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2025.12.31

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逆境はねのけ初優勝の城西大「選手たちの思いが強かった」 ルーキー3人が区間賞/富士山女子駅伝
逆境はねのけ初優勝の城西大「選手たちの思いが強かった」 ルーキー3人が区間賞/富士山女子駅伝

富士山を背に大会初制覇を喜ぶ城西大のメンバー

◇全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km)

学生女子駅伝2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が行われ、城西大が2時間22分36秒で初優勝を飾った。25年ぶりの戴冠となった10月の全日本大学女子駅伝に続き、再び手に汗握るアンカー勝負を制しての勝利。学生女子駅伝2冠という偉業を成し遂げた。

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前日会見で赤羽周平監督は「全日本よりも1区間増えるのはアドバンテージになる。取りこぼしなく、100%が出せれば(初優勝が)見えてくる」と語っていた。しかし、チームは必ずしもベストメンバー、最高のコンディションで当日を迎えられたわけではなかった。

5000m15分台の自己ベストを持ち、前回7区区間2位の石川苺(3年)は、全日本後に発症したヘルニアの影響でエントリーできず。さらに4区予定だった世古凪沙(1年)も当日の発熱により、澤井風月(3年)へと急きょメンバー変更となった。主将の金子陽向(4年)も「前日までは『今が一番強い』と思えるほどの仕上がりでしたが、体調を崩し、朝起きたら『やばい』と感じるほどでした」と明かす。

それでも金子が「城西大は誰かが苦しんでいる時に誰かがそれをカバーするような温かいチーム」と言うように、絶体絶命と思われる状況でもチームが崩れることはなかった。

1区の兼子心晴(4年)がトップと4秒差の3位スタート。全日本1区区間賞の本間香(1年)は「心晴先輩がすごく良い位置でタスキを持ってきてくれたので、私はただ後ろと離すことを意識して、伸び伸びと気持ちよく走ることができました」と、従来の記録を4秒更新する区間新の快走で、2位との差を54秒に拡大した。

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続く本澤美桜(2年)と澤井は後続に追い上げられながらも首位を守ったが、最長10.5kmの5区で金子が3位に後退。中間点を前に大東大のサラ・ワンジル(3年)にかわされ、7.8km付近では東北福祉大にも先行を許した。

劣勢に立たされるなか真価を発揮したのが、頼れる4年生の背中を追い続けてきたルーキーの2人だった。学生駅伝デビューとなった6区の窪田舞は「途中で苦しい場面はありましたが、『ここでやらなきゃどうするんだ』という気持ちで、最後まで出し切る走りができました」と東北福祉大との激しい2位争いを制す。

アンカーの大西由菜はまさに“魂の走り”だった。24秒前にスタートした首位・大東大を4km手前でとらえたものの、5.7km地点で追い上げてきた東北福祉大に一度は首位を譲る。「その時は『自分はだめかもしれない』と弱気になりました」と振り返るが、「ここでやらないと一生後悔する」と自らを奮い立たせた。7km地点にいたチームメイトの声援を力に変え、7.2kmで再びトップに立つと、そのまま逃げ切った。

大西は「山の準備をしていた苺先輩が走れなくなって、みんな不安だったと思いますが、『由菜なら大丈夫だよ』と言ってもらえたことが力になりました」と、涙を浮かべながら語った。

赤羽監督は選手たちが示した強さに、ただただ脱帽するだけだった。

「今年度は、全日本と富士山での2冠を目標にスタートしました。正直、簡単なことではないと指導者である自分自身が感じていましたが、選手たちの思いは本当に強かった。全日本はアンカーで逆転し、今回の富士山も最後の坂でアンカーが逆転。とにかく、選手たちの思いの強さが素晴らしかったです」

持ちタイムや過去の実績を見れば、城西大を上回るチームは確かに存在した。コンディションも決して万全ではなかった。それでも4年生を中心とした「絶対に勝つ」という〝思いの強さ〟が、数々のライバルとアクシデントを乗り越えさせた。2025年は、城西大が学生女子駅伝の主役として輝いた1年となった。

文/小野哲史

◇全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 学生女子駅伝2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が行われ、城西大が2時間22分36秒で初優勝を飾った。25年ぶりの戴冠となった10月の全日本大学女子駅伝に続き、再び手に汗握るアンカー勝負を制しての勝利。学生女子駅伝2冠という偉業を成し遂げた。 前日会見で赤羽周平監督は「全日本よりも1区間増えるのはアドバンテージになる。取りこぼしなく、100%が出せれば(初優勝が)見えてくる」と語っていた。しかし、チームは必ずしもベストメンバー、最高のコンディションで当日を迎えられたわけではなかった。 5000m15分台の自己ベストを持ち、前回7区区間2位の石川苺(3年)は、全日本後に発症したヘルニアの影響でエントリーできず。さらに4区予定だった世古凪沙(1年)も当日の発熱により、澤井風月(3年)へと急きょメンバー変更となった。主将の金子陽向(4年)も「前日までは『今が一番強い』と思えるほどの仕上がりでしたが、体調を崩し、朝起きたら『やばい』と感じるほどでした」と明かす。 それでも金子が「城西大は誰かが苦しんでいる時に誰かがそれをカバーするような温かいチーム」と言うように、絶体絶命と思われる状況でもチームが崩れることはなかった。 1区の兼子心晴(4年)がトップと4秒差の3位スタート。全日本1区区間賞の本間香(1年)は「心晴先輩がすごく良い位置でタスキを持ってきてくれたので、私はただ後ろと離すことを意識して、伸び伸びと気持ちよく走ることができました」と、従来の記録を4秒更新する区間新の快走で、2位との差を54秒に拡大した。 続く本澤美桜(2年)と澤井は後続に追い上げられながらも首位を守ったが、最長10.5kmの5区で金子が3位に後退。中間点を前に大東大のサラ・ワンジル(3年)にかわされ、7.8km付近では東北福祉大にも先行を許した。 劣勢に立たされるなか真価を発揮したのが、頼れる4年生の背中を追い続けてきたルーキーの2人だった。学生駅伝デビューとなった6区の窪田舞は「途中で苦しい場面はありましたが、『ここでやらなきゃどうするんだ』という気持ちで、最後まで出し切る走りができました」と東北福祉大との激しい2位争いを制す。 アンカーの大西由菜はまさに“魂の走り”だった。24秒前にスタートした首位・大東大を4km手前でとらえたものの、5.7km地点で追い上げてきた東北福祉大に一度は首位を譲る。「その時は『自分はだめかもしれない』と弱気になりました」と振り返るが、「ここでやらないと一生後悔する」と自らを奮い立たせた。7km地点にいたチームメイトの声援を力に変え、7.2kmで再びトップに立つと、そのまま逃げ切った。 大西は「山の準備をしていた苺先輩が走れなくなって、みんな不安だったと思いますが、『由菜なら大丈夫だよ』と言ってもらえたことが力になりました」と、涙を浮かべながら語った。 赤羽監督は選手たちが示した強さに、ただただ脱帽するだけだった。 「今年度は、全日本と富士山での2冠を目標にスタートしました。正直、簡単なことではないと指導者である自分自身が感じていましたが、選手たちの思いは本当に強かった。全日本はアンカーで逆転し、今回の富士山も最後の坂でアンカーが逆転。とにかく、選手たちの思いの強さが素晴らしかったです」 持ちタイムや過去の実績を見れば、城西大を上回るチームは確かに存在した。コンディションも決して万全ではなかった。それでも4年生を中心とした「絶対に勝つ」という〝思いの強さ〟が、数々のライバルとアクシデントを乗り越えさせた。2025年は、城西大が学生女子駅伝の主役として輝いた1年となった。 文/小野哲史

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