2023.01.16
◇第41回全国都道府県女子駅伝(1月15日/京都・たけびしスタジアム京都発着:9区間42.195km)
アンカー(9区)にタスキが渡った時点で、首位を行く福岡から4位の神奈川まで僅かに7秒。近年稀に見る大混戦となったV争いとなった。
そんななか、昨夏のオレゴン世界選手権女子マラソン代表の松田瑞生(ダイハツ)がチームただ1人の区間賞(31分22秒)で後続を引き離した大阪が、8年(7大会)ぶり4度目の頂点に立った。大阪は昨秋の栃木国体でも男女総合と女子総合もV。女子では史上初の“3冠”獲得となった。
「松田先輩に前が見える位置でタスキをつなげば何とかしてくれると思っていました」と、1区から8区を担った選手が口をそろえるように、大阪のアンカーには頼れる『なにわのエース』がいた。
トップから5秒差の3位でタスキを受けた松田。「前回優勝テープを切ったとき(8年前)も3位でもらったので同じように優勝テープが切れると思って走り出しました」と前を追走。2秒後ろから追いついてきた神奈川の佐藤成葉(資生堂)とともにトップを争う東京と神奈川を2.6㎞過ぎに一気に抜き去り先頭に立つ。
その後も、軽快なピッチで飛ばし「どこで仕掛けるというより、3月のマラソンに向けての練習中で調整などもしてこなかったので自分のリズムでいきました」と話すも、格の違いを見せつけ中間点以降は独走。最後まで一度も後ろを振り返ることなく歩を進め、区間2位以下に30秒以上の大差をつける力走で8年前同様、笑顔でのフィニッシュとなった。
「8年前は故障明けで、苦しい走り(区間11位)になりましたが、今回はマラソン練習中でも自信を持ってスタートラインに立つことができました。ギリギリまで出場するか迷いましたが、高校時代の恩師でもある安田(功)監督に優勝をプレゼントできてうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
今回のレースはマラソンを軸に競技生活を送る松田にとっても区切りとなるレースだった。「中学時代から、この大会に出させてもらっている大好きなレースですが、今後はスケジュール的にも厳しくなってくるので、最後になるという思いで臨みました。そのレースで後輩たちが頑張り、いい位置でタスキをつないでくれたので感謝の気持ちでいっぱいです」としみじみと話す。
前日のミーティングでその話を聞いた後輩たちが奮起。区間賞に輝いた暮れの都大路に続く1区を走った水本佳菜(薫英女高3)は、実業団や大学の強豪選手に混じりつつ、「しっかり粘れ、流れを作れて良かったです。最後は松田先輩ならやってくれると信じていました」と力走。トップから14秒差の4位と健闘し、若手のホープに贈られる「未来くん賞」にも輝いた。
続く2区の中島紗弥(エディオン)が新潟、愛知、群馬をかわし首位へ。その後も常に上位をキープする。9区間中8区間でひとケタ順位と安定したタスキリレーで連、覇を目指した京都を49秒差で振り切り女王の座に返り咲いた。
「前回以上の上位入賞が目標だったので、まさか優勝できるとは思っていませんでした。1、2区で流れ作り、3区から8区が粘って松田につなぐという理想の展開になりました。本当に選手たちが頑張ってくれました」と安田監督も選手の力走を称えた。
直前のメンバー変更などがあるなか、安田監督が長年指揮を執る薫英女学院高の現役、OGを軸に序盤から流れをつかんだ大阪。区間賞は松田のみだったが、都大路では2区で区間15位と悔しい結果に終わっていた塚本夕藍(薫英女高1)が5区でトップと1秒差の区間2位とリベンジを果たすなど、まさに中学生から実業団選手までチーム一丸、総合力で手にした8年ぶりの栄冠だった。
文/花木 雫
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)