2025.02.18
女子中長距離の田中希実(New Balance)が2月18日に帰国し、取材に応じた。
1月末から渡米し、室内レース4戦に出場。1000m(2分39秒06)、1マイル(4分28秒54)、3000m(8分33秒52)、5000m(14分51秒26)といずれも日本新記録を樹立した。それも、1マイルはニューバランスGP(2月2日/ボストン)、3000mはミルローズ・ゲームズ(2月8日/ニューヨーク)といずれも世界陸連(WA)室内ツアー・ゴールド大会で出したもの。順位も6位を占めた。
田中はその成果について、「連続(での日本新)はうれしいですが、レース内容などまだまだ世界に通用しないところもありました。そういった課題も含めて、すごくいい経験になりました」と振り返る。
昨年はパリ五輪で1500mは準決勝、5000mは予選でいずれも敗退と、目標だった「2種目での決勝進出」には届かなかった。だが、5000mでダイヤモンドリーグ(DL)ファイナルに2年連続で進出したほか、1500mでは7位に入賞した21年東京五輪決勝(3分59秒95/準決勝で3分59秒19の日本記録樹立)以来となる3分台(3分59秒70)をマークするなど、「今までで一番充実した取り組みができた」1年だった。
2025年は全国都道府県対抗女子駅伝9区(10km)から幕を開けたが、「オフシーズンから足元が固まらない」状態が続いていたという。だが、1月中旬から2週間のケニア合宿、さらに渡米後、ボストンでのニューバランスチームでのトレーニングで基礎を固めた。
ケニアでは「マラソン、ハーフマラソンをメインにした選手たちのキャンプ」に参加し、メニューを選びながらも「ロングのきつい練習や、トラックも結構な本数をやるなど、これまで一人だとできないような練習ができました」。その土台を、米国でさらに強固にできたという。
室内レースは「今の力を試す場」、さらには「勝負勘、スピード感を取り戻す」ことを狙いとして臨んだ。
最初にボストンでの1マイルが決まっていたこともあり、1000mでスピードを確認。1マイル、3000mの後は、当初はヨーロッパに渡ってWA室内ツアー・ゴールドのトルン大会(ポーランド)1500mで「もう一度スピードに回帰して」締めくくる予定だった。移動のトラブルで急きょ5000mに変更となり、「本当の意味で世界と勝負できるかどうかの確認は最後、ぼやけてしまった」そうだが、一定の手応えは感じている。
「この時期にこのタイムは、今までの自分では考えられなかったと思うので、かなり地力は上がっていると思えています。世界の未知の領域に踏み込んでいて、世界の選手たちは結構、このシーズンから夏場と変わらないぐらいに仕上げていて、そのまま夏まで行っている。私もこの時期から夏場と同じように走らないといけないんじゃないかと思っているので、新しい工夫というか、取り組み方が見えてきたかなと思います」
そんな室内シーズンで見えた、世界における自身の現在地。それを田中は、「圧倒的な余裕度の差」と表現した。
「スピード自体の余裕度を残していても、最後に発揮できるスピードが違う。スピードもスタミナもまだまだですが、スタミナは後からつけられるところがあるけど、スピードをつけるタイミングが大事。つけ方もすごく難しいので、慎重に取り組んでいかないと」
今後は2月22日の日本選手権クロカンと併催される福岡クロカン(2km)に出場予定で、「来年の世界クロカン代表を目指したい」。その後は鹿児島、沖縄などで合宿を重ね、本格的なトラックシーズンへと向かう予定だ。
最大のターゲットは9月の東京世界選手権。「1500mも5000mも狙うことになったら、またたくさんレースを走ることになりますが、『最後まで走り切れた』『もっといける』という感覚を持って、最後まで駆け抜けられればと思っています」と意気込みを口にする。
4月からは、男子200m、400m元世界記録保持者のマイケル・ジョンソン氏(米国)が考案、創設した陸上リーグ「グランドスラム・トラック」に日本勢でただ1人参戦するなど、新たなチャレンジも控えている。
グランドスラム・トラックは4月4~6日にキングストン(ジャマイカ)を皮切りに、計4大会で3000mと5000mを走るスケジュールだが、各カテゴリーの優勝者には10万ドル(約1570万円)、8位の選手でも1万ドル(約157万円)の賞金が贈られるなど注目度は高い。
その間には「ミドルも入れていきたい」。今年も数多くのレースを走る田中の姿が見られそうだ。
「どういうシーズンになるか全然予想がつかないけど、1本1本のレースに全力を注ぐ中で、その時に気持ち良く出し切れたと思えるような、収穫を得られるような年にしたいです」
世界の最高峰で、田中はどんな成果を残していくのか。
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