2022.11.14
第300回日体大長距離競技会の男子5000m最終組で、特大の高校新記録が誕生した。主役の名は吉岡大翔(佐久長聖高3長野)。高校生初の13分30秒切りとなる13分22秒99をマークし、佐藤圭汰(洛南高・京都/現・駒大)の持つ従来の高校記録(13分31秒19)を8秒以上も更新した。
30分ほど前までザーザー降りだった雨が小降りになり、風もぴたりと止む。まるで吉岡の大記録樹立をお膳立てするような絶好のコンディションでスタートした。
先頭集団は13分20秒切りのベストを持つジョセフ・ラジニ(拓大)やジェームス・ムオキ(コニカミノルタ)ら10人で構成され、日本人選手では18歳の吉岡がただ一人食らいついた。1000mを2分38秒、2000mは5分20秒で通過。高校記録更新を目指す吉岡にとっては絶好のペースで進んだ。
3000mは8分05秒、4000mは10分49秒とややペースは落ちたが、ここからが吉岡の真骨頂だった。
残り2周。名だたる外国人選手を尻目に吉岡が先頭に立った。一気にペースが上がり、先頭集団からついていけなくなる選手も続出。最後はアントニー・マイナ(トヨタ自動車九州)、ラジニに先着されたが、残り1000mを2分34秒でカバーして特大高校新につなげた。叩き出した13分22秒99は大学生のカテゴリーでも学生歴代10位(留学生含む)相当の大記録だ。
これまで高1(13分50秒27)、高2(13分38秒96)と5000mの学年別最高記録を樹立しており、これで3学年すべての頂点に立った吉岡。「高2最高を出した時は目の前で佐藤圭汰さんに高校記録を出されたので、目標とする方の記録を超えられて非常にうれしく思います」と笑顔でレースを振り返った。
指導する高見澤勝監督も「調子は良かったので、記録はここでしか狙わないと決めていました。外国人選手が最高のペースで引っ張ってくれたのが大きかったですが、13分22秒は上出来ですね」と教え子の快走を手放しで喜んだ
川中島中時代は全中3000m6位、全国都道府県対抗駅伝6区区間賞(区間新)と活躍し、佐久長聖高でさらにその才能が開花。1年時に全国高校駅伝4区区間賞、2年時はインターハイ5000m6位と実績を重ね、3年目の今季はインターハイを回避してU20世界選手権に出場。5000mで予選を突破して7位入賞を達成した。
今回のレースで「自己記録を狙うレースは終わり」だという。今後は疲労を抜くことに注力し、長野県代表として出場を決めている12月の全国高校駅伝にピークを合わせていく。
「僕たちにとって1番の大きな目標が駅伝。入学してから5位、5位とメダルに届いておらず、1年時には先輩方が作った日本人最高記録も破られて悔しい思いをしてきました。最後は笑顔で終われるような結果にしていきたいですし、どんな結果になったとしても、自分の最高のパフォーマンスを発揮できるようにがんばっていきたいです」
また、卒業後は学生屈指のスピードを誇る三浦龍司(3年)擁する順大への進学が決まっている。「箱根駅伝では今回の4倍の距離になりますし、スタミナ面でも20kmを走り切れるかどうかはわかりません。今の結果に満足せず、上には上がいるという思いで取り組んでいきます」と、さらなる高みを見据える。
速さに加えて、大きな舞台で外さない勝負強さも併せ持つ規格外の高校生ランナー、吉岡大翔の今後に注目が集まる。
◆男子5000m高校記録変遷(14分未満)
13.57.90 武井 隆次(國學院久我山3東京) 1989.10.29
13.55.54 古田 哲弘(浜松商3静岡) 1995.10.10
13.47.8 佐藤 清治(佐久長聖3長野) 1999.11. 6
13.44.91 土橋 啓太(大牟田3福岡) 2002.10.23
13.39.87 佐藤 秀和(仙台育英3宮城) 2004.10.27
13.36.89 石田 洸介(東農大二3群馬) 2020. 7.18
13.34.74 石田 洸介(東農大二3群馬) 2020. 9.27
13.31.19 佐藤 圭汰(洛南3京都) 2021.10. 3
13.22.99 吉岡 大翔(佐久長聖3長野)2022.11.13
文/松永貴允
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
2025.04.30
100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」
福島千里や寺田明日香ら女子短距離を中心に数々の名選手を育成した中村宏之氏が4月29日に79歳で他界したことを受け、寺田が自身のSNSを更新して思いを綴った。 寺田は北海道・恵庭北高時代に中村氏の指導を受け、100mハード […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)