2022.06.29
FOCUS! 高校生INTERVIEW
吉岡大翔 Yoshioka Hiroto
佐久長聖3長野
活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は男子長距離の吉岡大翔選手(佐久長聖3長野)にインタビューしました。6月9日のU20日本選手権5000mでは、年上の大学生を相手に、終盤圧倒的なスパートを見せて優勝。6月28日に発表されたU20世界選手権(8月1日~6日/コロンビア・カリ)の日本代表に選出されました。初の国際舞台への意気込みと世界への思い、将来の目標などをうかがいました。
高校生での世界経験がシニアにつながる
――U20世界選手権の日本代表に選出されました。おめでとうございます!
吉岡 ありがとうございます。1月に日本陸連からU20日本代表候補に選んでいただき、本格的に世界を目指してきたなかで、代表に選ばれたのはうれしいですし、安堵感があります。
――選考レースとなった6月9日のU20日本選手権5000mでは、他の大学生をぶっちぎって優勝(13分54秒98)しました。
吉岡 レース前は多少緊張しましたが、「これだけやったから大丈夫」と自信を持ってスタートラインに立てました。自分以外は全員、大学生でしたが、今後シニアで戦っていくなら年齢は関係ないですし、高校生だから負けていいということもありません。年上の方々と走れる良い機会でもあるので、しっかり生かそうと思って臨みました。
――4000mからの1000mを2分29秒でカバーしたスパートは鮮烈でした。
吉岡 元々ラスト2周から行こうと考えていましたが、前半が思ったよりスローペースだったので、レース中に、残り1000m前には先頭に出て一気に行こうと切り替えました。それがうまくハマった感じです。
――レース後、顧問の高見澤勝先生からはどんな声を掛けてもらいましたか?
吉岡 先生からは「代表に選ばれることもそうだけど、その過程を大事にしてほしい」と言われていました。これは駅伝部で常に言われていることで、自信を持ってプロセスを踏めたからこそ、結果がついてきたと感じています。
――今年は早くからU20世界選手権を意識していたそうですが、日程が重なるインターハイへの思いはありませんでしたか?
吉岡 昨年のインターハイ5000m(6位/日本人2位)で、佐藤圭汰さん(洛南/現・駒大)に負けた悔しさもあり、最初は今年も出たいという思いがありました。でも、高見澤先生とお話をして、高校生のうちに世界を経験することが、今後のシニアでの戦いにつながっていくと思えたので、挑戦しようと決めました。
――U20世界選手権まで残り約1ヵ月、どのように過ごしていこうと考えていますか?
吉岡 ここまでは毎週レースが続いて身体にもダメージが来ていたので、インターハイ北信越大会以降の練習はだいぶ休養的な内容でした。7月からはチームの合宿もあるので、もう一度、脚を作り直して、U20世界選手権を迎える予定です。
――3000mと5000mの2種目に出場する大会本番での目標は?
吉岡 本命は5000mですが、出場予定選手のランキングを見ると、日本記録より速いタイムを持っている選手が何人もいます。そういう選手たちとのレースを体感しつつ、出るからには1つでも上の順位、できれば8位入賞を目指したいです。海外に行くことが初めてですし、レース以外のこともいろいろ経験したり学びながら、代表選手としての責任を果たしたいです。

最終的にはトラックで五輪・世界選手権出場
――昨年はインターハイでの入賞や全国高校駅伝(都大路)は1区2位(チームは5位)の成績を残しました。どんな収穫や課題がありましたか?
吉岡 高校生の大会は、同じ高校生には負けたくないという気持ちで臨めますし、刺激をもらいながら戦える良さがあります。昨年は2年生には負けなしで、秋に5000mで13分38秒96(高2最高)も出せて、速さはある程度の目標を達成できましたが、勝つという強さの面ではまだまだ足りないと感じました。
――高校駅伝以降の練習は順調でしたか?重点的に取り組んだことを教えてください。
吉岡 2月のU20日本選手権クロカン(優勝)前に脚を少し痛めましたが、それ以外は順調でした。3月の春の高校伊那駅伝を挟みながら、狙うべき記録会に向けてポイントをしっかり押さえていくことと、ジョグでは最初に速く入って後半に耐えたり、前半にゆっくり入って後半に切り替えるなど、レースを想定しながら工夫して取り組んできました。
――チームのキャプテンとして意識してきたことはありますか?
吉岡 先生方から「応援されるチームや人になるように」との言葉をいただき、みんなに「こういう生活をしているからこの人はしっかり走れているんだな」と思ってもらえるような生活を心がけています。
――卒業後の目標や競技者としての夢を教えてください?
吉岡 大学に進んで、駅伝をやりながら、5000mや10000mのトラック種目で戦っていきたいです。今のところの最終的な夢は、オリンピックや世界選手権にトラックで出場し、少しでも良い結果を残すことです。
――学校生活は順調ですか?
吉岡 クラスメイトとは仲良くやっていますが、大会が多かった6月は欠席が続きましたし、文化祭や修学旅行にも参加できなかったのは少し残念でした。
――勉強に関して得意な教科や苦手な教科は?
吉岡 得意なのは理数系で、英語が苦手です。英語は必要性を感じていますが、授業に出られない日もあったので……(苦笑)。
――駅伝部の寮では、吉岡選手が入学した2020年に携帯電話の使用が解禁されました。
吉岡 使用できるのは午後練習が終わってから寝るまでの間です。他の選手の結果をチェックしたり、レースの動画を見たりして刺激を受けています。SNSで発信することは禁止です。
――休日はどのように過ごしていますか?
吉岡 自分はあまり治療院には行かずに、寮でマッサージをしたり、お風呂に入ったりしてのんびりしています。主に日曜日の午前練習が終わった午後には、外出して買い物したりすることもあります。
――競技以外で将来の夢を教えてください。
吉岡 まだ具体的には決めていませんが、これまで陸上をやってきて、自分ひとりではここまで来ることができなかったという思いがあるので、次の若い世代の人たちに競技を楽しんでもらえるように、どんな形でも陸上界に携わっていきたいと考えています。

◎よしおか・ひろと/2004年5月18日生まれ。長野・川中島中→佐久長聖高。中2で全中3000m10位、全国中学校駅伝2区区間2位などの成績を残した。中3では、全中3000mで6位に入り、全国都道府県対抗男子駅伝は6区区間新でチームの優勝に貢献。高校では1年から活躍し、5000mで高1最高の13分50秒27をマークすると、全国高校駅伝4区では区間賞に輝いた。2年時の昨シーズンは5000mでインターハイ6位の他、10月に13分38秒96(現・高校歴代6位)の高2最高を樹立。全国高校駅伝は1区2位で走破している。自己ベストは1500m3分47秒50(22年)、3000m8分01秒29(22年)、5000m13分38秒96(21年)
構成/小野哲史
高校生での世界経験がシニアにつながる
――U20世界選手権の日本代表に選出されました。おめでとうございます! 吉岡 ありがとうございます。1月に日本陸連からU20日本代表候補に選んでいただき、本格的に世界を目指してきたなかで、代表に選ばれたのはうれしいですし、安堵感があります。 ――選考レースとなった6月9日のU20日本選手権5000mでは、他の大学生をぶっちぎって優勝(13分54秒98)しました。 吉岡 レース前は多少緊張しましたが、「これだけやったから大丈夫」と自信を持ってスタートラインに立てました。自分以外は全員、大学生でしたが、今後シニアで戦っていくなら年齢は関係ないですし、高校生だから負けていいということもありません。年上の方々と走れる良い機会でもあるので、しっかり生かそうと思って臨みました。 ――4000mからの1000mを2分29秒でカバーしたスパートは鮮烈でした。 吉岡 元々ラスト2周から行こうと考えていましたが、前半が思ったよりスローペースだったので、レース中に、残り1000m前には先頭に出て一気に行こうと切り替えました。それがうまくハマった感じです。 ――レース後、顧問の高見澤勝先生からはどんな声を掛けてもらいましたか? 吉岡 先生からは「代表に選ばれることもそうだけど、その過程を大事にしてほしい」と言われていました。これは駅伝部で常に言われていることで、自信を持ってプロセスを踏めたからこそ、結果がついてきたと感じています。 ――今年は早くからU20世界選手権を意識していたそうですが、日程が重なるインターハイへの思いはありませんでしたか? 吉岡 昨年のインターハイ5000m(6位/日本人2位)で、佐藤圭汰さん(洛南/現・駒大)に負けた悔しさもあり、最初は今年も出たいという思いがありました。でも、高見澤先生とお話をして、高校生のうちに世界を経験することが、今後のシニアでの戦いにつながっていくと思えたので、挑戦しようと決めました。 ――U20世界選手権まで残り約1ヵ月、どのように過ごしていこうと考えていますか? 吉岡 ここまでは毎週レースが続いて身体にもダメージが来ていたので、インターハイ北信越大会以降の練習はだいぶ休養的な内容でした。7月からはチームの合宿もあるので、もう一度、脚を作り直して、U20世界選手権を迎える予定です。 ――3000mと5000mの2種目に出場する大会本番での目標は? 吉岡 本命は5000mですが、出場予定選手のランキングを見ると、日本記録より速いタイムを持っている選手が何人もいます。そういう選手たちとのレースを体感しつつ、出るからには1つでも上の順位、できれば8位入賞を目指したいです。海外に行くことが初めてですし、レース以外のこともいろいろ経験したり学びながら、代表選手としての責任を果たしたいです。
最終的にはトラックで五輪・世界選手権出場
――昨年はインターハイでの入賞や全国高校駅伝(都大路)は1区2位(チームは5位)の成績を残しました。どんな収穫や課題がありましたか? 吉岡 高校生の大会は、同じ高校生には負けたくないという気持ちで臨めますし、刺激をもらいながら戦える良さがあります。昨年は2年生には負けなしで、秋に5000mで13分38秒96(高2最高)も出せて、速さはある程度の目標を達成できましたが、勝つという強さの面ではまだまだ足りないと感じました。 ――高校駅伝以降の練習は順調でしたか?重点的に取り組んだことを教えてください。 吉岡 2月のU20日本選手権クロカン(優勝)前に脚を少し痛めましたが、それ以外は順調でした。3月の春の高校伊那駅伝を挟みながら、狙うべき記録会に向けてポイントをしっかり押さえていくことと、ジョグでは最初に速く入って後半に耐えたり、前半にゆっくり入って後半に切り替えるなど、レースを想定しながら工夫して取り組んできました。 ――チームのキャプテンとして意識してきたことはありますか? 吉岡 先生方から「応援されるチームや人になるように」との言葉をいただき、みんなに「こういう生活をしているからこの人はしっかり走れているんだな」と思ってもらえるような生活を心がけています。 ――卒業後の目標や競技者としての夢を教えてください? 吉岡 大学に進んで、駅伝をやりながら、5000mや10000mのトラック種目で戦っていきたいです。今のところの最終的な夢は、オリンピックや世界選手権にトラックで出場し、少しでも良い結果を残すことです。 ――学校生活は順調ですか? 吉岡 クラスメイトとは仲良くやっていますが、大会が多かった6月は欠席が続きましたし、文化祭や修学旅行にも参加できなかったのは少し残念でした。 ――勉強に関して得意な教科や苦手な教科は? 吉岡 得意なのは理数系で、英語が苦手です。英語は必要性を感じていますが、授業に出られない日もあったので……(苦笑)。 ――駅伝部の寮では、吉岡選手が入学した2020年に携帯電話の使用が解禁されました。 吉岡 使用できるのは午後練習が終わってから寝るまでの間です。他の選手の結果をチェックしたり、レースの動画を見たりして刺激を受けています。SNSで発信することは禁止です。 ――休日はどのように過ごしていますか? 吉岡 自分はあまり治療院には行かずに、寮でマッサージをしたり、お風呂に入ったりしてのんびりしています。主に日曜日の午前練習が終わった午後には、外出して買い物したりすることもあります。 ――競技以外で将来の夢を教えてください。 吉岡 まだ具体的には決めていませんが、これまで陸上をやってきて、自分ひとりではここまで来ることができなかったという思いがあるので、次の若い世代の人たちに競技を楽しんでもらえるように、どんな形でも陸上界に携わっていきたいと考えています。
◎よしおか・ひろと/2004年5月18日生まれ。長野・川中島中→佐久長聖高。中2で全中3000m10位、全国中学校駅伝2区区間2位などの成績を残した。中3では、全中3000mで6位に入り、全国都道府県対抗男子駅伝は6区区間新でチームの優勝に貢献。高校では1年から活躍し、5000mで高1最高の13分50秒27をマークすると、全国高校駅伝4区では区間賞に輝いた。2年時の昨シーズンは5000mでインターハイ6位の他、10月に13分38秒96(現・高校歴代6位)の高2最高を樹立。全国高校駅伝は1区2位で走破している。自己ベストは1500m3分47秒50(22年)、3000m8分01秒29(22年)、5000m13分38秒96(21年)
構成/小野哲史 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.10.26
-
2025.10.26
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/チーム総合(2025年10月18日)
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.26
ゲティチ1時間3分08秒で世界記録にあと16秒 男子はケジェルチャ58分02秒、アルムグレンが欧州記録/バレンシアハーフ
バレンシアハーフマラソンが10月26日、スペインの同地で行われ、女子ではA.ゲティチ(ケニア)が1時間3分08秒で2連覇した。 この記録は世界歴代2位の自己記録(1時間3分04秒)に続く、歴代パフォーマンス3位。ゲティチ […]
2025.10.26
走高跳・仲野春花が現役引退「自分と競技と向き合えた」17、18年日本選手権V、低迷期支えたジャンパー
女子走高跳の仲野春花(ニッパツ)が今季限りでの引退を表明した。 仲野は福岡県出身の29歳。母(牧子さん)は100mハードルで日本トップ選手だった。その影響もあり小1から陸上を始めた。 行橋中京中から中村学園女高へ進むと、 […]
2025.10.26
ハーフマラソン競歩は東洋大・逢坂草太朗1時間23分33秒で制覇 女子は永井優会が優勝/高畠競歩
◇第62回全日本競歩高畠大会(10月26日/山形・高畠まほろば競歩/1周1.0kmの周回) 来年秋に開催される名古屋アジア大会の代表選考会を兼ねた第62回全日本競歩高畠大会が行われ、ハーフマラソン競歩は男子が逢坂草太朗( […]
2025.10.26
最多出場校・福岡大が8位で11年ぶりシード!目標達成へ最後まで「熱いレース」やり遂げる/全日本大学女子駅伝
◇第43回全日本大学女子駅伝(10月26日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着6区間38.0km) 第43回全日本大学女子駅伝が行われ、城西大が2時間3分28秒で25年ぶり3度目の優勝を飾った。 白熱のシード争い。そ […]
2025.10.26
前回女王・立命大は5位「前半から出し切れなかった」98年からのトップ5継続/全日本大学女子駅伝
◇第43回全日本大学女子駅伝(10月26日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着6区間38.0km) 第43回全日本大学女子駅伝が行われ、城西大が2時間3分28秒で25年ぶり3度目の優勝を飾った。 連覇を狙った立命大は […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望