2025.03.03
◇東京マラソン2025(3月2日/東京都庁~東京駅前・行幸通り)
東京世界選手権代表選考会を兼ねたJMCシリーズG1の東京マラソンが3月2日に行われ、男子はT.タケレ(エチオピア)が2時間3分23秒で優勝した。日本人最上位の10位には市山翼(サンベルクス)が食い込み、日本歴代9位の2時間6分00秒をマークした。
5000mと10000mで世界記録を保持するジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)がフィニッシュした1秒後、懸命に駆け抜けてきたのが市山だった。
「まだ先に日本人選手がいると思って走っていたんです。レース後に日本人トップだと知りました」と自身も驚きの快走だった。
市山は2時間4分30秒ペースで進む予定だった第3グループでレースを進行。中間点を1時間2分44秒で通過した。30kmを1時間29分13秒で通過すると、終盤に強さを発揮する。
「下りが得意ではないので前半はうまく動かすことができなかったんですけど、下りが終わってからリズムを戻せたことが、後半の走りにつながったかなと思います」
第3グループでただ最後まで競り合った井上大仁(三菱重工)を引き離すと、第2集団でレースを進めた浦野雄平(富士通)を抜き去る。そして39.8kmで池田耀平(Kao)を大逆転。40kmまでの5kmを15分03秒にペースアップして、日本人トップを奪った。
「あまりタイムは意識していなくて、後半もとにかくリズムを崩さない意識で走ったんです。我慢強さと根性。他のことを気にしている余裕はないので、我慢、我慢の積み重ねで30km以降は走りました」
終盤、暑さに苦しむ選手が多かったなか、市山は最後までアームウォーマーを外すことなく、全力で駆け抜けた。根性だけでなく、集中力も素晴らしかった。
2021年のびわ湖毎日マラソンで出した2時間7分41秒がこれまでの自己ベストで、23年2月の別府大分では2時間7分44秒で3位。パリ五輪選考レースのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)にも出場と、安定した成績を残してきたものの、これまでのマラソンは練習を完全に消化できたことがなかったという。しかし、今回は「練習をすべて消化して、調子がいい状態で臨めました」と胸を張る。さらに2月9日の全日本実業団ハーフマラソンが自信になったという。
「調子が悪いなかでも自己ベストの1時間00分22秒で優勝できました。自分の力がついてきたなと感じましたし、その勢いをしっかりここにつなげられたと思います」
現在、市山はパリ五輪男子20km競歩に出場した濱西諒と同じく、スーパーマーケット「ベルクス」の草加青柳店(埼玉)に勤務している。週に4日(火、水、木、土)は発注や品出しを担当。8時から13時まで休憩なしに5時間働いたあと、トレーニングを重ねてきた。
「働きながら走ることへの不満はありません。自分以上にもっと働いている人はいますから。それに会社の人やお店に来る方が応援してくれる。その声も力になっています」
そして、このレースで東京世界選手権の参加標準記録(2時間6分30秒)を突破。代表選考のテーブルに乗ることになった。
「どうなるかはわかりませんが、日本代表に選ばれるのであれば、もう一度活躍したい。今回は後半の粘りが功を奏しましたが、その粘りはマラソンに不可欠。この粘りを残しつつ、もっと力をつけて勝負できるようにしたいと思います」
中央学大入学時は25人いた同期の中で、5000mベストは下から3番目だったという市山。そこから這い上がり、28歳にしてついに、世界への扉が見えてきた。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.09.08
故・川越学氏の『お別れ会』、10月5日に都内で開催
2025.09.08
東京世界陸上特設ページ
-
2025.09.08
-
2025.09.08
2025.09.03
開幕迫る東京世界陸上!聖地・国立競技場の大会装飾も公開 準備も最終段階
-
2025.09.06
-
2025.09.02
2025.08.16
100mH・福部真子12秒73!!ついに東京世界選手権参加標準を突破/福井ナイトゲームズ
2025.08.27
アディダス アディゼロから2025年秋冬新色コレクションが登場!9月1日より順次販売
-
2025.08.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.09.08
故・川越学氏の『お別れ会』、10月5日に都内で開催
8月22日に合宿先の北海道で急逝した長距離指導者・川越学氏(63歳)の『お別れ会』が、10月5日(日)午前11時~12時に「梅窓院 観音堂」(東京都港区南青山2-26-38)で行われることがわかった。長女で女優の川越美結 […]
2025.09.08
サニブラウン100m3大会連続ファイナルへ ケガの影響なし「状態上がってきた」宮崎合宿締めくくり、いよいよ本番へ/東京世界陸上
男子短距離で東京世界選手権代表のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が宮崎県内でトレーニングし、練習後に報道陣の取材に応じた。 9月に入って約1週間、6月にも行っていた宮崎で世界選手権に向けた最終調整。暑いなか、最終 […]
2025.09.08
月刊陸上競技2025年10月号
Contents 別冊付録 東京2025世界陸上観戦ガイド いよいよ、世界陸上が開幕! 直前、東京世界陸上情報 世界陸上 日本代表発表 総勢80名 日本代表一覧 日本代表首脳陣インタビュー 山崎一彦 強化委員長 「1人で […]
2025.09.08
北口榛花が初プロデュース!中高生対象「はるかなる教室」今秋開催「魅力や楽しさ感じて」参加者募集
女子やり投のパリ五輪金メダリストで世界選手権連覇中の北口榛花(JAL)がマネジメント契約を結ぶスポーツビズは、中高生を対象とした陸上教室を今年10月18日に開催すると発表した。 世界女王から直接アドバイスをもらえる貴重な […]
Latest Issue
最新号

2025年10月号 (9月9日発売)
【別冊付録】東京2025世界陸上観戦ガイド
村竹ラシッド/桐生祥秀/中島佑気ジョセフ/中島ひとみ/瀬古優斗
【Coming EKIDEN Season 25-26】
学生長距離最新戦力分析/青学大/駒大/國學院大/中大/