2019.08.01
暑さに負けるな! 熱中症対策で夏を乗り切ろう
年々、厳しさが増している夏の暑さ。この時期に多く見られる熱中症は、部活動をはじめとするスポーツ選手たちにとって特に注意しなければいけない健康問題だ。熱中症の危険は、炎天下で長時間動くような競技や、身体が大量の熱を作り出す運動時に高まりやすい。室内で起こるケースも多く、深刻な場合は命に関わることもある。
本格的に夏を迎え、今一度、熱中症とはどのような障害で、どういった対策が必要なのか、もしもなってしまったらどう対処すればよいのかを確認したいところ。今回は、1990年代から熱中症予防啓発活動を行ってきた大塚製薬株式会社の社員で、熱中症予防指導員である只野健太郎さんに話を聞いた。
協 力/大塚製薬株式会社
参考資料/日本スポーツ協会発行「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
熱中症ってどんなもの?
熱中症とは、主に暑い環境下で発生する障害の総称です。ヒトが本来持つ体温調節などの機能へ過剰な負担がかかることで起こります。
身体が暑いと判断すると、まず末梢血管が拡張し、血液をより多く皮膚に集め、外気との温度差で皮膚表面から外へ熱を放散させることで体温を下げようとします。また、汗をかくことで、汗が蒸発する時に生じる気化熱により体温を下げようとします。これらが大まかな体温調節のしくみです。
皮膚への血流増加と発汗はどちらも体液(血液)が関係しており、適切な水分補給によって体液の濃度や量が維持されないまま運動を継続すると、脱水が進み、その結果身体の体温調節機能が破綻して、過度の体温上昇が起こり、最悪の場合、生死に関わる可能性があります。
熱中症について理解し、予防法や応急処置の方法を知り、安全に運動ができる環境を整えましょう。
熱中症を引き起こす条件は?
熱中症を引き起こす条件には、「環境」「身体の状態」「行動」という要因が大きく関係します。発生時期は7月下旬から8月上旬をピークに、酷暑の時期を過ぎた9月でも発生します。
時間帯別でみても日中だけではないため、「猛暑日ではないから」「室内だから」「早朝(夕方)だから」といった油断は禁物です。気温や湿度だけでなく、風通しの悪い場所、梅雨明けの急な暑さなどにも注意が必要です。また、年齢や体力、栄養状態など身体の状態も熱中症に深く関係しています。
運動中は筋肉で作られる熱量が増えます。例えば、1時間歩いた時は安静時に比べて、約3倍の熱を発生します。熱の産生は、日差し、地面からの照り返し、湿度や気流などにも左右されることから、炎天下での試合や練習は、熱中症になりやすい条件が揃っているといえます。十分に注意しましょう。
熱中症ってどんな症状?
熱中症の症状は、めまいや頭痛といった軽度のものから意識障害やけいれんなど段階によって変化し、症状は複合的に現れることもあります。熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病など病型があり、スポーツの現場で主に問題となるのは熱疲労と熱射病です。
「熱失神」
皮膚血管の拡張や下肢に血液が集中することで血圧が低下し、脳への血流が一時的に悪くなることで起こります。めまいや失神(一過性の意識消失)といった症状がみられます。
「熱けいれん」
大量に汗をかき、水だけを補給して血液中の塩分濃度が低下した時に起こります。痛みをともなう筋けいれん(手脚がつるなど)がみられます。
「熱疲労」
発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態で、脱力感、倦怠感、めまい、吐き気などの症状がみられます。
「熱射病」
過度に体温が上昇(40℃以上)して、脳機能に異常をきたし、体温調節が破綻した状態です。意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から、進行すると昏睡状態になります。命の危険のある緊急状態であり、救命できるかどうかはいかに早く体温を下げられるかにかかっています。救急車を要請し、速やかに冷却を開始する必要があります。
どんな人が熱中症になりやすい?
体温調節機能が未発達な子供など、暑熱環境の影響を受けやすい人は熱中症にかかるリスクが高いといえます。部活動においては、体力のない低学年に発症が多く報告されており、指導者や上級生による気配りが不可欠です。
他にも、高齢者や肥満体型の人、また、寝不足や風邪気味、体調不良や下痢の人も熱中症の可能性が高いハイリスク群です。性格的には「我慢強い人」も、体調が悪い時や喉が渇いた時にも無理をしがちですので気をつけましょう。大会の現場では、選手だけでなく、運営スタッフや審判員、保護者や観戦者の熱中症もよくみられます。
熱中症はさまざまな条件が複合して起こり、身体の状態、体力、性格にも影響されますので、個人の特性を日頃から理解して、体調管理することが大切です。
熱中症にならないためには、どんな対策が必要?
まず、熱中症予防は、十分な睡眠と三度の食事をしっかりとる規則正しい生活が基本です。吸湿性のある素材や通気性の良い衣服を着用し、屋外では帽子を活用するなどし、直射日光を避けましょう。アイスパックやクーリングベスト、送風機などで身体を冷却すれば一層効果的です。
トレーニングにおいては、定期的に休憩をとり、身体をクールダウンすることと、いつでも水分補給ができる環境を整えることが重要です。体調が悪い日や、練習途中で調子が悪くなった時は無理をせず、早めに先生やチームメイトに申告しましょう。
運動中は汗をかくことによって、どんどん身体から水分が失われるため、過度の脱水にならないよう汗の量に見合った水分補給が必要です。
発汗による体重減少が体重の2%以上になると体温や心拍数が増加し、運動パフォーマンスも低下してしまいます。ただし、決められた量の水を無理に飲み続けると「低ナトリウム血症(水中毒)」の危険性が高まります。喉の渇きに応じて、こまめに水分補給することで適量の補給ができ、脱水量を2%以内に抑えることができます。
身体から失われた水分には、塩分(ナトリウム)などの電解質(イオン)が含まれており、これを回復するためには水だけでは不十分です。汗をかいた時は電解質を補給できる飲料(スポーツドリンクなど)がお勧めで、食塩相等量0.1g 〜0.2g / 100ml の飲料に加え、長時間の運動をする時はエネルギー補給の観点から、4~8%の糖質を含んだ飲料を選びましょう。
熱中症になった時の応急処置は?
熱中症が疑われる症状がみられた場合、まずは意識の有無を判断する必要があります。高体温、意識障害、応答が鈍い、言動がおかしい場合は熱射病を疑い、救急車を要請し、救急車が来るまでの間も涼しいところで身体を冷やし続けましょう。
意識が正常な場合は涼しい場所に移し、衣服をゆるめて寝かせ、スポーツドリンクなどで水分と塩分の補給をさせます。吐き気などで水分補給ができない場合、水分補給ができても症状が改善しない場合は、医療機関へ搬送しましょう。
日本スポーツ協会
「熱中症予防運動指針」や「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」ダウンロードできる
オオツカ・プラスワン
熱中症対策に必要な水分と電解質を流動性の高い氷の状態で補給でき、カラダを芯から冷やす「アイススラリー」など、大塚製薬の公式通販「オオツカ・プラスワン」などで購入可能
暑さに負けるな! 熱中症対策で夏を乗り切ろう

熱中症ってどんなもの?
熱中症とは、主に暑い環境下で発生する障害の総称です。ヒトが本来持つ体温調節などの機能へ過剰な負担がかかることで起こります。 身体が暑いと判断すると、まず末梢血管が拡張し、血液をより多く皮膚に集め、外気との温度差で皮膚表面から外へ熱を放散させることで体温を下げようとします。また、汗をかくことで、汗が蒸発する時に生じる気化熱により体温を下げようとします。これらが大まかな体温調節のしくみです。 皮膚への血流増加と発汗はどちらも体液(血液)が関係しており、適切な水分補給によって体液の濃度や量が維持されないまま運動を継続すると、脱水が進み、その結果身体の体温調節機能が破綻して、過度の体温上昇が起こり、最悪の場合、生死に関わる可能性があります。 熱中症について理解し、予防法や応急処置の方法を知り、安全に運動ができる環境を整えましょう。熱中症を引き起こす条件は?
熱中症を引き起こす条件には、「環境」「身体の状態」「行動」という要因が大きく関係します。発生時期は7月下旬から8月上旬をピークに、酷暑の時期を過ぎた9月でも発生します。 時間帯別でみても日中だけではないため、「猛暑日ではないから」「室内だから」「早朝(夕方)だから」といった油断は禁物です。気温や湿度だけでなく、風通しの悪い場所、梅雨明けの急な暑さなどにも注意が必要です。また、年齢や体力、栄養状態など身体の状態も熱中症に深く関係しています。 運動中は筋肉で作られる熱量が増えます。例えば、1時間歩いた時は安静時に比べて、約3倍の熱を発生します。熱の産生は、日差し、地面からの照り返し、湿度や気流などにも左右されることから、炎天下での試合や練習は、熱中症になりやすい条件が揃っているといえます。十分に注意しましょう。熱中症ってどんな症状?
熱中症の症状は、めまいや頭痛といった軽度のものから意識障害やけいれんなど段階によって変化し、症状は複合的に現れることもあります。熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病など病型があり、スポーツの現場で主に問題となるのは熱疲労と熱射病です。 「熱失神」 皮膚血管の拡張や下肢に血液が集中することで血圧が低下し、脳への血流が一時的に悪くなることで起こります。めまいや失神(一過性の意識消失)といった症状がみられます。 「熱けいれん」 大量に汗をかき、水だけを補給して血液中の塩分濃度が低下した時に起こります。痛みをともなう筋けいれん(手脚がつるなど)がみられます。 「熱疲労」 発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態で、脱力感、倦怠感、めまい、吐き気などの症状がみられます。 「熱射病」 過度に体温が上昇(40℃以上)して、脳機能に異常をきたし、体温調節が破綻した状態です。意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から、進行すると昏睡状態になります。命の危険のある緊急状態であり、救命できるかどうかはいかに早く体温を下げられるかにかかっています。救急車を要請し、速やかに冷却を開始する必要があります。どんな人が熱中症になりやすい?
体温調節機能が未発達な子供など、暑熱環境の影響を受けやすい人は熱中症にかかるリスクが高いといえます。部活動においては、体力のない低学年に発症が多く報告されており、指導者や上級生による気配りが不可欠です。 他にも、高齢者や肥満体型の人、また、寝不足や風邪気味、体調不良や下痢の人も熱中症の可能性が高いハイリスク群です。性格的には「我慢強い人」も、体調が悪い時や喉が渇いた時にも無理をしがちですので気をつけましょう。大会の現場では、選手だけでなく、運営スタッフや審判員、保護者や観戦者の熱中症もよくみられます。 熱中症はさまざまな条件が複合して起こり、身体の状態、体力、性格にも影響されますので、個人の特性を日頃から理解して、体調管理することが大切です。熱中症にならないためには、どんな対策が必要?
まず、熱中症予防は、十分な睡眠と三度の食事をしっかりとる規則正しい生活が基本です。吸湿性のある素材や通気性の良い衣服を着用し、屋外では帽子を活用するなどし、直射日光を避けましょう。アイスパックやクーリングベスト、送風機などで身体を冷却すれば一層効果的です。 トレーニングにおいては、定期的に休憩をとり、身体をクールダウンすることと、いつでも水分補給ができる環境を整えることが重要です。体調が悪い日や、練習途中で調子が悪くなった時は無理をせず、早めに先生やチームメイトに申告しましょう。 運動中は汗をかくことによって、どんどん身体から水分が失われるため、過度の脱水にならないよう汗の量に見合った水分補給が必要です。 発汗による体重減少が体重の2%以上になると体温や心拍数が増加し、運動パフォーマンスも低下してしまいます。ただし、決められた量の水を無理に飲み続けると「低ナトリウム血症(水中毒)」の危険性が高まります。喉の渇きに応じて、こまめに水分補給することで適量の補給ができ、脱水量を2%以内に抑えることができます。 身体から失われた水分には、塩分(ナトリウム)などの電解質(イオン)が含まれており、これを回復するためには水だけでは不十分です。汗をかいた時は電解質を補給できる飲料(スポーツドリンクなど)がお勧めで、食塩相等量0.1g 〜0.2g / 100ml の飲料に加え、長時間の運動をする時はエネルギー補給の観点から、4~8%の糖質を含んだ飲料を選びましょう。熱中症になった時の応急処置は?
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