◇日本選手権・混成競技(6月4日、5日/秋田県営)2日目
第106回日本選手権・混成競技の2日目が行われ、女子七種競技はヘンプヒル恵(アトレ)が5872点で優勝。5年ぶりに女王の座に返り咲いた。
「やりきりました。今出せるすべてを出せました」。800mを堂々、セカンドベストとなる2分14秒68でトップ。久しぶりの日本一を手にした瞬間だった。
初日の100mハードルで13秒45(+0.4)と好記録でスタートするなど、トップで折り返したヘンプヒル。2日目は「ポイント」と語っていた走幅跳で5m81(-0.9)にとどまった。だが、そこで精神面で成長を見せる。やり投で44m33を投げて持ち直した。「やり投を終わった時はホッとしてちょっと泣いちゃいました」。
悪夢は2年前の日本選手権にさかのぼる。日本記録も見えるようなペースで進んでいた6種目めのやり投で膝から崩れ落ちた。右膝前十字靱帯の断裂。17年にも左膝に同じケガを負いやっと再び頂点へと戻ってきた矢先だった。膝をテーピングでぐるぐる巻きにして、800mのスタートラインへ。もちろん、走れるはずがなかった。号砲が鳴った瞬間にトラックを離れ、「もう待つのは飽きました」と言って車いすで会場を後にした。
中学、高校と何度も日本一になり、混成競技の歴史を次々と塗り替えてきた。日本選手権は15年から17年まで3連覇。日本人初の6000点は近いうちに彼女によって達せられる。そう誰もが信じて疑わなかった。だが、記録に近づくたびに膝のケガ。心が限界を迎えた。
「もう使わない」。スパイクもユニフォームも実家の押し入れにしまった。競技から離れることを考えたという。だが、自然とリハビリに向かい、少しずつ身体と心に力が入る。自分は陸上をしたいのか、陸上が好きなのか。何度も自問自答した。「やっぱり陸上が好きだった。陸上をしている自分が好きだった」。そしてヘンプヒルは戻ってきた。
「両膝をケガしてオリンピックに行った日本人選手はいない。誰もしたことがないことをしたい」
自分の限界を超え、誰も見たことのない景色を見たい。それがヘンプヒル恵という人間だった。競技を本気でできる時間は限られている。「世界で戦うことを見据えて、世界を知るコーチに教えてもらいたい」と昨年、渡米。七種競技のオリンピアンを育てるクリス・マックコーチに師事した。「ここ数年勝てていないし、怖いものはない。本気ですべてを懸ける」。覚悟を決めた瞬間だった。
2年前、800mのスタートラインに立った時から、戻って来る未来は決まっていたのかもしれない。5年ぶりの日本一。家族や所属先の応援、スタッフを見て涙がこぼれた。「狙って勝てたのでうれしいです」。だが、まだまだスタートに立ったばかり。世界を知れば知るほど「差はすごく感じる」が、「結果は出ているので課程は間違っていない」。それでも覚悟を持って世界を目指していくと決めている。
これで山崎有紀(スズキ)の連覇を4でストップ。「来年から私が連覇をしていけるように頑張ります」。戻ってきた女王・ヘンプヒル恵の新たな物語が、ここ秋田から始まった。
◇2位の山崎有紀も後半に巻き返し強さ見せる
4連覇中だった山﨑は5696点で2位。「去年、想像していた自分の姿ではなかった。やっぱり悔しいです」。それでも、やり投で46m77を投げるなど見せ場を作った。「ヘンプヒル選手に完敗したので、負けと弱さを認めてまたチャレンジしたい」と前を向いた。この負けをさらなる成長の糧とするつもりだ。
◇日本選手権・混成競技(6月4日、5日/秋田県営)2日目
第106回日本選手権・混成競技の2日目が行われ、女子七種競技はヘンプヒル恵(アトレ)が5872点で優勝。5年ぶりに女王の座に返り咲いた。
「やりきりました。今出せるすべてを出せました」。800mを堂々、セカンドベストとなる2分14秒68でトップ。久しぶりの日本一を手にした瞬間だった。
初日の100mハードルで13秒45(+0.4)と好記録でスタートするなど、トップで折り返したヘンプヒル。2日目は「ポイント」と語っていた走幅跳で5m81(-0.9)にとどまった。だが、そこで精神面で成長を見せる。やり投で44m33を投げて持ち直した。「やり投を終わった時はホッとしてちょっと泣いちゃいました」。
悪夢は2年前の日本選手権にさかのぼる。日本記録も見えるようなペースで進んでいた6種目めのやり投で膝から崩れ落ちた。右膝前十字靱帯の断裂。17年にも左膝に同じケガを負いやっと再び頂点へと戻ってきた矢先だった。膝をテーピングでぐるぐる巻きにして、800mのスタートラインへ。もちろん、走れるはずがなかった。号砲が鳴った瞬間にトラックを離れ、「もう待つのは飽きました」と言って車いすで会場を後にした。
中学、高校と何度も日本一になり、混成競技の歴史を次々と塗り替えてきた。日本選手権は15年から17年まで3連覇。日本人初の6000点は近いうちに彼女によって達せられる。そう誰もが信じて疑わなかった。だが、記録に近づくたびに膝のケガ。心が限界を迎えた。
「もう使わない」。スパイクもユニフォームも実家の押し入れにしまった。競技から離れることを考えたという。だが、自然とリハビリに向かい、少しずつ身体と心に力が入る。自分は陸上をしたいのか、陸上が好きなのか。何度も自問自答した。「やっぱり陸上が好きだった。陸上をしている自分が好きだった」。そしてヘンプヒルは戻ってきた。
「両膝をケガしてオリンピックに行った日本人選手はいない。誰もしたことがないことをしたい」
自分の限界を超え、誰も見たことのない景色を見たい。それがヘンプヒル恵という人間だった。競技を本気でできる時間は限られている。「世界で戦うことを見据えて、世界を知るコーチに教えてもらいたい」と昨年、渡米。七種競技のオリンピアンを育てるクリス・マックコーチに師事した。「ここ数年勝てていないし、怖いものはない。本気ですべてを懸ける」。覚悟を決めた瞬間だった。
2年前、800mのスタートラインに立った時から、戻って来る未来は決まっていたのかもしれない。5年ぶりの日本一。家族や所属先の応援、スタッフを見て涙がこぼれた。「狙って勝てたのでうれしいです」。だが、まだまだスタートに立ったばかり。世界を知れば知るほど「差はすごく感じる」が、「結果は出ているので課程は間違っていない」。それでも覚悟を持って世界を目指していくと決めている。
これで山崎有紀(スズキ)の連覇を4でストップ。「来年から私が連覇をしていけるように頑張ります」。戻ってきた女王・ヘンプヒル恵の新たな物語が、ここ秋田から始まった。
◇2位の山崎有紀も後半に巻き返し強さ見せる
4連覇中だった山﨑は5696点で2位。「去年、想像していた自分の姿ではなかった。やっぱり悔しいです」。それでも、やり投で46m77を投げるなど見せ場を作った。「ヘンプヒル選手に完敗したので、負けと弱さを認めてまたチャレンジしたい」と前を向いた。この負けをさらなる成長の糧とするつもりだ。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.11.17
2025.11.16
橋岡優輝が家族での初教室「楽しみながら陸上に触れて」
-
2025.11.14
-
2025.11.13
-
2025.11.15
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.18
国内外のレースでトップアスリートたちが好記録を樹⽴! On「Cloudboom Strike」日本長距離界のホープ・篠原倖太朗がその魅力を語る
スイスのスポーツブランド「On(オン)」が昨夏に発売したマラソンレースに特化したレーシングシューズ「Cloudboom Strike(クラウドブーム ストライク)」の人気が止まらない。 抜群の履き心地、通気性、サポート力 […]
2025.11.18
中国全国運動会女子100mで16歳・陳妤頡が11秒10!U18世界歴代4位タイ&28年ぶりU20アジア新で大会最年少V
中国の総合スポーツ競技会の第15回全国運動会の陸上競技が11月17日、広東省広州市で行われ、女子100mでは16歳の陳妤頡が11秒10(+0.7)でこの種目大会最年少優勝を果たした。この記録はU18世界歴代4位タイ、U2 […]
2025.11.17
クイーンズ駅伝「クマ対応」出没時間によって開催・中止を本部で決定 広瀬川沿い、1区の松島町、利府町内を警戒
一般社団法人日本実業団陸上競技連合は11月17日、全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城/11月23日)における「クマ対応」を発表した。 頻発するクマによる被害を鑑みての対応。松島町の文化交流館前のスタート地点 […]
2025.11.17
長谷川体育施設が日本陸連のオフィシャルサポーティングカンパニーに “協働”と“共創”目指す
日本陸連は11月17日、新たな協賛企業として、スポーツ施設総合建設業の長谷川体育施設(本社・東京都世田谷区/仁ノ平俊和社長)が決定したと発表した。11月からの契約で、カテゴリーとしては「オフィシャルサポーティングカンパニ […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025