HOME 駅伝

2023.12.30

玉川大・山田桃愛が最後の学生駅伝で区間3位「陸上楽しさ改めて実感した1年」大病、ケガ、メンバー漏れ…挫折乗り越えこれからも走り続ける/富士山女子駅伝
玉川大・山田桃愛が最後の学生駅伝で区間3位「陸上楽しさ改めて実感した1年」大病、ケガ、メンバー漏れ…挫折乗り越えこれからも走り続ける/富士山女子駅伝

23年富士山女子駅伝でタスキをつなぐ玉川大の山田桃愛

◇2023全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、2023年12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km)

2大大学女子駅伝の一つ、富士山女子駅伝が行われ名城大が2時間22分42秒で6連覇を達成した。

総合13位に入った玉川大で2区区間3位と快走したのが日本インカレ3000m障害優勝の山田桃愛(4年)。19位でタスキを受けると12人抜きの力走で7位で中継した。

広告の下にコンテンツが続きます

「全体で5位まで順位を上げたかったので、結構、悔しいです。玉川大は長い距離を走れる選手がまだ育っていないので、なるべく稼いで後半楽にさせてあげたかったのですが、今の自分の力で(そう思うの)はおこがましかったですね」

そう言って笑う表情は悔しさとともに、駅伝を走れた喜びであふれていた。人一倍、“走る”喜びは感じているのかもしれない。

埼玉の市川口高出身。小学校2年から陸上を始めたが、小6の9月に高熱が続いたため病院にかかると、慢性の骨髄性白血病と診断された。4ヵ月は車椅子生活。その後は、身体を戻しては痩せ、また戻して、を繰り返す日々だった。

中1で運動を再開し、バスケットボール部に入った。じっくり走れたのは「駅伝の時期だけ」だった。高校で陸上部へ。大学1年目の夏に寛解状態と診断されたが、今も定期的に検査をして薬は飲み続ける。

昨年は悔しさを味わった1年。秋の日本インカレでは最後の水濠でバランスを崩して転倒。挽回して9位に入ったが、左足を着いた際に第五中足骨を骨折し、ラストスパートで悪化したという。

さらに、富士山女子駅伝ではメンバー入りできず。「応援で前日に入ったんです」。これまでで一番つらかった時期を聞かれると、「前回の富士山で走れなかったこと」。そこから1年。悔しさをバネに成長した今季だった。

3000m障害では日本選手権にも出場。その経験から「もっと大きな舞台で走りたい」と気持ちを高めると、日本インカレではリベンジの優勝を果たした。

そして、1年越しの富士山女子駅伝。「今回は前泊ではなく、何日か前から現地に入らせていただきました。うれしくもあり、悔しくもあり」。

飛躍の1年を振り返り、「走る度にほとんどベスト。陸上の楽しさを改めて実感できました」。つらいことを乗り越えたからこそ、伝えられることがある。

「車椅子からスタートして、大学の最後の最後に結果を出せるようになりました。結果論かもしれないし、私は結果を出せたから言えるのかもしれませんが、あきらめなければ、ちょっとは自分を認められるのかなって。だから、病気を持つ人には、『あきらめずに一緒に頑張ろう』ってお伝えしたいです」

日本インカレでは「未定」としていた卒業後は、地元・埼玉の企業でもある実業団チームで競技を続ける予定で、「富士山の前日に内定をもらったんです」と笑う。

これからも全身全霊をかけて、走る喜びと支えてくれた人たちへの感謝を表現していく。

◇2023全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、2023年12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 2大大学女子駅伝の一つ、富士山女子駅伝が行われ名城大が2時間22分42秒で6連覇を達成した。 総合13位に入った玉川大で2区区間3位と快走したのが日本インカレ3000m障害優勝の山田桃愛(4年)。19位でタスキを受けると12人抜きの力走で7位で中継した。 「全体で5位まで順位を上げたかったので、結構、悔しいです。玉川大は長い距離を走れる選手がまだ育っていないので、なるべく稼いで後半楽にさせてあげたかったのですが、今の自分の力で(そう思うの)はおこがましかったですね」 そう言って笑う表情は悔しさとともに、駅伝を走れた喜びであふれていた。人一倍、“走る”喜びは感じているのかもしれない。 埼玉の市川口高出身。小学校2年から陸上を始めたが、小6の9月に高熱が続いたため病院にかかると、慢性の骨髄性白血病と診断された。4ヵ月は車椅子生活。その後は、身体を戻しては痩せ、また戻して、を繰り返す日々だった。 中1で運動を再開し、バスケットボール部に入った。じっくり走れたのは「駅伝の時期だけ」だった。高校で陸上部へ。大学1年目の夏に寛解状態と診断されたが、今も定期的に検査をして薬は飲み続ける。 昨年は悔しさを味わった1年。秋の日本インカレでは最後の水濠でバランスを崩して転倒。挽回して9位に入ったが、左足を着いた際に第五中足骨を骨折し、ラストスパートで悪化したという。 さらに、富士山女子駅伝ではメンバー入りできず。「応援で前日に入ったんです」。これまでで一番つらかった時期を聞かれると、「前回の富士山で走れなかったこと」。そこから1年。悔しさをバネに成長した今季だった。 3000m障害では日本選手権にも出場。その経験から「もっと大きな舞台で走りたい」と気持ちを高めると、日本インカレではリベンジの優勝を果たした。 そして、1年越しの富士山女子駅伝。「今回は前泊ではなく、何日か前から現地に入らせていただきました。うれしくもあり、悔しくもあり」。 飛躍の1年を振り返り、「走る度にほとんどベスト。陸上の楽しさを改めて実感できました」。つらいことを乗り越えたからこそ、伝えられることがある。 「車椅子からスタートして、大学の最後の最後に結果を出せるようになりました。結果論かもしれないし、私は結果を出せたから言えるのかもしれませんが、あきらめなければ、ちょっとは自分を認められるのかなって。だから、病気を持つ人には、『あきらめずに一緒に頑張ろう』ってお伝えしたいです」 日本インカレでは「未定」としていた卒業後は、地元・埼玉の企業でもある実業団チームで競技を続ける予定で、「富士山の前日に内定をもらったんです」と笑う。 これからも全身全霊をかけて、走る喜びと支えてくれた人たちへの感謝を表現していく。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.08

サニブラウンがU20合宿にサプライズ登場!「みなさんが日本陸上界の未来」期待のジュニア選手たちにエール

有力ジュニア選手が全国から集まるU20オリンピック育成競技者研修合宿が12月4日から7日までの4日間、ナショナルトレーニングセンターで行われた。 選手たちが集合し、開講式が開かれて最初の研修に登場したのが男子短距離のサニ […]

NEWS U20世代トップ選手約60人が4日間合宿! 100mインターハイ2位の菅野翔唯、100mH高校記録保持者・石原南菜ら参加

2025.12.08

U20世代トップ選手約60人が4日間合宿! 100mインターハイ2位の菅野翔唯、100mH高校記録保持者・石原南菜ら参加

ジュニア世代の有力選手が対象の「U20オリンピック育成競技者研修合宿」が12月4~7日の4日間、東京都北区のナショナルトレーニングセンターで行われた。 インターハイやU20日本選手権、U18大会などで上位に入った高校生や […]

NEWS 富士山女子駅伝の全日本大学選抜に立教大・小川陽香、明治国際医療大・古西亜海ら12人選出

2025.12.08

富士山女子駅伝の全日本大学選抜に立教大・小川陽香、明治国際医療大・古西亜海ら12人選出

日本学生陸上競技連合は12月8日、2025全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)に出場する全日本大学選抜チームの選手を発表した。 全日本大学選抜チームは全国8地区学連(北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国四国、 […]

NEWS 2026年関東インカレは5月21日~24日に宇都宮で初開催! 参加標準記録も発表

2025.12.08

2026年関東インカレは5月21日~24日に宇都宮で初開催! 参加標準記録も発表

12月8日、関東学連は2026年の関東インカレを、栃木県宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎで5月21日から24日に開催すると発表した。 関東の学生ナンバーワンを決める関東インカレは、来年で第105回を迎える伝統の対校戦。 […]

NEWS 女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

2025.12.08

女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

女子400mのアジア記録保持者、S.E.ナセル(バーレーン)がアディダスとのプロ契約を結んだことを発表した。自身のSNSで契約締結に関して「新たな挑戦と歴史的偉業に向け、アディダスの献身的な取り組みとパートナーシップは極 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top