2025.12.20
11月に表れた取り組みの成果
前回大会を5位で終えた中大は、1年後の箱根駅伝での総合優勝を目標に掲げ、強化を進めてきた。選手一人ひとり、あるいはチーム全体を見ても、良い時期もあれば、そうでない時期もあった。その積み重ねの中で、取り組んできた成果が目に見える形で表れたのが、11月の各レースだったと言える。
全日本大学駅伝では、主将の吉居駿恭(4年)が2区で首位に立ち、3位でタスキを受けた柴田大地(3年)が4区区間賞の快走で再びトップへ。後半区間は耐えながらアンカー・溜池一太(4年)がエースらしい力走を見せ、過去最高順位タイの2位でフィニッシュした。
10月の出雲駅伝は調整がうまくいかず、10位に終わっていた。それだけに吉居も「優勝を狙っていたので悔しいですが、箱根に向けては、みんながもう一段階気合を入れていくと思います」と前向きな手応えを口にした。
全日本から2週間後の上尾ハーフマラソンでは、箱根経験者で今季は調子が上がり切っていなかった白川陽大(4年)が1時間1分34秒、初の箱根出走を目指す折居幸成(4年)も1時間2分45秒で、ともに自己ベストを更新。ここにきて状態を上げ、メンバー入りへ強くアピールした。
さらに八王子ロングディスタンスとMARCH対抗戦では、13人が10000mの自己ベストを更新するラッシュとなった。岡田開成(2年)が日本人学生歴代7位となる27分37秒06を叩き出せば、藤田大智(3年)も27分40秒50でともに中大新記録。ルーキー・濵口大和も27分台をマークし、目指していた10人には届かなかったものの、すでにタイムを持っていた吉居と溜池、前回3区区間賞の本間颯(3年)を含め、27分台ランナーは一気に6人に増えた。
12月10日にエントリーメンバー16人が発表され、中大の上位10人の平均タイムは驚異の27分55秒98。昨年度の28分15秒61を大幅に更新し、史上初めて28分を切った。ライバルの青学大や駒大をも上回ったが、中大陣営に慢心はない。
むしろ藤原正和駅伝監督は、「チーム全員の平均タイムで28分59秒までいった」点に胸を張る。37人いる部員のうち、今季自己ベストを更新していないのはわずか3人。部員全体が高いレベルで切磋琢磨し、底上げが図られた結果が、この数字に表れている。
そうした状況の中で、ハーフマラソン1時間2分28秒など、秋に3種目で自己新をマークした鈴木耕太郎(3年)や、MARCH対抗戦で28分28秒11まで記録を伸ばした田原琥太郎(2年)といった実力者がエントリーメンバーから外れた。裏を返せば、それほどチーム内競争が激しく、層が厚いことを物語っている。
箱根制覇を目指す中大の吉居駿恭と溜池一太[/caption]
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。
11月に表れた取り組みの成果
前回大会を5位で終えた中大は、1年後の箱根駅伝での総合優勝を目標に掲げ、強化を進めてきた。選手一人ひとり、あるいはチーム全体を見ても、良い時期もあれば、そうでない時期もあった。その積み重ねの中で、取り組んできた成果が目に見える形で表れたのが、11月の各レースだったと言える。 全日本大学駅伝では、主将の吉居駿恭(4年)が2区で首位に立ち、3位でタスキを受けた柴田大地(3年)が4区区間賞の快走で再びトップへ。後半区間は耐えながらアンカー・溜池一太(4年)がエースらしい力走を見せ、過去最高順位タイの2位でフィニッシュした。 10月の出雲駅伝は調整がうまくいかず、10位に終わっていた。それだけに吉居も「優勝を狙っていたので悔しいですが、箱根に向けては、みんながもう一段階気合を入れていくと思います」と前向きな手応えを口にした。 全日本から2週間後の上尾ハーフマラソンでは、箱根経験者で今季は調子が上がり切っていなかった白川陽大(4年)が1時間1分34秒、初の箱根出走を目指す折居幸成(4年)も1時間2分45秒で、ともに自己ベストを更新。ここにきて状態を上げ、メンバー入りへ強くアピールした。 さらに八王子ロングディスタンスとMARCH対抗戦では、13人が10000mの自己ベストを更新するラッシュとなった。岡田開成(2年)が日本人学生歴代7位となる27分37秒06を叩き出せば、藤田大智(3年)も27分40秒50でともに中大新記録。ルーキー・濵口大和も27分台をマークし、目指していた10人には届かなかったものの、すでにタイムを持っていた吉居と溜池、前回3区区間賞の本間颯(3年)を含め、27分台ランナーは一気に6人に増えた。 12月10日にエントリーメンバー16人が発表され、中大の上位10人の平均タイムは驚異の27分55秒98。昨年度の28分15秒61を大幅に更新し、史上初めて28分を切った。ライバルの青学大や駒大をも上回ったが、中大陣営に慢心はない。 むしろ藤原正和駅伝監督は、「チーム全員の平均タイムで28分59秒までいった」点に胸を張る。37人いる部員のうち、今季自己ベストを更新していないのはわずか3人。部員全体が高いレベルで切磋琢磨し、底上げが図られた結果が、この数字に表れている。 そうした状況の中で、ハーフマラソン1時間2分28秒など、秋に3種目で自己新をマークした鈴木耕太郎(3年)や、MARCH対抗戦で28分28秒11まで記録を伸ばした田原琥太郎(2年)といった実力者がエントリーメンバーから外れた。裏を返せば、それほどチーム内競争が激しく、層が厚いことを物語っている。「出し惜しみはしない」
藤原監督は今回の選考について、「優勝がかかったプレッシャーの中でも耐え切れる16人を選びました」と説明し、区間配置や戦い方のプランを詰めている。 「出し惜しみはしないつもりです。すでに決めているのは、2区の溜池と3区の本間。状態が良いので、2人には区間記録を狙わせたいと思っています」 前回大会では王者・青学大に決定的な差をつけられ、悲願の優勝に向けた最大の課題となる5区と6区についても言及。「69分台、56分台というのはなかなか厳しい」と冷静に分析しつつ、「計算できる、昨年よりレベルの高い選手はそろえられました」と自信をのぞかせた。 少なくとも27分台ランナーの1人を復路に配置できる点は、他大学にとって大きな脅威となる。そのうえで、指揮官の視線はレース終盤まで抜かりなく向けられている。 「今回はかなりの接戦になるでしょうし、優勝争いもおそらく10区まで上位3校くらいが競る展開になると思います。復路にまで“ゲームチェンジャー”と呼ばれる選手を残しておく必要があります。アンカー勝負も想定して、例えば濵口を10区に置ければ、ラスト勝負では絶対に勝ってくる。最後の大手町で一歩前にいれば、それで勝てる。10区間トータルで戦えるチームを考え、準備を進めています」 中大史上、歴代最強と言っても過言ではないピースはそろった。あとは本番に向けて状態を合わせること、そしてどのようなメンタリティーで臨めるかだ。近年優勝を重ねてきた青学大や駒大にあって、中大にまだ足りないもの。それを藤原監督は「勝ち癖」や「ウイニングマインド」と表現する。 チーム内でエントリーメンバーを発表した際には、「ウイニングマインドを持つためには、日々の小さな積み重ねと、どれだけ本気で勝ちたいと思える準備ができるかが重要だ。それがタスキを同時にもらったときに、『俺のほうが強い』と思ってスタートできるかどうかの差になる」と選手たちに伝えたという。本番までの残り数日で、そのメンタル面が整えば、悲願達成はさらに近づくはずだ。 最多14回の総合優勝を誇る名門も、最後の栄冠から30年の時が流れた。優勝候補に挙げられながら、体調不良者が続出して涙を飲んだ2年前のような脆さは、今のチームからは微塵も感じられない。 今季のチームスローガン『真紅の歴史に新たな“1”を』を体現する大一番が迫ってきた。 [caption id="attachment_193758" align="alignnone" width="800"]
30年ぶりの勝利に向けて一丸で挑む中大[/caption]
文/小野哲史 RECOMMENDED おすすめの記事
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