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SPOT LIGHT 女子スプリント新時代の幕開け 兒玉芽生 (福岡大)
SPOT LIGHT 女子スプリント新時代の幕開け 兒玉芽生 (福岡大)

SPOT LIGHT 女子スプリント新時代の幕開け
兒玉芽生 (福岡大)

自分の走りを追い求め、
0.1秒でも、0.01秒でも速く――。

日本インカレで3冠、日本選手権も100mを制するなど、2020年の女子スプリント界を沸かせた兒玉

9月の日本インカレで兒玉芽生(福岡大)は日本の女子短距離界に大きな衝撃を与えた。100m、200m、4×100mリレーで3冠。100mでは日本歴代3位となる11秒35の好タイムをマークした。さらに続く10月の日本選手権は、100mで11秒36をマークして初優勝、200mは鶴田玲美(南九州ファミリーマート)に続く2位ながら、23秒44(日本歴代7位)の自己新。女子短距離のニューヒロインとして取り上げられている兒玉だが、決して〝新星〟ではなく、小学校時代から世代のトップをひた走ってきた。大学3年目。タイムは飛躍を遂げたものの、その裏には心身ともに着実に1段ずつ成長してきた過程がある。

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文/向永拓史

衝撃だった11秒3台を2本

3日間、スプリントを8本。日本インカレで3つのタイトルを獲得して数日後、「あんなに走ったのはインターハイ以来。さすがに疲れました」と兒玉芽生(福岡大)は笑った。

100m11秒35(-0.2)は日本歴代3位、学生歴代2位、200mも23秒68(-0.8)の自己新。大学で指導を受ける信岡沙希重コーチの大学時代のベスト23秒74を上回った。「もう100mはとっくに超えられていましたから」と信岡コーチ。兒玉は、「まだ先生の大学での記録を抜いただけです」と応えた。

福岡大では信岡沙希重コーチ(左)に師事。厳しいトレーニングも明るい雰囲気の中で乗り越えれている

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11秒35のインパクトは絶大だった。

「友人や小学校の頃にクラブチームでお世話になった方々や、これまで面識のなかった大学のOB・OG、大分陸協の方々など、お祝いのメッセージをもらいました。そんなにすごいことをしたつもりはないのですが、想像以上の反響でうれしかったです」

練習での調子から、11秒4台は出そうな感触はつかめていた。だから11秒51(+1.2)でまとめた準決勝までは「想定内」。だが、決勝は「想定外」だったという。「4継で勝った後というのもあってノリノリでした」。公式には向かい風0.2mだが、「追い風じゃなかったかな?」と向かい風は感じなかったという。それでも「どんな状況でも走れない人は走れないタイム」と信岡コーチ。レース直後には「今後苦しくなるよ。11秒3とか11秒2を狙うのではなくて、11秒5台を安定させて来年につなげよう」と声をかけたという。自身もスプリンターとして活躍してきた経験があるからこその言葉だ。

11秒3よりも、「11秒5を確実に出せたことのほうが大きかった」と兒玉。「11秒3はいったん忘れて、もう一回やるべきことをしていきます」。コーチの思いはしっかり伝わっていた。

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インカレの100m決勝は「ちゃんと練習通りにできた」。今シーズン取り組んできたのは加速局面。これまでは20mほどで加速を終えてしまい、フィニッシュまで「そのまま普通に走ってしまっていた」と言う。現在は一次加速、そして55mあたりの二次加速までしっかりとスピードを上げていくことを意識。8月のゴールデングランプリ(11秒62 /1着)では「アップまでは加速の動きができていたのに、レースでは少し身体が起きてしまってうまくいかなかった」が、インカレでは低い姿勢を保ち、「一次加速と二次加速のつなぎもうまくいきました」と言うように一気に他を突き放した。

日本インカレは個人では初優勝。2年前、先輩の久保山晴菜がタイトルを獲得するのを目にし、「自分も勝ちたい」と強く思った。その久保山は、現役引退を決めていたがインカレを機に翻し、卒業後も今村病院所属でともに練習に励む。兒玉にとっても転機となる大会となった。

それから約3週間後の日本選手権。同じ新潟を舞台に、100mは11秒36(+0.5)で初優勝。再び11秒3台をマークし、「注目されたプレッシャーの中でも勝ち切れました」。連覇を狙った200mは23秒44(-0.1)の自己ベストながら鶴田玲美(南九州ファミリーマート)に敗れ2位。大会後、プレッシャーもあり何度も涙を見せていたことを明かしている。200mは脚の状態を考慮して棄権する選択もあったようだ。それだけインカレからの疲労、そして重圧と戦っていたのだろう。

この続きは2020年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。

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自分の走りを追い求め、 0.1秒でも、0.01秒でも速く――。

日本インカレで3冠、日本選手権も100mを制するなど、2020年の女子スプリント界を沸かせた兒玉 9月の日本インカレで兒玉芽生(福岡大)は日本の女子短距離界に大きな衝撃を与えた。100m、200m、4×100mリレーで3冠。100mでは日本歴代3位となる11秒35の好タイムをマークした。さらに続く10月の日本選手権は、100mで11秒36をマークして初優勝、200mは鶴田玲美(南九州ファミリーマート)に続く2位ながら、23秒44(日本歴代7位)の自己新。女子短距離のニューヒロインとして取り上げられている兒玉だが、決して〝新星〟ではなく、小学校時代から世代のトップをひた走ってきた。大学3年目。タイムは飛躍を遂げたものの、その裏には心身ともに着実に1段ずつ成長してきた過程がある。 文/向永拓史

衝撃だった11秒3台を2本

3日間、スプリントを8本。日本インカレで3つのタイトルを獲得して数日後、「あんなに走ったのはインターハイ以来。さすがに疲れました」と兒玉芽生(福岡大)は笑った。 100m11秒35(-0.2)は日本歴代3位、学生歴代2位、200mも23秒68(-0.8)の自己新。大学で指導を受ける信岡沙希重コーチの大学時代のベスト23秒74を上回った。「もう100mはとっくに超えられていましたから」と信岡コーチ。兒玉は、「まだ先生の大学での記録を抜いただけです」と応えた。 福岡大では信岡沙希重コーチ(左)に師事。厳しいトレーニングも明るい雰囲気の中で乗り越えれている 11秒35のインパクトは絶大だった。 「友人や小学校の頃にクラブチームでお世話になった方々や、これまで面識のなかった大学のOB・OG、大分陸協の方々など、お祝いのメッセージをもらいました。そんなにすごいことをしたつもりはないのですが、想像以上の反響でうれしかったです」 練習での調子から、11秒4台は出そうな感触はつかめていた。だから11秒51(+1.2)でまとめた準決勝までは「想定内」。だが、決勝は「想定外」だったという。「4継で勝った後というのもあってノリノリでした」。公式には向かい風0.2mだが、「追い風じゃなかったかな?」と向かい風は感じなかったという。それでも「どんな状況でも走れない人は走れないタイム」と信岡コーチ。レース直後には「今後苦しくなるよ。11秒3とか11秒2を狙うのではなくて、11秒5台を安定させて来年につなげよう」と声をかけたという。自身もスプリンターとして活躍してきた経験があるからこその言葉だ。 11秒3よりも、「11秒5を確実に出せたことのほうが大きかった」と兒玉。「11秒3はいったん忘れて、もう一回やるべきことをしていきます」。コーチの思いはしっかり伝わっていた。 インカレの100m決勝は「ちゃんと練習通りにできた」。今シーズン取り組んできたのは加速局面。これまでは20mほどで加速を終えてしまい、フィニッシュまで「そのまま普通に走ってしまっていた」と言う。現在は一次加速、そして55mあたりの二次加速までしっかりとスピードを上げていくことを意識。8月のゴールデングランプリ(11秒62 /1着)では「アップまでは加速の動きができていたのに、レースでは少し身体が起きてしまってうまくいかなかった」が、インカレでは低い姿勢を保ち、「一次加速と二次加速のつなぎもうまくいきました」と言うように一気に他を突き放した。 日本インカレは個人では初優勝。2年前、先輩の久保山晴菜がタイトルを獲得するのを目にし、「自分も勝ちたい」と強く思った。その久保山は、現役引退を決めていたがインカレを機に翻し、卒業後も今村病院所属でともに練習に励む。兒玉にとっても転機となる大会となった。 それから約3週間後の日本選手権。同じ新潟を舞台に、100mは11秒36(+0.5)で初優勝。再び11秒3台をマークし、「注目されたプレッシャーの中でも勝ち切れました」。連覇を狙った200mは23秒44(-0.1)の自己ベストながら鶴田玲美(南九州ファミリーマート)に敗れ2位。大会後、プレッシャーもあり何度も涙を見せていたことを明かしている。200mは脚の状態を考慮して棄権する選択もあったようだ。それだけインカレからの疲労、そして重圧と戦っていたのだろう。 この続きは2020年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。  
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