十種競技で日本記録を持ち、ロンドン、リオとこの種目で日本勢初の2大会連続のオリンピック代表となった右代啓祐(国士舘クラブ)がオンラインで会見を開き、6月12日、13日にスペイン・テネリフェ島で開かれるMeeting Internacional Aronaに出場することを発表した。これにより、エントリーしていた同じ日程の日本選手権は棄権する。
日本が誇るアジアのキングが、東京五輪に向けて最後のチャレンジに選んだ舞台はスペインだった。これまで日本初の8000点超え、オリンピック2大会出場、リオでは選手団の旗手を務め、アジアを何度も制すなど、十種競技で数々の金字塔を立ててきた右代。今年7月で35歳になる。
東京五輪の参加標準記録8350点は、自身が14年にマークした日本記録8308点よりも高く、現時点でクリアできていない。東京五輪を目指すためには、参加標準記録を突破する、もしくはポイントによるワールドランキングでターゲットナンバー(出場枠)の24番以内に入る必要がある(参加標準記録突破者を含めて24)。右代は今日時点で28番目。「ラールドランキングの順位を上げなければいけない。日本選手権で8000点を出して優勝しても厳しい」と判断した。
そこで、右代は同じ日程で開催される日本選手権(長野)ではなく、海外の競技会へのエントリーを選択。Meeting Internacional Aronaは世界陸連の定める競技会格付けのカテゴリーで上から3番目(※混成競技で)の「GL」で、順位ポイントが高く設定されている。日本選手権はカテゴリー「B」のため、より高いポイントを見込める競技会を選択した。
これまで日本選手権は2010年で初優勝を飾ってから15年まで6連覇を含め通算8回の優勝を誇る。これはこの種目史上最多。「10回V」を目指している右代だが、“貴重”な1回を見送ってでも、オリンピックへの挑戦を選択した。その舞台で「8000点を出して優勝する。10回自己ベストを挑戦して、結果的に(十種競技で)日本記録にも挑戦できれば」と意気込んでいる。
近年は8000点を超えられていないという現状も理解している。昨年は日本選手権で2位。「あれほど練習したのにどうして、とものすごく悩んだ」と言い、「そろそろなのかな」と引き際も頭をよぎった。だが、右代はそこで「何かを変えなければいけない」とトレーニングの軸を変更。冬季は他競技の動きを取り入れたり、新たなトレーナーに師事して身体の動かし方を見直したりした。さらに週2回は低酸素トレーニングでスプリントと心肺機能の両方を高めてきた。その結果、初戦となった5月の鹿児島での試合で7816点をマーク。「あんなに失敗したのに7800点いくんだと自信になった」と自身の進化と可能性を大いに感じた。
現在のコンディションは「今までになくいい。いつでも試合をできる状態」だといい、手続きが整えば土曜日夜に出国する予定。スペインは入国時の隔離は解除されているため、テネリフェ島に入る前72時間以内のPCR検査で陰性が確認できれば問題なく出場できるという。もちろん、帰国後の隔離期間も含めて準備を整えている。
「本当は日本選手権に出たかった。でも、3回目のオリンピックに出たい。いろんな世の中の状況はあるが、今できるすべてのことを後悔なくやる。戻ってきたなとたくさんの人に思ってもらえるような試合をしてきたい」
目指し続けてきた世界のメダル、そして3度目のオリンピックとなる東京五輪に向けて、日本のキングはこれまでと同じように歩みを止めず前だけを見て挑戦を続ける。

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