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2020.11.20

【学生長距離Close-upインタビュー】全日本で快走 皇學館大・川瀬 成長の原動力は “負けて”感じた「おもしろさ」
【学生長距離Close-upインタビュー】全日本で快走 皇學館大・川瀬 成長の原動力は “負けて”感じた「おもしろさ」

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川瀬翔矢 Kawase Shoya 皇學館大学4年

全日本2区区間賞の川瀬

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。3回目は、全日本大学駅伝で快走を見せた皇學館大の川瀬翔矢を取材した。

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 今年の全日本大学駅伝で、関東の有力大学を相手に2区区間賞を獲得したのが皇學館大の川瀬。地元・三重で見せた走りに大きな注目が集まった。高校時代は“無名”だった男は、「世界」を目指すランナーへと成長。この1年間の成長の原動力となったのは、1年前の「負け」だった。

東海学連所属選手で30年ぶりの区間賞

 11月1日に行われた学生駅伝で全国の頂点を決める戦い、全日本大学駅伝の2区で皇學館大の川瀬翔矢(4年)が快走した。

「川瀬が3位集団につきました!」「なんと21位から17人抜き!」

 アナウンサーの声が思わず高ぶってしまうほど、地元・三重での快走は観る者を魅了した。

 目標は「区間記録樹立と先頭を走ること」。川瀬は先頭から39秒差の21位でタスキを受けた。わずか2kmで4人を抜くと、6km過ぎには青学大と東洋大に並び、8位集団を形成。その後、3位の早大と1秒差の4位まで追い上げた。区間2位の菊地駿弥(城西大4年)に10秒以上の差をつけ、11.1kmを31分24秒で走破。東海地区の学生としては1990年大会1区の許績勝(名商大/台湾、後にアトランタ五輪出場)以来、30年ぶりの区間賞を獲得した。

「区間賞を取ることができて、ひと安心しました。区間記録(31分17秒)までもう一歩だったので、悔しい部分もあります。でも、基本的には力を発揮でき、結果を出せたことには満足しています」

 川瀬はこの1年間、速さに加えて“強さ”を求めてきた。その原動力となったのが昨年の全日本での経験。大会前の5000mで2年ぶりに自己ベストとなる13分49秒25をマークし、「やってきたことが成果となって、ようやく前に進めた」と勢いに乗って伊勢路に乗り込んだ。

 先頭とは約30秒差。1学年上の東京国際大・伊藤達彦(現・Honda)と、ほぼ同時に飛び出した。最初は食らいついたものの、最終的には区間賞(31分17秒)を獲得した伊藤とは1分近くの差がつく32分04秒の区間11位に終わった。

昨年は伊藤(中央)に食らいついたものの力の差を痛感した(JMPA)

 意気揚々と関東勢に挑んだ結果、跳ね返されたわけだが、川瀬の胸にはこんな感情が浮かんだという。

「おもしろい」

 先頭が見えながらも、後半失速してしまった部分に実力不足を痛感しながらも、「5000mで13分49秒のタイムを持っていても通用しなくて、それで陸上がおもしろくなったんです」と言う。「2区か3区で先頭まで持っていく走り」を目標に掲げ、トラックのタイムだけではない“強さ”を求めてきたこの1年。その成果を最後の伊勢路でしっかりと体現した。

コツコツと4年間で成長

箱根駅伝常連校の選手たちを抑え、東海地区の選手が区間賞を獲得したことで注目を集めたが、川瀬は元々学生選手の中でトップクラスの力を持っていた。

 昨年は、全日本から1ヵ月も経たぬうちに、5000mで自己ベストをさらに13秒更新する13分36秒93を叩き出すと、続く翌週の八王子ロングディスタンスでは10000m28分26秒37をマーク。そして今年2月の香川丸亀ハーフマラソンでは現役日本人学生最高となる1時間1分18秒をマーク。3種目の東海学生記録保持者となった。さらに9月の日本インカレ男子5000mでは2位に入り、5000mと10000mは13分32秒73、28分18秒25にまで短縮している。

 学生トップランナーとして活躍し、駅伝でも関東主要大学のエース級と互角に渡り合うようになった川瀬だが、三重・近大高専時代は全国区ではなかった。インターハイ路線は1500mが東海大会止まり、5000mは三重県大会で敗退。当時、川瀬が全国トップクラスの選手となることをどれだけの人が想像していただろうか。

「当たり前のことをコツコツやってきた結果です」。大学4年間で大きく成長した理由についてこう語る。「特別にすごい練習をしてきたわけではない」と強調するが、「たくさんのレースに出ていっぱいチャレンジした」のも成長した要因の一つだ。今季はコロナ禍にあって7月のシーズンイン以降、記録会を中心に多くのレースに出場。全日本の5日前にも1500mで3分45秒66の自己新を出すなど、実戦を積んで力をつけた。

 高校時代と比較すると練習面、生活面すべてにおいて変化があった。走る距離が増えたのはもちろん、意識的に食事量を増やして身体作りに注力。故障したことが契機となり、3年になった頃から週1回の頻度で治療院に行くなど、自身の身体と向き合うようになったという。そして何より、「結果が出なくてもいいわけをしなくなった」と話すように、精神的な成長も競技面の向上につながっている。

コツコツトレーニングを続けた結果、大きく成長を遂げた(本人提供)

 入学当初から描いていた4年間のビジョンを日比勝俊監督とともに描き、「日の丸を背負いたい」という思いは持っていた。だが、あくまでターゲットは世界ハーフマラソン選手権や世界大学クロスカントリー選手権大会での代表選抜。「予定通りだった」というように、今年3月に開催予定だった世界大学クロカンの日本代表にも選出された(コロナ禍のため大会中止)。

 関東の強豪大学に進学しなくても、“コツコツやる”ことで大きく成長できることを4年間かけて証明した川瀬。卒業までに残された時間はわずかだが、最後に日比監督と5000m13分30秒切り、10000m27分台を狙いにいく。

“学生レベル”の代表が目標だった川瀬も、今では明確に五輪や世界選手権という目標を掲げている。来春からは実業団で競技を続け、「5000mか10000mでオリンピックや世界選手権に出場すること」がターゲット。「1500mからハーフマラソンまで全部やりたいです。ハーフマラソンの日本記録(60分00秒)も狙いたい」と、オールラウンダーとして活躍する青写真を描いている。

 学生生活最後の大舞台は12月4日の日本選手権。東海学生長距離界が誇るエースは、国内トップ選手に戦いを挑む。これが、世界へ挑戦するための大きなステップとなる。

◎かわせ・しょうや/1998年7月19日生まれ。三重県出身。172cm、51kg。近大高専→皇學館大。自己記録1500m3分45秒66、5000m13分32秒73、10000m28分18秒25、ハーフマラソン1時間1分18秒。1500m以外はすべて東海学生記録。卒業後は実業団で競技を続ける予定。

文/野田しほり

ビュー 川瀬翔矢 Kawase Shoya 皇學館大学4年 全日本2区区間賞の川瀬 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。3回目は、全日本大学駅伝で快走を見せた皇學館大の川瀬翔矢を取材した。  今年の全日本大学駅伝で、関東の有力大学を相手に2区区間賞を獲得したのが皇學館大の川瀬。地元・三重で見せた走りに大きな注目が集まった。高校時代は“無名”だった男は、「世界」を目指すランナーへと成長。この1年間の成長の原動力となったのは、1年前の「負け」だった。

東海学連所属選手で30年ぶりの区間賞

 11月1日に行われた学生駅伝で全国の頂点を決める戦い、全日本大学駅伝の2区で皇學館大の川瀬翔矢(4年)が快走した。 「川瀬が3位集団につきました!」「なんと21位から17人抜き!」  アナウンサーの声が思わず高ぶってしまうほど、地元・三重での快走は観る者を魅了した。  目標は「区間記録樹立と先頭を走ること」。川瀬は先頭から39秒差の21位でタスキを受けた。わずか2kmで4人を抜くと、6km過ぎには青学大と東洋大に並び、8位集団を形成。その後、3位の早大と1秒差の4位まで追い上げた。区間2位の菊地駿弥(城西大4年)に10秒以上の差をつけ、11.1kmを31分24秒で走破。東海地区の学生としては1990年大会1区の許績勝(名商大/台湾、後にアトランタ五輪出場)以来、30年ぶりの区間賞を獲得した。 「区間賞を取ることができて、ひと安心しました。区間記録(31分17秒)までもう一歩だったので、悔しい部分もあります。でも、基本的には力を発揮でき、結果を出せたことには満足しています」  川瀬はこの1年間、速さに加えて“強さ”を求めてきた。その原動力となったのが昨年の全日本での経験。大会前の5000mで2年ぶりに自己ベストとなる13分49秒25をマークし、「やってきたことが成果となって、ようやく前に進めた」と勢いに乗って伊勢路に乗り込んだ。  先頭とは約30秒差。1学年上の東京国際大・伊藤達彦(現・Honda)と、ほぼ同時に飛び出した。最初は食らいついたものの、最終的には区間賞(31分17秒)を獲得した伊藤とは1分近くの差がつく32分04秒の区間11位に終わった。 昨年は伊藤(中央)に食らいついたものの力の差を痛感した(JMPA)  意気揚々と関東勢に挑んだ結果、跳ね返されたわけだが、川瀬の胸にはこんな感情が浮かんだという。 「おもしろい」  先頭が見えながらも、後半失速してしまった部分に実力不足を痛感しながらも、「5000mで13分49秒のタイムを持っていても通用しなくて、それで陸上がおもしろくなったんです」と言う。「2区か3区で先頭まで持っていく走り」を目標に掲げ、トラックのタイムだけではない“強さ”を求めてきたこの1年。その成果を最後の伊勢路でしっかりと体現した。

コツコツと4年間で成長

箱根駅伝常連校の選手たちを抑え、東海地区の選手が区間賞を獲得したことで注目を集めたが、川瀬は元々学生選手の中でトップクラスの力を持っていた。  昨年は、全日本から1ヵ月も経たぬうちに、5000mで自己ベストをさらに13秒更新する13分36秒93を叩き出すと、続く翌週の八王子ロングディスタンスでは10000m28分26秒37をマーク。そして今年2月の香川丸亀ハーフマラソンでは現役日本人学生最高となる1時間1分18秒をマーク。3種目の東海学生記録保持者となった。さらに9月の日本インカレ男子5000mでは2位に入り、5000mと10000mは13分32秒73、28分18秒25にまで短縮している。  学生トップランナーとして活躍し、駅伝でも関東主要大学のエース級と互角に渡り合うようになった川瀬だが、三重・近大高専時代は全国区ではなかった。インターハイ路線は1500mが東海大会止まり、5000mは三重県大会で敗退。当時、川瀬が全国トップクラスの選手となることをどれだけの人が想像していただろうか。 「当たり前のことをコツコツやってきた結果です」。大学4年間で大きく成長した理由についてこう語る。「特別にすごい練習をしてきたわけではない」と強調するが、「たくさんのレースに出ていっぱいチャレンジした」のも成長した要因の一つだ。今季はコロナ禍にあって7月のシーズンイン以降、記録会を中心に多くのレースに出場。全日本の5日前にも1500mで3分45秒66の自己新を出すなど、実戦を積んで力をつけた。  高校時代と比較すると練習面、生活面すべてにおいて変化があった。走る距離が増えたのはもちろん、意識的に食事量を増やして身体作りに注力。故障したことが契機となり、3年になった頃から週1回の頻度で治療院に行くなど、自身の身体と向き合うようになったという。そして何より、「結果が出なくてもいいわけをしなくなった」と話すように、精神的な成長も競技面の向上につながっている。 コツコツトレーニングを続けた結果、大きく成長を遂げた(本人提供)  入学当初から描いていた4年間のビジョンを日比勝俊監督とともに描き、「日の丸を背負いたい」という思いは持っていた。だが、あくまでターゲットは世界ハーフマラソン選手権や世界大学クロスカントリー選手権大会での代表選抜。「予定通りだった」というように、今年3月に開催予定だった世界大学クロカンの日本代表にも選出された(コロナ禍のため大会中止)。  関東の強豪大学に進学しなくても、“コツコツやる”ことで大きく成長できることを4年間かけて証明した川瀬。卒業までに残された時間はわずかだが、最後に日比監督と5000m13分30秒切り、10000m27分台を狙いにいく。 “学生レベル”の代表が目標だった川瀬も、今では明確に五輪や世界選手権という目標を掲げている。来春からは実業団で競技を続け、「5000mか10000mでオリンピックや世界選手権に出場すること」がターゲット。「1500mからハーフマラソンまで全部やりたいです。ハーフマラソンの日本記録(60分00秒)も狙いたい」と、オールラウンダーとして活躍する青写真を描いている。  学生生活最後の大舞台は12月4日の日本選手権。東海学生長距離界が誇るエースは、国内トップ選手に戦いを挑む。これが、世界へ挑戦するための大きなステップとなる。 ◎かわせ・しょうや/1998年7月19日生まれ。三重県出身。172cm、51kg。近大高専→皇學館大。自己記録1500m3分45秒66、5000m13分32秒73、10000m28分18秒25、ハーフマラソン1時間1分18秒。1500m以外はすべて東海学生記録。卒業後は実業団で競技を続ける予定。 文/野田しほり

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