HOME 駅伝

2024.11.04

総合力際立つ國學院大 当初のプラン変更が的中 「8人がしっかり役割を果たした」/全日本大学駅伝
総合力際立つ國學院大 当初のプラン変更が的中 「8人がしっかり役割を果たした」/全日本大学駅伝

全日本大学駅伝で初優勝を果たした國學院大の選手たち

◇第56回全日本大学駅伝(11月3日/愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮:8区間106.8km)

駅伝の学生ナンバーワンを決める全日本大学駅伝が行われ、國學院大が5時間09分56秒で初優勝。10月の出雲駅伝に続き、今季の学生駅伝2冠を果たした。

一戦必勝――。全力で狙いにいった優勝だった。

「勝つ時に勝つというのは大事なことだと思っているので、箱根のことを考えながら全日本を戦うなんてことはない。出雲は出雲、全日本は全日本、全力で獲りにいきました」

10月の出雲駅伝に続き、全日本大学駅伝を制した國學院大の前田康弘監督は、勝利を手にした後、こう口にしていた。

実は伊勢路に挑むオーダーは出雲駅伝の前から決めていたという。

広告の下にコンテンツが続きます

当初のプランから変更があったのは、アンカーを予定していた高山豪起(3年)を4区に回し、上原琉翔(同)をアンカーに据えたことぐらいだ。「出雲後の練習で、アンカーを予定していた高山がいまいち良くなかったので。琉翔で行こうって直感で決めました」

ほぼプラン通りのオーダーで臨んだ。暑くなることが予想されたことも、正午過ぎにスタートする8区に、沖縄県出身で暑さに強い上原を配した理由の一つだった。結果的にアンカー勝負となり、日差しも照り付けて気温が上昇。指揮官の策は見事に的中したと言える。

加えて、優勝の決め手となったのは、5区、6区だっただろう。「つなぎ区間には自信があります。5区、6区で攻められる」。レース前日に前田監督がこう話していた通りの展開になった。

4区を終えた時点では、先頭に立った青学大に1分27秒差をつけられて3位だった。だが、指揮官にとっては、「4区に黒田(朝日、3年)君が来たところで、1分はやられると思っていた。そこは覚悟の上です」と、1分超の差は織り込み済み。後半区間に入って怒涛の追い上げを見せた。

5区を任されたのは2年生の野中恒亨。前回は当日変更で走れず、その悔しさがあって「(今回は)リベンジのつもりで走りました」と言う。前田監督から「ちゃんと攻めてこい」と言われた通りに、序盤から積極的な走りを見せた。

野中自身は「後半もっと伸びていたら(6区の山本)歩夢さん(4年)がもっと楽に走れたと思います」と反省を口にしたが、区間賞の走りで2位に浮上し、青学大には一気に41秒差にまで詰め寄った。

さらに、6区の山本が激走する。「去年は2区を走ってブレーキをしてしまいチームに迷惑をかけた。その悔しさをもってこの大会に臨みました。チームの攻め駒としてしっかり前との差を縮めて、(7区の)平林(清澄、4年)と(8区の)上原に楽をさせてあげようと思って走りました」

3km過ぎに右脇腹の痛みに見舞われながらも冷静に対処すると、後半にぐんぐんと青学大に迫り、最後は4秒差でタスキをつないだ。山本は区間新記録を打ち立て、大会MVPにも輝いた。

昨年の伊勢路で悔しい思いを味わった野中と山本が、その雪辱を果たし、初優勝を一気に手繰り寄せた。そして、7区の平林がこの差を守り、8区の上原は中間点を前に青学大の塩出翔太(3年)を振り切り、初優勝のフィニッシュテープを切った。

「全員駅伝の勝利だと思っています。1人が良かったわけではなくて、8人がしっかり役割を果たしたからこそ、総合力で1位になれたんじゃないかと思っています」

前田監督が走った選手たちをこう称えた。そのとおり、今季は國學院大の総合力が際立つ。

実際、今回走った8人の他に箱根駅伝経験者が6人も控える。さらには、その他の選手も力をつけており、箱根のメンバー争いも熾烈だ。

これで学生駅伝2冠。史上6校目の大学三大駅伝3冠に王手をかけた。箱根駅伝でも優勝争いの軸になる。

文/和田悟志

◇第56回全日本大学駅伝(11月3日/愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮:8区間106.8km) 駅伝の学生ナンバーワンを決める全日本大学駅伝が行われ、國學院大が5時間09分56秒で初優勝。10月の出雲駅伝に続き、今季の学生駅伝2冠を果たした。 一戦必勝――。全力で狙いにいった優勝だった。 「勝つ時に勝つというのは大事なことだと思っているので、箱根のことを考えながら全日本を戦うなんてことはない。出雲は出雲、全日本は全日本、全力で獲りにいきました」 10月の出雲駅伝に続き、全日本大学駅伝を制した國學院大の前田康弘監督は、勝利を手にした後、こう口にしていた。 実は伊勢路に挑むオーダーは出雲駅伝の前から決めていたという。 当初のプランから変更があったのは、アンカーを予定していた高山豪起(3年)を4区に回し、上原琉翔(同)をアンカーに据えたことぐらいだ。「出雲後の練習で、アンカーを予定していた高山がいまいち良くなかったので。琉翔で行こうって直感で決めました」 ほぼプラン通りのオーダーで臨んだ。暑くなることが予想されたことも、正午過ぎにスタートする8区に、沖縄県出身で暑さに強い上原を配した理由の一つだった。結果的にアンカー勝負となり、日差しも照り付けて気温が上昇。指揮官の策は見事に的中したと言える。 加えて、優勝の決め手となったのは、5区、6区だっただろう。「つなぎ区間には自信があります。5区、6区で攻められる」。レース前日に前田監督がこう話していた通りの展開になった。 4区を終えた時点では、先頭に立った青学大に1分27秒差をつけられて3位だった。だが、指揮官にとっては、「4区に黒田(朝日、3年)君が来たところで、1分はやられると思っていた。そこは覚悟の上です」と、1分超の差は織り込み済み。後半区間に入って怒涛の追い上げを見せた。 5区を任されたのは2年生の野中恒亨。前回は当日変更で走れず、その悔しさがあって「(今回は)リベンジのつもりで走りました」と言う。前田監督から「ちゃんと攻めてこい」と言われた通りに、序盤から積極的な走りを見せた。 野中自身は「後半もっと伸びていたら(6区の山本)歩夢さん(4年)がもっと楽に走れたと思います」と反省を口にしたが、区間賞の走りで2位に浮上し、青学大には一気に41秒差にまで詰め寄った。 さらに、6区の山本が激走する。「去年は2区を走ってブレーキをしてしまいチームに迷惑をかけた。その悔しさをもってこの大会に臨みました。チームの攻め駒としてしっかり前との差を縮めて、(7区の)平林(清澄、4年)と(8区の)上原に楽をさせてあげようと思って走りました」 3km過ぎに右脇腹の痛みに見舞われながらも冷静に対処すると、後半にぐんぐんと青学大に迫り、最後は4秒差でタスキをつないだ。山本は区間新記録を打ち立て、大会MVPにも輝いた。 昨年の伊勢路で悔しい思いを味わった野中と山本が、その雪辱を果たし、初優勝を一気に手繰り寄せた。そして、7区の平林がこの差を守り、8区の上原は中間点を前に青学大の塩出翔太(3年)を振り切り、初優勝のフィニッシュテープを切った。 「全員駅伝の勝利だと思っています。1人が良かったわけではなくて、8人がしっかり役割を果たしたからこそ、総合力で1位になれたんじゃないかと思っています」 前田監督が走った選手たちをこう称えた。そのとおり、今季は國學院大の総合力が際立つ。 実際、今回走った8人の他に箱根駅伝経験者が6人も控える。さらには、その他の選手も力をつけており、箱根のメンバー争いも熾烈だ。 これで学生駅伝2冠。史上6校目の大学三大駅伝3冠に王手をかけた。箱根駅伝でも優勝争いの軸になる。 文/和田悟志

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top