」という気持ちがあっただろう。それでも、東京五輪でメダルを目指して戦ってきたことは高橋の人生においてかけがえのないものになったようだ。
写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技7日目
陸上競技7日目のアフタヌーンセッションの男子20km競歩で、池田向希(旭化成)が銀メダル、山西利和(愛知製鋼)が銅メダルを獲得した。この種目で初のメダルを一挙に2つ。陸上競技で今大会初のメダルとなった。
19年ドーハ世界選手権では東洋大生として臨み、初出場で6位入賞を果たしていた池田。序盤から飛ばした王凱華(中国)に冷静に対応すると、レースが動いた17kmすぎに山西、そして優勝したイタリアのM.スタノにしっかりくらいつく。
「ずっと山西さんが強くて負け続けてきた。ラストのスピード、スパートに対応できるように取り組んできました」という池田は、抜け出したスタノとの一騎打ちに。最後は力負けしたが、1時間21分14秒で2位フィニッシュ。日本男子20km競歩で悲願のメダルを獲得した。
「メダルを一つの目標にしてきたので本当にうれしいです。東洋大に入った時はここまで成長できると思ってもいませんでした」。静岡・浜松日体大高から東洋大に進学。大学入学時は「長距離マネージャー兼選手」だった男が、世界トップウォーカーの仲間入りを果たした瞬間だった。
ドーハ世界選手権で優勝し、王者として金メダルを目指した山西は、終始主導権を握っていた。序盤で大集団のセンターを陣取ると、最初の1㎞を4分18秒、2㎞を8分29秒で通過する。
4km手前で王凱華(中国)が飛び出した後は、山西が度々集団のトップに立って、前を追いかけた。10km通過は41分05秒。王とは10秒のビハインドがあったが、ここから一気に詰まっていく。12kmで3秒差になると、12.5km付近で王に追いついた。
17kmで「後ろを払って逃げ切ろうと思った」が、「余力がなかった」。19km地点で6秒差をつけられ、最終的には1時間21分28秒の3位でフィニッシュ。銅メダルを獲得したが、ドーハの時と同じように、またしても笑顔を見せることはなかった。
「自分としても金を目指してきましたし、競歩種目は日本陸連のゴールドターゲットとしてさまざまな強化や支援をしていただきました。個人としても、日本人として金を取れなかったことに甘かったんだろうなと思います」
この種目では池田とともに五輪で初めてメダルを手にしたが、山西にとっては敗北。言葉を選びながら、神妙な顔でインタビューに応じた。2019年ドーハ世界選手権の王者にしてワールドランキングでもトップ。地元の五輪では金メダルしか考えていなかった。
「金メダル候補と言っていただきましたけど、あくまでもチャレンジャーとして初めてのオリンピックで、チャンピオンを目指してやってきました。その結果としましては、レースプランを含め、準備の段階で至らないところがあったんだと思います」
世界選手権とは異なり、例年の世界大会と同じように、終盤でのスパート争いになったが、うまく対応することができなかった。
「ラストは苦しかったんですけど、それまでのレース運びが下手な部分が多すぎたと感じています。あの展開でも勝ち切るだけの強さがなかった。これまでの取り組み、準備をしっかりと洗い直したいと思っています。心技体すべて見直して、もう一度この舞台に、金を取りに帰ってきます」
レース後も王者の威厳を失っていなかった山西。パリ五輪で真の王者になるつもりだ。
金メダルには届かなかったが、今村文男コーチを中心に、日本陸連が「ゴールドメダルターゲット」と定めて強化。定期的な強化合宿や綿密な戦略、暑熱対策を経てつかんだ2つのメダル。札幌の地で結実した。
◎2度目の五輪に挑んだ高橋は32位 「申し訳ない思いで一杯です」
日本選手権5連覇を誇るなど国内レースでは抜群の強さを見せてきた高橋英輝(富士通)が男子20㎞競歩で2度目のオリンピックに挑んだ。序盤は集団の真ん中あたりにつけた高橋は、4㎞手前で王凱華(中国)が飛び出すと、山西利和(愛知製鋼)、池田向希(旭化成)らがいる第2集団とは距離を置き、第3集団でレースを進めた。ところが、10km通過は41分55秒(26位)でトップから1分00秒も引き離された。その後は、ズルズルと後退して、1時間27分29秒の32位でフィニッシュを迎えた。
「いろいろな経験をさせていただいて、特にこの1年は自分と信頼する人たちとトップを目指してやってきました。結果を残すことはできませんでしたが、幸せな時間でした。このレースに向けて支えてくれた方々に感謝の気持ちを伝えたいです。本当にありがとうございました」
池田が銀メダル、山西が銅メダルに輝いただけに、「もっとやれたはずだ」という気持ちがあっただろう。それでも、東京五輪でメダルを目指して戦ってきたことは高橋の人生においてかけがえのないものになったようだ。 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.29
【高校生FOCUS】走高跳・中村佳吾(関大北陽高)「プレッシャーがあったほうが跳べる」
-
2025.12.27
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
-
2025.12.21
-
2025.12.21
-
2025.12.21
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.29
【高校生FOCUS】走高跳・中村佳吾(関大北陽高)「プレッシャーがあったほうが跳べる」
FOCUS! 高校生INTERVIEW 中村佳吾 Nakamura Keigo 関大北陽3大阪 毎月恒例掲載の高校生FOCUSは、男子走高跳の中村佳吾選手(関大北陽3大阪)に2025年を締めくくってもらいます。7月の広島 […]
2025.12.29
全日本女王・城西大の赤羽監督は初Vへ「100%が出せれば見えてくる」立命大・杉村監督「この布陣で連覇を」/富士山女子駅伝
12月30日に開催される2025全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)の前日会見と開会式が、29日に静岡県富士市内で行われた。 会見には城西大の赤羽周平監督、大東大の外園隆監督、名城大の米田勝朗監督、東北福祉大の冠木雅 […]
2025.12.29
【箱根駅伝区間エントリー】全日本王者・駒大は6区に3度目となる伊藤蒼唯! 主将・山川拓馬、エース・佐藤圭汰らは補欠
第102回箱根駅伝(2026年1月2日、3日)の区間エントリーが12月29日に発表された。 全日本大学駅伝を制し、3年ぶりの優勝を狙う駒大は前回経験者4人を登録。1区は伊勢路でも同区間で区間4位と好走した小山翔也(3年) […]
2025.12.29
【箱根駅伝区間エントリー】悲願の初Vへ國學院大は2区に主将・上原琉翔! ルーキー・髙石樹が5区 野中恒亨らは補欠
第102回箱根駅伝(2026年1月2日、3日)の区間エントリーが12月29日に発表された。 出雲駅伝を制し、悲願の初優勝を狙う國學院大は2区に主将の上原琉翔(4年)を登録。1区には前回6区の嘉数純平(4年)、4区には出雲 […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳
