1月某日、都内にて昨年2月の別府大分毎日マラソンで日本人トップの3位(2時間8分30秒=初マラソン日本歴代2位)に入り、12月6日の福岡国際マラソンでは優勝(2時間7分05秒=日本歴代9位タイ)を飾った吉田祐也(GMOインターネットグループ)、瀬古利彦・日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー、青学大の原晋監督の3人が熱いトークを繰り広げた。
今回の対談は、2月7日に開催予定だった第70回別府大分毎日マラソンがコロナ禍により延期したことを受け、中継を担ってきたRKB毎日放送が制作した特別番組「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」(2月7日13時~TBS系列全国放送)の企画の一つとして実現。前回の別大で快走した吉田が引退から一転、競技を続けるに至った経緯や前回大会の振り返り、原監督からは青学大OBでもある吉田の大学時代のエピソードなどが話題に上った。ここでは3名による貴重なトークの一部をお届けする。
福岡国際マラソンは「負けるイメージはなかった」
瀬古 あらためて福岡国際マラソン、優勝おめでとうございます。
吉田 ありがとうございます。
瀬古 昨年の別府大分毎日マラソンで初めて会ったんだよね。別大でがんばって、福岡でも優勝するなんてね。マラソンのセンス抜群だね。
原 福岡で勝って人生が大きく変わったと思うんだけど、まさか勝つとは思っていなかった?
吉田 いえ、今回は「優勝狙いで福岡に出たい」と花田(勝彦)監督に伝えていました。その前の別大マラソンが3位で、あと少しで勝てるというイメージを崩したくなかったんです。今回、福岡を選んだのは(2時間)7分台で優勝が狙えるレースだと思っていたからです。負けるイメージはあまりなかったですね。
瀬古 GMOは駅伝があったじゃないですか。駅伝も勝たなきゃいけないということで、よく監督は福岡に出してくれたなと思っていましたよ。
吉田 無理はさせたくないのと、両方で勝つのは難しい、というのが花田監督の意見でした。「両方走るのでお願いします」と何回もお願いして、ようやく了解をもらいました。
瀬古 それなりの練習をやって、周りも納得したうえで出場を決めたんだね。
練習の虫だった吉田の学生時代
瀬古 マラソン選手は365日休まずにやるのが基本で、走りながら休むものだと私は考えています。花田監督が言っていたよ。「昔、瀬古さんから『監督の仕事は選手を止めることだ』と言われましたが吉田君がそれです」って。福岡の前日も「練習を1回も外したことがない、完璧です」って褒めていたよ。
原 マラソンランナーだったら10kmくらいのジョグなんて休養ですよね。
瀬古 走ったうちに入らないよ(笑)。
原 久しぶりに、瀬古さんがおっしゃるような「ザ・マラソンランナー」が誕生したような感じですね。
瀬古 吉田君は学生の頃からものすごく練習していたんでしょ?
原 まさしく「選手を止めるのが監督の仕事」というのが当てはまる選手でした。夏合宿の時に、朝練習で30km走り、午前中も身体を動かし、その後の午後のフリージョグでも20km以上も走りますからね。「いくらフリージョグと言っても、多少なりともさじ加減はいるぞ」と言った記憶があります。
吉田 8月、9月は走り込んでいたので、10月の全日本大学駅伝の直前は全然ダメでしたね。
瀬古 別大でそんな簡単に良い成績残しちゃったらマラソンをなめるかなと思って、「なめちゃだめだよ」と言ったら、即答で「なめてません」って言われちゃったよな。その時はまだ本格的なマラソン練習はしていなかったかもしれないけど、学生のうちから走り切るだけの練習をしていたんだね。
原 箱根駅伝の4区で快走して、そのまま競技引退する予定だったのが、あまりにも快走したので、「マラソンやってみたら?」と送り出したんです。瀬古さんがおっしゃったように、本格的なマラソントレーニングではないけど、準マラソントレーニングはしっかりしていました。
瀬古 別大マラソンで2時間8分30秒を出したのはまぐれじゃないんだよね。
別大の快走で引退を撤回
原 それでも別大マラソンの結果はびっくりしたよ。たしか出場する前にマラソンで成果が出たら実業団も考えたほうがいいんじゃないの? って話はしていたかな。
吉田 少ししていましたね。それで「2時間11分台とか、箸にも棒にも掛からない結果だったら営業マンとしてがんばりなさい」と言われて。「じゃあ、わかりました」と言って臨みました。
瀬古 後日、「やります」という記事を見て良かったなと思いました。マラソンのセンスがあると思いましたから。実業団でやると決めたのはいつ頃?
吉田 別大が終わって2週間くらい時間があったので、その時期でしょうか。監督としても絶対に実業団で続けなさいという感じではなくて、自分自身で決めなさい、言い訳をしないで覚悟を持ってやりなさい、と。あとは自分で考えて続けることにしました。
原 あの時期ですから、実業団は普通の採用がないわけです。でもGMOさんが手を挙げてくれて、お話を聞いて、悩んで、でもブルボンさんに内定を貰っている。かなり葛藤があったと思います。その後、彼から実業団でやりたいと申し出があって、「まずはブルボンさんにお断りをしに行こうね」ということで、2人一緒に吉田(康)社長のところに行きました。ブルボンさんは「応援するから」と快く承諾してくださりました。
瀬古 原監督の「実業団でやってみたら」の一言がなかったら、彼は今ここにいないんだよ。人の言葉って大きいよね。でも、まだ甘いよ。まだ福岡も1回しか勝っていないからね。あと3回勝たないと僕に追いつかないからね(笑)。
吉田 はい、がんばります(笑)。
瀬古 パリ五輪(2024年)もがんばってね。リーダーとして期待しています。
吉田 ありがとうございます!
対談の様子は2月7日放送の番組内で。
「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」
2月7日(日)13:00~TBS系列全国放送
▼中村匠吾・服部勇馬・大迫傑の思い▼新星・吉田祐也が大先輩&恩師と本音トーク▼東京パラ金候補の道下美里を増田明美が直撃▼ティモンディが日本記録に挑戦!
構成/松永貴允
福岡国際マラソンは「負けるイメージはなかった」
瀬古 あらためて福岡国際マラソン、優勝おめでとうございます。 吉田 ありがとうございます。 瀬古 昨年の別府大分毎日マラソンで初めて会ったんだよね。別大でがんばって、福岡でも優勝するなんてね。マラソンのセンス抜群だね。 原 福岡で勝って人生が大きく変わったと思うんだけど、まさか勝つとは思っていなかった? 吉田 いえ、今回は「優勝狙いで福岡に出たい」と花田(勝彦)監督に伝えていました。その前の別大マラソンが3位で、あと少しで勝てるというイメージを崩したくなかったんです。今回、福岡を選んだのは(2時間)7分台で優勝が狙えるレースだと思っていたからです。負けるイメージはあまりなかったですね。 瀬古 GMOは駅伝があったじゃないですか。駅伝も勝たなきゃいけないということで、よく監督は福岡に出してくれたなと思っていましたよ。 吉田 無理はさせたくないのと、両方で勝つのは難しい、というのが花田監督の意見でした。「両方走るのでお願いします」と何回もお願いして、ようやく了解をもらいました。 瀬古 それなりの練習をやって、周りも納得したうえで出場を決めたんだね。練習の虫だった吉田の学生時代
瀬古 マラソン選手は365日休まずにやるのが基本で、走りながら休むものだと私は考えています。花田監督が言っていたよ。「昔、瀬古さんから『監督の仕事は選手を止めることだ』と言われましたが吉田君がそれです」って。福岡の前日も「練習を1回も外したことがない、完璧です」って褒めていたよ。 原 マラソンランナーだったら10kmくらいのジョグなんて休養ですよね。 瀬古 走ったうちに入らないよ(笑)。 原 久しぶりに、瀬古さんがおっしゃるような「ザ・マラソンランナー」が誕生したような感じですね。 瀬古 吉田君は学生の頃からものすごく練習していたんでしょ? 原 まさしく「選手を止めるのが監督の仕事」というのが当てはまる選手でした。夏合宿の時に、朝練習で30km走り、午前中も身体を動かし、その後の午後のフリージョグでも20km以上も走りますからね。「いくらフリージョグと言っても、多少なりともさじ加減はいるぞ」と言った記憶があります。 吉田 8月、9月は走り込んでいたので、10月の全日本大学駅伝の直前は全然ダメでしたね。 瀬古 別大でそんな簡単に良い成績残しちゃったらマラソンをなめるかなと思って、「なめちゃだめだよ」と言ったら、即答で「なめてません」って言われちゃったよな。その時はまだ本格的なマラソン練習はしていなかったかもしれないけど、学生のうちから走り切るだけの練習をしていたんだね。 原 箱根駅伝の4区で快走して、そのまま競技引退する予定だったのが、あまりにも快走したので、「マラソンやってみたら?」と送り出したんです。瀬古さんがおっしゃったように、本格的なマラソントレーニングではないけど、準マラソントレーニングはしっかりしていました。 瀬古 別大マラソンで2時間8分30秒を出したのはまぐれじゃないんだよね。別大の快走で引退を撤回
原 それでも別大マラソンの結果はびっくりしたよ。たしか出場する前にマラソンで成果が出たら実業団も考えたほうがいいんじゃないの? って話はしていたかな。 吉田 少ししていましたね。それで「2時間11分台とか、箸にも棒にも掛からない結果だったら営業マンとしてがんばりなさい」と言われて。「じゃあ、わかりました」と言って臨みました。 瀬古 後日、「やります」という記事を見て良かったなと思いました。マラソンのセンスがあると思いましたから。実業団でやると決めたのはいつ頃? 吉田 別大が終わって2週間くらい時間があったので、その時期でしょうか。監督としても絶対に実業団で続けなさいという感じではなくて、自分自身で決めなさい、言い訳をしないで覚悟を持ってやりなさい、と。あとは自分で考えて続けることにしました。 原 あの時期ですから、実業団は普通の採用がないわけです。でもGMOさんが手を挙げてくれて、お話を聞いて、悩んで、でもブルボンさんに内定を貰っている。かなり葛藤があったと思います。その後、彼から実業団でやりたいと申し出があって、「まずはブルボンさんにお断りをしに行こうね」ということで、2人一緒に吉田(康)社長のところに行きました。ブルボンさんは「応援するから」と快く承諾してくださりました。 瀬古 原監督の「実業団でやってみたら」の一言がなかったら、彼は今ここにいないんだよ。人の言葉って大きいよね。でも、まだ甘いよ。まだ福岡も1回しか勝っていないからね。あと3回勝たないと僕に追いつかないからね(笑)。 吉田 はい、がんばります(笑)。 瀬古 パリ五輪(2024年)もがんばってね。リーダーとして期待しています。 吉田 ありがとうございます! 対談の様子は2月7日放送の番組内で。 「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」 2月7日(日)13:00~TBS系列全国放送 ▼中村匠吾・服部勇馬・大迫傑の思い▼新星・吉田祐也が大先輩&恩師と本音トーク▼東京パラ金候補の道下美里を増田明美が直撃▼ティモンディが日本記録に挑戦! 構成/松永貴允
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