HOME 駅伝、箱根駅伝

2022.10.16

「練習では厳しいけれど、普段は優しい」4年ぶり箱根路復帰決めた大東大・真名子圭監督の手腕/箱根駅伝予選会
「練習では厳しいけれど、普段は優しい」4年ぶり箱根路復帰決めた大東大・真名子圭監督の手腕/箱根駅伝予選会

第99回箱根駅伝予選会をトップ通過した大東大(2022年)

◇第99回箱根駅伝予選会(10月15日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地スタート、昭和記念公園フィニッシュ:21.0975km)

広告の下にコンテンツが続きます

来年正月の第99回箱根駅伝の出場権を懸けた箱根駅伝予選会が行われた。伝統校や強豪校がひしめく中、10時間40分39秒で堂々のトップ通過を果たしたのが、前回まで3年連続で本戦行きを逃していた大東大だった。

関東学生連合で前回8区を走ったチーム唯一の箱根経験者・大野陽人(4年)は、「ボードの用意がなくて途中の順位がわからず、2位か3位と思っていたので……」と1位通過に驚きつつ、「いろいろな方々のサポートのお陰です」と語った際には思わず涙が頬を伝った。

ただ、1年前に流した悔し涙とは意味合いが全く違う涙だ。

1990年度に史上初の学生駅伝3冠を達成した大東大も、近年は苦戦を強いられ、悪い流れを変えるべく、今年4月にOBの真名子圭監督が就任。当初は「箱根を目指せるようなチームではなかった」というチームを毎日の生活やジョグの考え方から見直し、戦える集団へと変えていった。

その成果は、早くもトラックシーズンから発揮される。特に6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、10000m28分台の主将・谷口辰熙や木山凌(ともに4年)らを欠きながら、5位で5年ぶりの本戦出場を決めるなど、選手層は厚みを増し、個々の選手も着実に力をつけていた。

しかし、箱根駅伝に関して、現役選手は予選会突破の喜びを誰一人として知らないチームである。真名子監督も「練習はしっかりできていたので、ウチだけで言えば自信はありましたが、他の大学さんの方が良いタイムを持っていたり、経験値が高かったりしたので、良くても3位くらいかな」と思っていたという。

とはいえ、自分たちがやれることをやる以外に道はない。指揮官は緻密なレースプランを立てて選手を送り出した。

「大きく3グループに分けて、設定したタイムを刻みながら、(14km過ぎの)公園に入るまで余裕を持たせて、そこから余力がある者は上げていこうと。全体的には最初がスローペースだったので、この後がどういう展開になるか少し不安でしたが、選手たちはほぼ設定通りに行ってくれました」

チームを牽引したのは、留学生のピーター・ワンジル(2年)だった。前回の予選会は後半の大失速でチーム10番手にも入れなかったが、宮城・仙台育英高時代も指導を受けていた真名子監督に対し、「練習では厳しいけれど、普段は優しい」と絶大な信頼を寄せ、今季は安定感に磨きがかかった。この日も他大学の留学生を競り合いを演じ、1時間2分16秒の5位でフィニッシュしている。

チーム上位の力を持つ大野と久保田徹(3年)が、ともに1時間3分10秒台の20位と24位で続くと、真名子監督は「公園に入って、第2グループから1人で飛び出してくれた。後ろを走る選手を助けてくれました」と、1時間3分27秒(32位)で好走した菊地駿介(3年)を高評価。菊地自身も「後半も余裕があってペースを上げましたが、最後まで粘り切れて良い走りができました」と胸を張った。

結果発表の1位で大学名が読み上げられた時は、4年分の思いを爆発させた。ただ、目指すゴールはここではない。数分後にはほとんどの選手たちが気持ちを切り替えていた。

「前半シーズンは全日本選考会で、チームが勢いづきましたが、今日の結果でもっと勢いがつくと思います。全日本や箱根でもその勢いで走りたい」(大野)

「4年目ということもありますし、しっかり区間賞を狙って強さが見える走りをしたいです」(谷口)

ホッと安堵の表情を浮かべつつ、あくまでも「次」を強調したのは、真名子監督も同じだった。

「選手には『おめでとう』と言いたいですが、これが復活への第一歩。ここから次を見据えてやっていこうと伝えたいです。本戦に出る以上は将来的には優勝を目指したいですが、まず今年度はシード権を狙っていきたいです」

結果発表後には真名子監督のHonda時代の後輩で、仙台育英高時代の教え子である吉居大和・駿恭兄弟が在籍する中大の藤原正和駅伝監督が訪れ、「本戦で会いましょう」と固い握手を交わした。

明けない夜はない。信じて努力を重ねれば、必ず目標を達成できるのだ。〝山の大東〟が4年ぶりに箱根路に戻ってくる。

文/小野哲史

◇第99回箱根駅伝予選会(10月15日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地スタート、昭和記念公園フィニッシュ:21.0975km) 来年正月の第99回箱根駅伝の出場権を懸けた箱根駅伝予選会が行われた。伝統校や強豪校がひしめく中、10時間40分39秒で堂々のトップ通過を果たしたのが、前回まで3年連続で本戦行きを逃していた大東大だった。 関東学生連合で前回8区を走ったチーム唯一の箱根経験者・大野陽人(4年)は、「ボードの用意がなくて途中の順位がわからず、2位か3位と思っていたので……」と1位通過に驚きつつ、「いろいろな方々のサポートのお陰です」と語った際には思わず涙が頬を伝った。 ただ、1年前に流した悔し涙とは意味合いが全く違う涙だ。 1990年度に史上初の学生駅伝3冠を達成した大東大も、近年は苦戦を強いられ、悪い流れを変えるべく、今年4月にOBの真名子圭監督が就任。当初は「箱根を目指せるようなチームではなかった」というチームを毎日の生活やジョグの考え方から見直し、戦える集団へと変えていった。 その成果は、早くもトラックシーズンから発揮される。特に6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、10000m28分台の主将・谷口辰熙や木山凌(ともに4年)らを欠きながら、5位で5年ぶりの本戦出場を決めるなど、選手層は厚みを増し、個々の選手も着実に力をつけていた。 しかし、箱根駅伝に関して、現役選手は予選会突破の喜びを誰一人として知らないチームである。真名子監督も「練習はしっかりできていたので、ウチだけで言えば自信はありましたが、他の大学さんの方が良いタイムを持っていたり、経験値が高かったりしたので、良くても3位くらいかな」と思っていたという。 とはいえ、自分たちがやれることをやる以外に道はない。指揮官は緻密なレースプランを立てて選手を送り出した。 「大きく3グループに分けて、設定したタイムを刻みながら、(14km過ぎの)公園に入るまで余裕を持たせて、そこから余力がある者は上げていこうと。全体的には最初がスローペースだったので、この後がどういう展開になるか少し不安でしたが、選手たちはほぼ設定通りに行ってくれました」 チームを牽引したのは、留学生のピーター・ワンジル(2年)だった。前回の予選会は後半の大失速でチーム10番手にも入れなかったが、宮城・仙台育英高時代も指導を受けていた真名子監督に対し、「練習では厳しいけれど、普段は優しい」と絶大な信頼を寄せ、今季は安定感に磨きがかかった。この日も他大学の留学生を競り合いを演じ、1時間2分16秒の5位でフィニッシュしている。 チーム上位の力を持つ大野と久保田徹(3年)が、ともに1時間3分10秒台の20位と24位で続くと、真名子監督は「公園に入って、第2グループから1人で飛び出してくれた。後ろを走る選手を助けてくれました」と、1時間3分27秒(32位)で好走した菊地駿介(3年)を高評価。菊地自身も「後半も余裕があってペースを上げましたが、最後まで粘り切れて良い走りができました」と胸を張った。 結果発表の1位で大学名が読み上げられた時は、4年分の思いを爆発させた。ただ、目指すゴールはここではない。数分後にはほとんどの選手たちが気持ちを切り替えていた。 「前半シーズンは全日本選考会で、チームが勢いづきましたが、今日の結果でもっと勢いがつくと思います。全日本や箱根でもその勢いで走りたい」(大野) 「4年目ということもありますし、しっかり区間賞を狙って強さが見える走りをしたいです」(谷口) ホッと安堵の表情を浮かべつつ、あくまでも「次」を強調したのは、真名子監督も同じだった。 「選手には『おめでとう』と言いたいですが、これが復活への第一歩。ここから次を見据えてやっていこうと伝えたいです。本戦に出る以上は将来的には優勝を目指したいですが、まず今年度はシード権を狙っていきたいです」 結果発表後には真名子監督のHonda時代の後輩で、仙台育英高時代の教え子である吉居大和・駿恭兄弟が在籍する中大の藤原正和駅伝監督が訪れ、「本戦で会いましょう」と固い握手を交わした。 明けない夜はない。信じて努力を重ねれば、必ず目標を達成できるのだ。〝山の大東〟が4年ぶりに箱根路に戻ってくる。 文/小野哲史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

2026.09.20

近藤幸太郎が1時間2分15秒で4位!拠点の米国フィラデルフィアでハーフ出場

フィラデルフィア・ディスタンスランが9月20日に米国の当地で行われ、男子ハーフマラソンで近藤幸太郎(HOKA)が1時間2分15秒をマークして4位に入った。 最初の5kmを15分07秒で入った近藤は、10kmを29分58秒 […]

NEWS 100m・前田美結子が学生歴代6位の11秒44!自己ベスト大幅更新、200mとの2冠達成/九州学生選手権

2026.09.20

100m・前田美結子が学生歴代6位の11秒44!自己ベスト大幅更新、200mとの2冠達成/九州学生選手権

第54回九州学生選手権が9月18日~20日、福岡県久留米市の久留米総合スポーツセンター陸上競技場で開催され、最終日に行われた女子100mでは前田美結子(福岡大)が学生歴代6位の11秒44(+1.9)で優勝した。 予選を1 […]

NEWS ハーフ日本勢は男子が26位・西澤侑真、女子は25位・吉川侑美がトップ 萩久保27位、中大・佐藤は34位/世界ロードランニング選手権

2026.09.20

ハーフ日本勢は男子が26位・西澤侑真、女子は25位・吉川侑美がトップ 萩久保27位、中大・佐藤は34位/世界ロードランニング選手権

◇世界ロードランニング選手権(9月19~20日/デンマーク・コペンハーゲン)2日目 世界ロードランニング選手権の2日目にハーフマラソンが行われ、女子はアグネス・ゲティチ(ケニア)が1時間5分15秒の女子単独レース世界新、 […]

NEWS ゲティチがハーフ女子単独レース世界新V!1時間5分15秒で3つ目の世界記録樹立/世界ロードランニング選手権

2026.09.20

ゲティチがハーフ女子単独レース世界新V!1時間5分15秒で3つ目の世界記録樹立/世界ロードランニング選手権

◇世界ロードランニング選手権(9月19~20日/デンマーク・コペンハーゲン)2日目 世界ロードランニング選手権の2日目にハーフマラソンが行われ、女子ではアグネス・ゲティチ(ケニア)が1時間5分15秒の女子単独レース世界新 […]

NEWS 【男子100m】田中清大(滝川二1兵庫)10秒41=高1歴代5位タイ

2026.09.20

【男子100m】田中清大(滝川二1兵庫)10秒41=高1歴代5位タイ

近畿高校ユース対校選手権が9月18日~20日、奈良市の鴻ノ池陸上競技場で行われ、その最終日の9月20日に実施された男子11年100m決勝で田中清大(滝川二・兵庫)が高1歴代5位タイの10秒41(+1.8)をマークして優勝 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年10月号 (9月14日発売)

2026年10月号 (9月14日発売)

アジア大会総展望
山口全中&日本インカレ
サウェ特集

page top