HOME バックナンバー
【誌面転載】Special Interview戸邉直人
【誌面転載】Special Interview戸邉直人

Special Interview 戸邉直人 (つくばツインピークス)

IAAF世界室内ツアーで2m35の大ジャンプ!!
13年ぶり日本新、大会新&今季世界最高で優勝の快挙

今年4年目を迎えた国際陸連(IAAF)ワールド室内ツアーの第2戦カールスルーエ大会(ドイツ/2月2日)の試合前、フィールド内で戸邉直人(つくばツインピークス)に声をかけた。「調子はいいですよ! 冬季練習から故障もなく順調に練習を継続することができた分、精神的にも調子が良いですね」とリラックスした明るい声が返ってきた。その約2時間後、戸邉は13年ぶりの日本新記録を樹立し、その言葉を見事に証明してみせた。
●文・写真/望月次朗(Agence SHOT)

「2m35は想像を超えた結果だった」

――大会新、今季世界最高記録に加えて13年ぶりの日本新記録で優勝。優勝でIAAF室内シリーズのポイントも10点を獲得しました。
  今季初戦にもかかわらず、一挙に世界トップジャンパー入りする結果を残しましたね。
戸邉 まったくの想像外で実感がありませんが……、室内、屋外ともこのレベルを継続したいですね。

――この大会に出場した目的は?
戸邉 昨年のシーズンを終えてから考えていたことですが、冬季練習を故障もなく非常に順調に消化してきたので、その成果がどの程度のものなのか、冬季練習の現状を確認するのが目的です。
2019年の屋外シーズンに向けての技術的な精度を高めるための方向性、トレーニングが順調に行われているのか、結果として現れているかを感じたいということです。ですから、まさかここまで跳べるとは思ってもいなかったです。

――戸邉選手が3位タイだったジャカルタ・アジア大会で優勝した王宇選手に、今回は圧勝しました。
戸邉 結果としては、想像を超えたいい出来です。このようなジャンプを継続することが理想ですね。
今日は2m26、2m29の試技でちょっとテクニックが乱れかかったので、ギリギリでなんとか越えた感じでした。
2m31をクリアした時点で、今回のホテルで相部屋だった王宇選手をライバルとして意識するようになり、勝負がかかってきたので、この時点でもう1度メンタルの部分でシャキッと、勝利を目指してしっかり集中していけたのは良かったと思います。
彼とはよく試合をして、昨年の対戦成績では1勝2敗と負け越しています。5月のゴールデングランプリ大阪で勝ちましたが、DLモナコとアジア大会で負けています。それ以前からも勝ったり負けたりしてきた、良きライバル的な選手です。
なので、僕の中では「(アジア大会の)リベンジ成功」というよりは、「今回は勝った」という感覚が強いです。
これからも、彼とはアジアや世界規模の試合で戦っていくことになると思いますので、競いながら、お互い高めていけたらうれしいなと思っています。

――この冬季練習を迎える段階で、長年かけて取り組んできた筋力的なベースアップを継続しつつ、
昨年で固まりつつあった技術の精度を高めることを目指すと言っていました。今回の2m35成功は、その成果ですか。
戸邉 そうでしょうね。これといった練習の成果や、技術の精度が高まったという確信はなかなか具体的に説明することはできませんが、これまで積み上げてきた総合的なものの上にさらに積み上がったからこそ、これまで跳ぶことができなかった「記録」が生まれたのだと思います。
昨年も2m35は視野に入っていましたが、狙った試合でうまく跳べず、自己記録は1cm更新できましたが〝2m32どまり〟でした。
ですから、ある程度の技術的な不安定さも解消されたのではないかと考えています。

――今回の助走は6歩でしたが、どこか問題はありましたか。
戸邉 助走に関しては、昨年は9歩助走にしようとしていたのですが、日本の試合では無理なくできるけど、欧州でやると競技場のスペースが限られてくるので、会場によって9歩助走と6歩助走を使い分けてやっていました。
ただ、1つ自信を持って言えることは、筋力的なベースアップかもしれませんが、昨年から故障をしていないことで、「蓄積」ができるようになったこと。これは大きな進歩だと思います。

――昨年からの変化はありますか?
戸邉 昨シーズンを終えて、メンタルの部分で問題があった思いました。
どういう問題かと言うと、結果、記録への執着心がそれほど強くなく、「とりあえず出場する」ような気持ちだったな、と。
でも今は、1回目のジャンプで成功することも大事ですが、3回失敗しなければ競技を続行できると考えると、リラックスできてチャンスがもっと広がるように感じます。そうすることによって各ジャンプを冷静に分析することができ、バーの落とし方が背中なのか、肩なのか、それとも全然ダメだったのか、次のジャンプに余裕を持って調整、対処できるようになりました。
2m37の最初のジャンプは突っ込み過ぎましたが、2回目、3回目は冷静に分析、調整ができて良い跳躍だったと思います。
この戦い方は、昨年のDLファイナルのブリュッセルで経験したことからヒントを得ています。
2m26を僕が1回でクリアした時点で、トップに立っていましたが、次にバーが2m29に上がると、トップ選手が突然ギアチェンジ。
たちまち5人が1回で越えていった衝撃が忘れられません。試合の進め方、大事な局面でのエネルギーの使い方など、見習うことはまだたくさんあります。

※この続きは2019年2月14日発売の『月刊陸上競技』3月号をご覧ください

Special Interview 戸邉直人 (つくばツインピークス)

IAAF世界室内ツアーで2m35の大ジャンプ!! 13年ぶり日本新、大会新&今季世界最高で優勝の快挙 今年4年目を迎えた国際陸連(IAAF)ワールド室内ツアーの第2戦カールスルーエ大会(ドイツ/2月2日)の試合前、フィールド内で戸邉直人(つくばツインピークス)に声をかけた。「調子はいいですよ! 冬季練習から故障もなく順調に練習を継続することができた分、精神的にも調子が良いですね」とリラックスした明るい声が返ってきた。その約2時間後、戸邉は13年ぶりの日本新記録を樹立し、その言葉を見事に証明してみせた。 ●文・写真/望月次朗(Agence SHOT)

「2m35は想像を超えた結果だった」

――大会新、今季世界最高記録に加えて13年ぶりの日本新記録で優勝。優勝でIAAF室内シリーズのポイントも10点を獲得しました。   今季初戦にもかかわらず、一挙に世界トップジャンパー入りする結果を残しましたね。 戸邉 まったくの想像外で実感がありませんが……、室内、屋外ともこのレベルを継続したいですね。 ――この大会に出場した目的は? 戸邉 昨年のシーズンを終えてから考えていたことですが、冬季練習を故障もなく非常に順調に消化してきたので、その成果がどの程度のものなのか、冬季練習の現状を確認するのが目的です。 2019年の屋外シーズンに向けての技術的な精度を高めるための方向性、トレーニングが順調に行われているのか、結果として現れているかを感じたいということです。ですから、まさかここまで跳べるとは思ってもいなかったです。 ――戸邉選手が3位タイだったジャカルタ・アジア大会で優勝した王宇選手に、今回は圧勝しました。 戸邉 結果としては、想像を超えたいい出来です。このようなジャンプを継続することが理想ですね。 今日は2m26、2m29の試技でちょっとテクニックが乱れかかったので、ギリギリでなんとか越えた感じでした。 2m31をクリアした時点で、今回のホテルで相部屋だった王宇選手をライバルとして意識するようになり、勝負がかかってきたので、この時点でもう1度メンタルの部分でシャキッと、勝利を目指してしっかり集中していけたのは良かったと思います。 彼とはよく試合をして、昨年の対戦成績では1勝2敗と負け越しています。5月のゴールデングランプリ大阪で勝ちましたが、DLモナコとアジア大会で負けています。それ以前からも勝ったり負けたりしてきた、良きライバル的な選手です。 なので、僕の中では「(アジア大会の)リベンジ成功」というよりは、「今回は勝った」という感覚が強いです。 これからも、彼とはアジアや世界規模の試合で戦っていくことになると思いますので、競いながら、お互い高めていけたらうれしいなと思っています。 ――この冬季練習を迎える段階で、長年かけて取り組んできた筋力的なベースアップを継続しつつ、 昨年で固まりつつあった技術の精度を高めることを目指すと言っていました。今回の2m35成功は、その成果ですか。 戸邉 そうでしょうね。これといった練習の成果や、技術の精度が高まったという確信はなかなか具体的に説明することはできませんが、これまで積み上げてきた総合的なものの上にさらに積み上がったからこそ、これまで跳ぶことができなかった「記録」が生まれたのだと思います。 昨年も2m35は視野に入っていましたが、狙った試合でうまく跳べず、自己記録は1cm更新できましたが〝2m32どまり〟でした。 ですから、ある程度の技術的な不安定さも解消されたのではないかと考えています。 ――今回の助走は6歩でしたが、どこか問題はありましたか。 戸邉 助走に関しては、昨年は9歩助走にしようとしていたのですが、日本の試合では無理なくできるけど、欧州でやると競技場のスペースが限られてくるので、会場によって9歩助走と6歩助走を使い分けてやっていました。 ただ、1つ自信を持って言えることは、筋力的なベースアップかもしれませんが、昨年から故障をしていないことで、「蓄積」ができるようになったこと。これは大きな進歩だと思います。 ――昨年からの変化はありますか? 戸邉 昨シーズンを終えて、メンタルの部分で問題があった思いました。 どういう問題かと言うと、結果、記録への執着心がそれほど強くなく、「とりあえず出場する」ような気持ちだったな、と。 でも今は、1回目のジャンプで成功することも大事ですが、3回失敗しなければ競技を続行できると考えると、リラックスできてチャンスがもっと広がるように感じます。そうすることによって各ジャンプを冷静に分析することができ、バーの落とし方が背中なのか、肩なのか、それとも全然ダメだったのか、次のジャンプに余裕を持って調整、対処できるようになりました。 2m37の最初のジャンプは突っ込み過ぎましたが、2回目、3回目は冷静に分析、調整ができて良い跳躍だったと思います。 この戦い方は、昨年のDLファイナルのブリュッセルで経験したことからヒントを得ています。 2m26を僕が1回でクリアした時点で、トップに立っていましたが、次にバーが2m29に上がると、トップ選手が突然ギアチェンジ。 たちまち5人が1回で越えていった衝撃が忘れられません。試合の進め方、大事な局面でのエネルギーの使い方など、見習うことはまだたくさんあります。 ※この続きは2019年2月14日発売の『月刊陸上競技』3月号をご覧ください

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.07.27

女子走幅跳日本記録保持者・秦澄美鈴 目標は決勝進出「自己ベストを狙っていきたい」/パリ五輪

パリ五輪・陸上競技に向けて日本代表選手団が7月27日午前、出国前に羽田空港で会見を行い、意気込みを語った。 女子走幅跳に出場する秦澄美鈴(住友電工)は「緊張しています」と言いながらも「シーズン初めに比べて調子が上がってい […]

NEWS 混合競歩代表の川野将虎「自分らしい粘り強い歩きで上位を目指したい」/パリ五輪

2024.07.27

混合競歩代表の川野将虎「自分らしい粘り強い歩きで上位を目指したい」/パリ五輪

パリ五輪・陸上競技に向けて日本代表選手団が7月27日午前、出国前に羽田空港で会見を行い、意気込みを語った。 男女混合競歩リレー代表の川野将虎(旭化成)は前回の東京大会に続くオリンピック。「前回から3年間。一つの集大成」と […]

NEWS 北口榛花「新たな歴史を作れるよう」田中希実「それではみんなで、よーいどん!」日本代表コメント集/パリ五輪

2024.07.27

北口榛花「新たな歴史を作れるよう」田中希実「それではみんなで、よーいどん!」日本代表コメント集/パリ五輪

100年ぶりにフランス・パリを舞台に五輪が開幕した。陸上競技は8月1日から11日までの日程で行われる。開幕に合わせて日本オリンピック委員会(JOC)は日本代表の意気込みコメントを発表した。 2大会連続出場で女子主将を務め […]

NEWS 中大ルーキー・岡田開成が3000m7分55秒41! U20歴代4位の好タイム

2024.07.27

中大ルーキー・岡田開成が3000m7分55秒41! U20歴代4位の好タイム

7月26日、中大多摩キャンパス競技場で「Summer Night Run Festival in CHUO」が行われ、男子3000mで岡田開成(中大1)が7分55秒41とU20歴代4位のタイムをマークした。 同大会はこれ […]

NEWS 実業団 VS 大学生! 日本一を決める駅伝大会「EXPO EKIDEN 2025」の出場チーム要件決定

2024.07.26

実業団 VS 大学生! 日本一を決める駅伝大会「EXPO EKIDEN 2025」の出場チーム要件決定

7月26日、朝日放送グループホールディングスは大阪・関西万博開催を記念して実業団と大学生のトップチームがタスキをつなぐ駅伝「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」の大会概要を発表した。 この大 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年8月号 (7月12日発売)

2024年8月号 (7月12日発売)

W別冊付録
パリ五輪観戦ガイド&福岡インターハイ完全ガイド

page top