写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技10日目
陸上競技10日目モーニングセッション。札幌の天候は曇り、気温26度、湿度80%。五輪のフィナーレを飾る男子マラソンは朝7時にスタートした。
レースは世界記録保持者E.キプチョゲ(ケニア)を中心に動き、トップ集団は5kmを15分17秒で通過。ゆったりとしたペースで進んでいく。しかし、8km過ぎに2020年ロンドンマラソン覇者S.キタタ(エチオピア)が立ち止まるなど、有力選手が次々と戦線離脱した。
先頭集団は中間点を1時間5分13秒で通過する。31人いた大集団は徐々に削られていき、30km通過時(1時間32分31秒)では大迫傑(Nike)を含む11人に絞られた。
ここから王者・キプチョゲが本領を発揮する。「これが美しいレースであることを世界に示すために差を広げたかったんだ。自分の残りの体力と精神力を確認する意味もあった」。35㎞までの5kmを14分28秒まで引き上げて独走態勢を築くと、40kmまでの5kmも14分56秒で走破。最後は後続に1分20秒以上の大差をつけて、悠々とフィニッシュに飛び込んだ。優勝タイムは2時間8分38秒。後半のハーフは1時間3分25秒で駆け抜けた計算になる。
非公認レースの42.195㎞で2時間切りを果たしたキプチョゲ。昨年のロンドンマラソンで8位に沈み、「衰え」を指摘する声もあった。しかし、36歳になった絶対王者は4月のNNミッション・マラソンを2時間4分30秒で制すと、東京五輪でも異次元の走りを披露した。時折見せる笑顔について聞かれると「走ることが幸せだからです。走れる世界は幸せなんです」と王者は語る。
アベベ(エチオピア)、チェルピンスキー(東ドイツ)に続く五輪連覇を果たしたキプチョゲ。「連覇したことで歴史を作れたと思っています。終わった今は、次の世代をサポートをしたいと思っている」と、後進の指導にも思いを持つ。そして、「コロナ禍で延期した時は大変でしたが、五輪開催を実現させた東京と北海道の組織委員会に感謝しています。このレースの実現は私たちが正しい方向に向かって日常を取り戻す過程にあることを意味します」と感謝した。
王者に対し、他の選手は真っ向勝負を回避。終盤は4人が2位集団を形成し、ラスト勝負を制したA.ナゲーイェ(オランダ)が2時間9分58秒で銀メダルを獲得すると、2秒差で続いたB.アブディ(ベルギー)が銅メダルを確保した。2人はソマリア出身で一緒にトレーニングをしているという。最後はナゲーイェがアブディに鼓舞した姿が印象的だった。
日本勢は大迫が健闘した。メダルには届かなかったが、36km手前で2人をかわして、2時間10分41秒で6位に入った。106人が出走して30人が途中棄権した過酷なレース。中村匠吾(富士通)と服部勇馬(トヨタ自動車)は苦しみながらも、フィニッシュラインに駆け込んだ。
東京に集まった世界の超人たちが超絶的なパフォーマンスを繰り広げた10日間。最後は千両役者キプチョゲが締めくくり、熱狂の東京五輪が幕を閉じた。
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