HOME 駅伝

2023.11.27

積水化学が2年ぶり優勝旗奪還!新谷仁美が絶賛「とことん粘れる」3区・佐藤早也伽の激走で勝機つかむ/クイーンズ駅伝
積水化学が2年ぶり優勝旗奪還!新谷仁美が絶賛「とことん粘れる」3区・佐藤早也伽の激走で勝機つかむ/クイーンズ駅伝

23年クイーンズ駅伝で優勝した積水化学

◇第43回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝:11月26日/宮城・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195km)

実業団女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝が行われ、積水化学が2時間13分33秒で2年ぶり2度目の頂点に立った。

連覇を狙う資生堂が1区で大逃げを図った今大会。2年ぶりの優勝旗奪還を目論む積水化学は、トップの資生堂から43秒差の5位と出遅れ、「想定以上に離されている」と野口英盛監督の心もやや湿りがちになった。

広告の下にコンテンツが続きます

ところが、2区からの快進撃で流れは積水化学に傾く。終わってみれば2位のJP日本郵政グループに1分25秒差の圧勝劇。野口監督は「うれしいのひと言です。がんばってくれた選手たちにありがとうと言いたい」と感無量の表情を見せた。

ブダペスト世界陸上5000m代表でルーキーの山本有真が、3年連続で担ってきた卜部蘭を差し置いて2区に起用され、区間賞の走り。「世界陸上の代表として、必ず区間賞を取らないといけない」と自分に言い聞かせ、2位に浮上して首位・資生堂との差を26秒に詰めた。

最長3区(10.6km)は、やはりブダペスト世界陸上マラソン代表の佐藤早也伽。先行する資生堂の一山麻緒は、10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)2位でパリ五輪代表を決めている。だが、その一山のペースが序盤から上がらず、佐藤は4.4km付近で一山の前へ。積水化学がついにトップに躍り出た。

広告の下にコンテンツが続きます

そして、佐藤が真骨頂を発揮するのはここから。佐藤から26秒遅れで走り出したJP日本郵政グループの廣中璃梨佳が、伸びやかなストライドでどんどん迫ってきて、7.5kmで佐藤の右横に並ぶ展開。8km手前では廣中が佐藤の前に立ち、今度はJP日本郵政グループが先頭に立った。ちょうど8km地点で野口監督が佐藤に叫ぶ。「ふり絞れ!」

このシーンは、優勝会見の席で5区を走った新谷仁美が佐藤に代わって熱弁した。

「早也伽ちゃんはどんなに格上の相手でも、並んだところから強みを発揮する選手なんです。とことん粘れるんです。私、ウォーミングアップをしながらテレビを見ていましたけど、廣中さんと並んだ時点で『これは勝てる』と思いました」

これに積水化学のメンバーは一同うなずく。本人は照れてうつむき加減だったが、佐藤は廣中が何度仕掛けても食らいつき、ラスト300mではタスキを握り締めながら廣中を置き去りにして中継点に先着した。その差3秒。レース後、「あれは悔しいっていうもんじゃなかったです」と廣中が言うほどの、佐藤の激走。このトップ中継が、後続選手に勢いを与えたことは間違いない。積水化学の勝因と言っていいだろう。閉会式では、最優秀選手に選出された。

「早也伽ちゃんがラストで廣中さんを差したところは、こっちも一杯いっぱいで見てないのですが……」と笑いながら話した新谷は、9月のベルリンマラソン後の休養を経て、11月に入ってからの駅伝練習。本調子には遠かったものの区間2位にまとめて、チームの2年ぶり優勝に貢献した。

「3年前にこのチームに加わってから、こうやって2度目の優勝ができて、改めて思うんです。チーム内に1人強い人がいても駅伝は勝てないんだなあって。選手それぞれが自分で考えて行動し、成し遂げられることなんですね」

2020年の大会は前年の9位から大きく躍進して2位に入ったが、新谷は「なんで勝てなかったのか?」と涙を流しながらメンバーに問いかけた。その翌年に初優勝。新谷の鼓舞が、チームを強くしている。

文/小森貞子

【大会結果】全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝/2023年11月26日)をチェック!

◇第43回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝:11月26日/宮城・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195km) 実業団女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝が行われ、積水化学が2時間13分33秒で2年ぶり2度目の頂点に立った。 連覇を狙う資生堂が1区で大逃げを図った今大会。2年ぶりの優勝旗奪還を目論む積水化学は、トップの資生堂から43秒差の5位と出遅れ、「想定以上に離されている」と野口英盛監督の心もやや湿りがちになった。 ところが、2区からの快進撃で流れは積水化学に傾く。終わってみれば2位のJP日本郵政グループに1分25秒差の圧勝劇。野口監督は「うれしいのひと言です。がんばってくれた選手たちにありがとうと言いたい」と感無量の表情を見せた。 ブダペスト世界陸上5000m代表でルーキーの山本有真が、3年連続で担ってきた卜部蘭を差し置いて2区に起用され、区間賞の走り。「世界陸上の代表として、必ず区間賞を取らないといけない」と自分に言い聞かせ、2位に浮上して首位・資生堂との差を26秒に詰めた。 最長3区(10.6km)は、やはりブダペスト世界陸上マラソン代表の佐藤早也伽。先行する資生堂の一山麻緒は、10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)2位でパリ五輪代表を決めている。だが、その一山のペースが序盤から上がらず、佐藤は4.4km付近で一山の前へ。積水化学がついにトップに躍り出た。 そして、佐藤が真骨頂を発揮するのはここから。佐藤から26秒遅れで走り出したJP日本郵政グループの廣中璃梨佳が、伸びやかなストライドでどんどん迫ってきて、7.5kmで佐藤の右横に並ぶ展開。8km手前では廣中が佐藤の前に立ち、今度はJP日本郵政グループが先頭に立った。ちょうど8km地点で野口監督が佐藤に叫ぶ。「ふり絞れ!」 このシーンは、優勝会見の席で5区を走った新谷仁美が佐藤に代わって熱弁した。 「早也伽ちゃんはどんなに格上の相手でも、並んだところから強みを発揮する選手なんです。とことん粘れるんです。私、ウォーミングアップをしながらテレビを見ていましたけど、廣中さんと並んだ時点で『これは勝てる』と思いました」 これに積水化学のメンバーは一同うなずく。本人は照れてうつむき加減だったが、佐藤は廣中が何度仕掛けても食らいつき、ラスト300mではタスキを握り締めながら廣中を置き去りにして中継点に先着した。その差3秒。レース後、「あれは悔しいっていうもんじゃなかったです」と廣中が言うほどの、佐藤の激走。このトップ中継が、後続選手に勢いを与えたことは間違いない。積水化学の勝因と言っていいだろう。閉会式では、最優秀選手に選出された。 「早也伽ちゃんがラストで廣中さんを差したところは、こっちも一杯いっぱいで見てないのですが……」と笑いながら話した新谷は、9月のベルリンマラソン後の休養を経て、11月に入ってからの駅伝練習。本調子には遠かったものの区間2位にまとめて、チームの2年ぶり優勝に貢献した。 「3年前にこのチームに加わってから、こうやって2度目の優勝ができて、改めて思うんです。チーム内に1人強い人がいても駅伝は勝てないんだなあって。選手それぞれが自分で考えて行動し、成し遂げられることなんですね」 2020年の大会は前年の9位から大きく躍進して2位に入ったが、新谷は「なんで勝てなかったのか?」と涙を流しながらメンバーに問いかけた。その翌年に初優勝。新谷の鼓舞が、チームを強くしている。 文/小森貞子 【大会結果】全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝/2023年11月26日)をチェック!

積水化学の優勝メンバーをチェック!

1区(7.0km) 田浦英理歌 22分10秒(5位) 2区(4.2km) 山本有真  13分13秒(1位) 3区(10.6km) 佐藤早也伽 33分27秒(2位) 4区(3.6km) 佐々木梨七 11分11秒(7位) 5区(10.0km) 新谷仁美 31分57秒(2位) 6区(6.795km) 森智香子  21分35秒(6位)

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.10.17

青森山田10年連続男女V 男子は2時間5分27秒で31回目の都大路 女子は1時間10分08秒で33連覇/青森県高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた青森県高校駅伝が10月17日、青森市の新青森県総合運動公園陸上競技場を発着点とする周辺周回コースで行われ、青森山田が10年連続の男女Vを遂げた。男子(7区間42.195km)は2時間5分27秒 […]

NEWS 花巻東がオール区間賞で4連覇 男子は一関学院2時間9分53秒で2年連続34回目のV/岩手県高校駅伝

2025.10.17

花巻東がオール区間賞で4連覇 男子は一関学院2時間9分53秒で2年連続34回目のV/岩手県高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた岩手県高校駅伝が10月16日、花巻市特設高校駅伝コースで行われ、女子(5区間21.0975km)は花巻東が1時間13分13秒で4年連続16回目の優勝を果たした。男子(7区間42.195km)は […]

NEWS 後藤大樹が300mH再びU18日本新の35秒44! 中盤にアクシデント「34秒台を目標にしていた」/U18・16大会

2025.10.17

後藤大樹が300mH再びU18日本新の35秒44! 中盤にアクシデント「34秒台を目標にしていた」/U18・16大会

◇第19回U18・第56回U16大会(10月17~19日/三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場)1日目 U18・U16大会の第1日目が行われ、U18男子300mハードル決勝は後藤大樹(洛南高1京都)が35秒44で優勝し、 […]

NEWS 日本陸連キャリア支援プログラムの第6期受講生が決定 佐々木哲、大西勧也ら9名

2025.10.17

日本陸連キャリア支援プログラムの第6期受講生が決定 佐々木哲、大西勧也ら9名

日本陸連は10月17日、主に大学アスリートを対象としたキャリアサポート支援の「ライフスキルトレーニングプログラム」の第6期受講生を発表した。 今回決まった受講生は9名。男子3000m障害で今年のアジア選手権4位に入賞した […]

NEWS ヴィンセント、池田耀平が故障のため欠場 近藤、飯田、森井らも調整不良のためキャンセル/東京レガシーハーフ

2025.10.17

ヴィンセント、池田耀平が故障のため欠場 近藤、飯田、森井らも調整不良のためキャンセル/東京レガシーハーフ

10月19日に行われる東京レガシーハーフマラソンの主催者は10月17日、招待選手の男子でイェゴン・ヴィンセント(Honda)、池田耀平(Kao)が欠場することを発表した。いずれも故障が理由という。 このほか、エリート男子 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年11月号 (10月14日発売)

2025年11月号 (10月14日発売)

東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望

page top