◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)2日目
東京世界陸上2日目のモーニングセッションが行われ、女子100mハードル予選2組に出場した田中佑美(富士通)は13秒05(±0.0)で6着。準決勝に進むことはできなかった。
好スタートを切り、中盤までは良い流れに見えたが、後半以降は伸びを欠いた。レース後、田中は「もうちょっと行けるかなと思ったのですが、厳しかったです。記録としてもパリ五輪では準決勝に行った身としては、こういった記録は悔しいの一言に尽きます」と唇をかんだ。
初優勝した7月の日本選手権決勝の朝からアキレス腱に痛みがあり、万全の状態でこの日を迎えられなかった。「(今大会に)出られるものと仮定して治癒の方に勤しんできましたが、今まで通りの強化はできませんでした」という。ただ、「やり方は1つじゃない」と発想を転換し、たくさんの人たちの力を借りながらできることを取り組んできた。
「レース前は日本選手権に戻すのではなく、せっかくだから新しい技術を取り入れようと。こういう感じでいけたらいいというものはありましたが、いまいちフィットし切る感じではなく、ゴールした感じになります」
新しい技術とは、抜き脚の改善だった。「今年、結構ぶつけていたのもありますし、もともと少し無理やり持ってくるようなタイプだったので、膝の位置を身体に近いところでコントロールすることで、よりインターバルを走りやすくしたい」と考えたからだ。しかし、痛みがある中では技術を身につけるのも限界がある。
出場の辞退も頭をよぎったが、「出たい」のが本音。「出るからにはしっかり走りたい」という思いも当然持っていた。そして田中は「今までしっかりやってきた練習が自信になっていた。練習していないから自信にならないんです。自分の気持ちをどう持っていくかが難しくはありました」と、もどかしい思いを抱えながらスタートラインに立っていた。
「やることがわからない時が人間1番不安だと思っているので、このレースでは自分が何をするかを決めて、そのことだけを考えていました」
悔しい予選敗退に終わったが、自国開催の世界選手権に出場した収穫がまったくなかったわけではない。「ベストの走りではないですが、みなさんにがんばる姿を直接見せられたこと、『ありがとうございます』と言えたことは、出場して本当に良かったなと思います」
この経験を糧にし、田中はこれからも歩みをやめない。
文/小野哲史
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