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2025.10.18

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編集部コラム「濃い2ヵ月間」

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陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
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第306回「濃い2ヵ月間(井上)

 

25年世界選手権男子1500mを制したナデル(左)と2位のワイトマン(右)

まず、お詫びを。本来は前日の10月17日が私のコラム当番だったのですが、完全に失念してしまい(というか、本日の箱根駅伝予選会モード)、早々に就寝してしまいました。大変申し訳ございません。

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と言っても、何を書いたらいいのか……。前回が8月8日(というか9日の土曜未明)。そのあと、お盆の後に、高3女子短距離オンライン対談を実施したり、清水空跳選手(星稜高2石川)とトレーニングの取材に金沢に行きました。

9月はやっぱり、東京世界選手権。事前イベントに行ったり、もちろん大会自体も、毎日ではありませんが、国立競技場に通いました。

34年ぶりの東京大会。1991年は私が中学に入学して陸上部に入った年です。あの大会でマラソンの男子金、女子銀の各メダルを含め6つの入賞がありましたが、男子400mの高野進選手が4ラウンド(1次予選、2次予選、準決勝、決勝※当時は)を走り抜き7位入賞したことが、今も印象に残っています。

その高野選手の世界選手権最高位を中島佑気ジョセフ選手(富士通)が上回って6位。予選で出した44秒44の日本新にはビックリしましたが、私自身は、自分の目で見た大会4日目の準決勝の走りと周囲の歓声が印象に残っています。

7番手でホームストレートに入ってから順位を上げていく。400mのレースパターンは大抵、300mぐらいである程度の順位が読めるのですが、中島選手は1人、また1人と次々と先行する選手の前に出て、2着でフィニッシュ。34年ぶり、五輪を含めても92年の高野選手以来となる決勝進出を果たしました。

その走りに、スタンドから地鳴りのような歓声。よく「声援が後押しする」という表現がありますが、日本の陸上競技会であのような歓声は、かつてなかったような気がします。私が行ったところでは、ですが。

そして、取材を希望した大会5日目。高校時代、自分の専門種目だった男子1500mが行われる日(決勝)です。世界歴代4位の記録(3分26秒73)を持つインゲブリグトセン選手(ノルウェー)は万全でなく予選で敗退。決勝も前回覇者のカー選手(英国)がレース途中で脚を痛め、盛り上がりという面ではやや残念でしたが、レースはじっくりと目に焼きつけました。

残り200mで前に出た22年覇者のワイトマン選手(英国)をフィニッシュ直前でナデル選手(ポルトガル)が逆転で金メダル。ミックスゾーンでナデル選手が話すポルトガル語なんかちっともわからない上に、レコーダーにはポルトガル語モードがなくスペイン語モードで録音。ナデル選手の「とても、とても、とても幸せだった」だけはちゃんと訳されていました(たぶん)。

世界陸連のフラッシュインタビューでは「観客の声が大き過ぎて、ポルトガルチームの応援が聞こえませんでした」と答えていたそうで、日本人選手が出ていないにもかかわらず(本当は決勝の舞台で上位を争ってほしい)、それだけ歓声が大きかったのだと思います。

また、2位だったワイトマン選手は英語だったのでじっくり話を聞きました(と言ってもレコーダーが英字変換できるので)。

3年前に金メダルを取ったあと、故障で23年世界陸上や昨年のパリ五輪に出られませんでした。それだけに復活Vなるかと期待していましたが、0.02秒差で銀メダルに終わりました。

ミックスゾーンでは「ホームストレートに差し掛かったとき、良い気分だった。そして、まるで自分の完璧なおとぎ話を読んでいるような気分だった」と優勝を意識していたようなコメント。惜しくも自身2つ目の金メダルを逃して「ほろ苦い気持ち」と言いつつも、「何かを成し遂げられてうれしい」と答えていました。

世界陸上閉幕翌日には、インゲブリグトセン選手を取材する機会がありました(詳細はサイトを御覧ください)。現役選手最速ランナーが行うトレーニングの一端ですが、直接考え方を語ってもらい、学ぶことも多かったです。

大会が開かれる前まではどのくらい盛り上がるのか、私自身は懐疑的でした(ほかでもそういう性格ですが)。07年大阪大会の空席ぶりを観客として生で見ていたからです。

でも、先月の世界選手権は、再び日本での開催を願いたい大会になったと思います(21年東京五輪の無観客開催も集客に影響したかもしれませんが)。日本で4回目となる世界選手権が行われることになれば、サブトラックが徒歩圏内にある競技場での開催か、国立競技場が会場となる場合は仮設サブトラックがほしいです。次回27年大会の会場となる北京は2015年の初開催から12年後ですから、日本開催は案外早く来るかもしれません……。

話題は一転して今日は、箱根駅伝予選会。スタート時間が55分早まり、そのぶん早起きはきつかったのですが、学生たちの笑いと涙が交差し、それぞれの大学にドラマがありました。

さらに、高校駅伝の都道府県大会も10月12日の北海道から各地でスタートしました。4道県の大会が終わっただけですが、年末の全国大会へ初出場を決めたチームもあります。

“世界一の舞台”を焼きつけたまま、将来その舞台を目指す次の世代を見守っていくつもりです。

井上 敦(いのうえ あつし)
1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。中学で陸上部に入り最初は100mを始めたものの、ライバルが多く、ある選手(日本を代表するロングスプリンター)の活躍に影響されて400mに転向した。3年夏までメイン種目だったが結果は県大会に届かず。しかし、3年秋の駅伝での爆走やチームの県大会出場をきっかけにまたまた転向を決意。高校は中距離をメインに、2年の県新人戦1500mで6位に入ったのが最高成績だった。

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[caption id="attachment_187540" align="alignnone" width="800"] 25年世界選手権男子1500mを制したナデル(左)と2位のワイトマン(右)[/caption] まず、お詫びを。本来は前日の10月17日が私のコラム当番だったのですが、完全に失念してしまい(というか、本日の箱根駅伝予選会モード)、早々に就寝してしまいました。大変申し訳ございません。 と言っても、何を書いたらいいのか……。前回が8月8日(というか9日の土曜未明)。そのあと、お盆の後に、高3女子短距離オンライン対談を実施したり、清水空跳選手(星稜高2石川)とトレーニングの取材に金沢に行きました。 9月はやっぱり、東京世界選手権。事前イベントに行ったり、もちろん大会自体も、毎日ではありませんが、国立競技場に通いました。 34年ぶりの東京大会。1991年は私が中学に入学して陸上部に入った年です。あの大会でマラソンの男子金、女子銀の各メダルを含め6つの入賞がありましたが、男子400mの高野進選手が4ラウンド(1次予選、2次予選、準決勝、決勝※当時は)を走り抜き7位入賞したことが、今も印象に残っています。 その高野選手の世界選手権最高位を中島佑気ジョセフ選手(富士通)が上回って6位。予選で出した44秒44の日本新にはビックリしましたが、私自身は、自分の目で見た大会4日目の準決勝の走りと周囲の歓声が印象に残っています。 7番手でホームストレートに入ってから順位を上げていく。400mのレースパターンは大抵、300mぐらいである程度の順位が読めるのですが、中島選手は1人、また1人と次々と先行する選手の前に出て、2着でフィニッシュ。34年ぶり、五輪を含めても92年の高野選手以来となる決勝進出を果たしました。 その走りに、スタンドから地鳴りのような歓声。よく「声援が後押しする」という表現がありますが、日本の陸上競技会であのような歓声は、かつてなかったような気がします。私が行ったところでは、ですが。 そして、取材を希望した大会5日目。高校時代、自分の専門種目だった男子1500mが行われる日(決勝)です。世界歴代4位の記録(3分26秒73)を持つインゲブリグトセン選手(ノルウェー)は万全でなく予選で敗退。決勝も前回覇者のカー選手(英国)がレース途中で脚を痛め、盛り上がりという面ではやや残念でしたが、レースはじっくりと目に焼きつけました。 残り200mで前に出た22年覇者のワイトマン選手(英国)をフィニッシュ直前でナデル選手(ポルトガル)が逆転で金メダル。ミックスゾーンでナデル選手が話すポルトガル語なんかちっともわからない上に、レコーダーにはポルトガル語モードがなくスペイン語モードで録音。ナデル選手の「とても、とても、とても幸せだった」だけはちゃんと訳されていました(たぶん)。 世界陸連のフラッシュインタビューでは「観客の声が大き過ぎて、ポルトガルチームの応援が聞こえませんでした」と答えていたそうで、日本人選手が出ていないにもかかわらず(本当は決勝の舞台で上位を争ってほしい)、それだけ歓声が大きかったのだと思います。 また、2位だったワイトマン選手は英語だったのでじっくり話を聞きました(と言ってもレコーダーが英字変換できるので)。 3年前に金メダルを取ったあと、故障で23年世界陸上や昨年のパリ五輪に出られませんでした。それだけに復活Vなるかと期待していましたが、0.02秒差で銀メダルに終わりました。 ミックスゾーンでは「ホームストレートに差し掛かったとき、良い気分だった。そして、まるで自分の完璧なおとぎ話を読んでいるような気分だった」と優勝を意識していたようなコメント。惜しくも自身2つ目の金メダルを逃して「ほろ苦い気持ち」と言いつつも、「何かを成し遂げられてうれしい」と答えていました。 世界陸上閉幕翌日には、インゲブリグトセン選手を取材する機会がありました(詳細はサイトを御覧ください)。現役選手最速ランナーが行うトレーニングの一端ですが、直接考え方を語ってもらい、学ぶことも多かったです。 大会が開かれる前まではどのくらい盛り上がるのか、私自身は懐疑的でした(ほかでもそういう性格ですが)。07年大阪大会の空席ぶりを観客として生で見ていたからです。 でも、先月の世界選手権は、再び日本での開催を願いたい大会になったと思います(21年東京五輪の無観客開催も集客に影響したかもしれませんが)。日本で4回目となる世界選手権が行われることになれば、サブトラックが徒歩圏内にある競技場での開催か、国立競技場が会場となる場合は仮設サブトラックがほしいです。次回27年大会の会場となる北京は2015年の初開催から12年後ですから、日本開催は案外早く来るかもしれません……。 話題は一転して今日は、箱根駅伝予選会。スタート時間が55分早まり、そのぶん早起きはきつかったのですが、学生たちの笑いと涙が交差し、それぞれの大学にドラマがありました。 さらに、高校駅伝の都道府県大会も10月12日の北海道から各地でスタートしました。4道県の大会が終わっただけですが、年末の全国大会へ初出場を決めたチームもあります。 “世界一の舞台”を焼きつけたまま、将来その舞台を目指す次の世代を見守っていくつもりです。
井上 敦(いのうえ あつし) 1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。中学で陸上部に入り最初は100mを始めたものの、ライバルが多く、ある選手(日本を代表するロングスプリンター)の活躍に影響されて400mに転向した。3年夏までメイン種目だったが結果は県大会に届かず。しかし、3年秋の駅伝での爆走やチームの県大会出場をきっかけにまたまた転向を決意。高校は中距離をメインに、2年の県新人戦1500mで6位に入ったのが最高成績だった。

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