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2025.08.06

富士通・岸本鷹幸が現役引退へ 400mHロンドン五輪代表、世界選手権5度出場「競技をやり尽くした」
富士通・岸本鷹幸が現役引退へ 400mHロンドン五輪代表、世界選手権5度出場「競技をやり尽くした」

男子400mHの岸本鷹幸(22年木南記念)

富士通陸上競技部は8月6日、男子400mハードルの岸本鷹幸が9月7日を持って現役を引退することを発表した。陸上競技部は退部するが、引き続き社に残って勤務をするという。

岸本は1990年生まれの35歳。青森県出身で大平中では110mハードルに取り組むと、大湊高ではバネのあるダイナミックナストライドを武器に400mハードルで飛躍。高3時にはインターハイ、日本ジュニア選手権(現・U20日本選手権)、国体の「高校3冠」を成し遂げた。

法大進学後は、同じ400mハードルで2度の五輪(96年、00年)出場を誇る苅部俊二監督の指導を受け、世界へと進出した。3年だった2011年には日本選手権で初優勝を飾ると、テグ世界選手権でシニア世界大会にデビューするといきなり準決勝に進出。翌年からはロンドン五輪、13年モスクワ世界選手権、15年北京世界選手権と世界大会4連続で代表入りを果たし、モスクワ世界選手権ではセミファイナルに進出した。

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ケガなども重なり、その後は世界の舞台から遠ざかったものの、22年オレゴン、23年ブダペストと世界選手権に2大会連続出場で復活。日本の“お家芸”400mハードルを長く牽引した。日本選手権は11年からの4連覇を含む5度の優勝。12年日本選手権で出した48秒41が生涯ベストで、現在も日本歴代6位として残る。

岸本はチームのホームページに「小学生時代から26年続けた陸上競技を引退することを決断しました」と報告し、思いを綴った。

「私自身、競技をやり尽くしたという気持ちが大きく、『もうこれ以上は無理』』というところまで競技を続けることができました。競技者としてこれ以上の幸せなことはないと思います。これも、支え続けてくれた方々の力に他なりません。競技者として、年齢を重ねれば重ねるほど、そのありがたみと重みを知ることができました」

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「度重なるケガ、競技者として求められる成果、努力だけでは埋めることのできない体格の差への挑戦など挙げていくとキリがありません」と近年の苦悩を吐露しつつも、「特別なチーム」と語る富士通で得られた経験は「非常に価値のあるものでした」と振り返る。

今後は社業に従事し、「競技を通して、何かを向上させるというプロセスには自信をもって取り組むことができてきたので、そこにまた新たな経験をプラスし、より良いものを、次は仕事を通じて提供する側として活躍できるように精進して参ります」。

8月9日の国スポ青森県代表選手選考競技会、9月7日の法大競技会に出場予定で、地元と母校で「最後となる富士通のユニフォームに、思いを込めて走りたいと思います」と締めくくった。

富士通陸上競技部は8月6日、男子400mハードルの岸本鷹幸が9月7日を持って現役を引退することを発表した。陸上競技部は退部するが、引き続き社に残って勤務をするという。 岸本は1990年生まれの35歳。青森県出身で大平中では110mハードルに取り組むと、大湊高ではバネのあるダイナミックナストライドを武器に400mハードルで飛躍。高3時にはインターハイ、日本ジュニア選手権(現・U20日本選手権)、国体の「高校3冠」を成し遂げた。 法大進学後は、同じ400mハードルで2度の五輪(96年、00年)出場を誇る苅部俊二監督の指導を受け、世界へと進出した。3年だった2011年には日本選手権で初優勝を飾ると、テグ世界選手権でシニア世界大会にデビューするといきなり準決勝に進出。翌年からはロンドン五輪、13年モスクワ世界選手権、15年北京世界選手権と世界大会4連続で代表入りを果たし、モスクワ世界選手権ではセミファイナルに進出した。 ケガなども重なり、その後は世界の舞台から遠ざかったものの、22年オレゴン、23年ブダペストと世界選手権に2大会連続出場で復活。日本の“お家芸”400mハードルを長く牽引した。日本選手権は11年からの4連覇を含む5度の優勝。12年日本選手権で出した48秒41が生涯ベストで、現在も日本歴代6位として残る。 岸本はチームのホームページに「小学生時代から26年続けた陸上競技を引退することを決断しました」と報告し、思いを綴った。 「私自身、競技をやり尽くしたという気持ちが大きく、『もうこれ以上は無理』』というところまで競技を続けることができました。競技者としてこれ以上の幸せなことはないと思います。これも、支え続けてくれた方々の力に他なりません。競技者として、年齢を重ねれば重ねるほど、そのありがたみと重みを知ることができました」 「度重なるケガ、競技者として求められる成果、努力だけでは埋めることのできない体格の差への挑戦など挙げていくとキリがありません」と近年の苦悩を吐露しつつも、「特別なチーム」と語る富士通で得られた経験は「非常に価値のあるものでした」と振り返る。 今後は社業に従事し、「競技を通して、何かを向上させるというプロセスには自信をもって取り組むことができてきたので、そこにまた新たな経験をプラスし、より良いものを、次は仕事を通じて提供する側として活躍できるように精進して参ります」。 8月9日の国スポ青森県代表選手選考競技会、9月7日の法大競技会に出場予定で、地元と母校で「最後となる富士通のユニフォームに、思いを込めて走りたいと思います」と締めくくった。

「『これ以上は無理』』というところまでできた。競技者としてこれ以上の幸せはない」岸本鷹幸のコメント全文はこちら

競技引退のご挨拶:お世話になりました全ての皆さまへ この度、小学生時代から26年続けた陸上競技を引退することを決断しました。 同時に、約12年所属しました富士通陸上競技部を退部することとなりました。  まずは競技を最も長く、そして1番に応援してくれた両親や実家家族をはじめ、心の拠り所である妻や子供達、常に道を示し続けて下さった苅部俊二監督(法政大学陸上競技部監督)、長きにわたり競技に集中させていただいた富士通株式会社に心より御礼申し上げます。  私自身、競技をやり尽くしたという気持ちが大きく、「もうこれ以上は無理だ」というところまで競技を続けることができました。競技者としてこれ以上の幸せなことはないと思います。これも、支え続けてくれた方々の力に他なりません。競技者として、年齢を重ねれば重ねるほど、そのありがたみと重みを知ることができました。  競技を振り返ると、辛い経験の方がはるかに多かったと感じます。度重なるケガ、競技者として求められる成果、努力だけでは埋めることのできない体格の差への挑戦など挙げていくとキリがありません。  この富士通陸上競技部というチームは国内屈指の強豪チームです。先輩方のアドバイスも、常に世界やその先のことを見据えたこと、その取り組みの中で得られた経験や知識のなかで良かったこと、取り組んでおけば良かったこと等、非常に価値のあるものでした。  また同時に、強豪チームであり日本を代表する選手の方々と同じチームに所属するということは、その先輩方が残したものを引き継ぎ、後輩たちに残していく必要があるということにもなります。私に先輩方と同じような価値を残すことができるのか・・・この葛藤が競技を続けていく中で徐々に大きくなっていきました。  私にとって富士通陸上競技部というチームは特別で、往年の陸上ファンや同世代の方々であれば共感いただけるかと思いますが「テレビの中にいるチーム」です。所属して競技をするのではなく、観て楽しむチーム、赤いユニフォームの人は速いし強い、というとご想像いただけるかと思います。  小中学・高校・大学と指導者に恵まれ、たまたま各要所で結果を残すことができました。そして、気が付いたら「テレビの中にいるチーム」に自分がいました。初めてそのユニフォームに袖を通したときも、全く実感がありませんでした。  そして怒涛の月日は流れ、先輩方が次のステージへと向かうのを見届けていくうちに、気が付くと「テレビの中のチーム」を築いていた方々はもういませんでした。そこでようやく私はこのチームの価値を落としてはいけないと強く認識するようになり、より結果を意識した行動へと移っていくことになります。  当時は、国内でいくら強かろうと、世界的にみれば平凡な選手であることは自分が一番よくわかっていました。富士通のブランドを守ることと自身の不甲斐なさとのジレンマが何よりも辛かったと感じます。  ここで、良かった方に焦点を当てると、私は運がとても良いと自分で思います。競技結果や代表選考もさておき、なによりも私を支えて下さる方々が本当に心強いです。そのような方々に出会えたこと、そして力を貸して下さること、これは努力だけでは叶えることができない部分だと思います。  今後は嫌というほど鍛えた身体を少し休ませ、社会人としての心と能力を鍛えていこうと思います。競技を通して、何かを向上させるというプロセスには自信をもって取り組むことができてきたので、そこにまた新たな経験をプラスし、より良いものを、次は仕事を通じて提供する側として活躍できるように精進して参ります。 最後に競技のご報告として、  ・8月9日(土曜日):国スポ青森県代表選手選考競技会(新青森県総合運動公園陸上競技場)  ・9月7日(日曜日):法政大学競技会(法政大学多摩キャンパス 陸上競技場) 上記2試合を予定しております。 最後となる富士通のユニフォームに、思いを込めて走りたいと思います。 長くなってしまい大変恐縮ですが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。 今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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