2026.09.18
チームを引っ張る工藤、「大きく成長するフェーズに入っている」
「早稲田はトラックに力を入れているので、トラックシーズンにいろんな部員が活躍していたのは、駅伝に向けて好材料になったと思います」
今季の前半戦、トラックで躍動するチームメイトを、4年生の工藤慎作は頼もしく見ていた。そんな仲間たちの活躍をよそに、工藤は独自路線を歩み、前半戦はロード中心にレースへ出場した。
フルマラソンに初挑戦した3月の東京マラソンでは学生歴代4位となる2時間7分34秒の好記録で日本勢5位(総合20位)となり、2028年にロサンゼルスで控えるビッグゲームの日本代表選考レースとなる来年10月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を獲得した。快走の反動は大きそうなものだが、むしろマラソンを走ったことで強さを増した印象さえある。
「純粋にすべての能力が結構上がった。『マラソンをやることでスピードが落ちる』という選手もいますが、私の場合は、純粋に走行の効率が上がったというか、スピードにも良い影響があったと感じています。練習でも、質と量のどちらも上がりました」
工藤自身、マラソンを経て一段高いレベルに上がったことを実感している。
その一方で、初マラソンを通してスピード強化の必要性も痛感。「スパイクシューズで出すスピードではなくて、反発性の高いロードシューズで出すスピードがほしいと思った」という。これもロードに注力している要因だ。
ゴールデンウィークの真っ只中に明治神宮外苑(東京)で行われたTokyo:Speed:Raceでは、5kmの部で日本記録にあと1秒と迫る13分31秒で優勝した。6月は米国・ボストンのB.A.A.10K(10kmロード)に出場。アップダウンの激しいコースで世界の強豪選手へ果敢に挑んで8位に入った。スピード強化は着実に進んでいる。ちなみに、トラックでも5月の関東インカレの5000mで13分38秒67の自己ベストを出して5位入賞の実績を残している。
「今、大きく成長するフェーズに入っていると自分自身感じているので、さらに鋭く成長曲線を上に上げていきたい」
チームでは一人で練習することも多いが、集団練習の際には遅れてスタートしたり、練習後にさらに走り込んだりと、質と量の両方を自身に求めた。各メディアへの取材の機会が設けられた8月中旬の妙高(新潟)合宿でも、他の主力メンバーから遅れてスタートしていた。それでも真っ先にフィニッシュする工藤の姿があった。
マラソンでのさらなる記録短縮を見据えつつも、その前に学生駅伝ではすべて区間賞を取るぐらいの意気込みで「完璧なかたちで卒業したい」と話す。

学生ラストイヤーの三大駅伝では「すべて区間賞を取りたい」と意気込むエースの工藤。普段から3~4足のシューズを履き分けてトレーニング効率の向上を図っている
三大駅伝は2年生の出雲からすべて区間3位以内に入っているが、区間賞は昨年の全日本のアンカーのみ。正月の駅伝では4度目の山上りに大きな期待が寄せられ、自身も前回(首位を明け渡して区間3位)の雪辱を誓い、「記録は気象条件やレースの流れでだいぶ違ってくるため、チームの勝利に貢献できる〝結果〟を出したい」ときっぱり話す。
集大成の学生駅伝でどれだけパワーアップした走りを見せるのか楽しみだ。
カーボンプレート搭載シューズの特性を生かすために
早大では、カーボンプレートを搭載したレーシングシューズをレースで生かすために、鍛錬期にはノンカーボンシューズで練習する日を設けている。また、練習の途中でノンカーボンシューズからカーボンシューズに履き替えることもある。
「カーボンシューズが進化し、ノンカーボンのシューズとのギャップがどんどん開いてきているので、練習でもある程度、カーボンに慣れていくことも大事。その辺の難しさもあります」と花田勝彦駅伝監督は頭を悩ませつつも、練習に工夫をこらしてきた。また、上久保利直トレーナーの指導でケアにも力を注いできた。

アシックスのレーシングシューズ『METASPEED』シリーズで駅伝シーズンに挑む早大3選手
さらには、「できるだけ脚へのダメージを小さくするために、ポイント練習の時以外はクッション性があるシューズを履くようにしています」と花田監督が言うように、シューズの履き分けも重要視している。
例えば、アシックスのシューズを愛用している工藤の場合、キロ4分30秒よりもゆっくりのジョグでは『GEL-NIMBUS』、キロ4分30秒~3分くらいのジョグや距離走では『NOVABLAST』、スピード練習では『EVORIDE SPEED』を履いている。
「シューズには、それぞれ異なる開発理念があり、想定する使用シーンや特徴が異なります。シューズを履き分けることでトレーニングの効率が上がりますし、負担軽減にもつながります」と、工藤は履き分けの重要性を説く。
また、〝カーボンプレート搭載シューズでのスピード〟を追い求める工藤は、レースでは『METASPEED』シリーズのEDGEとSKYの両方を試している。ポイント練習でもこれらのシューズを履くことがあるという。
「3月の東京マラソンではEDGEを履きましたが、最近は10km以下の距離ではEDGE、それ以上だとSKYを履いています。世界の強い選手はSKYを履いている人が多い印象。癖のない感じがマラソンに向いているのかなと思いました。逆に、EDGEはレスポンスが速いので、私の場合スピードレースに向いていると思っています」
このように特性を理解した上で、2つのシューズを履き分けている。

レースの距離に応じて『METASPEED』シリーズのSKYとEDGEを使い分けている工藤
さまざまな効果をもたらすシューズ履き分け術
シューズの履き分けは、モチベーションアップにもつながる。
「ペースに合わせてシューズを替えることで目的に合った足運びができると感じますし、自分の気分も結構左右されます。例えばクッション性のある『GEL-NIMBUS』を見ると、反射的に〝今日は余裕を持って、リラックスして練習できるな〟という気持ちになりますし、ペースを上げて走る時は、『EVORIDE SPEED』や『NOVABLAST』を見ると〝気合を入れて練習に臨もう〟という気持ちになります」
こう話すのは4年生の山﨑一吹だ。正月の駅伝では2年連続で下りの特殊区間を担ってきた選手だけに、シューズの特色によって走り方が変わってくることも実感。
「自分は着地時のダイレクトな反発で跳ねて走るタイプなので」と、レースではレスポンスの速いEDGEを選んでいる。
正月の駅伝でアンカーを務めた瀬間元輔(3年)の場合は、次のようにシューズを履き分けている。
「リカバリージョグは『GEL-NIMBUS』。クッション性がすごく良くて、足に優しいのが僕の好きなポイントです。もう少しペースが上がってくると『NOVABLAST』や『SUPERBLAST』。楽しく走れたらいいなと思って選んでいます。さらに長い距離やもう少し速いペースで走る時には『MEGABLAST』を履きます。レーシングシューズの『METASPEED』シリーズも調子等によって履き分けています。自分にバネがあるなと感じる時はSKY、身体がちょっと重いなと感じる時はEDGEを選んでいます」

速めのジョグではクッション性が高く、接地時衝撃によるダメージを抑えられる『NOVABLAST』を履くことが多い
練習の目的を考え、自分の状態を把握すればこそ、シューズを履き分ける意義はより大きいものになるのだろう。
今季の早大はトップ選手だけでなく、中間層のレベルも着実にアップしており、細かくシューズの履き分けをして効率の良い練習に取り組んできたこともその要因だろう。ひと夏を越えて、新たな選手が台頭してくる可能性は十分ある。
チームのレベルアップに対して山﨑と瀬間は「うかうかしていられない」と口を揃える。山﨑は正月の駅伝で三み 度たびの山下りに出走できたら「区間賞を取りたい」、瀬間は再び大手町にタスキをつなぐアンカーを託されたら「区間上位の走りで優勝テープを切りたい」と、それぞれの目標を語った。
早稲田大学競走部のシューズローテーション


目的の異なる「3足」のシューズが走りを引き上げる
早稲田大学競走部 駅伝監督 花田勝彦
自己ベスト更新を目指すなら、用途の異なるシューズを最低3足持つことをおすすめします。リラックスして疲労を抜くジョグ用、少しペースを上げる練習用、そして本番のレース用です。さらにレベルアップを狙うなら、地面を捉えるフラットな一足も有効です。
年間を通して、その日の練習目的と自分の身体の状態に合わせて適切なシューズに履き替えること。その日々の自己管理の差が、本番での最終的な結果に大きく関わってきます。

シューズを履き分けることの大切さを説明する花田勝彦駅伝監督。この夏、新発売された地面を捉えるフラットタイプの『METASLEEK』は、さらにレベルアップを狙うために有効な一足という
※この記事は『月刊陸上競技』2026年10月号に掲載しています
文/和田悟志、撮影/石井啓祐
学生ラストイヤーの三大駅伝では「すべて区間賞を取りたい」と意気込むエースの工藤。普段から3~4足のシューズを履き分けてトレーニング効率の向上を図っている[/caption]
三大駅伝は2年生の出雲からすべて区間3位以内に入っているが、区間賞は昨年の全日本のアンカーのみ。正月の駅伝では4度目の山上りに大きな期待が寄せられ、自身も前回(首位を明け渡して区間3位)の雪辱を誓い、「記録は気象条件やレースの流れでだいぶ違ってくるため、チームの勝利に貢献できる〝結果〟を出したい」ときっぱり話す。
集大成の学生駅伝でどれだけパワーアップした走りを見せるのか楽しみだ。
カーボンプレート搭載シューズの特性を生かすために
早大では、カーボンプレートを搭載したレーシングシューズをレースで生かすために、鍛錬期にはノンカーボンシューズで練習する日を設けている。また、練習の途中でノンカーボンシューズからカーボンシューズに履き替えることもある。
「カーボンシューズが進化し、ノンカーボンのシューズとのギャップがどんどん開いてきているので、練習でもある程度、カーボンに慣れていくことも大事。その辺の難しさもあります」と花田勝彦駅伝監督は頭を悩ませつつも、練習に工夫をこらしてきた。また、上久保利直トレーナーの指導でケアにも力を注いできた。
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アシックスのレーシングシューズ『METASPEED』シリーズで駅伝シーズンに挑む早大3選手[/caption]
さらには、「できるだけ脚へのダメージを小さくするために、ポイント練習の時以外はクッション性があるシューズを履くようにしています」と花田監督が言うように、シューズの履き分けも重要視している。
例えば、アシックスのシューズを愛用している工藤の場合、キロ4分30秒よりもゆっくりのジョグでは『GEL-NIMBUS』、キロ4分30秒~3分くらいのジョグや距離走では『NOVABLAST』、スピード練習では『EVORIDE SPEED』を履いている。
「シューズには、それぞれ異なる開発理念があり、想定する使用シーンや特徴が異なります。シューズを履き分けることでトレーニングの効率が上がりますし、負担軽減にもつながります」と、工藤は履き分けの重要性を説く。
また、〝カーボンプレート搭載シューズでのスピード〟を追い求める工藤は、レースでは『METASPEED』シリーズのEDGEとSKYの両方を試している。ポイント練習でもこれらのシューズを履くことがあるという。
「3月の東京マラソンではEDGEを履きましたが、最近は10km以下の距離ではEDGE、それ以上だとSKYを履いています。世界の強い選手はSKYを履いている人が多い印象。癖のない感じがマラソンに向いているのかなと思いました。逆に、EDGEはレスポンスが速いので、私の場合スピードレースに向いていると思っています」
このように特性を理解した上で、2つのシューズを履き分けている。
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レースの距離に応じて『METASPEED』シリーズのSKYとEDGEを使い分けている工藤[/caption]
さまざまな効果をもたらすシューズ履き分け術
シューズの履き分けは、モチベーションアップにもつながる。
「ペースに合わせてシューズを替えることで目的に合った足運びができると感じますし、自分の気分も結構左右されます。例えばクッション性のある『GEL-NIMBUS』を見ると、反射的に〝今日は余裕を持って、リラックスして練習できるな〟という気持ちになりますし、ペースを上げて走る時は、『EVORIDE SPEED』や『NOVABLAST』を見ると〝気合を入れて練習に臨もう〟という気持ちになります」
こう話すのは4年生の山﨑一吹だ。正月の駅伝では2年連続で下りの特殊区間を担ってきた選手だけに、シューズの特色によって走り方が変わってくることも実感。
「自分は着地時のダイレクトな反発で跳ねて走るタイプなので」と、レースではレスポンスの速いEDGEを選んでいる。
正月の駅伝でアンカーを務めた瀬間元輔(3年)の場合は、次のようにシューズを履き分けている。
「リカバリージョグは『GEL-NIMBUS』。クッション性がすごく良くて、足に優しいのが僕の好きなポイントです。もう少しペースが上がってくると『NOVABLAST』や『SUPERBLAST』。楽しく走れたらいいなと思って選んでいます。さらに長い距離やもう少し速いペースで走る時には『MEGABLAST』を履きます。レーシングシューズの『METASPEED』シリーズも調子等によって履き分けています。自分にバネがあるなと感じる時はSKY、身体がちょっと重いなと感じる時はEDGEを選んでいます」
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速めのジョグではクッション性が高く、接地時衝撃によるダメージを抑えられる『NOVABLAST』を履くことが多い[/caption]
練習の目的を考え、自分の状態を把握すればこそ、シューズを履き分ける意義はより大きいものになるのだろう。
今季の早大はトップ選手だけでなく、中間層のレベルも着実にアップしており、細かくシューズの履き分けをして効率の良い練習に取り組んできたこともその要因だろう。ひと夏を越えて、新たな選手が台頭してくる可能性は十分ある。
チームのレベルアップに対して山﨑と瀬間は「うかうかしていられない」と口を揃える。山﨑は正月の駅伝で三み 度たびの山下りに出走できたら「区間賞を取りたい」、瀬間は再び大手町にタスキをつなぐアンカーを託されたら「区間上位の走りで優勝テープを切りたい」と、それぞれの目標を語った。
早稲田大学競走部のシューズローテーション


シューズを履き分けることの大切さを説明する花田勝彦駅伝監督。この夏、新発売された地面を捉えるフラットタイプの『METASLEEK』は、さらにレベルアップを狙うために有効な一足という[/caption]
METASPEED シリーズ詳細はこちらをクリック!
※この記事は『月刊陸上競技』2026年10月号に掲載しています
文/和田悟志、撮影/石井啓祐
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