2025.04.30
名門校に入学するも「陸上未経験者は僕だけ」
――中学までサッカー少年だったとうかがっています。
山田 小学校3年生からサッカーを始め、ポジションは主にFW。小さい頃から走ることが大好きで、中学校では陸上部に入りたかったのですが、進んだ中学に陸上部がなくサッカー部に入りました。
――高校に入学して陸上部に入部されました。西脇工と言えば高校長距離で全国的に有名です。
山田 中学でできなかったこともあり、高校では陸上がやりたいと陸上部の門を叩きました。西脇工が強豪というのは知っていましたが、陸上をやりたいという気持ちだけで、入った後のことまでは、あまり深く考えていませんでした。同じ学年には中学時代に全国大会で活躍した選手が多く、陸上未経験者は僕だけ。最初は戸惑うことも多く、なかなか練習にもついていけず大変でした。
――寮生活を送る部員もいらっしゃいます。山田選手はどうされていますか。
山田 自宅が加東市内なので、学校まで15分~20分かけて自転車で通っています。
――競歩を始めたきっかけは。
山田 西脇工では、ウォーミングアップなどで競歩の動きを取り入れていますが、その動きを見て、顧問の永井(宏明)先生に「競歩に向いている」と勧められたのがきっかけです。中学生の頃に一度だけテレビで競歩を見たことがあり、その時の印象は“地味な競技”というものでした。それでも、おもしろそうという好奇心のほうがあって、1年生から取り組むことにしました。
――実際、練習に取り組んでみていかがでしたか。
山田 始める前は楽そうに感じていましたが、脚への負担も大きく、息も苦しくなるなど、見ているのと実際にやってみるのとでは大きく違って、最初は苦しかったです。
――その後は7月下旬の県高校ユース選手権支部予選に始まり、県高校ユース選手権、そして近畿高校ユース選手権(1年の部)といずれも優勝しています。
山田 永井先生の言葉を信じて取り組んできましたが、近畿ユースで優勝できたのは本当にうれしかったです。それまでは、大きな大会にも出たことすらなかったので、そこで優勝できたことで、ますます気持ちが入ったのは確かです。
――近畿ユースの2ヵ月後のレースでタイムも一気に21分台(21分24秒65)に突入しました。
山田 近畿ユースを制したことで自信が持てたことが大きかったと思います。練習にも、それまで以上に力が入るようになりましたし、腕振りや歩型も考えて取り組めるようになりました。記録も伸びていたので、先生に勧められて良かったと日々感じながら過ごしていました。

24年国民スポーツ大会で優勝した山田選手
――昨年から大きな大会でしっかり結果を残してきました。試合での集中力の高め方、ルーティンなどはありますか。
山田 実は、試合でほとんど緊張しません。空き時間なども音楽を聞いたりすることもなく、平常心を保ちつつ、リラックスして過ごしています。気をつけているのはウォーミングアップの最初のストロール(割と遅めのペースで歩くこと。競走種目で例えるとジョギングのようなもの)の時に、速く正確な動きをするようにしています。
――休日など練習がない日はどう過ごしているか、教えてください。
山田 山西さんの動画を見ることもあれば、中2の時から飼い始めた猫と一緒に遊んだり戯れたり、リラックスしていることが多いです。また、マンガを読んだり、ゲームをすることはほとんどありませんが、最近では映画『アンダーニンジャ』にハマってよく観ています。
――山田選手が思う競歩の魅力とは。
山田 実感していることですが、距離も練習時間も長く、ほかの種目や競技と比べて地味に思われがちですが、そのぶん、練習すればするだけ、タイムも短縮できる種目だと思います。
――今、考えている将来の目標や夢はありますか。
山田 競技を続けていって、世界大会などで活躍できる選手になりたいです。シニアからは距離が一気に伸びるので、それに対応できるようにしっかり体力作りとスタミナ強化に励みたいと思っています。将来的には引退後も競歩に関わった仕事ができればと考えています。
構成/花木雫
持久力強化と安定した歩型に手応え
――昨年は5000m競歩で夏のインターハイで2位。国スポ少年共通で高2歴代6位となる20分17秒88の好タイムで全国初タイトルを獲得されるなど急成長のシーズンでした。 山田 優勝を目指していたインターハイで2位と悔しい思いをしたので、秋の国スポでは絶対に優勝するという強い気持ちで挑みました。インターハイ後は、得意のスピードに磨きをかけるべく、400mや1000mのインターバルなどに取り組んできました。もともと、前で引っ張るレースを理想としているので、国スポでは自分でレースを作って勝ち切りたいと思っていた通りのレースで、インターハイで敗れた選手を抑えて自己ベストで優勝することができて、とてもうれしかったです。 ――その結果を踏まえて、冬季練習はどんなことに取り組んできましたか。 山田 課題の持久力強化と、歩型の安定に重点を置いて取り組んできました。普段から15~17kmの歩き込みに加え、週末には20kmなどもこなしてきました。現在、競歩ブロックは2人で練習しています。 ――技術面ではいかがですか。 山田 歩型面では、足が浮いてしまうロス・オブ・コンタクトを取られることが多かったので、地面を押した後に自然に戻す、動きにロスの少ないスムーズさを心掛けてきました。その成果もあって、長い距離(10km)の3月の能美大会(3月16日の全日本競歩能美大会)でも優勝(42分33秒)することができました。 ――3年生最初のレースとなった4月5日の兵庫県高校東播地区記録会5000m競歩でも高校生7人目の19分台となる19分57秒40をマーク。これは高校歴代6位の好タイムです。 山田 取り組んできたことをかたちにできたのは良かったです。タイムとしては、レース直後は、「このあたりが今の限界かな」と思いましたが、さらに得意のスピードを磨き、課題のスタミナをもっと強化できれば、同じ兵庫出身の住所さん(大翔・飾磨工/現・富士通)の持つ高校記録(19分29秒84)の更新も可能だと手応えを感じています。 ――高校記録の更新という目標が出ましたが、その他の目標はありますか。 山田 昨年2位だったインターハイで高校記録を出して優勝することが今の一番の目標です。暑さも気にしないので、しっかりコンディション合わせて臨めればと考えています。 ――歩型など参考にしている選手がいれば、教えてください。 山田 山西(利和)選手(愛知製鋼)です。2月の日本選手権20㎞競歩で世界記録をマークされた時も同じところで試合(U20選抜競歩大会)があったので会場にいましたが、そのきれいで速い動きに魅せられました。普段からその時の動画を見て歩型の参考にさせてもらっています。名門校に入学するも「陸上未経験者は僕だけ」
――中学までサッカー少年だったとうかがっています。 山田 小学校3年生からサッカーを始め、ポジションは主にFW。小さい頃から走ることが大好きで、中学校では陸上部に入りたかったのですが、進んだ中学に陸上部がなくサッカー部に入りました。 ――高校に入学して陸上部に入部されました。西脇工と言えば高校長距離で全国的に有名です。 山田 中学でできなかったこともあり、高校では陸上がやりたいと陸上部の門を叩きました。西脇工が強豪というのは知っていましたが、陸上をやりたいという気持ちだけで、入った後のことまでは、あまり深く考えていませんでした。同じ学年には中学時代に全国大会で活躍した選手が多く、陸上未経験者は僕だけ。最初は戸惑うことも多く、なかなか練習にもついていけず大変でした。 ――寮生活を送る部員もいらっしゃいます。山田選手はどうされていますか。 山田 自宅が加東市内なので、学校まで15分~20分かけて自転車で通っています。 ――競歩を始めたきっかけは。 山田 西脇工では、ウォーミングアップなどで競歩の動きを取り入れていますが、その動きを見て、顧問の永井(宏明)先生に「競歩に向いている」と勧められたのがきっかけです。中学生の頃に一度だけテレビで競歩を見たことがあり、その時の印象は“地味な競技”というものでした。それでも、おもしろそうという好奇心のほうがあって、1年生から取り組むことにしました。 ――実際、練習に取り組んでみていかがでしたか。 山田 始める前は楽そうに感じていましたが、脚への負担も大きく、息も苦しくなるなど、見ているのと実際にやってみるのとでは大きく違って、最初は苦しかったです。 ――その後は7月下旬の県高校ユース選手権支部予選に始まり、県高校ユース選手権、そして近畿高校ユース選手権(1年の部)といずれも優勝しています。 山田 永井先生の言葉を信じて取り組んできましたが、近畿ユースで優勝できたのは本当にうれしかったです。それまでは、大きな大会にも出たことすらなかったので、そこで優勝できたことで、ますます気持ちが入ったのは確かです。 ――近畿ユースの2ヵ月後のレースでタイムも一気に21分台(21分24秒65)に突入しました。 山田 近畿ユースを制したことで自信が持てたことが大きかったと思います。練習にも、それまで以上に力が入るようになりましたし、腕振りや歩型も考えて取り組めるようになりました。記録も伸びていたので、先生に勧められて良かったと日々感じながら過ごしていました。 [caption id="attachment_168479" align="alignnone" width="800"]
山田大智選手のプロフィールをチェック!
◎やまだ・だいち/2007年4月23日生まれ。兵庫県加東市出身。滝野中(兵庫)→西脇工(兵庫)。小学生時代はサッカー少年。中学でもそのままサッカー部に所属した。陸上は高校からで、最初は800mと1500mに取り組んだが、夏の新人戦(県ユース選手権)に向けて競歩へ転向。5000m競歩で次々と大会を制し、強豪ぞろいの23年近畿高校ユース選手権1年の部でも優勝する快進撃を見せた。ロード10㎞でも、24年3月の全日本能美大会高校の部で3位、U20の部でも7位と健闘。2年生を迎えると昨年のインターハイは2位、国民スポーツ大会で初の全国タイトルを獲得した。25年3月の全日本競歩能美大会で優勝。4月に5000m競歩で高校生7人目の19分台をマークするなど今季注目のウォーカーの1人。自己ベストは5000m競歩19分57秒40(25年)、10㎞競歩42分33秒(25年) [caption id="attachment_168432" align="alignnone" width="800"]
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