HOME 高校

2024.08.02

地元・中谷魁聖が男子走高跳2m24の日本高校新記録! 「ここで終わるわけではない」/福岡IH
地元・中谷魁聖が男子走高跳2m24の日本高校新記録! 「ここで終わるわけではない」/福岡IH

24年インターハイ男子走高跳で2m24の日本高校新をマークした中谷魁聖

◇福岡インターハイ(7月28日~8月1日/福岡・博多の森陸上競技場)5日目

福岡インターハイの5日目が行われ、男子走高跳で中谷魁聖(福岡第一3福岡)が2m24の日本高校新記録を樹立した。従来の記録は2009年に戸邉直人(専大松戸・千葉/現・JAL)がマークした2m23。1987年に吉田孝久(上郷・神奈川)、89年に海鋒佳輝(八千代松陰・千葉)が跳んだインターハイの実施種目で最古となる2m20の大会記録を塗り替えた。

大会最終日の博多の森には、予想を超えるドラマが待っていた。

最後のトラック種目4×400mリレーが終わり、男子走高跳の優勝争いは2m12を成功させた3人に絞られていた。U20アジア選手権銀メダリストで2m19がベストの中谷魁聖(福岡第一3)、近畿王者で2m10の中村佳吾(関大北陽2大阪)、そして1m98からこの大会で飛躍を遂げた石見だいや(宇都宮南3栃木)。

中谷以外は、すでに自己記録を更新しており、2m15は未踏の高さだ。この高さになると、やはり一度でも跳んだことのある選手が強い。2回目に中谷が成功させ、軽やかに地元優勝を決めた。

ハイライトはここから。会場の片隅で片付け作業が始まる中、バーの高さは2m18に上がる。1回目で落としたところで、この高さをパスし、大会新記録の2m21へ。「インターハイ最古の大会記録への挑戦です」というアナウンスに、会場からは拍手が湧き起こる。

広告の下にコンテンツが続きます

中谷も「2m18を落としましたが、コーチや先生から次の高さに行けるという判断をしてもらって、むしろ自信になりました。次の高さで決めれば、高校記録(2m23)も見えてくると思ったので、しっかり決めて自分の流れに持ち込もうと思いました」。

会場の声援も味方につけた中谷はスイッチを切り替えたように集中を高め、美しい弧を描きながら、難なく2m21を攻略。まるで跳び慣れた高さかのようにスムーズに越えていく姿に、インターハイ最古の大会記録の更新ということを忘れてしまいそうになった。

いよいよ、高校記録への挑戦。片付けをしていた役員、補助員もその手をとめ、腰を下ろして中谷の挑戦を見守る。会場にいる人たちの視線は、すべて中谷に注がれていた。

遠目に見ても高いとわかる2m24は、中谷自身も初めてチャレンジする高さ。だが、「1年生の頃から高校記録を一番大きい目標にしていた」という中谷には、華麗にクリアランスを決めるイメージができていた。2回目に成功させ、「自信を手にしたという言葉しか出てきませんけど、ここで終わるわけではないと思っています」。高校記録をステップに、世界で活躍する未来を見据えた。

前日にはU20アジア選手権で、ともに日の丸を背負った落合晃(滋賀学園3滋賀)が800mで日本記録を更新。「種目は違うけど、自分の中では競っている気持ち。落合に負けるなと自分にも言い聞かせて、気合を入れました」と、高校記録や大会新を連覇した同世代から受ける刺激が大きいと明かす。

「日本のトップ選手が世界で活躍しているので、自分たちの世代もそれについていけるような世代にしていかないといけない。そういう気持ちで挑むことができました」と中谷。日本陸上界の明るい未来まで見据える18歳なら、限界突破も夢じゃない。
文/田端慶子

◇福岡インターハイ(7月28日~8月1日/福岡・博多の森陸上競技場)5日目 福岡インターハイの5日目が行われ、男子走高跳で中谷魁聖(福岡第一3福岡)が2m24の日本高校新記録を樹立した。従来の記録は2009年に戸邉直人(専大松戸・千葉/現・JAL)がマークした2m23。1987年に吉田孝久(上郷・神奈川)、89年に海鋒佳輝(八千代松陰・千葉)が跳んだインターハイの実施種目で最古となる2m20の大会記録を塗り替えた。 大会最終日の博多の森には、予想を超えるドラマが待っていた。 最後のトラック種目4×400mリレーが終わり、男子走高跳の優勝争いは2m12を成功させた3人に絞られていた。U20アジア選手権銀メダリストで2m19がベストの中谷魁聖(福岡第一3)、近畿王者で2m10の中村佳吾(関大北陽2大阪)、そして1m98からこの大会で飛躍を遂げた石見だいや(宇都宮南3栃木)。 中谷以外は、すでに自己記録を更新しており、2m15は未踏の高さだ。この高さになると、やはり一度でも跳んだことのある選手が強い。2回目に中谷が成功させ、軽やかに地元優勝を決めた。 ハイライトはここから。会場の片隅で片付け作業が始まる中、バーの高さは2m18に上がる。1回目で落としたところで、この高さをパスし、大会新記録の2m21へ。「インターハイ最古の大会記録への挑戦です」というアナウンスに、会場からは拍手が湧き起こる。 中谷も「2m18を落としましたが、コーチや先生から次の高さに行けるという判断をしてもらって、むしろ自信になりました。次の高さで決めれば、高校記録(2m23)も見えてくると思ったので、しっかり決めて自分の流れに持ち込もうと思いました」。 会場の声援も味方につけた中谷はスイッチを切り替えたように集中を高め、美しい弧を描きながら、難なく2m21を攻略。まるで跳び慣れた高さかのようにスムーズに越えていく姿に、インターハイ最古の大会記録の更新ということを忘れてしまいそうになった。 いよいよ、高校記録への挑戦。片付けをしていた役員、補助員もその手をとめ、腰を下ろして中谷の挑戦を見守る。会場にいる人たちの視線は、すべて中谷に注がれていた。 遠目に見ても高いとわかる2m24は、中谷自身も初めてチャレンジする高さ。だが、「1年生の頃から高校記録を一番大きい目標にしていた」という中谷には、華麗にクリアランスを決めるイメージができていた。2回目に成功させ、「自信を手にしたという言葉しか出てきませんけど、ここで終わるわけではないと思っています」。高校記録をステップに、世界で活躍する未来を見据えた。 前日にはU20アジア選手権で、ともに日の丸を背負った落合晃(滋賀学園3滋賀)が800mで日本記録を更新。「種目は違うけど、自分の中では競っている気持ち。落合に負けるなと自分にも言い聞かせて、気合を入れました」と、高校記録や大会新を連覇した同世代から受ける刺激が大きいと明かす。 「日本のトップ選手が世界で活躍しているので、自分たちの世代もそれについていけるような世代にしていかないといけない。そういう気持ちで挑むことができました」と中谷。日本陸上界の明るい未来まで見据える18歳なら、限界突破も夢じゃない。 文/田端慶子

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート

東京都は今年9月に国立競技場をメイン会場として開かれる世界選手権に都内の子どもたちを無料招待すると発表した。 「臨場感あふれる会場での観戦を通じて、都内の子供たちにスポーツの素晴らしさや夢と希望を届ける」というのが目的。 […]

NEWS 新しい形の競技会「THE GAME」が9月14日 大阪・万博記念競技場で開催決定!

2025.04.30

新しい形の競技会「THE GAME」が9月14日 大阪・万博記念競技場で開催決定!

「陸上競技の魅力を最大限に引き出し、観客と選手の双方にとって忘れられない体験を」をコンセプトに、三重県で開催されてきた『THE GAME』。今年は会場を大阪府。万博記念競技場を移して、9月14日に行われることが決まった。 […]

NEWS 中村宏之氏が79歳で死去 福島千里、寺田明日香、伊藤佳奈恵ら女子短距離日本記録保持者を育成

2025.04.30

中村宏之氏が79歳で死去 福島千里、寺田明日香、伊藤佳奈恵ら女子短距離日本記録保持者を育成

女子短距離で数々のトップ選手を育成した北海道ハイテクアスリートクラブ前監督の中村宏之氏が4月29日に逝去した。享年79。 中村氏は1945年6月9日生まれ。北海道・札幌東高,日体大で三段跳、走幅跳選手として活躍し、卒業後 […]

NEWS 女子七種競技・アラウホが今季世界最高6396点で優勝 男子100mはバルディが9秒99/南米選手権

2025.04.30

女子七種競技・アラウホが今季世界最高6396点で優勝 男子100mはバルディが9秒99/南米選手権

4月25日から27日まで、アルゼンチンのマル・デル・プラタで南米選手権が開催され、女子七種競技ではM.アラウホ(コロンビア)が6396点(13秒13、1m73、13m55、24秒43/6m55、47m62、2分17秒38 […]

NEWS 【高平慎士の視点】自信持って走り切った井上直紀の強さ光る 選手層に厚み“標準突破”へ期待持てるレース/織田記念

2025.04.30

【高平慎士の視点】自信持って走り切った井上直紀の強さ光る 選手層に厚み“標準突破”へ期待持てるレース/織田記念

4月29日に広島・ホットスタッフフィールド広島で行われた織田記念。その男子100mは上位5人が10秒1台、それも0.03秒差以内にひしめく大熱戦となり、大学4年の井上直紀(早大)が自己新の10秒12(+0.4)で制した。 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top