2024.10.12
男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)は10月12日からの1泊2日の日程で、中高生の有望選手を集めた「サニブラウントレーニングキャンプ」を開催した。
「今、最前線で走っているからこそ与えられる影響力がある」という思いのもと、自身が取り組んでいること、経験を伝えるためにこのキャンプを考案、実現させたサニブラウン。全国から集まった中高生男女各6名に、その言葉通り、自身の「今」の取り組みを惜しげもなく伝えていった。
初日は午前中に都内のプーマジャパン社に集合し、顔合わせのミーティングを実施。昼食を挟んで、品川区の公園内にあるトラックで、トレーニングを行った。
練習内容は「僕が実際に試合前に行っている刺激」を中心としたメニュー。200mトラックを1周目はジョグ、2周目はスキップなど前後・左右の動きが入ったものを組み合わせたウォーミングアップを行い、ハードルを使った各種ストレッチで身体をほぐしていく。
その後、動き作りのドリルに入ると、サニブラウンの“指導”が徐々に熱を帯びていく。
身体の真下に接地すること、その時の接地はつま先ではなくシューズの前足部あたりであること、腕振りとも連動させること。普段から実践するAスキップ、Bスキップ、ストレートレッグといった基本的なドリルを、自ら実践して見本を示しながら、自身が意識しているポイントを伝えていく。
最後は、スタートの“コツ”を紹介。今季、スタートから「2歩目の動き」の改善によって、全体の流れが劇的に変化したことを例に出しながら、スタートの動きの例を伝えていった。
また、その合間には「何かあったら質問に来ていいよ」「自分から積極的に動くことが大切だよ」「失敗を恐れないこと」と声をかけ、それに中高生たちが反応し、行動に移していく。「腕振りで意識していることは?」「腿はどこまで上げるほうがいいですか?」「スタートで前につんのめることがあるんですが、どうしたらいいですか?」……。
それにサニブラウンが一つひとつ、丁寧に答えていった。「脚を上げるというよりも、下ろす意識が大切だよ」「腕振りはリラックスして、肘を引くというイメージでやっています」「スタートでつまづくことは、それだけ前に進もうとしているので悪いことじゃない。あとは足を真下に着いて、回していくこと」。
その言葉は、サニブラウンがスプリントの中で持つイメージであり、これまでコーチから教わってきて自分の中で感覚として身につけてきたことばかり。「質問してくれたので、そこにちゃんと応えたい」という思いから、1人ひとりの質問に時間をかけて応えていくと、あっという間に予定の時間が過ぎていった。だがそこに、サニブラウンが今回のキャンプにおいて“核”としていることが垣間見える。
「(サニブラウン自身という)完成形がここにあるので、中途半端な技術を教えても仕方ない。しっかりとした知識を伝えたい」
もちろん、「身長も体格も、全員違います」。また、「参加してくれた人たちにはそれぞれ、普段から指導してくれるコーチがいるわけですから、その指導に支障をきたすことはしたくない」と前置きしつつ、「知識として頭の片隅に持っていてほしいと思って」トップアスリートの技術をあえて伝えていったという。
その技術は、サニブラウンが「4、5年かけて身につけたもの」と話すように、技術はすぐに身に着くものではない。だが、「練習でやっていることしか試合で出ないので。人間、誰しもミスはするものですが、練習でなまけていたらそれが試合に出ます。でも、練習で完璧にできていれば試合では身体が覚えているものです」。
サニブラウン自身も、日本陸連ダイヤモンドアスリートをはじめジュニア時代に受けた教育プログラムや海外合宿などをきっかけに、米国留学を決意し、世界的なスプリンターの階段を駆け上がっていった。若い世代にも、続いて世界に飛びたってほしい。そんな思いを、このキャンプで伝えていく。
トレーニングの後はホテルで参加者1人ひとりとのミーティングを実施。最終日の明日は、キャンプの集大成としてサニブラウン主催の公認レース「DAWN GAMES」決勝大会に出場する予定だ。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.08
甲南学園陸上競技部創部100周年式典を開催!中尾恭吾主将「次の100年へつなげたい」
2025.11.08
5000m競歩で山田大智が高校新! 従来の記録を10秒近く更新する19分20秒59
-
2025.11.07
-
2025.11.07
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.03
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.08
甲南学園陸上競技部創部100周年式典を開催!中尾恭吾主将「次の100年へつなげたい」
甲南学園陸上競技部創部100周年記念式典、および記念祝賀会が11月8日、神戸市内のホテルで開催された。 甲南大学、甲南高校・中学校を運営する甲南学園の歴史は1911年の幼稚園創立からスタート。翌年に小学校、1919年に中 […]
2025.11.08
女子5000mで山田桃愛が15分33秒70の自己新 3000mで高3・栃尾佳穂9分11秒48/京都陸協記録会
11月8日、京都市の東寺ハウジングフィールド西京極で第6回京都陸協記録会が行われ、女子5000mでは山田桃愛(しまむら)が15分33秒70の自己新で全体トップとなった。 山田は埼玉県出身の24歳。小学生時代に発症した骨髄 […]
2025.11.08
5000m競歩で山田大智が高校新! 従来の記録を10秒近く更新する19分20秒59
11月8日、兵庫県尼崎市の尼崎市記念公園陸上競技場で第6回尼崎中長距離記録会が行われ、男子5000m競歩で山田大智(西脇工高3兵庫)が19分20秒59の日本高校新記録を樹立した。従来の高校記録は住所大翔(飾磨工高/現・富 […]
2025.11.08
中部・北陸実業団駅伝の区間エントリー発表! 最長4区はトヨタ紡織・西澤侑真、トヨタ自動車・湯浅仁が出場
11月8日、中部実業団連盟と北陸実業団連盟は、ニューイヤー駅伝の予選を兼ねた第65回中部・第55回北陸実業団対抗駅伝(11月9日)の区間エントリーを発表した。 中部では、昨年大会新記録で優勝を果たしたトヨタ紡織が4区(1 […]
2025.11.08
中電工は1区・相葉直紀、6区・北村惇生 中国電力は池田勘汰を6区に起用/中国実業団対抗駅伝
中国実業団連盟は11月8日、第64回中国実業団対抗駅伝(11月9日)の区間エントリーを発表した。 前回大会で3年ぶりの優勝を果たした中電工は、優勝の立役者となった北村惇生を2年連続でエース区間の6区(19km)に登録した […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望