◇第107回日本選手権35km競歩(4月16日/石川県輪島市)
ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権35km競歩が4月16日に行われた。
男子は野田明宏(自衛隊体育学校)が2時間23分13秒の日本新記録で優勝。ブダペスト世界選手権代表に内定した。
強い風が吹き荒れた輪島市。「絶対に優勝する」という強い思いで臨んだ野田は、オレゴン世界選手権銀メダルの川野将虎(旭化成)、丸尾知司(愛知製鋼)との長い三つ巴が続くなか、「余裕があるタイミングで仕掛ける」とイメージを持って歩いた。
25km手前で川野、丸尾の歩きが乱れた隙を逃さない。「集団がばらけたのでここかな」と野田はペースを上げて18年の50km以来となる日本選手権のタイトルを手にした。
日本記録は「意識していなかった」と、こちらも50km(当時)に続く2度目の日本新に喜びつつ「すぐ抜かれる」と笑う。
明大卒の27歳で、19年ドーハ世界選手権には50kmで出場したものの途中棄権。東京五輪は出場に届かなかった。昨年のオレゴン世界選手権では35kmで挑んで入賞まであと一歩の9位。長い距離を得意とする一方、世界と戦う上で「スピードが足りない」と感じた野田は強化を図り、今年2月の日本選手権20kmでも3位に入っていた。
「(オレゴンでは)全然勝負できなかった。しっかり準備して挑みたい。ブダペスト世界選手権では先頭でメダル争いを」。自身3度目の世界選手権では成長した姿を世界に見せるつもりだ。
2位に丸尾が2時間25分49秒の大会新で続き、日本陸連が定めるブダペスト世界選手権の派遣設定記録(2時間27分30秒)を突破。代表入りに前進した。川野は2時間26分51秒の3位。
銀メダル獲得している川野は条件となる参加標準記録を突破して代表に内定した。川野は「ブダペストブダペスト世界選手権に向けて、最大限のパフォーマンスができるようにチームとして向かっていきたい」と気持ちを新たにしていた。
女子は初35kmだった岡田久美子(富士通)が2時間44分11秒で初優勝。2位の園田世玲奈(NTN)も2時間44分25秒で、いずれも園田が持っていた日本記録(2時間45分09秒)を上回り、ブダペスト世界選手権の派遣設定記録(2時間46分00秒)も突破した。岡田は世界選手権代表に内定している。
岡田と園田はほぼすべての距離で一騎打ちに。25kmから30kmの5kmで園田がペースアップ。「岡田さんの力を借りて後ろで力を溜めていたのですが、挑戦したいという気持ちが出てきて、1秒でも前で結果につながるレースがしたいと思って」。それまで23分台だったが、22分52秒に上げた。
対する岡田は「予想外でビックリ」と振り返るもしっかりついていき、勝負所を見極める。残り3km付近で園田の脚色が鈍り始めたのを見て、「ペースを上げて行けるかなと思いました」と、勝負を決めた。
岡田は5000m競歩(20分42秒25)、10000m競歩(42分51秒82)、20km競歩(1時間27分41秒)と日本記録を持っており、これで4種目で日本記録保持者となった。
世界選手権には15年北京から、17年ロンドン、19年ドーハ、22年オレゴンと続き、5度目の代表。昨年のオレゴンはケガの影響で1時間31分53秒の14位だった。
「確実に入賞を目標にして、メダルも意識して残りの日々を過ごして準備していきたいです」と目標を語った。
2位の園田も2大会連続代表をほぼ手中に。「次につながるレースができました。世界で戦える力をつけていきたい」と意気込んでいた。
なお、オープンとして出場した女子20kmのリオ五輪金メダリスト・劉虹(中国)は世界歴代3位・アジア新となる2時間38分42秒をマーク。「1週間前に20kmを歩いていたので35kmでどこまでいけるかチャレンジだった。とてもうれしいです」と語った。世界選手権には20kmで代表に内定している。
これでブダペスト世界選手権の代表選考会が終了。男子20kmでワイルドカード(前回オレゴン金メダル)の山西利和(愛知製鋼)、日本選手権を制した池田向希(旭化成)らが代表に内定している。
今後は4月下旬に第1次日本代表選手が発表。5月末で有効期間が締め切られる35kmを対象に6月上旬に第2次日本代表発表、7月末で20kmの有効期間が終わり、8月上旬に第3次日本代表発表というスケジュールとなっている。
即時内定意外は、「全選考競技会終了時点までに参加標準記録を満たした競技者で、各選考競技会において3位以内の競技者の中から各選考競技会での記録・順位・レース展開・タイム差・気象条件等を総合的に勘案しつつ、歩型違反による失格のリスクの程度も併せて勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された競技者」から選出される。
ブダペスト世界選手権競歩代表内定選手
※4月16日時点 ●男子 20km 山西利和(愛知製鋼) 池田向希(旭化成) 髙橋英輝(富士通) 35km 野田明宏(自衛隊体育学校) 川野将虎(旭化成) ●女子 20km ―― 35km 岡田久美子(富士通) ■派遣設定記録突破者(★)・参加標準記録突破者※内定者除く ・男子 20km 古賀友太(大塚製薬)★ 村山裕太郎(富士通)★ 野田明宏(自衛隊体育学校) 松永大介(富士通) 35km 丸尾知司(愛知製鋼)★ 山西利和(愛知製鋼)★ 松永大介(富士通)★ 勝木隼人(自衛隊体育学校) ・女子 20km 藤井菜々子(エディオン) 35km 園田世玲奈(NTN)★RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.13
編集部コラム「あっという間の2025年」
-
2025.12.13
-
2025.12.13
-
2025.12.13
-
2025.12.07
-
2025.11.20
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.13
編集部コラム「あっという間の2025年」
攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]
2025.12.13
箱根駅伝15年ぶりV狙う早大が合同取材会 花田勝彦駅伝監督「状態上がっている」 山口智規「大手町を楽しみにしてほしい」
箱根駅伝で15年ぶりの総合優勝を狙う早大が12月13日、埼玉・所沢キャンパスで合同取材会を開いた。 この日は撮影と共通取材、個別取材を実施。共通取材で花田勝彦駅伝監督は「今年もかなり良いかたちで準備ができたと思っています […]
2025.12.13
連覇か、V奪回か?「ニューイヤー駅伝2026」に挑む強豪3チームの意気込み/旭化成・トヨタ自動車・富士通
2026年の幕開けを飾る全日本実業団対抗駅伝(通称・ニューイヤー駅伝)は、第70回の記念大会として1月1日、前橋市にある群馬県庁前をスタートし、上州路をぐるりと回って県庁に戻る7区間・総距離100kmのコースで行われる。 […]
2025.12.13
ロス瑚花アディアが60m7秒48のユタ州立大新記録 東京・城西高出身で今秋から留学中
12月10日に米国・ユタ州でブリガム・ヤング大で行われた同大学招待競技会室内女子60mで、ロス瑚花アディア(ユタ州立大)が7秒48で4位に入った。従来のユタ州立大記録38年ぶりの更新となる。 ロスは東京・駒沢中から城西高 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025