2019.10.11
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!!
アシックス「GLIDERIDE(グライドライド)」
ランニング界は今、〝厚底シューズ〟がブームだ。そんな中、アシックスから新たなコンセプトで開発された厚底シューズ「GLIDERIDE(グライドライド)」が登場した。開発コンセプトは「もっとラクに、もっと長く」。実際に走ってみてそのポテンシャルを体感した。
楽に長く走れるシューズ
9月27日に発売されたアシックスの「GLIDERIDE(グライドライド)」は、同社が2月に発売した「METARIDE(メタライド)」の後継モデルだ。いや、どちらかと言えば〝別バージョン〟と表現したほうが適切かもしれない。開発コンセプトは同様ながら、若干違った走り心地を提供してくれる。
これらのシューズの開発コンセプトは「もっとラクに、もっと長く」。アシックススポーツ工学研究所では、走行時の動作を分析した結果、足首の角度変化を抑えることがエネルギーの消費を軽減することがわかった。こうして生まれたのが「METARIDE」で、このテクノロジーをより多くの人に活用してもらおうと登場したのが「GLIDERIDE」というわけだ。
スムーズに脚が回転
「楽に長く走る」というコンセプトを実現させたのは特徴的なソール構造だ。2層に分かれたミッドソールが前足部からつま先にかけて薄くなり、つま先が反り上がることで蹴り出しの際の足首の角度変化を抑制する。
この「GUIDESOLE(ガイドソール)」と呼ばれる構造によって、まるで転がるように脚が回転する。
グライドライドに足を通してみると、やはり前足部の傾斜が印象的だ。ソール自体に高さがあるので靴の中で足は水平な状態だが、つま先にかけてソールが薄くなるので、母指球のあたりは地面から浮いた状態。厚底シューズがブームになってからは、こういった前足部が傾斜したシューズが増えてきているが、母指球が浮くというのは新鮮だ。
ただ、実際に走ってみると違和感はなし。脚はスムーズに回転するが、走りにくいとか、必要以上にスピードが出るということもない。普段の走りと同じ感覚で、いつもより少し力を抜いても大丈夫という状態になる。「あぁ、これが『楽に走る』ということか」と開発コンセプトに共感する。
「楽に走れる」看板に偽りなし!
脚がスムーズに回転するので、走る側の意識としてはその慣性に身を任せて脚を回していればいい。ガイドソールという名前の通り、足が自然とGUIDE(案内)されている感覚を抱くことだろう。傾斜したソール形状のため、アップダウンも快適だ。
せっかくなので、この靴の〝適性速度〟がどのあたりなのかも試すことにした。トラックでペースを上げて、1000mで4分を切ってみる。すると、さすがに〝目的外〟だったせいか、若干の重さとレスポンスのズレを感じた。27.0cmで約290gと、セーフティタイプのモデルとしてはむしろ軽い部類なのだが、短い距離でスピードを上げる場合はターサーやソーティなど高速モデルを使用したほうがよさそうだ。
ちなみに、ガイドソールは「ターサージール」などと同様に、軽量性と耐久性を両立した「FLYTEFOAM(フライトフォーム)」を採用している。100m程度のウィンドスプリント(流し)であればグライドライドでまったく問題なく走れることを確認した。
そして、走り終えてみて驚いた。30分で6kmほど走り、途中で1000mをペースアップしたのに、疲労感が「ない」。脚にまったく疲れを感じなかった。ペースが遅いからとか、そういう次元ではなく、通常であれば走り終わった後には脚のどこかしらに残る微細な疲労感が皆無だったのだ。
まさに「楽に走れる」シューズ。初心者だけでなく、中級・上級ランナーのリカバリーJogやLSD(ロングスローディスタンス)などにも最適だろう。レースを完走できる自信のない初心者や、脚をできるだけ温存して最後まで快適に走りたいというランナーにはレース用としても使える。長距離って苦手だな……と思っている人ほど履く価値のあるシューズと言えそうだ。
翌日になってわかったのだが、グライドライドを履いている間はどうやら脚よりも臀部(お尻)の筋肉を稼動させていたようだ。末端よりも中心部、小さい筋肉よりも大きい筋肉を自然と使えるようにサポートしてくれる。これも理にかなったシステムだ。
メタライドとの違い
ここまでグライドライドの説明をしてきたが、メタライドとグライドライドの違いはどこにあるのか。私はメタライドを履いたことがないので人から聞いた話をお伝えするしかないが、自動車にたとえるとメタライドは「自動運転」、グライドライドは「オートマ車」らしい。
メタライドはグライドライドに比べてややソールが硬く、サポート機能も満載だ。その分価格もメタライドが27000円(税別)、グライドライドは16000円(税別)と1万円ほど差があり、メタライドはスイッチを押しただけで勝手に走らせてくれるような感覚だという。
一方のグライドライドは走り方のサポートはしてくれるが、アクセルをどう踏むかは運転者(ランナー)に主導権がある。どちらがいいというよりは、乗り心地の違い。自分の感覚を大事にしたいランナーはグライドライドのほうが使い勝手が良いだろう。
そして、グライドライドを履きながら思った。この傾斜したソール構造を維持しながら、もう少しソール全体が薄くて軽いシューズができたら、中上級者のレース用として最高なんじゃないか?
いや、きっとアシックスはもう次の手を考えているに違いない。何しろ来年は2020年、テクノロジーの集大成とも言えるシューズをリリースするはずだ。その時に我々はこのグライドライドが見せた世界が〝未来〟につながっていたことを理解するのかもしれない。
◎文/山本慎一郎
<関連記事>
【アイテム】 「ピンなしスプリントシューズ」メタスプリント開発秘話
【アイテム】 アシックスが新コンセプトシューズ「METASPRINT(メタスプリント)」と 「METARACER(メタレーサー)」を発表
【PR】ASICSの〝先進的〟レーシングシューズ METASPRINT(メタスプリント)&METARACER(メタレーサー)
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスのカーボンプレート搭載シューズ「METARACER(メタレーサー)」
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスの高反発シューズ「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックス「GLIDERIDE(グライドライド)」
ランニング界は今、〝厚底シューズ〟がブームだ。そんな中、アシックスから新たなコンセプトで開発された厚底シューズ「GLIDERIDE(グライドライド)」が登場した。開発コンセプトは「もっとラクに、もっと長く」。実際に走ってみてそのポテンシャルを体感した。 [caption id="attachment_5064" align="aligncenter" width="600"]
9月27日に発売されたアシックスの「GLIDERIDE(グライドライド)」[/caption]
楽に長く走れるシューズ
9月27日に発売されたアシックスの「GLIDERIDE(グライドライド)」は、同社が2月に発売した「METARIDE(メタライド)」の後継モデルだ。いや、どちらかと言えば〝別バージョン〟と表現したほうが適切かもしれない。開発コンセプトは同様ながら、若干違った走り心地を提供してくれる。 これらのシューズの開発コンセプトは「もっとラクに、もっと長く」。アシックススポーツ工学研究所では、走行時の動作を分析した結果、足首の角度変化を抑えることがエネルギーの消費を軽減することがわかった。こうして生まれたのが「METARIDE」で、このテクノロジーをより多くの人に活用してもらおうと登場したのが「GLIDERIDE」というわけだ。 [caption id="attachment_5065" align="aligncenter" width="600"]
発売前日である9月26日には都内でローンチイベントを開催[/caption]
[caption id="attachment_5066" align="aligncenter" width="600"]
タレントで慶大競走部OGの宇佐美菜穂さんが進行役を務めた[/caption]
スムーズに脚が回転
「楽に長く走る」というコンセプトを実現させたのは特徴的なソール構造だ。2層に分かれたミッドソールが前足部からつま先にかけて薄くなり、つま先が反り上がることで蹴り出しの際の足首の角度変化を抑制する。 この「GUIDESOLE(ガイドソール)」と呼ばれる構造によって、まるで転がるように脚が回転する。 [caption id="attachment_5067" align="aligncenter" width="600"]
反り上がったつま先が特徴的[/caption]
グライドライドに足を通してみると、やはり前足部の傾斜が印象的だ。ソール自体に高さがあるので靴の中で足は水平な状態だが、つま先にかけてソールが薄くなるので、母指球のあたりは地面から浮いた状態。厚底シューズがブームになってからは、こういった前足部が傾斜したシューズが増えてきているが、母指球が浮くというのは新鮮だ。
[caption id="attachment_5068" align="aligncenter" width="600"]
靴を裏返しにすると傾斜している様子が一目瞭然[/caption]
ただ、実際に走ってみると違和感はなし。脚はスムーズに回転するが、走りにくいとか、必要以上にスピードが出るということもない。普段の走りと同じ感覚で、いつもより少し力を抜いても大丈夫という状態になる。「あぁ、これが『楽に走る』ということか」と開発コンセプトに共感する。
「楽に走れる」看板に偽りなし!
脚がスムーズに回転するので、走る側の意識としてはその慣性に身を任せて脚を回していればいい。ガイドソールという名前の通り、足が自然とGUIDE(案内)されている感覚を抱くことだろう。傾斜したソール形状のため、アップダウンも快適だ。 せっかくなので、この靴の〝適性速度〟がどのあたりなのかも試すことにした。トラックでペースを上げて、1000mで4分を切ってみる。すると、さすがに〝目的外〟だったせいか、若干の重さとレスポンスのズレを感じた。27.0cmで約290gと、セーフティタイプのモデルとしてはむしろ軽い部類なのだが、短い距離でスピードを上げる場合はターサーやソーティなど高速モデルを使用したほうがよさそうだ。 ちなみに、ガイドソールは「ターサージール」などと同様に、軽量性と耐久性を両立した「FLYTEFOAM(フライトフォーム)」を採用している。100m程度のウィンドスプリント(流し)であればグライドライドでまったく問題なく走れることを確認した。 そして、走り終えてみて驚いた。30分で6kmほど走り、途中で1000mをペースアップしたのに、疲労感が「ない」。脚にまったく疲れを感じなかった。ペースが遅いからとか、そういう次元ではなく、通常であれば走り終わった後には脚のどこかしらに残る微細な疲労感が皆無だったのだ。 まさに「楽に走れる」シューズ。初心者だけでなく、中級・上級ランナーのリカバリーJogやLSD(ロングスローディスタンス)などにも最適だろう。レースを完走できる自信のない初心者や、脚をできるだけ温存して最後まで快適に走りたいというランナーにはレース用としても使える。長距離って苦手だな……と思っている人ほど履く価値のあるシューズと言えそうだ。 [caption id="attachment_5070" align="aligncenter" width="600"]
GLIDERIDEは「楽に走る」ことの楽しさを教えてくれるシューズだ[/caption]
翌日になってわかったのだが、グライドライドを履いている間はどうやら脚よりも臀部(お尻)の筋肉を稼動させていたようだ。末端よりも中心部、小さい筋肉よりも大きい筋肉を自然と使えるようにサポートしてくれる。これも理にかなったシステムだ。
メタライドとの違い
ここまでグライドライドの説明をしてきたが、メタライドとグライドライドの違いはどこにあるのか。私はメタライドを履いたことがないので人から聞いた話をお伝えするしかないが、自動車にたとえるとメタライドは「自動運転」、グライドライドは「オートマ車」らしい。 メタライドはグライドライドに比べてややソールが硬く、サポート機能も満載だ。その分価格もメタライドが27000円(税別)、グライドライドは16000円(税別)と1万円ほど差があり、メタライドはスイッチを押しただけで勝手に走らせてくれるような感覚だという。 一方のグライドライドは走り方のサポートはしてくれるが、アクセルをどう踏むかは運転者(ランナー)に主導権がある。どちらがいいというよりは、乗り心地の違い。自分の感覚を大事にしたいランナーはグライドライドのほうが使い勝手が良いだろう。 そして、グライドライドを履きながら思った。この傾斜したソール構造を維持しながら、もう少しソール全体が薄くて軽いシューズができたら、中上級者のレース用として最高なんじゃないか? いや、きっとアシックスはもう次の手を考えているに違いない。何しろ来年は2020年、テクノロジーの集大成とも言えるシューズをリリースするはずだ。その時に我々はこのグライドライドが見せた世界が〝未来〟につながっていたことを理解するのかもしれない。 ◎文/山本慎一郎 <関連記事> 【アイテム】 「ピンなしスプリントシューズ」メタスプリント開発秘話 【アイテム】 アシックスが新コンセプトシューズ「METASPRINT(メタスプリント)」と 「METARACER(メタレーサー)」を発表 【PR】ASICSの〝先進的〟レーシングシューズ METASPRINT(メタスプリント)&METARACER(メタレーサー) 【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスのカーボンプレート搭載シューズ「METARACER(メタレーサー)」 【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスの高反発シューズ「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.10.27
各地で都道府県高校駅伝続々開催 週末の3連休は30都府県 11月4日に都道府県代表決定
-
2025.10.27
-
2025.10.27
-
2025.10.27
-
2025.10.26
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.27
各地で都道府県高校駅伝続々開催 週末の3連休は30都府県 11月4日に都道府県代表決定
年末の全国高校駅伝の出場権を懸けた高校駅伝都道府県大会が各地で行われている。 今週は、明日10月28日の長崎をはじめ、平日にも順次実施され、週末の3連休(11月1日~3日)には一気に30都府県で開催。11月4日の埼玉をも […]
2025.10.27
関東学生連合チーム 個人枠選手が発表! 東大・秋吉拓真が2年連続選出 東大院・本多健亮もメンバー入り/箱根駅伝
10月27日、関東学生陸上競技連盟は、第102回箱根駅伝にオープン参加で出場する関東学生連合チームの出場選手の一部を発表した。 関東学生連合チームは前回まで予選会の落選校の所属選手のうち、各校1名で、予選会個人順位の上位 […]
2025.10.27
世界陸上マラソン金のシンブ、ジェプチルチルらがノミネート 世界陸連年間最優秀選手スタジアム外部門の候補発表!
10月27日、世界陸連(WA)はワールド・アスレティクス・アワード2025「ワールド・アスリート・オブ・ザ・イヤー」のスタジアム外種目候補選手を発表した。 男子では9月の東京世界選手権マラソン金メダルのA.シンブ(タンザ […]
2025.10.27
11月22日、23日に奥能登で陸上教室を開催 朝原宣治さん、塚原直貴さん、君嶋愛梨沙らが被災地の子どもたちを指導
日本財団は10月27日、2024年の能登半島地震および水害で大きな被害を受けた石川県能登半島地域で、復興支援の一環として「奥能登陸上教室」を開催することを発表した。 日本財団では、アスリートとともに社会課題の解決に取り組 […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望