2024.12.26
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。
高校時代からロードが得意
サッカーの日韓ワールドカップが開催された2002年に生まれ、母親の名から一字もらい“シュート”に因んだ名前のサッカー少年が、長距離走に目覚めていく。もうすぐ、その半生が山場を迎えようとしている。
福岡県西部にある海辺の街。山梨学大・徳田秋斗(4年)は、中学生の頃に駆り出された地域の駅伝競走で思いがけない活躍を見せた。それからはサッカー部を続けながら、不定期で陸上も掛け持ち。
3年生になり、夏にサッカー部の引退を迎えると、駅伝のある陸上は冬まで続けた。そこから縁がつながり、駅伝の強化に乗り出そうとしていた福岡第一高へ進んだ。
ハイレベルな福岡を勝ち抜くまでにはいたらなかったが、チームは入学前年の県高校駅伝23位から急浮上して、1年時に6位、2、3年時には3位へ。徳田は3年連続で県大会4区を走り、3年時に区間2位の成績を残した。卒業から2年後の22年、母校は福岡代表を勝ち取り、今年は北九州地区の代表に。その先鞭をつけた世代だ。
駅伝を重視したチームで、トラックよりロードに得意意識が芽生えた。3年時に感染症の世界的流行で多くの試合が中止になった中でも、5000mが14分34秒13を残し、「大きく成長できた3年間でした」と振り返る。
今に生きる経験として、徳田は「ケニアからの留学生がいるチームだったこと」を挙げる。「遠くから日本に来て、自分の意思で取り組む姿を見てきました。1年の頃は力の差が大きすぎましたが、3年になる頃から時々は一緒に、ポイント練習をしました。ジョグでは負けないようにしていました」。留学生を受け入れてきた山梨学大に進み、その姿勢は今も変わらない。
大学では入学間もない5月に股関節をケガ。治ってもまた痛みがぶり返し、3年までは苦しんだ。痛みがない時は上部のグループで強い練習ができていたため、じわりじわりと力はついていた。鍛錬期の夏場は、1年時以外の3年はこなし切っている。
反りやすい腰部や、疲労時に揺れやすい上体など、課題を把握。フォーム改善に着手し、そのために姿勢を安定させるための体幹補強を地道に取り組んできた。
タイミングの悪い時期のケガで正選手を逃していたものの、3年時に主力として本戦に出場。そこでの厳しい洗礼(7区23位)がこの1年の糧となった。今回はシード権を狙うチームの重要なポジションを担う。
高校時代からロードが得意
サッカーの日韓ワールドカップが開催された2002年に生まれ、母親の名から一字もらい“シュート”に因んだ名前のサッカー少年が、長距離走に目覚めていく。もうすぐ、その半生が山場を迎えようとしている。 福岡県西部にある海辺の街。山梨学大・徳田秋斗(4年)は、中学生の頃に駆り出された地域の駅伝競走で思いがけない活躍を見せた。それからはサッカー部を続けながら、不定期で陸上も掛け持ち。 3年生になり、夏にサッカー部の引退を迎えると、駅伝のある陸上は冬まで続けた。そこから縁がつながり、駅伝の強化に乗り出そうとしていた福岡第一高へ進んだ。 ハイレベルな福岡を勝ち抜くまでにはいたらなかったが、チームは入学前年の県高校駅伝23位から急浮上して、1年時に6位、2、3年時には3位へ。徳田は3年連続で県大会4区を走り、3年時に区間2位の成績を残した。卒業から2年後の22年、母校は福岡代表を勝ち取り、今年は北九州地区の代表に。その先鞭をつけた世代だ。 駅伝を重視したチームで、トラックよりロードに得意意識が芽生えた。3年時に感染症の世界的流行で多くの試合が中止になった中でも、5000mが14分34秒13を残し、「大きく成長できた3年間でした」と振り返る。 今に生きる経験として、徳田は「ケニアからの留学生がいるチームだったこと」を挙げる。「遠くから日本に来て、自分の意思で取り組む姿を見てきました。1年の頃は力の差が大きすぎましたが、3年になる頃から時々は一緒に、ポイント練習をしました。ジョグでは負けないようにしていました」。留学生を受け入れてきた山梨学大に進み、その姿勢は今も変わらない。 大学では入学間もない5月に股関節をケガ。治ってもまた痛みがぶり返し、3年までは苦しんだ。痛みがない時は上部のグループで強い練習ができていたため、じわりじわりと力はついていた。鍛錬期の夏場は、1年時以外の3年はこなし切っている。 反りやすい腰部や、疲労時に揺れやすい上体など、課題を把握。フォーム改善に着手し、そのために姿勢を安定させるための体幹補強を地道に取り組んできた。 タイミングの悪い時期のケガで正選手を逃していたものの、3年時に主力として本戦に出場。そこでの厳しい洗礼(7区23位)がこの1年の糧となった。今回はシード権を狙うチームの重要なポジションを担う。ケガや腹部の差し込みに苦しむ
レース中に腹部の痛み、いわゆる差し込みが出やすい。前回の箱根駅伝はそのウィークポイントが早々の5km地点で出てしまった。身体のブレが大きいとき、内臓が揺れ、痛みを誘発。その対策として、身体がきつくなっても、状態が安定したフォームを追求した1年だった。 7月の士別ハーフマラソンで成果が見えた。北海道ながら30度の暑いコンディションのなか、実業団選手と競りながら2位争いに加わる。その逞しい走りは、チームメイトの士気を引き上げ、「徳田がやれるなら俺たちも」と、夏のチームの充実につながった。 練習は4年生たちが、代わる代わる引っ張った。「みんなで声をかけ合ってきました。練習を引っ張ることで、自分も強くなれるという意識です」。 10月の箱根予選会は、ブライアン・キピエゴ(2年)と平八重充希(3年)、そして徳田の3人が単独走に挑み、タイムを稼ぐ役目。厳しい暑さに耐えていた15km、徳田にあの腹痛が襲いかかる。チーム内7位にとどまったのはその影響だ。 課題がぶり返すかたちとなったが、失速を最小限に抑えることはできた。再び自分と向き合い、「本戦へ向けては解決しています」と言い切る。 11月に日体大長距離競技会10000mに出場。「いい刺激が入ればいい」とのスタンスで臨んだところ、ポンと初めての28分台(28分57秒71)が出た。前半を今までになく楽に進めたことが、迫る箱根駅伝にとってはプラスだ。「ある程度速く入っても、心に余裕が出ます」と笑う。 競技人生最後のステージを、最高の状態で迎えられる。個人の思いは「1年前のリベンジをしてやる」の一点に、人一倍チームを思う心が「シード権を残したいです」と口をつく。 「みんなでやってきた4年間。いい同期たちです」。積み重ねてきた思いを、C2Cブルーのタスキに乗せていく。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"]
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