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2024.12.26

箱根駅伝Stories/國學院大・平林清澄 歴史を変える挑戦フィナーレへ 「チームが勝てる区間に」
箱根駅伝Stories/國學院大・平林清澄 歴史を変える挑戦フィナーレへ 「チームが勝てる区間に」

出雲駅伝でフィニッシュテープを切る國學院大・平林清澄

優勝をたぐり寄せる走りを

「前年度は新チームが始まった1月にチームで風邪が流行って、なかなか上向きにならない時期がありました。絶対に一発で切り替えてやろうと思っていました」

“勝ち切る”というチーム目標を、キャプテン自らが大阪で実行。新体制がスタートしたばかりのチームを勢いづけた。そして、箱根駅伝優勝という最大の目標を達成するために、心血を注いできた。

根底には、これまでに味わった悔しさがある。「箱根では毎年勝てなかった。過去に負けた悔しさは一番大きい。まだまだやるべきことはいっぱいある。何を変えれば勝てるのか、ずっと考えてきました」。仲間と語った箱根優勝という目標を果たすために、自身もチームもレベルアップを図ってきた。

その働きもあり、出雲駅伝では5年ぶり2回目の優勝を果たし、続く全日本大学駅伝では出場12回目にして初優勝。すでに2冠を獲得し、史上6校目の3冠に王手をかけている。

「出雲と全日本で優勝しましたが、箱根駅伝を取りに行くという姿勢は変わりません。箱根駅伝には“チャレンジャー”という立ち位置で臨みたいと思います」。平林はそう強調する。

個人で数々の実績を残そうと、チームが全日本で初優勝しようと、最大の目標である箱根駅伝総合優勝を成し遂げてこそ、チームスローガンの『歴史を変える挑戦~EP.3~』はフィナーレを迎える、というわけだ。

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箱根ではこれまで2年連続でエース区間の2区を担ってきた。2年時も区間7位とまずまずだったが、3年時の前回は区間3位とさらなる快走。1区の遅れを取り戻す、8人抜きの活躍だった。前年よりも1分以上速く、1時間6分26秒の國學院大最速だった。

チームは直前に体調不良者を出し、万全な状態で迎えられなかったが、それでも総合5位に踏みとどまれたのは、エースとしての役割を果たした平林の活躍が大きかっただろう。

最後の箱根も「もちろん走りたい区間は2区です」と言う。また、出雲6区や全日本7区で見応えある攻防を繰り広げた篠原倖太朗(駒大4)や太田蒼生(青学大4)とのマッチアップは、平林自身、箱根でも実現することを楽しみにしている。

だが、最優先すべきは、チームの総合優勝だ。2区の他にも、前田監督は5区での起用をほのめかしている。

「チームの状況や戦略を考慮して、前田さんが区間配置を考えてくれていると思います。チームが勝てる区間に起用してもらうのが一番良い。6区以外だったらどこでも走ります(笑)。どの区間でも区間賞を取る準備はしますし、その力はあると思います」

どの区間を任されても、全力を尽くすだけ。優勝をたぐり寄せる走りを平林は誓っている。

箱根駅伝総合優勝という目標に心血を注いできた平林清澄

ひらばやし・きよと/2002年12月4日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生五中→福井・美方高。5000m13分55秒30、10000m27分55秒15、ハーフ1時間1分23秒

文/和田悟志

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

ルーキー時代から三大駅伝皆勤賞

躍進を続ける國學院大の中心にいるのは、間違いなくこの男だ。 4年の平林清澄。エースにしてキャプテン、おまけに寮長と、いくつもの役割を背負う。重責に押し潰されてしまわないか、こちらが心配になるほどだが、チームの命運を握るキーマンだ。「箱根で勝ちたい」。その強い思いを高らかに声に出して、チームに浸透させてきた。 「ことあるごとにミーティングで言い続けてきました。ミーティングでは、テーブルごとに分かれていますが、約60人の部員全員で駅伝の話をしているんです。それを見て僕の心は燃えました。うれしいなって。それが目指してきたチームですから」。その思いは、いつしか平林だけのものではなくなっていた。 平林が高校2年生だった2019年10月、國學院大が出雲駅伝で初優勝を成し遂げる。これが國學院大にとっては、学生三大駅伝の初タイトルだった。さらに、箱根駅伝では、史上最高位の3位と躍進を果たした。 当時のエースだった土方英和(現・旭化成)や浦野雄平(現・富士通)の活躍、そして、出雲路や箱根路で前田康弘監督が流した熱い涙を見て、平林は國學院大への進学を決める。何より、前田監督の「箱根で優勝しよう」の一言が決め手だった。 國學院大に入学すると、平林の才能が一気に開花。入学して早々に、10000m28分台、5000m13分台をマークし、存在感を示すようになった。 鮮烈だったのが2021年6月の全日本大学駅伝関東地区選考会だった。ルーキーながら他大学の主力級が登場する3組に起用されると、度肝を抜くような積極的なレースを仕掛けた。結局3着だったものの、ポテンシャルの高さをのぞかせた。 そして、駅伝では1年時から出雲、全日本、箱根と三大駅伝すべてに出場。重要な局面を任され、区間上位で走り切り、その役割を果たしてきた。今度の箱根を走れば、4年間で学生三大駅伝皆勤賞となる。 今や、学生長距離界の枠を超えた活躍を見せ、日本男子マラソン界のホープ。自身も、2025年の東京世界選手権や28年のロサンゼルス五輪を視野に入れる。24年2月の大阪マラソンでは、初マラソン日本最高記録および日本学生記録を打ち立て、2時間6分18秒の好記録で優勝を飾った。 これほどの実績があっても、「何よりも箱根駅伝が大事」と平林は言い切る。

優勝をたぐり寄せる走りを

「前年度は新チームが始まった1月にチームで風邪が流行って、なかなか上向きにならない時期がありました。絶対に一発で切り替えてやろうと思っていました」 “勝ち切る”というチーム目標を、キャプテン自らが大阪で実行。新体制がスタートしたばかりのチームを勢いづけた。そして、箱根駅伝優勝という最大の目標を達成するために、心血を注いできた。 根底には、これまでに味わった悔しさがある。「箱根では毎年勝てなかった。過去に負けた悔しさは一番大きい。まだまだやるべきことはいっぱいある。何を変えれば勝てるのか、ずっと考えてきました」。仲間と語った箱根優勝という目標を果たすために、自身もチームもレベルアップを図ってきた。 その働きもあり、出雲駅伝では5年ぶり2回目の優勝を果たし、続く全日本大学駅伝では出場12回目にして初優勝。すでに2冠を獲得し、史上6校目の3冠に王手をかけている。 「出雲と全日本で優勝しましたが、箱根駅伝を取りに行くという姿勢は変わりません。箱根駅伝には“チャレンジャー”という立ち位置で臨みたいと思います」。平林はそう強調する。 個人で数々の実績を残そうと、チームが全日本で初優勝しようと、最大の目標である箱根駅伝総合優勝を成し遂げてこそ、チームスローガンの『歴史を変える挑戦~EP.3~』はフィナーレを迎える、というわけだ。 箱根ではこれまで2年連続でエース区間の2区を担ってきた。2年時も区間7位とまずまずだったが、3年時の前回は区間3位とさらなる快走。1区の遅れを取り戻す、8人抜きの活躍だった。前年よりも1分以上速く、1時間6分26秒の國學院大最速だった。 チームは直前に体調不良者を出し、万全な状態で迎えられなかったが、それでも総合5位に踏みとどまれたのは、エースとしての役割を果たした平林の活躍が大きかっただろう。 最後の箱根も「もちろん走りたい区間は2区です」と言う。また、出雲6区や全日本7区で見応えある攻防を繰り広げた篠原倖太朗(駒大4)や太田蒼生(青学大4)とのマッチアップは、平林自身、箱根でも実現することを楽しみにしている。 だが、最優先すべきは、チームの総合優勝だ。2区の他にも、前田監督は5区での起用をほのめかしている。 「チームの状況や戦略を考慮して、前田さんが区間配置を考えてくれていると思います。チームが勝てる区間に起用してもらうのが一番良い。6区以外だったらどこでも走ります(笑)。どの区間でも区間賞を取る準備はしますし、その力はあると思います」 どの区間を任されても、全力を尽くすだけ。優勝をたぐり寄せる走りを平林は誓っている。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 箱根駅伝総合優勝という目標に心血を注いできた平林清澄[/caption] ひらばやし・きよと/2002年12月4日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生五中→福井・美方高。5000m13分55秒30、10000m27分55秒15、ハーフ1時間1分23秒 文/和田悟志

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