日本人34年ぶりファイナルを目指して
ブダペスト、パリ五輪に続いて、3度目の個人代表で、初めて『44秒台スプリンター』として挑む。「大会の1ヵ月半前にステップを踏めたのは大きい」と自信を深めつつ、「まだまだやりたいことはある」とも。「前半、もうちょっとスピードを高めて、同じエネルギー消費で速くできれば、あと0.2~0.3秒は上がると思います。海外勢と並ぶと、勝手に力も出ると考えると、0.5秒は縮められる」。決勝をしっかり目指せる44秒3という数字が見えてきた。

男子4×400mRのエースにも成長。昨年のパリ五輪(6位)では1走を務めて流れを作った
「停滞感をようやく打ち破れたので、ワールドクラス、トップ層に食い込めるビジョンが現実的になってきました」
22年オレゴン大会で4位、24年パリ五輪で6位に入った4×400mリレーへの思い入れも強い。「近年はメンバーもある程度は固定されていましたが、若い層も台頭してきました。継続して決勝の常連国になって、表彰台に上れるような国になるためには必要なこと。僕が入ったばかりの時の先輩たちがそうだったように、経験の少ない選手が安心して走れるように、僕がチームを引っ張っていく立場になりたい」と言い、「コーチ陣も含めて、世代を超えてチームが形成されています。自国開催でメダルが取れれば、何物にも代えがたい喜びです」と表彰台を見据えている。
“東京と400m”は日本陸上界にとって特別なものだ。1991年、1回目の東京世界選手権で高野進が初の決勝進出。その髙野が作った44秒78の日本記録は32年も止まっていた。それを動かしたのが、佐藤拳太郎(富士通)であり、近づいたのが佐藤風雅(ミズノ)と中島だった。
「今の44秒8と、当時の44秒7とは差があると思っています。偉大な髙野先生に並んで、超えるには、やっぱりタイムだけじゃなく、決勝に行って初めて少し肩を並べられると思います。同じ東京での世界選手権で、もう一度400mの決勝に日本人が行ったらおもしろいですよね。しっかり受け継いでいきたい」
34年ぶりの東京開催で、34年ぶりの日本人ファイナルへ。ポイントに置くのは「予選は力を出し切らずに着順通過すること」だという。「タイムや結果を出さないといけないというプレッシャーは感じず、自分の思うままに走りたい」。本能を解き放ち、いざ――。
文/向永拓史

「ワールドクラス、トップ層に食い込める
ビジョンが現実的になってきた」と語る中島
出鼻をくじかれたシーズンイン
東洋大時代にブレークスルーを果たし、23年に日本選手権で初優勝、45秒1台を連発した時は、まさか“45秒の壁”を破るまでこれだけの時間を要するとは本人も、周囲も思っていなかった。だからこそ、富士北麓ワールドトライアルの44秒84は「やっと出た」という思いが大きい。 「44秒台だけではダメだったので、すぐには喜べなくて……。飛んでいた虫に(判定器が)反応していたらどうしよう、と」 有効期間の8月24日までに出られる残り試合数を考えれば、欲しいのは44秒台ではなく、東京世界選手権の参加標準記録『44秒85』以上だった。「走っていた感触もそんなにタイムが出ている感じがしなかったんです」。祈るように待ち、確定した。重く、固く閉ざされていた扉が一気に開いた。「こんなことってあるんだなって」。もう一つ、“やっと”超えられたものがある。城西高(東京)時代の恩師でもある山村貴彦先生の生涯記録である45秒03。「早く抜いていいよ」と言われていたが、0.01秒に迫ってから2年かかった。立派な恩返しだ。 [caption id="attachment_183678" align="alignnone" width="800"]

日本人34年ぶりファイナルを目指して
ブダペスト、パリ五輪に続いて、3度目の個人代表で、初めて『44秒台スプリンター』として挑む。「大会の1ヵ月半前にステップを踏めたのは大きい」と自信を深めつつ、「まだまだやりたいことはある」とも。「前半、もうちょっとスピードを高めて、同じエネルギー消費で速くできれば、あと0.2~0.3秒は上がると思います。海外勢と並ぶと、勝手に力も出ると考えると、0.5秒は縮められる」。決勝をしっかり目指せる44秒3という数字が見えてきた。 [caption id="attachment_183682" align="alignnone" width="800"]

ビジョンが現実的になってきた」と語る中島[/caption]
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.09.17
200mファイナル目指す鵜澤飛羽が予選登場!テボゴと同組に/東京世界陸上
-
2025.09.17
-
2025.09.17
2025.09.11
ウサイン・ボルトが来日!自身の世界記録更新「今は特にいない」若き選手へ「自分を信じて」
2025.09.12
前夜祭イベントでギネス“世界新” 寺田明日香が高速道路KK線でリレー参加/東京世界陸上
-
2025.09.13
-
2025.09.14
-
2025.09.11
2025.08.27
アディダス アディゼロから2025年秋冬新色コレクションが登場!9月1日より順次販売
-
2025.08.19
-
2025.08.24
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.09.17
短距離・木村颯太が「店舗高値買取センター」とスポンサー契約を締結 明大時代に日本インカレ200m4位
9月17日、株式会社店舗高値買取センターは、男子短距離の木村颯太とスポンサー契約を締結したことを発表した。 木村は2001年生まれの23歳。埼玉・新座二中時代から200mを中心に競技に取り組み、全中やジュニア五輪に出場。 […]
2025.09.17
9月17日Day5のタイムテーブルを更新 女子棒高跳の開始時間を前倒し/東京世界陸上
◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場) 世界陸連は9月17日、同日に行われる東京世界陸上Day5(5日目)のタイムテーブルを更新した。 変更されたのは女子棒高跳の決勝の開始時間。従来は20時10分の開始予定だっ […]
Latest Issue
最新号

2025年10月号 (9月9日発売)
【別冊付録】東京2025世界陸上観戦ガイド
村竹ラシッド/桐生祥秀/中島佑気ジョセフ/中島ひとみ/瀬古優斗
【Coming EKIDEN Season 25-26】
学生長距離最新戦力分析/青学大/駒大/國學院大/中大/