HOME 高校

2023.08.04

100m東福岡のエース・黒木海翔が高校最強を証明!速さより「強い選手」求め成長/北海道IH
100m東福岡のエース・黒木海翔が高校最強を証明!速さより「強い選手」求め成長/北海道IH

23年北海道インターハイの男子100mを制した黒木海翔(東福岡3)

◇全国高校総体(インターハイ:8月2日~6日/北海道・札幌厚別公園競技場)

北海道インターハイの2日目が行われ、男子100mは黒木海翔(東福岡3)が頂点に立った。

初の総合優勝へ、東福岡のエースにして副主将がやってのけた。高校最速決定戦は、向かい風2.7mという悪条件のなか、10秒73をマークした黒木が快勝。U20アジア選手権金メダリスト、高校歴代8位タイの10秒28の自己記録を持つ優勝候補として、重くて尊い重圧を意に介さず、貫禄のレースでライバルたちを抑えた。

今季の高校100m戦線は、黒木以外にも10秒3台が3人、10秒4台が5人と盛況だった。黒木は予選全体2位(10秒76/-2.1)、準決勝全体1位(10秒58/−1.2)と余裕を持って通過。だが、向かい風が最大4mほど吹く条件下で行われた予選、準決勝で実力者たちが次々と敗退する。ランキングトップ8のうち、決勝に進んだのは黒木と、10秒42の小室歩久斗(つくば秀英2茨城)の2人だけ。北の大地に不穏な空気が流れていた。

「予想していたメンバーと違って驚きました」と漏らした黒木。いつも冷静沈着な男が珍しく緊張感を漂わせていた。しかし、大舞台で結果を残してきたハートの強さは、インターハイでも健在。中盤からリードを奪うと、ラスト20~30mの強さは別格だった。

「周りを気にすると力むので、自分の走りに集中しました」。コンスタントに10秒3〜4台を出してきた黒木にとって、難しいコンディションと緊張感があったにしても、優勝タイムは満足いくものではない。

広告の下にコンテンツが続きます

「体感では10秒4ぐらいで走れていると思っていたけど、(10秒7台ということは)調整しきれていなかったのだと思います。準決勝の感じだと10秒3台は狙えていたと思うので、タイムは残念です」

ただ――と言葉を紡ぐ。「東福岡には速いより強い選手になりたいと思って入学したので、勝ちきれて良かったです」。そう言って頬を緩めた。

100mの優勝を決めた2時間後には、4×100mリレーの準決勝に出場。ランキング16位と決勝進出は難しいラインにいたが、黒木の100mVが“勢水(きおいみず)”となり、3組2着で悲願の決勝進出を決めた。

「4×100mリレーの決勝進出は1年の頃からの目標でした。バトンをつなぐことを一番にやってきたけど、明日は攻めてもいいんじゃないかと思っています。悔いは残したくないので、出し切って終わりたいです」と、番狂わせを期待させる口ぶりで話した。

大会4日目には200mにも出場。今季は200mのレース数が少なく、シーズンベストは21秒34と伸びていないが「自分の走りをすれば勝てると思います。集中してレースに挑みたい」。100mより「好き」だと公言する200mでも、栄冠をつかむ準備はできている。

文/田端慶子

◇全国高校総体(インターハイ:8月2日~6日/北海道・札幌厚別公園競技場) 北海道インターハイの2日目が行われ、男子100mは黒木海翔(東福岡3)が頂点に立った。 初の総合優勝へ、東福岡のエースにして副主将がやってのけた。高校最速決定戦は、向かい風2.7mという悪条件のなか、10秒73をマークした黒木が快勝。U20アジア選手権金メダリスト、高校歴代8位タイの10秒28の自己記録を持つ優勝候補として、重くて尊い重圧を意に介さず、貫禄のレースでライバルたちを抑えた。 今季の高校100m戦線は、黒木以外にも10秒3台が3人、10秒4台が5人と盛況だった。黒木は予選全体2位(10秒76/-2.1)、準決勝全体1位(10秒58/−1.2)と余裕を持って通過。だが、向かい風が最大4mほど吹く条件下で行われた予選、準決勝で実力者たちが次々と敗退する。ランキングトップ8のうち、決勝に進んだのは黒木と、10秒42の小室歩久斗(つくば秀英2茨城)の2人だけ。北の大地に不穏な空気が流れていた。 「予想していたメンバーと違って驚きました」と漏らした黒木。いつも冷静沈着な男が珍しく緊張感を漂わせていた。しかし、大舞台で結果を残してきたハートの強さは、インターハイでも健在。中盤からリードを奪うと、ラスト20~30mの強さは別格だった。 「周りを気にすると力むので、自分の走りに集中しました」。コンスタントに10秒3〜4台を出してきた黒木にとって、難しいコンディションと緊張感があったにしても、優勝タイムは満足いくものではない。 「体感では10秒4ぐらいで走れていると思っていたけど、(10秒7台ということは)調整しきれていなかったのだと思います。準決勝の感じだと10秒3台は狙えていたと思うので、タイムは残念です」 ただ――と言葉を紡ぐ。「東福岡には速いより強い選手になりたいと思って入学したので、勝ちきれて良かったです」。そう言って頬を緩めた。 100mの優勝を決めた2時間後には、4×100mリレーの準決勝に出場。ランキング16位と決勝進出は難しいラインにいたが、黒木の100mVが“勢水(きおいみず)”となり、3組2着で悲願の決勝進出を決めた。 「4×100mリレーの決勝進出は1年の頃からの目標でした。バトンをつなぐことを一番にやってきたけど、明日は攻めてもいいんじゃないかと思っています。悔いは残したくないので、出し切って終わりたいです」と、番狂わせを期待させる口ぶりで話した。 大会4日目には200mにも出場。今季は200mのレース数が少なく、シーズンベストは21秒34と伸びていないが「自分の走りをすれば勝てると思います。集中してレースに挑みたい」。100mより「好き」だと公言する200mでも、栄冠をつかむ準備はできている。 文/田端慶子

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.05.02

東京世界陸上財団の副会長に中村倫治氏を選任 23年から東京都副知事を務める

公益財団法人東京2025世界陸上財団は5月2日に第26回理事会を開き、副会長の選定について決議を行い、東京都副知事で財団の理事を務める中村倫治氏を副会長とすることを発表した。 この決議は、これまで副会長を務めていた潮田勉 […]

NEWS 東京世界陸上「家庭の油 回収キャンペーン」開始!北口榛花「家庭の油で飛行機を飛ばしましょう!」

2025.05.02

東京世界陸上「家庭の油 回収キャンペーン」開始!北口榛花「家庭の油で飛行機を飛ばしましょう!」

公益財団法人東京2025世界陸上財団は5月2日、「家庭の油 回収キャンペーン」をスタートしたことを発表した。 環境負荷の少ない大会運営の実現を目指す取り組みの一環。東京都と連携し、家庭や飲食店などから排出される食用油の回 […]

NEWS 九電工にケニア出身の18歳キプンゲノ・ニアマイアが加入

2025.05.02

九電工にケニア出身の18歳キプンゲノ・ニアマイアが加入

九電工は5月1日、ケニア出身のキプンゲノ・ニアマイアが同日付で加入したと発表した。 ニアマイアはケリンゲット高出身の18歳。5000mで13分49秒7の自己記録を持ち、今年2月の世界陸連(WA)クロスカントリーツアー・ゴ […]

NEWS セイコーGGP海外選手発表 男子走高跳東京五輪5位スターク参戦 女子やり投に北口榛花の練習パートナー・シチャコヴァ

2025.05.02

セイコーGGP海外選手発表 男子走高跳東京五輪5位スターク参戦 女子やり投に北口榛花の練習パートナー・シチャコヴァ

日本陸連は5月2日、セイコーゴールデングランプリ(5月18日/東京・国立競技場)の出場選手第11弾を発表した。 新たに発表されたのは男女の走高跳とやり投の海外勢6名。男子走高跳では2021年東京五輪5位や、世界選手権で1 […]

NEWS ケニア、インド、中国の長距離選手がドーピング違反により出場資格停止

2025.05.02

ケニア、インド、中国の長距離選手がドーピング違反により出場資格停止

アスリート・インテグリティー・ユニット(AIU、世界陸連の独立不正監査機関)は、4月中に複数の長距離選手に対し資格停止処分を科すことを発表した。いずれも禁止物質の使用が認められたため。 女子長距離の郭利亜(中国)はメチル […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top