HOME 国内

2023.03.06

三菱重工・山下一貴「タイム意識」で日本歴代3位!世界選手権とMGCに向けて見せる進化と真価/東京マラソン
三菱重工・山下一貴「タイム意識」で日本歴代3位!世界選手権とMGCに向けて見せる進化と真価/東京マラソン

山下一貴(三菱重工)

◇東京マラソン2023(3月5日/東京都庁~東京駅)

ワールドマラソンメジャーズの一つで、JMCシリーズG1の東京マラソン2023が行われた。

今大会の男子は日本歴代トップ10のうち6人が出場。そうそうたる顔ぶれがそろったなか、日本人トップでフィニッシュしたのは、マラソン3回目の山下一貴(三菱重工)だった。

広告の下にコンテンツが続きます

「30kmまでは速いペースのなかで、しっかり集団の中にいたいという気持ちがあった」

こう振り返るように、30kmまで山下は先頭集団の後方に待機(常にトップから約3〜4秒差で推移)し、冷静にレースを進めていた。

だが、30kmを過ぎて少しペースダウンすると、まずはチームの先輩である井上大仁が集団の先頭に立つ。すると、「順位というよりも、タイムを意識していた」という山下も、すかさず井上に並んで集団を引っ張った。井上が遅れてからも、山下は海外勢をも率いる積極性を見せた。

広告の下にコンテンツが続きます

しかし、37km過ぎ。タイタス・キプルト(ケニア)、デソ・ゲルミサ(エチオピア)が一気にペースアップした場面では、「反応できなかった」と優勝争いから後退してしまう。さらに、38.5kmでは大迫傑(Nike)にも一歩前を譲った。

「大迫さんに前に出られた時には、このままいかれてしまうのかもしれないと思った」。だが、ここでも山下は冷静だった。

「思ったよりも大迫さん(のペース)が上がり切っていなかった。そこで、少しだけつかせてもらって、動きの修正ができ、頑張ることができました。ずっと1人で走っていたら、(日本人2位の)其田さん(健也、JR東日本)にも負けていたかもしれません」

大迫の仕掛けにも怯むことがなく、今度は山下が40kmを過ぎてじわじわと大迫を引き離しにかかった。これには大迫も「彼は強い」と脱帽。山下は最後の力を振り絞り、日本人トップの7位でフィニッシュした。

「ここまで出るとは思っていなかった」と自身も驚くフィニッシュタイムは、日本歴代3位となる2時間5分51秒の好記録だった。

山下は、社会人1年目に挑んだ2021年のびわ湖毎日マラソンで当時の初マラソン日本最高記録を2秒上回る2時間8分10秒をマーク。さらに昨年2月の大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会では2時間7分42秒(2位)まで記録を短縮した。そして、今回、自己記録をさらに1分51秒も更新と、着実に成長を遂げている。

また、“勝負”という観点でも成長があった。昨年の大阪・びわ湖では、今回と同じように32kmで先頭に押し出されながらも、勝ち切ることができなかった。あくまでも日本人選手相手ではあるものの、。

右肩上がりの成長を見せる山下は、パリ五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では上位候補の1人に挙げられる。また、MGCはもちろん、「ブダペスト世界選手権の代表にもなりたい」と意欲を示す。

今回の東京を含めて、これまで3回のマラソンは約1年間のスパンで臨んできたが、世界選手権は5ヵ月後、MGCは7ヵ月後。山下にとって真価を問われる1年となりそうだ。

文/福本ケイヤ

◇東京マラソン2023(3月5日/東京都庁~東京駅) ワールドマラソンメジャーズの一つで、JMCシリーズG1の東京マラソン2023が行われた。 今大会の男子は日本歴代トップ10のうち6人が出場。そうそうたる顔ぶれがそろったなか、日本人トップでフィニッシュしたのは、マラソン3回目の山下一貴(三菱重工)だった。 「30kmまでは速いペースのなかで、しっかり集団の中にいたいという気持ちがあった」 こう振り返るように、30kmまで山下は先頭集団の後方に待機(常にトップから約3〜4秒差で推移)し、冷静にレースを進めていた。 だが、30kmを過ぎて少しペースダウンすると、まずはチームの先輩である井上大仁が集団の先頭に立つ。すると、「順位というよりも、タイムを意識していた」という山下も、すかさず井上に並んで集団を引っ張った。井上が遅れてからも、山下は海外勢をも率いる積極性を見せた。 しかし、37km過ぎ。タイタス・キプルト(ケニア)、デソ・ゲルミサ(エチオピア)が一気にペースアップした場面では、「反応できなかった」と優勝争いから後退してしまう。さらに、38.5kmでは大迫傑(Nike)にも一歩前を譲った。 「大迫さんに前に出られた時には、このままいかれてしまうのかもしれないと思った」。だが、ここでも山下は冷静だった。 「思ったよりも大迫さん(のペース)が上がり切っていなかった。そこで、少しだけつかせてもらって、動きの修正ができ、頑張ることができました。ずっと1人で走っていたら、(日本人2位の)其田さん(健也、JR東日本)にも負けていたかもしれません」 大迫の仕掛けにも怯むことがなく、今度は山下が40kmを過ぎてじわじわと大迫を引き離しにかかった。これには大迫も「彼は強い」と脱帽。山下は最後の力を振り絞り、日本人トップの7位でフィニッシュした。 「ここまで出るとは思っていなかった」と自身も驚くフィニッシュタイムは、日本歴代3位となる2時間5分51秒の好記録だった。 山下は、社会人1年目に挑んだ2021年のびわ湖毎日マラソンで当時の初マラソン日本最高記録を2秒上回る2時間8分10秒をマーク。さらに昨年2月の大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会では2時間7分42秒(2位)まで記録を短縮した。そして、今回、自己記録をさらに1分51秒も更新と、着実に成長を遂げている。 また、“勝負”という観点でも成長があった。昨年の大阪・びわ湖では、今回と同じように32kmで先頭に押し出されながらも、勝ち切ることができなかった。あくまでも日本人選手相手ではあるものの、。 右肩上がりの成長を見せる山下は、パリ五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では上位候補の1人に挙げられる。また、MGCはもちろん、「ブダペスト世界選手権の代表にもなりたい」と意欲を示す。 今回の東京を含めて、これまで3回のマラソンは約1年間のスパンで臨んできたが、世界選手権は5ヵ月後、MGCは7ヵ月後。山下にとって真価を問われる1年となりそうだ。 文/福本ケイヤ

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.09.18

400m・中島佑気ジョセフが日本勢34年ぶり決勝! 200m・鵜澤飛羽、井戸アビゲイル風果が準決勝に登場/東京世界陸上DAY6イブニングみどころ

◇東京世界陸上(9月13日〜21日/国立競技場)6日目 大会も後半戦を迎える東京世界陸上。日本男子短距離界に新たな歴史が生まれようとしている。 男子400m決勝に中島佑気ジョセフ(富士通)が挑む。予選で44秒44の日本記 […]

NEWS 最速王者も“10秒チャージ” 森永製菓が16万個以上の商品提供で東京世界陸上の参加選手を“応援チュウ!”

2025.09.18

最速王者も“10秒チャージ” 森永製菓が16万個以上の商品提供で東京世界陸上の参加選手を“応援チュウ!”

東京世界陸上オフィシャルサポーターの森永製菓は、9月13日から開催されている同大会の参加アスリートに「inゼリー」、「inバー」、「ハイチュウ」など日本生まれの栄養補助食品やお菓子を無償で提供しているが、その数量が16万 […]

NEWS 35km競歩金のダンフィー 20km競歩棄権表明「出場できないのは残念だが、レースには応援に行くつもり」/東京世界陸上

2025.09.18

35km競歩金のダンフィー 20km競歩棄権表明「出場できないのは残念だが、レースには応援に行くつもり」/東京世界陸上

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場) 9月18日、東京世界陸上初日の男子35km競歩で金メダルを獲得したエヴァン・ダンフィー(カナダ)が、自身のSNSを更新し、8日目(20日)の20km競歩を棄権することを発 […]

NEWS DAY6イブニングセッションのチケット完売 残りのイブニングセッションも完売間近/東京世界陸上

2025.09.18

DAY6イブニングセッションのチケット完売 残りのイブニングセッションも完売間近/東京世界陸上

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)6日目 東京2025世界陸上財団は9月18日、大会6日目のイブニングセッションのチケットが完売したと発表した。13日のDAY1、14日のDAY2のイブニングセッションに続く […]

NEWS 川上勇士が富士山GXに入社 東海大などで活躍「チーム・会社に貢献できるように頑張る」

2025.09.18

川上勇士が富士山GXに入社 東海大などで活躍「チーム・会社に貢献できるように頑張る」

富士山GXは9月18日、川上勇士が9月16日付で入社・入部したと発表した。 千葉県出身の川上は鎌ケ谷中時代に、全中やジュニア五輪に出場。市船橋高では全国高校駅伝で1年時に5区、2年時には4区3位となっている。 進学した東 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年10月号 (9月9日発売)

2025年10月号 (9月9日発売)

【別冊付録】東京2025世界陸上観戦ガイド
村竹ラシッド/桐生祥秀/中島佑気ジョセフ/中島ひとみ/瀬古優斗
【Coming EKIDEN Season 25-26】
学生長距離最新戦力分析/青学大/駒大/國學院大/中大/

page top