HOME ニュース、国内

2021.05.23

七種競技・山崎有紀が歴史を動かす17年ぶり日本新!5日前に急きょ出場決定「今の力は出せた」
七種競技・山崎有紀が歴史を動かす17年ぶり日本新!5日前に急きょ出場決定「今の力は出せた」

写真提供/九州共立大

七種競技で日本選手権3連覇の女王が、ついに歴史を動かした。5月22日、23日に行われた九州共立大チャレンジ競技会で、山崎有紀(スズキ)が5975点をマーク。3年ぶりに102点更新する自己新は、アテネ五輪にも出場した中田有紀(当時・さかえクリニックTC、現・愛知つばさTCA)が2004年に樹立した日本記録5962点を更新する日本新だった。

九州インカレの延期に伴い、「学生たちのために」と設定された競技会。「6月の日本選手権に向けての調整」というつもりで、大会5日前に急きょ出場を決めた。1種目めの100mハードルで14秒00(+1.5)をマーク。「4月の大会で14秒38だったことを考えればそこそこ」。2日目の走幅跳では向かい風1.3mの中で6m01を跳び、やり投でも48m62の自己新を出した。ラストの800mは後輩に引っ張ってもらい、ラストは独走で2分13秒95のこちらも自己ベスト。日本女子初の6000点に近づく大記録だった。フィニッシュ後は涙。大学時代から師事する疋田晃久コーチ(九州共立大監督)と喜びを分かち合った。

「今出せる力は出せた」と言う一方、それはコンディションも含めてのこと。全体的には「普通」と山崎。やり投や砲丸投など「投てき種目が安定して取りこぼしがなくなった」のが好記録の要因だというが、自己ベストがやり投と800mだけだったことを考えれば、6000点やもっと大きな記録も見えてきた。山崎自身も「ハマればまだ出せそう」と可能性を見出しているようだ。

長崎南高校から九州共立大を経て、18年からスズキへ。高校時代は4551点がベストで全国上位選手ではなかった。ところが大学で着実に成長を遂げると、3年時に5751点と大ブレーク。しかし、日本一になり、連覇を続けるうちに失っていたものもあった。「もともと彼女の持ち味」と疋田コーチが語るのが「競技を楽しむこと」。それまではヘンプヒル恵(アトレ)らの後を追いかけて成長すればよかったが、追われる立場となり、「負けられない」という気持ちが強くなり、いつしか楽しむことを忘れてしまっていた。

今回、「原点回帰」という意味合いもあり、学生たちと一緒に「伸び伸びと混成競技をできた」。その中で「久しぶりに楽しく、学生の“ノリ”を感じられた」のが大きかったようだ。

広告の下にコンテンツが続きます

これで日本記録保持者となり、日本選手権では4連覇が懸かる。それでも、「記録は考えず、1種目ずつ楽しくやっていきます」と気負いはない。だが、この新記録が七種競技界に与えた影響は大きい。ケガから復活を期すヘンプヒル、同日に大会新で関東インカレを制した大玉華鈴(日体大)、再挑戦する宇都宮絵莉(長谷川体育施設)らを大いに刺激したことだろう。

七種競技でオリンピックの舞台に立ったのは中田有紀ただ1人。東京五輪は現実的ではないにしても、日本のヘプタスリートが再び世界の舞台へ立つ日が来る。そんな予感を漂わせる17年ぶりの日本新だった。

【得点内訳】
5975点(100mH:14秒00/+1.5―走高跳1m65―砲丸投12m39―200m24秒63/+2.0―走幅跳6m01/-1.3―やり投48m62/800m2分13秒95)

■七種競技 日本歴代5傑
5975点 山崎有紀(スズキ)2021年
5962点 中田有紀(さかえクリニックTC)2004年
5907点 ヘンプヒル恵(中大)2017年
5821点 宇都宮絵莉(長谷川体育施設)2018年
5713点 佐藤さよ子(日立土浦)2001年

写真提供/九州共立大 七種競技で日本選手権3連覇の女王が、ついに歴史を動かした。5月22日、23日に行われた九州共立大チャレンジ競技会で、山崎有紀(スズキ)が5975点をマーク。3年ぶりに102点更新する自己新は、アテネ五輪にも出場した中田有紀(当時・さかえクリニックTC、現・愛知つばさTCA)が2004年に樹立した日本記録5962点を更新する日本新だった。 九州インカレの延期に伴い、「学生たちのために」と設定された競技会。「6月の日本選手権に向けての調整」というつもりで、大会5日前に急きょ出場を決めた。1種目めの100mハードルで14秒00(+1.5)をマーク。「4月の大会で14秒38だったことを考えればそこそこ」。2日目の走幅跳では向かい風1.3mの中で6m01を跳び、やり投でも48m62の自己新を出した。ラストの800mは後輩に引っ張ってもらい、ラストは独走で2分13秒95のこちらも自己ベスト。日本女子初の6000点に近づく大記録だった。フィニッシュ後は涙。大学時代から師事する疋田晃久コーチ(九州共立大監督)と喜びを分かち合った。 「今出せる力は出せた」と言う一方、それはコンディションも含めてのこと。全体的には「普通」と山崎。やり投や砲丸投など「投てき種目が安定して取りこぼしがなくなった」のが好記録の要因だというが、自己ベストがやり投と800mだけだったことを考えれば、6000点やもっと大きな記録も見えてきた。山崎自身も「ハマればまだ出せそう」と可能性を見出しているようだ。 長崎南高校から九州共立大を経て、18年からスズキへ。高校時代は4551点がベストで全国上位選手ではなかった。ところが大学で着実に成長を遂げると、3年時に5751点と大ブレーク。しかし、日本一になり、連覇を続けるうちに失っていたものもあった。「もともと彼女の持ち味」と疋田コーチが語るのが「競技を楽しむこと」。それまではヘンプヒル恵(アトレ)らの後を追いかけて成長すればよかったが、追われる立場となり、「負けられない」という気持ちが強くなり、いつしか楽しむことを忘れてしまっていた。 今回、「原点回帰」という意味合いもあり、学生たちと一緒に「伸び伸びと混成競技をできた」。その中で「久しぶりに楽しく、学生の“ノリ”を感じられた」のが大きかったようだ。 これで日本記録保持者となり、日本選手権では4連覇が懸かる。それでも、「記録は考えず、1種目ずつ楽しくやっていきます」と気負いはない。だが、この新記録が七種競技界に与えた影響は大きい。ケガから復活を期すヘンプヒル、同日に大会新で関東インカレを制した大玉華鈴(日体大)、再挑戦する宇都宮絵莉(長谷川体育施設)らを大いに刺激したことだろう。 七種競技でオリンピックの舞台に立ったのは中田有紀ただ1人。東京五輪は現実的ではないにしても、日本のヘプタスリートが再び世界の舞台へ立つ日が来る。そんな予感を漂わせる17年ぶりの日本新だった。 【得点内訳】 5975点(100mH:14秒00/+1.5―走高跳1m65―砲丸投12m39―200m24秒63/+2.0―走幅跳6m01/-1.3―やり投48m62/800m2分13秒95) ■七種競技 日本歴代5傑 5975点 山崎有紀(スズキ)2021年 5962点 中田有紀(さかえクリニックTC)2004年 5907点 ヘンプヒル恵(中大)2017年 5821点 宇都宮絵莉(長谷川体育施設)2018年 5713点 佐藤さよ子(日立土浦)2001年

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top