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2025.08.02

【学生長距離Close-upインタビュー】ハーフで力示した帝京大・島田晃希 最終学年覚悟決め「エース区間を走りたい」
【学生長距離Close-upインタビュー】ハーフで力示した帝京大・島田晃希 最終学年覚悟決め「エース区間を走りたい」

関東インカレに出場した島田晃希(帝京大)

帝京大のエースとして勢いをつけたい

三重県出身の島田は陸上競技が身近にある環境で育った。9歳上の兄と7歳上の姉が陸上競技に励んでいたこともあり、幼稚園児の頃から兄・姉の応援に行っていたという。また、全日本大学駅伝のコースが自宅から1kmほどにあり、沿道に出て大学生ランナーの走りを間近で見てきた。ちなみに祖父の島田清さんは全日本実業団対抗選手権200mを4連覇した元スプリンターだ。

「自分もやりたいなと思った」というのも必然で、小学5年になると陸上クラブに入った。「小学生の頃は800mで3分も切れなくて、ほとんどの大会で最下位でした」。それでも続けるうちに少しずつ速くなっていく。中学3年生の時には3000mで10分を切るぐらいまでに力をつけていた。

劇的な飛躍を遂げたのは、高田高2年の秋だった。「1年生の時の3年生の先輩が、フォームがめっちゃきれいだったので、アドバイスをもらってフォームを改善してきました。それがある程度形になってきたのが、2年の新人戦の頃でした」。

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それまでは5000mの自己ベストが16分20秒台だったのが、9月の三重県高校新人で一気に14分59秒46まで記録を短縮して優勝を果たした。この結果で、「まだ足りないけど、もしかしたら行けるかもしれないと思い始めました」と、この頃から関東の大学への進学を意識するようになる。

翌年のインターハイ三重県大会でも5000mで優勝。東海大会で敗れて全国出場は逃したが、高校時代からその才能の一端を覗かせた。

「県大会で優勝できて、自分の中で“どこまでいけるのか、試してみたい”っていう気持ちが強くなってきて、そこから関東の大学に行きたいっていうふうに思いました」

今度ははっきりと気持ちを固めると、高校の先生を通じて、自ら帝京大にアプローチし、進路を決めた。

「高校時代から長い距離、ハーフマラソンや10000mをやりたいなと思っていました。そういうところで、箱根駅伝でシード権を安定して取れている帝京大学を志望しました」

入学してからここまでの成長曲線を「想定以上」と言うが、“ここでなら成長できる”という直感は、すでに高校時代からあったようだ。

大学生になった島田が最初にインパクトある走りを見せたのは、1年時の上尾シティハーフマラソンだろう。9月の頭に左脚の大腿骨を疲労骨折し、走り始めてまだ半月ほどしか経っていなかったのにもかかわらず、初めてのハーフマラソンを1時間3分34秒で走り切ったのだ。しかも、主力選手の集団には加わらず、1人で淡々とペースを刻み、15km以降はペースアップする余裕があった。

この走りもあって、1年目から箱根駅伝の16人のメンバーに選出。しかし、本番は走ることができなかった。「一度は箱根駅伝を走れればいい」と思っていた島田は夢に近づいたはずなのに、いざ出走がかなわないと、圧倒的に悔しさのほうが大きかった。

「2年目からは絶対に出ようって、気持ちがそこで固まりました」

2年生になると関東インカレの対校選手になり、ついに箱根駅伝に出場を果たす。箱根ではここまで8区8位、1区5位と安定した走りを見せてきた。最終学年で目指すのは花の2区だ。前回は大エースの山中博生(現・大阪ガス)が2区を担い、1時間6分22秒の帝京大記録で区間5位と好走している。

「前回の箱根後から、自分がエース区間を走りたいと思うようになりました。ここからの伸び次第ではありますが、山中さんの記録を超えたいです」

はっきりと芽生えたエースとしての自覚。今季の帝京大は、3年生に勢いがあるが、島田は最上級生としてエースの座を後輩に譲るつもりはない。

チームは箱根駅伝で“5強崩し”を目標に掲げている。「山中さんがああいう走りをしても、チームは10位だったので、危機感を覚えました」。“5強崩し”が簡単な目標ではないのは重々承知している。それでも、その目標を成し遂げるために、エースとしてチームを勢いづける走りを誓っている。

今年はハーフマラソンで結果を出してきた島田

◎しまだ・てるき/2004年1月25日生まれ、三重県津市出身。三重・南が丘中→高田高→帝京大。自己記録5000m13分56秒34、10000m28分31秒58、ハーフマラソン1時間0分56秒。

文/和田悟志

学生長距離Close-upインタビュー 島田晃希 Shimada Teruki 帝京大4年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。記念すべき50回目は、帝京大の島田晃希(4年)をピックアップする。 「この選手、おもしろいですよ」 3年前、帝京大の中野孝行監督が将来性を高く買って、そう評していたのが当時1年の島田晃希だった。 「正直なところ、入学した時は本当に何も実績がなかったので、4年間のうちに一度、箱根駅伝を走れればいいかなって思っていました」 島田自身は、入学したばかりの頃をこのように振り返る。そんな展望よりも中野監督の見込みが正しかった。最終学年を迎えた今季、島田はファイヤーレッドのエースとして存在感を示し始めている。 今年に入ってからは、特にハーフマラソンでの活躍が目覚ましい。2月、香川丸亀国際ハーフマラソンと併催された日本学生ハーフマラソンでは、従来の帝京大記録を1分以上更新する1時間0分56秒の好記録をマーク。入賞こそ逃したものの、他校のエース格と堂々と渡り合って10位と奮闘した。 「今まで、それだけのハイペースで走った経験がなかったので、その反動が来たのかな」と島田。その後に股関節を痛め、EXPOエキデンや関東インカレでは納得のいく走りを見せられなかった。それでも、調子を取り戻すと、6月にまたしてもハーフマラソンで快走を見せる。 「丸亀が終わってからケガをしたり、練習がちょっと抜けたりしていたので、前半シーズンに遅れたぶんを取り返そうと思いました。あとは、海外レース初めてなので、海外経験をしてみたいっていう好奇心もありました」 こんな意図を持って臨んだのは、学生ハーフの結果によって派遣されたペッパーズサイロ・ハーフマラソン(豪州)だ。 「監督からも『勝ちに行ってこい』と言われていて、タイムよりも勝負を優先してレースに臨みました」と言う島田は、見事に大会新記録を打ち立てて、1時間1分12秒で優勝を飾った。 しかも、一緒にレースを走った選手たちも、なかなかの強者ばかり。59分57秒の豪州記録を持つブレット・ロビンソン、今年の丸亀ハーフで1時間0分28秒で走り島田に先着したアンディ・ブキャナンといった、地元のトップランナーも多数出場していた。 「欲を言えば、(残り)1kmで仕掛けたところで、そのまま逃げ切りたかったのですが、(最後は1秒差の接戦となり)そこは実力不足だなと感じました」 反省を口にするが、そんな実力者たちにも競り勝ち、いっそう価値ある優勝になった。レース後に中野監督に報告の電話を入れると、「勝ち切ったことは良かった」と珍しく褒めてもらったという。 行きの飛行機内にGPSウォッチを忘れたり、入国時の税関で不意に検査を受けることになったりと、初の海外遠征はちょっとしたトラブルもあった。それでも、実りの多い遠征。チームメイトの尾崎仁哉も1時間1分24秒の好記録で4位入賞し、チームにとっても収穫は大きかった。

帝京大のエースとして勢いをつけたい

三重県出身の島田は陸上競技が身近にある環境で育った。9歳上の兄と7歳上の姉が陸上競技に励んでいたこともあり、幼稚園児の頃から兄・姉の応援に行っていたという。また、全日本大学駅伝のコースが自宅から1kmほどにあり、沿道に出て大学生ランナーの走りを間近で見てきた。ちなみに祖父の島田清さんは全日本実業団対抗選手権200mを4連覇した元スプリンターだ。 「自分もやりたいなと思った」というのも必然で、小学5年になると陸上クラブに入った。「小学生の頃は800mで3分も切れなくて、ほとんどの大会で最下位でした」。それでも続けるうちに少しずつ速くなっていく。中学3年生の時には3000mで10分を切るぐらいまでに力をつけていた。 劇的な飛躍を遂げたのは、高田高2年の秋だった。「1年生の時の3年生の先輩が、フォームがめっちゃきれいだったので、アドバイスをもらってフォームを改善してきました。それがある程度形になってきたのが、2年の新人戦の頃でした」。 それまでは5000mの自己ベストが16分20秒台だったのが、9月の三重県高校新人で一気に14分59秒46まで記録を短縮して優勝を果たした。この結果で、「まだ足りないけど、もしかしたら行けるかもしれないと思い始めました」と、この頃から関東の大学への進学を意識するようになる。 翌年のインターハイ三重県大会でも5000mで優勝。東海大会で敗れて全国出場は逃したが、高校時代からその才能の一端を覗かせた。 「県大会で優勝できて、自分の中で“どこまでいけるのか、試してみたい”っていう気持ちが強くなってきて、そこから関東の大学に行きたいっていうふうに思いました」 今度ははっきりと気持ちを固めると、高校の先生を通じて、自ら帝京大にアプローチし、進路を決めた。 「高校時代から長い距離、ハーフマラソンや10000mをやりたいなと思っていました。そういうところで、箱根駅伝でシード権を安定して取れている帝京大学を志望しました」 入学してからここまでの成長曲線を「想定以上」と言うが、“ここでなら成長できる”という直感は、すでに高校時代からあったようだ。 大学生になった島田が最初にインパクトある走りを見せたのは、1年時の上尾シティハーフマラソンだろう。9月の頭に左脚の大腿骨を疲労骨折し、走り始めてまだ半月ほどしか経っていなかったのにもかかわらず、初めてのハーフマラソンを1時間3分34秒で走り切ったのだ。しかも、主力選手の集団には加わらず、1人で淡々とペースを刻み、15km以降はペースアップする余裕があった。 この走りもあって、1年目から箱根駅伝の16人のメンバーに選出。しかし、本番は走ることができなかった。「一度は箱根駅伝を走れればいい」と思っていた島田は夢に近づいたはずなのに、いざ出走がかなわないと、圧倒的に悔しさのほうが大きかった。 「2年目からは絶対に出ようって、気持ちがそこで固まりました」 2年生になると関東インカレの対校選手になり、ついに箱根駅伝に出場を果たす。箱根ではここまで8区8位、1区5位と安定した走りを見せてきた。最終学年で目指すのは花の2区だ。前回は大エースの山中博生(現・大阪ガス)が2区を担い、1時間6分22秒の帝京大記録で区間5位と好走している。 「前回の箱根後から、自分がエース区間を走りたいと思うようになりました。ここからの伸び次第ではありますが、山中さんの記録を超えたいです」 はっきりと芽生えたエースとしての自覚。今季の帝京大は、3年生に勢いがあるが、島田は最上級生としてエースの座を後輩に譲るつもりはない。 チームは箱根駅伝で“5強崩し”を目標に掲げている。「山中さんがああいう走りをしても、チームは10位だったので、危機感を覚えました」。“5強崩し”が簡単な目標ではないのは重々承知している。それでも、その目標を成し遂げるために、エースとしてチームを勢いづける走りを誓っている。 [caption id="attachment_178146" align="alignnone" width="800"] 今年はハーフマラソンで結果を出してきた島田[/caption] ◎しまだ・てるき/2004年1月25日生まれ、三重県津市出身。三重・南が丘中→高田高→帝京大。自己記録5000m13分56秒34、10000m28分31秒58、ハーフマラソン1時間0分56秒。 文/和田悟志

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