HOME 学生長距離

2024.01.30

最後の箱根路/東洋大・松山和希 “フォア・ザ・チーム”に徹して4区を力走「自分の中では出し切れた」
最後の箱根路/東洋大・松山和希 “フォア・ザ・チーム”に徹して4区を力走「自分の中では出し切れた」

2024年箱根駅伝4区で区間2位と好走した東洋大の松山和希

駅伝主将として鉄紺軍団を牽引する立場に

東洋大入学前から駅伝にはめっぽう強かった。栃木・大田原中3年時に全国都道府県対抗男子駅伝6区で区間新記録を樹立し、福島・学法石川高でも同駅伝で5区区間タイ記録で2度目の区間賞。全国高校駅伝ではエース区間の1区で区間2位と好走した。

あれからあっという間に月日が流れ、最上級生となった今年度は9月に駅伝主将へ就任。ケガから回復して合宿での走り込みができるようになったこの時期に、それまで主将として部を率いてきた佐藤真優(4年)とともにチームを導く立場となった。

「大人数の部活でもあるので、佐藤一人では難しい部分もあり、エースと言われる自分が、佐藤をサポートして一緒にやっていくのが大事だと思いました」

だが就任後、出雲では8位、全日本では自身が出場できない中で過去ワーストの14位とチームの成績は振るわなかった。

酒井俊幸監督は「(全日本の)11月は松山ら4年生を出場させていなかった時期で、苦戦は予想のうえでした。どうやって強くなっていくのかを知ることも必要なので、そういう時期だと捉えようと思っていました」と状況を受け止めていた。

松山も「苦しい流れではあったので、監督も、どう導こうかという苦悩があったと思います」と指揮官を慮ってきたという。

広告の下にコンテンツが続きます

そんななかで「自分たちが、少しでも(監督の気持ちに)応えられたなら良かったと思います」と、箱根でエースの役割を全うした。

「私自身は前に立って引っ張ることは少ないタイプ」とはにかむ松山だが、「自分に足りない部分も見えてきたので、駅伝主将は良い経験でした」と振り返る。

将来的にはマラソンでの活躍を見据えており、「東洋大での経験を今後の競技人生に生かしたいです」と前向きに捉えている。

今年度のテーマ「鉄紺の再建」にふさわしい順位として掲げた「3位」という目標には届かなかったが、「4年生があまり良くなかった一方で、2、3年生がよくまとめてくれました。今回の結果は必ず来年につながっていくと思います」と、チームの今後を後輩に託した。

2024年箱根駅伝4区で区間2位と好走した東洋大の松山和希

松山和希(まつやま・かずき:東洋大)/2001年12月4日生まれ。栃木県大田原市出身。福島・学法石川高卒。自己ベストは5000m13分48秒80、10000m28分42秒17、ハーフ1時間0分43秒。

文/中村 外

2024年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。

3年目以降はケガで苦しむ2年間に

「走るからには、エースとして、駅伝主将として、区間賞をとらないといけないという気持ちで臨みました」 鉄紺のエースをもって自任してきた東洋大の松山和希(4年)は、1、2年時に好走した2区ではなく、今大会は4区での出走となった。 1年時に2区で学年別日本人歴代2位の1時間7分15秒(区間4位)で箱根デビューを飾ると、翌年にも同じ区間でタイムをさらに短縮する1時間7分02秒(区間5位)で走破した。 しかし、3年時にはケガや体調不良の影響で、箱根ばかりでなく三大駅伝すべてに出場できない苦汁を味わう。本来自分が走るべき箱根の2区は後輩の石田洸介(現3年)に任せるかたちになり、10区で同部屋だった清野太雅(現・中国電力)がシード権ギリギリの10位を走っていたのを見て「シード落ちの恐怖で震えが止まりませんでした」と当時を振り返る。 今季も夏前に左脛を疲労骨折するなど負の連鎖から抜け出せず。出雲駅伝は4区を区間8位タイで走ったが、全日本大学駅伝には出場できなかった。 最後となる箱根では「2区を走りたい気持ちもあった」という本音も胸の内に秘めながら、「自分が2区では(チームが)勝てない、という監督の判断もあり、勝つために4区を走ろうということになりました」と明かす。 状態としては「80%くらい」だったが、区間2位の走りで5位から1つ順位を上げ、「区間賞を取りたかったというのはありますが、自分の中では出し切って走れたので、気持ちはクリアになっています」とすがすがしく最後の箱根路を終えた。 松山が1、2年時に箱根路を駆け抜けたのは、コロナ禍で応援自粛も呼びかけられた時期。最終学年では大きな声援に迎えられ、「4年目に、この舞台で走ることはどんなに幸せかということを、改めて感じることができました」と万感の思いを味わった。

駅伝主将として鉄紺軍団を牽引する立場に

東洋大入学前から駅伝にはめっぽう強かった。栃木・大田原中3年時に全国都道府県対抗男子駅伝6区で区間新記録を樹立し、福島・学法石川高でも同駅伝で5区区間タイ記録で2度目の区間賞。全国高校駅伝ではエース区間の1区で区間2位と好走した。 あれからあっという間に月日が流れ、最上級生となった今年度は9月に駅伝主将へ就任。ケガから回復して合宿での走り込みができるようになったこの時期に、それまで主将として部を率いてきた佐藤真優(4年)とともにチームを導く立場となった。 「大人数の部活でもあるので、佐藤一人では難しい部分もあり、エースと言われる自分が、佐藤をサポートして一緒にやっていくのが大事だと思いました」 だが就任後、出雲では8位、全日本では自身が出場できない中で過去ワーストの14位とチームの成績は振るわなかった。 酒井俊幸監督は「(全日本の)11月は松山ら4年生を出場させていなかった時期で、苦戦は予想のうえでした。どうやって強くなっていくのかを知ることも必要なので、そういう時期だと捉えようと思っていました」と状況を受け止めていた。 松山も「苦しい流れではあったので、監督も、どう導こうかという苦悩があったと思います」と指揮官を慮ってきたという。 そんななかで「自分たちが、少しでも(監督の気持ちに)応えられたなら良かったと思います」と、箱根でエースの役割を全うした。 「私自身は前に立って引っ張ることは少ないタイプ」とはにかむ松山だが、「自分に足りない部分も見えてきたので、駅伝主将は良い経験でした」と振り返る。 将来的にはマラソンでの活躍を見据えており、「東洋大での経験を今後の競技人生に生かしたいです」と前向きに捉えている。 今年度のテーマ「鉄紺の再建」にふさわしい順位として掲げた「3位」という目標には届かなかったが、「4年生があまり良くなかった一方で、2、3年生がよくまとめてくれました。今回の結果は必ず来年につながっていくと思います」と、チームの今後を後輩に託した。 [caption id="attachment_127213" align="alignnone" width="800"] 2024年箱根駅伝4区で区間2位と好走した東洋大の松山和希[/caption] 松山和希(まつやま・かずき:東洋大)/2001年12月4日生まれ。栃木県大田原市出身。福島・学法石川高卒。自己ベストは5000m13分48秒80、10000m28分42秒17、ハーフ1時間0分43秒。 文/中村 外

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

PR

2025.05.01

KIPRUNが環境に優しい新たなシューズを発表 接着剤不使用の「KIPX」はリサイクル可能な次世代アイテム

KIPRUNは4月上旬、フランス・パリで発表会を行い、新たなブランドロゴを発表するとともに、今後日本国内でも発売を予定している新モデルシューズを発表した。 競歩世界チャンピオンも愛用したシューズ 2021年にブランド初の […]

NEWS セイコーGGPトラック種目の海外選手を発表! 100mにパリ五輪4継金メダルブレーク、110mHに同7位ベネットら

2025.05.01

セイコーGGPトラック種目の海外選手を発表! 100mにパリ五輪4継金メダルブレーク、110mHに同7位ベネットら

セイコーGGPトラックの海外勢をチェック! ●男子100m ピジェイ・オースティン(米国)9秒89 ジェローム・ブレーク(カナダ)10秒00 ● 男子200m ロバート・グレゴリー(米国)19秒60 イアン・カー(バーレ […]

NEWS 坂井隆一郎、中島佑気ジョセフ、水久保漱至らがケガのため欠場/セイコーGGP

2025.05.01

坂井隆一郎、中島佑気ジョセフ、水久保漱至らがケガのため欠場/セイコーGGP

5月1日、日本陸連はセイコーゴールデングランプリ(5月18日/東京・国立競技場)の欠場者を発表した。 日本人選手で欠場するのは、男子100mの坂井隆一郎(大阪ガス)、同200mの水久保漱至(宮崎県スポ協)、同400mの中 […]

NEWS アジア選手権男子400m中島佑気ジョセフが故障のため辞退 44秒台の佐藤風雅が代表入り

2025.05.01

アジア選手権男子400m中島佑気ジョセフが故障のため辞退 44秒台の佐藤風雅が代表入り

クミアジア選手権の日本代表をチェック! 【男子】 ●100m 栁田大輝(東洋大) 東田旺洋(関彰商事) ●200m 鵜澤飛羽(JAL) 飯塚翔太(ミズノ) ●400m 佐藤拳太郎(富士通) 佐藤風雅(ミズノ) ●800m […]

NEWS 東京メトロに伊東明日香が入部 「競技が続けられる環境があることに感謝」

2025.05.01

東京メトロに伊東明日香が入部 「競技が続けられる環境があることに感謝」

伊東明日香の加入を発表する東京メトロ女子駅伝部 【選手入部のお知らせ】日頃より #東京メトロ女子駅伝部 (マーキュリー)を応援いただき、ありがとうございます。5月1日付けで、下記の選手が入部いたしました。 伊東 明日香 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top