◇天皇賜盃第94回日本学生対校選手権(6月5日~8日/岡山・JFE晴れの国スタジアム)3日目
学生日本一を決める日本インカレの3日目が行われ、女子走幅跳は木村美海(四国大院)が2年ぶりに優勝を飾った。
劇的な展開だった。3回目に6m29(+1.6)を跳んだのをはじめ、有効試技すべて6m20オーバーで4回目まではトップに立っていた木村。だが、「インカレらしく、1年生が上がってきているのがわかっていた」。5回目に近藤いおん(日大)が6m34(+0.6)のビッグジャンプ、さらに6回目には6m37(-0.9)を跳んだ。近藤も「もしかしたら勝てるかも」と思ったという。
土壇場に追い込まれた木村は学生7年目。今年で競技人生を終えると決めている。「インカレ最後の1本。今の1年生とは6つも離れている。大人げないけど、さすがに勝たせてもらうよ」。7年間の学生生活、そして5度目の日本インカレ。「経験値だけは負けない」「もう2、3位の木村と言わせない」。持ち味の力強い助走から大きなジャンプ。徳島から応援にかけつけた仲間から歓声が沸く。高校の恩師もいる。「行ったというのはわかりました」。自己記録(6m36)を更新する6m42(-0.9)は学生歴代10位。まさに有終の美だった。
「ずっと優勝を目標にしてきた大会。悔いなく、思いっきり行きました。助走の勢いも上げて、踏み切りから着地までハマりました」と涙がこぼれる。
今年25歳になる大学院3年。高1だった2018年に出場したインターハイが、ここ岡山だった。小学校から始めた陸上。高校時代は常に全国大会で戦うも、目の前にはいつもインターハイ3連覇の髙良彩花の背中があった。
覚悟を持って臨んでいた大学4年目。日本インカレの練習跳躍で左腓骨頭を骨折した。見届けた大会では、髙良が6m50の大会新、4年ぶり自己新で優勝していた。
それからは「6m50を目指してやってきました」と木村。大学院1年目の2年前に初優勝したが、昨年夏には練習中に今度は右脚の腓骨頭剥離骨折を負った。それでも木村の闘志は消えなかった。
愛する徳島から出るつもりはなく、大学も四国大へ。「県内で実業団で続けるのは難しい。一度、この雰囲気を味わったら普通の大会では楽しめないし、戻れない」。今年で引退して、秋から就職口を見つけるつもりだ。
15年続けてきた陸上。「日本選手権、ワールドユニバーシティゲームズなどあと数試合。競技人生も最後なので、お世話になった方々に結果で恩返しができるように力を出し切ります」。木村美海という不屈のジャンパーがいたことを日本インカレの歴史にしっかり刻んで、インカレの舞台を飛び立った。
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