2020.12.28
12月20日に行われた男子第71回全国高校駅伝で3位となり、22年ぶりのトップ3入りを果たした洛南(京都)。2時間2分07秒は、2008年に村澤明伸(現・日清食品グループ)や大迫傑(現・Nike)らを擁して2時間2分18秒で優勝した佐久長聖(長野)が保持していた日本高校最高記録(留学生を入れない記録)を12年ぶりに更新する好記録だった。
過去2年の悔しさをバネに
これまで多くのチームがこの「高校記録」に挑戦し、幾度となく高い壁に跳ね返されてきた。留学生の影響力が多くなった近年の高校駅伝において、2009年以降に日本人だけで優勝したのは2010年の鹿児島実(鹿児島)2013年の山梨学院大附(山梨)、2017年の佐久長聖の3校。
鹿児島実は双子の市田孝、宏兄弟(ともに現・旭化成)を筆頭に力のある選手がそろっており、山梨学院大附も上田健太(現・日立物流)や市谷龍太郎(現・YKK)ら中学時代に全国クラスの実績を残した選手が集結していた。佐久長聖は1区の中谷雄飛(現・早大)など4区間で区間賞を獲得。選手層の厚さを見せつけていた。
しかし、いずれも2008年の佐久長聖の記録を超えることはできなかった。5000mで13分台を出す高校生が増え、シューズの性能が進化した近年でもそう簡単に更新できるタイムではないことの証でもある。それだけに今回の洛南が成し遂げた快挙は非常に価値のあるものだと言える。
洛南はインターハイで8度の総合優勝を誇る陸上競技の名門校として知られている。近年では100mで日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀(現・日本生命)や走幅跳の高校記録保持者である藤原孝輝(3年)ら名だたる選手を輩出してきた。
長距離も全国クラスの強豪で、都大路出場は今回が26回目。マラソン元日本記録保持者の高岡寿成(現・カネボウ監督)が3年生だった1988年に2位となったのがこれまでの最高順位だ。
過去2年は3000m障害の高校記録保持者・三浦龍司(現・順大)がエースとして君臨しており、上位候補に挙げられていた。しかし、主要区間での苦戦が響き、前々回は9位、前回は11位と惜しいところで入賞を逃している。
今大会のチーム目標は4年ぶりの入賞と2時間3分切り。それだけに「3位や国内最高は意識していなかったので、出来すぎですね」と奥村隆太郎監督も驚く好結果だった。
1区区間3位の若林(右)
選手層とチームワークで快挙
躍進の要因となったのは選手層の厚さ。今回出走した7人は全て5000mで14分20秒を切っており、1区の若林宏樹(3年)と3区の佐藤圭汰(2年)は13分台の記録を持っている。
さらに9人いる3年生は10月に全員15分切りを達成。14分18秒31が自己記録で、今回は4区を任された服部壮馬(3年)ですら、「競争が激しくて、メンバー入りできるか不安もあった」と話すほど、チーム内の競争は活性化されていた。
レース運びも完璧だった。1区の若林が区間3位の好スタートを切ると、全ての中継所を3位以内で通過する安定したレースを披露。最終区では倉敷の猛追に遭ったが、溜池一太(2年)が踏ん張り、3位を死守した。
過去2年は悔しい思いをしていただけに今回の喜びは格別だ。服部は「3年間、苦労したことが多かったので、最後にみんなで笑って終われてうれしいです」と、うれし涙を浮かべていた。
コロナ禍で全体練習ができない時期があり、大会の中止も相次いだ。先が見えず、モチベーションを保つことが難しい中でも、「選手たちは気持ちを切らさなかった」と奥村監督は言う。
「自粛期間中も生徒たちが自主的にトレーニングに励んでくれ、オンライン上で連絡を取り合い、記録を共有して、モチベーションを下げないように工夫してくれていました。どうしても一人になると、なかなかモチベーションが上がらないものですが、3年生中心にチーム作りをしてくれていたのは立派だなと思いながら見ていました」
競争が激しい中でも部員間の仲は良く、2区を走った小牧波亜斗(3年)は「この3年間でチームワークは一番良かった」と胸を張る。部員一丸となって、メダルと日本高校最高記録を掴んだ洛南。地元の名門が都大路に新たな歴史を刻んだ瞬間だった。
●洛南高のオーダー
若林 宏樹(3)
(3)29.06
小牧波亜斗(3)
(11)8.15
佐藤 圭汰(2)
(5)23.40
服部 壮馬(3)
(4)23.17
内藤 一輝(3)
(1)8.41
佐野 拓実(3)
(9)14.44
溜池 一太(2)
(4)14.24
順位変動
3→3→2→3→2→3→3
文/馬場 遼

過去2年の悔しさをバネに
これまで多くのチームがこの「高校記録」に挑戦し、幾度となく高い壁に跳ね返されてきた。留学生の影響力が多くなった近年の高校駅伝において、2009年以降に日本人だけで優勝したのは2010年の鹿児島実(鹿児島)2013年の山梨学院大附(山梨)、2017年の佐久長聖の3校。 鹿児島実は双子の市田孝、宏兄弟(ともに現・旭化成)を筆頭に力のある選手がそろっており、山梨学院大附も上田健太(現・日立物流)や市谷龍太郎(現・YKK)ら中学時代に全国クラスの実績を残した選手が集結していた。佐久長聖は1区の中谷雄飛(現・早大)など4区間で区間賞を獲得。選手層の厚さを見せつけていた。 しかし、いずれも2008年の佐久長聖の記録を超えることはできなかった。5000mで13分台を出す高校生が増え、シューズの性能が進化した近年でもそう簡単に更新できるタイムではないことの証でもある。それだけに今回の洛南が成し遂げた快挙は非常に価値のあるものだと言える。 洛南はインターハイで8度の総合優勝を誇る陸上競技の名門校として知られている。近年では100mで日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀(現・日本生命)や走幅跳の高校記録保持者である藤原孝輝(3年)ら名だたる選手を輩出してきた。 長距離も全国クラスの強豪で、都大路出場は今回が26回目。マラソン元日本記録保持者の高岡寿成(現・カネボウ監督)が3年生だった1988年に2位となったのがこれまでの最高順位だ。 過去2年は3000m障害の高校記録保持者・三浦龍司(現・順大)がエースとして君臨しており、上位候補に挙げられていた。しかし、主要区間での苦戦が響き、前々回は9位、前回は11位と惜しいところで入賞を逃している。 今大会のチーム目標は4年ぶりの入賞と2時間3分切り。それだけに「3位や国内最高は意識していなかったので、出来すぎですね」と奥村隆太郎監督も驚く好結果だった。
選手層とチームワークで快挙
躍進の要因となったのは選手層の厚さ。今回出走した7人は全て5000mで14分20秒を切っており、1区の若林宏樹(3年)と3区の佐藤圭汰(2年)は13分台の記録を持っている。 さらに9人いる3年生は10月に全員15分切りを達成。14分18秒31が自己記録で、今回は4区を任された服部壮馬(3年)ですら、「競争が激しくて、メンバー入りできるか不安もあった」と話すほど、チーム内の競争は活性化されていた。 レース運びも完璧だった。1区の若林が区間3位の好スタートを切ると、全ての中継所を3位以内で通過する安定したレースを披露。最終区では倉敷の猛追に遭ったが、溜池一太(2年)が踏ん張り、3位を死守した。 過去2年は悔しい思いをしていただけに今回の喜びは格別だ。服部は「3年間、苦労したことが多かったので、最後にみんなで笑って終われてうれしいです」と、うれし涙を浮かべていた。 コロナ禍で全体練習ができない時期があり、大会の中止も相次いだ。先が見えず、モチベーションを保つことが難しい中でも、「選手たちは気持ちを切らさなかった」と奥村監督は言う。 「自粛期間中も生徒たちが自主的にトレーニングに励んでくれ、オンライン上で連絡を取り合い、記録を共有して、モチベーションを下げないように工夫してくれていました。どうしても一人になると、なかなかモチベーションが上がらないものですが、3年生中心にチーム作りをしてくれていたのは立派だなと思いながら見ていました」 競争が激しい中でも部員間の仲は良く、2区を走った小牧波亜斗(3年)は「この3年間でチームワークは一番良かった」と胸を張る。部員一丸となって、メダルと日本高校最高記録を掴んだ洛南。地元の名門が都大路に新たな歴史を刻んだ瞬間だった。
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